小説『太陽は動かない』シリーズ三部作第1弾!あらすじとネタバレ

吉田修一さんの大ヒットシリーズ、鷹野一彦シリーズの第1弾『太陽は動かない』

藤原竜也さんと竹内涼真さんによる実写化と、ドラマと映画の2本立ての公開で話題になりました。

実写化は不可能と言われた、壮大なスケールで描かれるストーリー。

著者の吉田修一さんが、実際にあった大阪での幼い姉弟の餓死事件をもとに、この子たちにできなかったことをやらせてあげようと執筆を始めたスパイ小説です。

胸に小型の起爆装置を埋め込まれているという反人道的とも思える設定ですが、AN通信のエージェントが背負っている過去と覚悟につながる重要なファクターとも言えます。

映画とはまた違って、姿が見えないからこそのスリルを、ぜひ小説でも味わってみてください!

登場人物がとにかく多くて、おまけにスパイ小説ときてるだけに、誰が敵で誰が味方か全くわからない状況の繰り返しで、ややこしいことこの上ないストーリーです。

スポンサーリンク

小説のあらすじ

ベトナムの大手国営石油会社の主催するパーティに潜入していた鷹野。南シナ海で広大な油田が発見されたとの情報があるのに、そこに中国の国営総合エネルギー巨大企業CNOXと香港トラスト銀行頭取のアンディ・黄が関わろうとしてくる形跡がありません。

その秘密を探るための調査の過程で、天津スタジアムで行われるサッカーの日韓戦で、スタジアムを爆破する計画があることが明らかになります。

ウイグルの油田の共同開発について、新源石油(ウイグル)・興和(日本)・南星(韓国)の3社が合意寸前であり、それを阻止するために日基(日本)・サウンデ(韓国)がウイグルの反政府過激派組織をそそのかし、天津スタジアムを爆破する計画です。

鷹野と田岡は上海入りし、ウイグル過激派組織へのパイプを確保した後、天津に乗り込むことにしました。

上海に駐在するAN通信の通信員・青木優の案内で協力者・張豪を訪ねた鷹野は、張豪の部下である張雨に連れられ、ウイグル過激派組織のシャマルという女性と会えることになりました。

鷹野はシャマルに爆破をやめさせるように交渉を試みましたが、その交渉は決裂。シャマルはウイグルの歴史のために戦っており金のためには動かない女でした。

鷹野が単独で行動している間に、田岡が何者かに連れ去らされてしまいます。鷹野は、興和と南星の幹部から、なんとしてもこの爆破計画を阻止するように言われ、写真を手渡されました。そこには紫色に膨れ上がった顔の田岡が写っていました。

田岡は3日後に爆破される予定の天津スタジアムに運ばれたとのことでした。

24時間ごとに本部への連絡を怠れば、胸の起爆装置が作動して爆殺されることになっているAN通信のエージェント。鷹野は田岡がドラッグで病院に入院していることにし、田岡に似た人物をボコボコにして入院させ、撮った写真を風間に送ってごまかすことにしました。

鷹野は張雨とともに天津スタジアムに乗り込みます。地下に至るまでスタジアムの隅々まで探しますが、田岡は見つかりません。まだ探していないところ…と、最後の1か所を思いつきそこへ向かおうとしたとき、シャマルの姿が見えた気がしました。

シャマルの方へ向かって行こうとしたその時、スタッフの女性が突然「爆弾がしかけられてる!みんな逃げて!」と絶叫し、スタジアムはパニックになりました。

なんとか表に出た鷹野と張雨は人工池の地下にあるゴミ収集場にたどり着き、ゴミの中から田岡を助け出しました。

鷹野と張雨はそこにあったゴミ収集車の荷台に田岡を放り込み、ゴミ収集場から飛び出すと、ゴミ収集車の前にシャマルが立ちはだかりました。鷹野がシャマルを乗せてスタジアムから離れると、背後でスタジアムが爆発する爆音が響きました。

スタジアムの爆破事件から数か月後、京都に謎の美女AYAKOと韓国の諜報部員デイビッド・キムが現れます。彼らのねらいは京都大学でマイクロ波の研究をしている小田部憲三教授の娘・菜々に近づくこと。

その計画は着々と進行しており、菜々の両親にも気に入られたデイビッド・キムは、菜々との結婚も視野に入れた交際をしていました。

香港にいる鷹野のもとに青木優が訪ねてきます。自分もAN通信のエージェントになりたいと言います。青木の父はかつてAN通信からの情報を買えずに勝負に負け自殺していました。母は精神を病みずっと入院しています。自分はどうしても勝つ側の人間になりたいと訴えましたが、鷹野は一蹴しました。

衆議院議員の五十嵐拓の元を、高校の後輩で父の医療器具工場で働いているという広津陸が訪ねてきました。高性能の太陽光パネルの改良に成功しており、できるなら一流企業や国家プロジェクトに高く買ってほしいと、そのための口利きをしてほしいと言いました。

五十嵐は、現在は引退しておりかつて自民党の重鎮だった中尊寺信孝を訪ねました。中尊寺は、一番大事なのは情報だと言い、優秀なプロ集団を探してみるようにとヒントをくれました。

鷹野と田岡は香港で衆議院議員の能登正次を追っていました。能登は中国の巨大エネルギー企業CNOXと日本の電機メーカーMETの幹部と会っていました。

帰国後、能登の地元である茨城県の霞ケ浦の漁業協同組合の理事長宅を盗聴し、太陽光パネルを貼った浮島を浮かべる計画があることが分かりました。突然潜伏先の廃屋に男たちが現れ、鷹野はある男の元に連れて行かれました。

着いたところはMETの取締役・河上満太郎の自宅でした。河上は計画の全貌を話すので、計画が順調に進むように何もしないでほしいと鷹野に頼みました。

大規模太陽光発電のプロジェクトがMET65%、中国のCNOX35%の資本で共同事業として進められているとのこと。鷹野はCNOXがベトナムの油田開発を諦めてまでのめり込むようなプロジェクトではない、裏には何かがあると読んでいました。

鷹野が上海のCNOX支社に潜入した盗み出した情報から、敦煌近くの星星峡にある巨大な施設の衛星写真が見つかり、鷹野と張雨はヘリで現地を見てみることにしました。

そこにあったのは3キロ四方に広がるパネル。宇宙からのマイクロ波を受信するためのレクテナ基地でした。CNOXがMETと提携しようとしているのはあくまでもフェイクであり、METの新型蓄電池の技術がほしかっただけだということが分かりました。

国家プロジェクトとして太陽光発電を発表してしまえば、たとえそれが二流の技術だとしても、日本という国はそれを白紙にもどすことは簡単ではありません。その間に中国が最新の技術で世界を支配するという計画のようです。

宇宙太陽光発電は3つのパートに分けられます。1つめは太陽光パネルを取り付けた人工衛星。2つめは集めたエネルギーをマイクロ波に変換して地上に送る技術。3つめはそのマイクロ波を受け取るレクテナ基地。

突然鷹野と張雨が乗るヘリは、2機のへりに追跡され機関銃で攻撃されました。鷹野と張雨はパラシュートで脱出しましたが、地上では2人を追跡していた車に取り囲まれてしまいました。

鷹野と張雨はCNOXの裏組織集団に囚われていました。ジミー・オハラと名乗る人物が、正午に胸の起爆装置が爆発する様子を見物させてももらうと言いました。が、正午になる直前にダンプカー4台が突っ込んできて、鷹野と張雨を救い出していきました。そこにはシャマルの姿がありました。

マイクロ波の研究の第一人者、小田部憲三教授の娘にデイビッド・キムが近づいていることがわかり、田岡は風間の命令で小田部教授がいる種子島へと向かいました。

種子島宇宙センターでは小田部教授のマイクロ波の実験をするために人工衛星を打ち上げることになっていましたが、種子島の宇宙センターに潜り込んだ田岡は、その計画が無期延期になっていることを掴みます。しかも無期延期を申し出たのは小田部教授自身でした。

種子島宇宙センターには五十嵐議員と中尊寺も現れました。田岡は五十嵐に、小田部教授はすでにCNOX側に寝返っていること、中尊寺は五十嵐を利用して最後には捨てるであろうことを告げました。そして、高性能太陽光パネルをCNOXに売ることを提案しました。

鷹野と田岡が五十嵐に会い、高性能太陽光パネルの開発者や性能を聞き出そうとすると、五十嵐はCNOXに売ると決めたわけではないと言いました。日本の国会議員として日本を裏切ることはできないと。ほかに何か方法はないかと…。

その時、鷹野と五十嵐の前にAYAKOが現れました。自分はCNOXの仕事をしていると五十嵐に説明し、高性能太陽光パネル技術はCNOXに提供すべきだと訴えました。

鷹野がなぜこの場所がわかったのかと尋ねると、そこに青木優が現れ、鷹野に断られたからAYAKOに付いて鷹野たちを監視していたと言いました。

CNOXに太陽光パネルを売って大金を設けるべきだと主張する五十嵐の秘書・丹田は、五十嵐に内緒でAYAKOに連絡を取り、AYAKOを太陽光パネルの開発者・広津陸のところへ連れて行きました。

AYAKOがランチをごちそうすると言って広津を連れて行ったのは、サンフランシスコでした。AYAKOは広津の太陽光パネルをアメリカで競売にかけると言いました。

ランチを食べていると、AYAKOと広津は男たちに取り囲まれ拘束されてしまいました。男たりはアンディ・黄の指示でAYAKOと広津を再び日本へと連れて帰りました。

AYAKOと広津はコンテナ船に乗せられマカオに向かう途中で海に沈められる予定でした。鷹野と田岡は宮崎に先回りしてAYAKOと広津を救う作戦に出ました。

調達した小型船でコンテナ船に突っ込み、拘束されたAYAKOと広津を解放することはできたものの、船はどんどん沈んでいきます。海に投げ出された4人が漂流していると、サーチライトを付けたヘリがやってきました。そこに乗っていたのはデイビッド・キムでした。

一方、五十嵐はCNOXが中国共産党幹部に賄賂を送っていた詳細な証拠を鷹野からもらい、それを訪中した時に知り合った共産党員に渡していました。

また、METは河上の説得で、太陽光発電のプロジェクト発表を延期し、CNOXとの提携を白紙に戻すべく動いていました。

中国内蒙古自治区に鷹野と田岡の姿がありました。田岡が、AYAKOの動向がなぜ手に取るようにわかっていたのか疑問だったと言うと、そこに青木優が現れました。彼女はフリーの諜報員となり、今回は鷹野に協力していたとのことでした。

青木が2人に、新聞を渡しました。そこにはこう書かれていました。

CNOXから賄賂を受け取っていた中国共産党幹部が失脚し、宇宙太陽光発電は中国国家化工集団に引き継がれ、METとの業務提携で基本合意に達しました。METは、京都大学で開発されたマイクロ波送信技術と新型高性能太陽パネルを提供し、実用化を目指します。

小説を読んだ感想

私は小説の中でも、スパイものが大好きです。

顔が見えないことのドキドキ感、ミッションが遂行されるかのハラハラ感はもちろんのこと、敵味方が常に入れ替わり複雑に入り組んだストーリー。

それ以上に胸を捕まれるのは、冷静沈着なエージェントが時折ほんの少し見せる”人間らしい”感情…、友情だったり、愛だったりという気持ちからくる迷いや葛藤の場面。苦しくて胸がえぐられるような気持ちになります。

この『太陽は動かない』は当然、スパイものとしてのおもしろさは全て詰まっています。さらに起爆装置が胸に埋め込まれているという超絶スリリングでナンセンスなおまけ付き。おもしろくないわけがない!!

一度読んだだけでは全容を理解するのは難しいくらい、入り組んだストーリーでしたが、存分に楽しませていただきました。

鷹野がミッションに忠実でありながらも、なんだかんだで田岡を絶対に見捨てないし、風間も絶対に鷹野を見捨てたりしない…。

親に捨てられた孤児であったことが、彼らの人格にも影響を及ぼしていて、なんだかつかみどころのない背景として漂っているところも、今までない小説でしたね。

この映画化不可能と言われた『太陽は動かない』が、満を持して実写化されます。

登場人物を削って、太陽光発電のエピソーだけに集約して映画化されるのかな?

鷹野と田岡が実際に目の前で動いているところを想像しただけでも、鼻息荒くなってしまいます。いやぁ、楽しみすぎる!

2021年を代表する映画になることは間違いないと思います!

鷹野一彦シリーズとは?

主人公はAN通信のエージェント、鷹野一彦。

第1弾『太陽は動かない』

鷹野が31歳という設定で、相棒の田岡亮一とともにアジアを股にかけて活躍する本作品。

第2弾『森は知っている』

南蘭島で高校生活を送りながら、エージェントとしての訓練をうけている鷹野の青春時代を描いた物語。

同じように訓練を受けている柳との友情、鷹野と風間との出会い、エージェントとしての初仕事など、鷹野という人間の基盤をつくったエピソードが満載の物語。

第3弾『ウォーターゲーム』

AN通信エージェントの定年35歳を間近に控え、より進化した鷹野を描いた物語。

前2作品を踏襲し、おなじみのキャラクターたちが勢ぞろいします。そして、人が生きていく上で欠かすことのできない「水」の利権をめぐる攻防。

『太陽は動かない』と『森は知っている』を併せて、一つの映画になります。著者の吉田修一さんと映画監督の羽住英一郎監督の間で、1作目の映画がヒットしたら『ウィーターゲーム』を第2弾として映画化しようという約束になっているそうです。

おもしろくない訳がない!第2弾も今から楽しみです。

『太陽は動かない』を電子書籍で!

2023年8月6日時点の情報となります。 オフィシャルサイトにて必ず最新の情報をご確認ください。

ebookjapanで初めてログインする方は70%OFFクーポン配布中(6回利用可)!

U-NEXT 805円
music.jp 805円
amazon prime 724円(Kindle版)
847円(紙の文庫本)
漫画全巻ドットコム 805円
ebookjapan 805円
Booklive 805円
コミックシーモア 805円
honto 805円