2018年の映画賞を総なめにした衝撃作『孤狼の血』についに続編が誕生！
映画『孤狼の血』で、尾谷組の一ノ瀬守孝によって無残に殺害された五十子正平。その右腕とも言われる上林成浩がオヤジの仇をとるために牙をむきます。
柚月裕子さんの原作小説では『孤狼の血』の続編は『凶犬の眼』ですが、この『孤狼の血 LEVEL2』は映画『孤狼の血』と『凶犬の眼』をつなぐためのオリジナルストーリーです。
原作とは異なる「五十子正平殺害」という結末を迎えた映画『孤狼の血』を受けて、その落とし前をつけるための戦いの火ぶたが切って落とされます。
小説のあらすじは？
大上省吾が殺害されてから3年後の広島。時代は平成に変わり、暴力団対策法の施行を翌年に控えた平成3年のこと。
大上が貫いていた”ヤクザどもを飼い殺す”という方法で裏社会を治めていたのは、大上の遺志を引き継いだ刑事・日岡秀一だった。
五十子会の元会長・五十子正平を尾谷組の一ノ瀬守孝が殺害した後、日岡の手引きで広島仁正会と尾谷組が手打ちを行って以来、裏社会は微妙なバランスで秩序を保っていた。
五十子会の残党の若い衆が尾谷組の橘を襲撃するという情報をエス(スパイ)から仕入れた日岡は、その残党どもを一網打尽にした。
その捕り物の最中に日岡は近田幸太というチンピラに刺されたが、実は近田幸太、通称チンタは五十子会の尾谷組に対する報復を見張るために日岡が雇っているエスだった。
そんな綱渡りのような駆け引きを続けている日岡の前に1人の男が現れたことにより、裏社会の秩序は音を立てて崩れ始める。
五十子正平の右腕だった上林成浩が刑務所から出所し、五十子の仇をとるために悪魔と化した報復を始めるのだ。
出所当日には刑務官の神原の妹・千晶を殺害。大上の拷問で警察に密告した吉田からは会社を奪い取り、五十子正平が殺されたというのに、尾谷組との手打ちを受け入れ何もしない綿船組の綿船や溝口、五十子会2代目の角谷にも牙を向き始めた。
角谷夫妻は拷問の果てに殺され、隠し持っていた拳銃は全て上林に奪い取られたと、日岡はチンタから報告を受けた。
上林に脅されチンタは日岡の命を狙いに行ったが、日岡は自ら引き金を引いて自分の腹を撃ち、チンタを逃がした。
日岡は自力でチンタの姉・真緒の店まで行き、救急車を呼ばずに県警本部の瀬島に連絡してほしいと告げ気を失った。
日岡はチンタを守るために瀬島に一切を話した。そしてマスコミには「日岡は意識不明の重体」と発表した。
日岡の元へチンタから「今夜午前零時に襲撃」と情報が入り、警察はこぞって出動し、日岡も尾谷組の近くの車内で一人で待機していた。
日岡の車に近づく1台のバイク。上林だった。上林は日岡の腹の傷を蹴りつけ暴行したおして去っていった。実は、上林の元には、日岡とチンタがいろんな場所で会っているのを隠し撮りした写真が届けられていた。
一方チンタは午前零時を過ぎても襲撃が始まらないことを不思議に思いながら待っていた。直感で自分の命が危ないことを悟り逃げるチンタの前に1台のバイクが停まった。
翌日、チンタの遺体は真緒の家の鶏小屋の中で発見された。喉を拳銃で撃たれ両眼はえぐり取られていた。
野次馬の中に、日ごろから警察とヤクザの動向を嗅ぎまわっている安芸新聞社の高坂を見つけた日岡は、チンタの情報を売ったのは高坂に違いないと、殴りかかった。
上層部から厳重注意を受け身動き取れなくなった日岡は、手伝いを申し出てくれた瀬島に一部始終を話し、現状を打開する糸口を探すことにした。
瀬島の家からの帰り道、日岡は高坂に声をかけられた。チンタのことで逆上しそうになる日岡だったが、高坂にあることを言われ冷静になると全てが見えてきた。
確かに高坂は上林と接触していたが、チンタは売っていないと、上林は神原千晶の殺害現場で一切の証拠隠滅をしていないと言い切ったとのことだった。
証拠があるのに上林を逮捕しないのは、上林にめちゃくちゃをさせた上でその責任を全て日岡に負わせて潰そうとしている県警上層部の目論見なのではないか…。
瀬島のアパートに行ってみると、すでにもぬけの殻となっていた。
大上はあれほど警察は信用できないと、暴力団よりも警察の方が恐ろしいと慎重に行動していたのに、それを知っていて自分はなぜ警察を信用してしまったのか。
日岡は戦争を始める準備をしはじめた。
高坂に「神原千晶殺害事件の容疑者は上林で、県警はそのことを隠蔽した」という内容の記事を書かせると、県警は血眼になって日岡を探し拘束した。
上林が尾谷組への襲撃を始めたという知らせが飛び込んでくると、日岡は拳銃を奪うと3階の窓から飛び降りた。パトカーを奪って向かった先は尾谷組。
そのころ上林がダンプカーで尾谷組に突っ込んだのを皮切りに、上林組と尾谷組の戦争が始まった。
パトカーで乗り付けた日岡を見て、上林が車に乗り込み走り出した。五十子正平が一ノ瀬に首を獲られたのは日岡が裏で糸を引いていたせいだと知った上林は、日岡の命を獲るために尾谷組へ日岡をおびき出したのだ。
カーチェイスと銃撃戦の末、港湾地区に滑り込んだ日岡と上林は死闘をくり返していた。
そこへ覆面パトカーが到着。上林は刑事2人に抱きかかえられて連れて行かれようとしていた。日岡は、ものすごい剣幕で責めたてる嵯峨のホルスターから銃を抜くと、上林に向かって発砲し頭を撃ち抜いた。
別のパトカーも到着して刑事たちが目の当たりにしたのは、手に銃を握らされた嵯峨の姿だった。
広島県警は日岡が捜査対象者を殺害した事実を公表することなく、またしても隠蔽した。そして日岡は広島県北部の駐在所に配置転換された。
新聞で「刑事が車にひかれて死亡」という記事を見て、日岡は驚いた。写真は間違いなく瀬島だったが、本当の名前は全く別のものだった。
雀荘からの帰り道、瀬島はいきなりよろけるように道路に飛び出してトラックにはね飛ばされていた。大騒ぎになった人ごみから茶髪の華奢な女性が立ち去っていった。
小説を読んだ感想
血を血で洗う仁義なき戦いはヤクザだけのものではありません。
一度嘘をついた人間は、その嘘を隠し通すために嘘をつき続けなければならないように、一度隠蔽体質に腐敗した組織は、腐敗し続けます。
大いに間違っているけど、わかりやすいヤクザの世界の仁義。全く共感できない警察組織の保身。
どちらが悪でどちらが正義か、考えれば考えるほどわからなくなります。いや、間違いなくどちらも悪なのか、きっと。
大上の遺志を継いで、堅気の市民を守るため「ヤクザを飼い殺す」という方法を踏襲していた日岡でしたが、若さゆえの経験不足か…頭が切れるがゆえの慢心か…、ついにヤクザも警察も敵に回し絶対絶命のピンチを迎えます。
こんなところで大上の遺志を無駄にするわけにはいけないと思ったのか、チンタを犠牲にしてしまった贖罪の気持ちからなのか、最後の日岡はヤクザよりも恐ろしい悪魔と化していました。
文字を追っているだけでも恐怖を感じるこの物語を、映像で見るのは少なからず覚悟がいるでしょう。
人間の業というものは、どんなホラーよりも怖いことを思い知らされました。
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