小説『キネマの神様』父と娘の物語

ほんの少し原田マハさんの実体験が込められた、映画にまつわる素敵なお話です。

映画ってただの娯楽なんだけど、不思議な力があります。そこにはきっと「キネマの神様」がいるから…。

ギャンブル大好きで大借金をこしらえるどうしようもない父と、映画館を中心とした文化施設を作ることが夢の娘。

父はギャンブルから足を洗うために…、娘は途中で潰えた夢から立ち直るために…、2人を支えたのは大好きな映画でした。

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あらすじは?

父・円山郷直が倒れ手術することになって、父の代わりに狭いマンションの管理人室に詰めている円山歩39歳。

父は「宵越しの金は持たない」をモットーとするどうしようもないダメ親父。映画とギャンブルが何より大好き。

今回はサラ金への借金を完済すると意気込んで、あちこちにうそをついて借りてきた金を全額麻雀にぶっ込み、大負けしてさらに借金を増やした挙句に心筋梗塞まで起こしてしまいました。

歩は大手の再開発企業で、シネマコンプレックスを中心とした文化・娯楽施設を建設する巨大プロジェクトの課長に抜擢されていました。「映画館を中心とした文化施設を作る」というアイデアを、入社以来貫き通し、やっとつかんだチャンスでした。

しかし、プロジェクト実現に盲進しすぎたために周りの嫉妬と反感を買い、大手ゼネコン業者との癒着が噂されたため、計画から外され子会社への異動が伝えられます。歩は会社を辞める決意をしました。

借金を増やしてしまった両親は、高給取りの娘のお金をあてにしていましたが、仕事を辞めた歩にはどうすることもできません。

母と共に「ギャンブル依存症の相談会」に参加して話を聞くと「本人の性癖は変えられないので、他の趣味に気を向けること。絶対に借金を家族が肩代わりしないこと。」と言われました。

歩が父の代わりにマンションの管理人室に詰めていた時に見つけた、映画の感想が書いてあるノートはなんと200冊。映画への愛情は半端ないので、ギャンブルを辞めさせるためには、映画の力を借りるしかない…。

歩は自分が会社を辞めたこと、借金は肩代わりしないから自分で返してほしいこと、そして「お父さんには映画があるじゃない」と伝えました。

父が行方不明だと母から電話があり、歩は父の往年の親友で「テアトル銀幕」を営むテラシンの元へと向かいます。

父の入院中に歩は、テアトル銀幕で「ニュー・シネマ・パラダイス」を観て号泣してしまい、席を立てなくなってしまったところにテラシンが話しかけてくれて、父の話をしたばかりだったのでした。

「娘さんには嘘はつけないわ」と父の居場所を教えてくれたテラシン。父はネットカフェでDVDの映画を観ていました。

「エイユウシャ」と名乗る会社から歩に連絡があり警戒していると、なんとそれは映画雑誌の出版社の老舗「映友社」で、「うちの雑誌で映画論評を書きませんか」という勧誘の電話でした。

現在の映友社は決して経営状況がいいとは言えませんでした。しかし、映画の一時代を築いた、凄腕の社長兼編集長・高峰好子にライターとして見込まれた歩は、もう一度大好きな映画の世界で頑張ってみる決意を固めました。

歩が映友社に引っ張られるきっかけになったのは、父が映友社のブログに、歩が書いた映画の感想のメモを投稿したことでした。

高峰編集長には15年来ひきこもりの息子がいて「ばるたん」というハンドルネームで「映友」のブログを書いています。そのブログに歩の父が投稿して、ばるたんが興味を持ったということでした。

歩は、ばるたんが唯一心を許している社員の新村と一緒にばるたんの元に向かいます。しかし、ばるたんは歩の顔を見るなり部屋に閉じこもってしまいました。聞くと、バルタンが興味を持ったのは歩ではなく、書き込みをした父の方だったのです。

歩の父・ゴウと歩、そして新村とばるたんの4人で「キネマの神様」というブログを立ち上げることになりました。ゴウが観た映画の感想を次々に書き込んでいきます。

アメリカに住んでいる歩の元同僚・清音の協力で英語版「キネマの神様」も誕生し、順調にPVを伸ばしていたある日、「Rose Bud」と名乗る人物からゴウとは違う解釈の『フィールド・オブ・ドリームス』論評が投稿されます。

ゴウとRose Budの論評合戦のような映画愛あふれるキャッチボールが始まり、ブログはますます人気になっていきました。

そんなときに、テラシンが「テアトル銀幕」を閉めると言い出します。かつて歩が計画したシネマコンプレックスはすぐそばに建設予定でした。

ゴウは「キネマの神様」にRose Budあての手紙を書きこみました。数々の名画を届きてきた「テアトル銀幕」が閉館の危機に瀕していることを。

清音から「今すぐアメリカのトークショー番組を見て」と電話がかかってきます。そこにRose Budが出ていると…。

Rose Budの正体は、なんと伝説の映画評論家リチャード・キャバネルでした。キャバネルは番組の中で「日本には名作のリバイバルを上映するメイガザ(名画座)というものがある。時代の最先端のシネマコンプレックスとメイガザのような劇場が共存している日本は、世界をリードしている」と言いました。そして

「ゴウ。君に、”テアトルギンマク”に、神のご加護を」

テアトル銀幕には映画ファンが押し寄せ、ハリウッド俳優からも存続を応援する手紙が届きました。

テラシンは命ある限りテアトル銀幕を続けていくとテレビのインタビューで宣言しました。

それからもゴウとRose Budのやりとりは続いていましたが、ある時からプツリとRose Budの書き込みが途絶えるようになりました。心配したゴウは「貴君の力になりたい。貴君の無事を、キネマの神様に祈っています。」と書きこみ続けていました。

ついに来た返事には、Rose Budはがんに侵されていて、先は長くないことが語られていました。そして最後に「君に会ってみたい。会いに来てくれないか。」と結ばれていました。

歩とゴウがRose Budに会うためにニューヨークへ向けて立つ前日、Rose Budが亡くなったと知らせが入ります。ゴウの元にはRose Budからのメールが届いていました。

「君と一緒に、一番好きな映画を観たかった。私の人生最良の映画。それは、君が人生最良だと思っている、あの映画だ。」

Rose Budが亡くなってから映画を観ることもブログを書くこともできなくなってしまっていたゴウ。

長い沈黙のあとやっと、ゴウはテアトル銀幕に向かうことができました。その日は「キネマの神様感謝祭」と銘打ってありました。

アメリカから帰ってきた清音と結婚を反対し確執のあった清音の父、15年以上ひきこもっていた高峰編集長の息子「ばるたん」こと興太も小ざっぱりした格好でテアトル銀幕にやってきました。

この映画を 円山郷直と リチャード・キャバネルに捧ぐ

スクリーンに映しだされた白い文字に続いて始まったのは、シチリアの海の風景とテーブルの上にもられたレモン…ゴウとRose Budが一番好きな映画でした。

 

山田洋次監督の手で実写映画化されることになりましたが、映画は原作とは少し違う内容みたいですね。

でも映画愛にあふれた作品であることは間違いないと思います。

こちらはこちらで、やっぱり楽しみです。

小説を読んだ感想

映画によって父と娘が再生していく物語。それだけでじーんとくるのに、物語の中にあふれている映画愛に熱いものがこみあげてきて止まらなくなります。

あーやっぱり映画大好きだぁと。

ゴウの一番好きな映画」は、物語の最初と最後に出てくる『ニュー・シネマ・パラダイス』です。まさに名作中の名作。

戦争という暗い時代にも、映画は人々の心のオアシスであり支えでした。映画は映画館で観るのが当たり前だった時代のお話です。

今ではビデオやDVDが普及してからは、映画は家で楽しむものになってしまいました。

私は…おこがましくも、こういう映画に関するブログを書き連ねているくらいですから、趣味は「映画を観ること」と言うくらい映画が大好きです。

でも全部の映画を映画館で観たか?と言われると、答は「NO」

DVDで鑑賞した映画はたくさんあります。むしろお気に入りの映画は何回でも観られるように進んでDVDを買ってしまうくらい。

でも、この物語を読んで思い出しましたね。私も昔、「テアトル銀幕」のような古ぼけた小さな映画館でリバイバル映画を毎週観ていたことを。もちろんその映画館はもうありませんが…。

「ローマの休日」「理由なき反抗」「追憶」に「タクシードライバー」などの往年の名作は、その映画館のスクリーンで観ました。

毎週日曜日が楽しみで、次はどんな作品だろう?と胸ときめかせていたことを思い出します。

次々と新しく発表される映画ももちろん楽しみですが、何十年も前に上映された名画がスクリーンで観られたあの映画館、ほんとうによかったなぁ。

ちょっと前の映画だけじゃなくて、う~んと古い映画がスクリーンで観られる映画館があればいいのに。

そんなことを思いながら、映画愛を確かめることになったこの物語に出会わせてくれた「キネマの神様」に感謝!

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