小説『暴虎の牙』

世間を大いに騒がせた衝撃作『孤狼の血』シリーズの第3弾!

大上の過去と日岡の未来を繋ぐのは、ヤクザでの警察官でもない「沖虎彦」というアウトローな男。

正義も仁義も存在しない世界で、自分なりのやり方を作り出していく大上の姿は、『孤狼の血』で足りなかったピースが一つ一つはまっていくような感じがします。

『孤狼の血』に足を踏み入れてしまった方にはぜひ見届けていただきたい、まさに完結編です。

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小説のあらすじは?

昭和57年6月。沖虎彦は幼なじみの三島考康重田元とともに綿船組が仕切る賭場の建物の陰に身を潜めていました。

特に大きな金が動く今夜、沖ら3人はヤクザから賭場の金をかっさらう計画を立てていました。

深夜1時、見張りの若い衆をバットと出刃包丁と鉄パイプでなぎ倒し、ヤクザが落とした拳銃も取り上げて奥の賭場で暴れまわりました。

沖と三島と元の3人は20才と19才。むろん極道ではありません。しかし極道を相手にしても全くひるまないその態度は、極道をも黙らせる威力がありました。

結局3人は、1000万円近く入っていた金庫を奪って逃走することに成功しました。

広島北署の大上が沖ら3人に会ったのはその1年後のことです。ヤクザ相手に全く物怖じすることなく金を回収する若者に大上が興味を持たない訳がありません。

仲間から「沖」と呼ばれていたリーダー格の男の顔は、7年前に失踪した五十子会の組員・沖勝三の若い頃によく似ていました。

大上が調べてみると、沖勝三の息子・虎彦は「呉虎会(くれとらかい)」という半グレ集団の頭をしていて、ヤクザでさえも手が出せないほど怖いもの知らずとのこと。沖ともめて行方知れずになっているヤクザも何人かいるとのことでした。

呉虎会は五十子会の組員を拉致してシャブの取引情報を引っ張りだし、取引場所で機関銃をぶっ放してシャブを横取りするという、ついには極道の面目丸つぶれのとんでもないことまでしでかす始末です。

元がパチンコ屋で瀬戸内連合会という笹貫組がバックにつく広島最大の暴走族の奴らにボコボコにされると、当然のように仕返しをしに行きパチンコ屋のみかじめ料も横取りしました。

沖の女・真紀が働くバー「クインビー」で3人が飲んでいると、そこに登場したのは大上。

大上は沖たちに、賭場を荒らされた綿船組もシャブを奪い取られた五十子会も呉虎会を地獄の果てまで追い詰めるつもりでいるので、今はおとなしく身を隠しておけと忠告し、沖のパナマ帽をもらって帰っていきました。

大上からおとなしくしておけと言われたにも関わらず、沖は瀬戸内連合会への総攻撃を仕掛ける計画を立てました。呉虎会に集合をかけ、瀬戸内連合会の奴らが出発地点としている工場跡地に攻め入る計画です。

瀬戸内連合会のバイクが集結してくるのを待っていると、沖の乗る車の窓を叩く音がしました。見るとそこにはパナマ帽をかぶった男が…。大上でした。

大上は頭と頭の1対1のタイマンを提案してきました。死人や怪我人が出ると目をつぶっておくことができなくなるからという理由です。

タイマンは沖の勝利に終わり、瀬戸内連合会は呉虎会に吸収されることになりましたが、そこ頃から笹貫組による「虎狩」が始まり、呉虎会のメンバーは次々と半殺しの目に遭っていきました。

ついに呉虎会のメンバーから死者まで出て、沖は笹貫組の組長を殺す計画を立てました。しかし、襲撃決行の前夜、呉虎会のアジトに大上を先頭とした警察が踏み込んで、そこにいたメンバーは全員逮捕され懲役刑を受けることになりました。

内部に密告者がいることを確信した沖は、18年の刑期の間ずっと裏切り者を始末することだけを考えていました。平成16年、刑期を終えて沖は出所しましたが、もうその世界には大上はいませんでした。

沖が大上の墓に行き、呉虎会を潰した奴をあぶりだす決意を新たにしているところへ現れたのは日岡でした。日岡はその男が沖だとすぐにわかりました。

沖が出所して呉虎会は再び活気を取り戻しました。沖が刑務所で知り合った明石組の峰岸が訪ねてくると、沖は大阪に潜伏している重田元を探してほしいと頼みました。

峰岸からの情報で大阪に出向いた沖は元が住むとというアパートを訪ねました。そこにいたのは元と、かつての沖の女・真紀でした。

自分を裏切り密告した上に女まで獲られて、逆上した沖は元を拉致して呉原へ連れて帰りました。そして散々なぶり倒した末に殺しました。

暴行された真紀が警察に通報し、防犯カメラとNシステムから重田元が沖によって呉原に連れてこられたのは明らかとなり、日岡は沖の監視を強化することになりました。しかしここ数日、アジトへの人の出入りは確認されていません。

日岡は令状をもってアジトに踏み込みましたが、人っ子一人いません。床には明らかに血とおぼしきどす黒いシミが広がっていました。

沖たちの行方が分からなくなって10日。なんの情報もつかめないまま時間だけが過ぎていくかと思われたその時、沖が動き始めました。

かつて五十子会から強奪したシャブが残りわずかとなり、新しい資金源が必要な呉虎会は、ヤクザの賭場とシャブの隠し場所を襲って、現金とシャブを強奪しました。

呉虎会はアジトを多島港の外れにある船小屋に移動していました。奪い取った現金700万円と末端価格4億円のシャブを目の前に、沖はこの金を元手に広島のヤクザを壊滅させて呉虎会が押さえると息巻いています。

三島は沖を表に誘い言いました。「お前はもう終わっている」

警察にもヤクザにもにらまれて広島を押さえるなど夢物語も甚だしい、勝手に裏切り者だと決めつけて幼なじみの元を手にかけるなど外道以外の何者でもないと。

そして三島は、20年前笹貫に襲撃をかける計画をチクったのは自分だと言いました。沖を助けるのにはこの方法しかないと…。

そして、夜明けの海に銃声が響きました。

日岡たちが潜伏先の目星をつけて急行している中、1台のランドクルーザーが山道を登っていきました。

頂上付近でトランクに積んだ死体を崖下に落とすと、スコップをもって山の斜面を降りていく男。そして、大きな松の木の下に穴を掘ると、死体を埋めました。

「どうな?自分が殺した親父と親友、ふたりと同じ穴に入る気分は」男は独り言ちて、タバコを吸ったのでした。

小説を読んだ感想は?

この物語は本当の意味での「完結編」です。

独自のやり方で極道と渡り合う大上と、その血を受け継ぐことにした日岡。

2人が出会う前の物語と、『凶犬の眼』の後の物語とを描くことによって、ぼんやりとしかわからなかったものがくっきりと形を持ったものとして見えてきます。

大上の命が五十子会に狙われついには妻子が犠牲になるという事件から大上が堅気に迷惑をかける極道を絶対に許さない執念がうかがえたり、トレードマークのパナマ帽を手に入れるくだりがあったり、大上と尾谷組長との出会いが描かれていたりと『孤狼の血』『凶犬の眼』をより理解し味わえるエピソードが満載です。

そこへ現れる悪魔のような男。これまでの物語が「暴力団」とか「警察」という組織が舞台だったために、登場人物は当然、仁義だとか組織に属するがゆえのしがらみに囚われていますが、沖という男はそれが全くないためにやりたい放題です。

それでもターゲットにしているのはヤクザだけで決して堅気には迷惑をかけないところから、大上はなんとか沖を助けたいと尽力します。

その思いは幼なじみの三島も大上から血を受け継いだ日岡も同じだったはず。それなのに沖はついに禁断の罪に手を染めてしまいます。

歪んでいようと真っすぐであろうと、”仁義”を何よりも大事にするヤクザを描いた『凶犬の眼』から一変、”仁義”など欠片も存在しないアウトローな男を描いた『暴虎の牙』。

足りなかったピースがはまっていくように完結していく展開に言い知れぬ虚しさを覚えると同時に、やっぱり大上や日岡のような警察官が必要なのかな…と、矛盾する正義に頼りたくなる気持ちになります。

『孤狼の血』『凶犬の眼』と足を突っ込んでしまった方は、ぜひ見届けてくださいね。

映画化はある?

『孤狼の血』で日岡が覚醒し『凶犬の眼』でその血が流れ始める、という日岡の成長がメインだった前2作とは明らかに違う展開で、大上と日岡のエピソードに足りなかったピースをはめていく感じです。

このままだと日岡の出番はほとんどなく、主役は「沖虎彦」になってしまうので、映画にするとしたら大幅に脚本変更にしないと成り立たないんじゃないかな。

個人的には『凶犬の眼』で日岡が国光と杯を交わすことで完結するのがかっこいいと思いますが…。

でも映画化されたら絶対見に行きますよ。たしかにグロいけど、個人的には『孤狼の血』シリーズほど魂を揺さぶられるような映画ってなかなか出会えないと思っています。

購読する方法は?



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