柚月裕子のヤクザ小説『孤狼の血』衝撃の結末とあらすじ(ネタバレ)

ヤクザもの小説は数々ありますが、「やくざvs警察」という血なまぐさい構図の中で描かれるのはむしろ警察の話。

しかも物語を仕切っている警察官がヤクザよりヤクザみたいという…、面白くない訳がない!

2018年の映画賞レースを席巻した、暴力と理不尽とにまみれた衝撃の映画『孤狼の血』は、ヤクザよりよっぽどヤクザみたいな刑事に役所広司さん、優等生のぼっちゃん刑事に松坂桃李という異色コンビでありながら、これ以上のキャスティングはないと思わせてくれる名作です。

ただ荒々しいだけではなく、物語の根底には人間の性や情、美しい感情もドロドロした感情もすべて包括されていて、熱い血の流れる物語です。

【主なキャスト(敬称略)】
松坂桃李:日岡秀一
役所広司:大上省吾
真木よう子:高木里佳子(クラブのママ)
江口洋介:一之瀬守孝(尾谷組若頭)
石橋蓮司:五十子正平(五十子会会長)
中村獅童:高坂隆文(安芸新聞社記者)

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小説『孤狼の血』のあらすじ

昭和63年、一旦は沈静化しているように見えた暴力団同士の抗争に再び火種が見え始め、荒々しい血がうごめく広島県呉原市。

呉原東署の捜査二課に配属されたのは広島大学卒の超真面目ぼっちゃん刑事・日岡秀一

下で働くことになった班長の大上章吾は県下でも有名な凄腕のマル暴刑事で、物騒なうわさは数知れず、パナマ帽がトレードマークで見た目も極道顔負けの身なりをしていた。

最初に連れて行かれたパチンコ店では、大上は日岡に明らかに堅気ではない男に因縁をつけてくることを命じた。

「一戦交えそうになったら出ていっちゃる」と言う大上の言葉を信じて、日岡は男に喧嘩を売ったが、ボコボコにされついに男が刃物を出したところでやっと大上が登場。

その男は加古村組の若い衆・苗代という男で、加古村組系列の呉原金融で働いていた上早稲が行方不明になっている件について何か重要なことを知っているらしい。

次に日岡が大上に連れられて訪れた尾谷組事務所では、若頭の一ノ瀬と大上は極めて親し気で、尾谷組と敵対する仁正会滝井組の滝井銀次とも大上は昵懇の関係のようだ。

封筒のようなものが大上に手渡され、大上はヤクザから現金まで受け取っている癒着関係にある。

銀次から得た情報によると、広島市内の連れ込み宿に潜伏していた男が4人組の男に連れ去られたとのこと。その連れ去られた男が上早稲じゃないかということだ。

大上と日岡は広島の連れ込み宿に行き、防犯カメラの映像を確認すると、上早稲が4人の男に拉致されるところが映っており、その4人組の1人は先日日岡が喧嘩をふっかけた苗代だった。

尾谷組準構成員・柳田孝の殺害、加古村組への発砲、尾谷組幹部宅への発砲…と、報復合戦ともとれるきな臭い事件が続く中、大上は一ノ瀬に「わしに任せろ」と説得した。

大上はいきつけの小料理や「志乃」の晶子をつかって加古村組の吉田を呼び出し、極道顔負けに脅しあげ上早稲を殺害したいきさつを聞き出した。

大上と日岡が志乃で飲んでいると「安芸新聞社」の高坂という男がやってきた。広島県警の裏金を嗅ぎまわっている記者で、14年前に五十子会の若頭・金村が殺された事件は大上が犯人だというタレコミがあったと言う。

情報を元に瀬戸内海に浮かぶ無人島を捜索したところ上早稲の遺体が見つかり、加古村組を壊滅させることができると喜んだのもつかの間、大上が自宅謹慎を命じられた。

吉田に渡した500万円の件を安芸新聞社の高坂が署長の耳に入れたということだった。

五十子会の幹部・吉原が尾谷組の永川に銃撃され、事態はもう引き返せない状況に。警察としては五十子会と尾谷組の両方に顔が利く大上の力を頼らざるを得ない状況になっていた。

日岡が謹慎している大上に会いに行くと、大上は「五十子に会ってくる」と言い、大事にしている狼の絵柄が彫られたジッポーを日岡に渡した。

大上が五十子に会いに行くと、五十子は尾谷組から一ノ瀬を破門することを要求してきた。大上は五十子の秘密を切り札に一ノ瀬破門の要求を取り下げるよう五十子と交渉した。

そのことを日岡に話した夜から、大上の消息はぷっつりと途絶えた。5日経っても全く姿を見せない。日岡は胸騒ぎが止まらなかった。

それからしばらくして港で男性の水死体が上がったとの連絡が日岡の元にもたらされた。大急ぎで現場に急行した日岡は、遺体を見て愕然とした。それは間違いなく大上だった。大上は五十子によって消されていた。

晶子は、大上から「万が一のことがあったら日岡に渡してくれ」と頼まれていたものを日岡に渡した。

現金2000万円とノートが1冊。

現金は捜査費用に充てるため、ヤクザから上前を撥ねて貯めていたものでノートには警察幹部の不祥事やもみ消しなど汚行の限りが記されていた。

一見ヤクザと癒着しまくりやりたい放題やっているように見える大上が、上からのお咎めなく自己流の方法で捜査を続けられたのは、このノートのおかげだったのだ。

そして晶子は衝撃の真実を告げた。高坂が「大上が犯人だ」と言っていた金村殺しは実は晶子が殺ったのだと…。

晶子の夫・賽本は尾谷組の若頭だった。五十子会の金村が賽本を殺し、その妻である晶子に言い寄って体を求めてきたので、金村をめった刺しにしたのだった。大上は何事もなかったかのように事件を処理し、大上と晶子は「同志」になった。

日岡は筆ペンで、呉原東署に赴任してから書き綴っていた日誌を黒く塗りつぶし始めた。

実は日岡は大上の動向を観察するために県警本部の監察官・嵯峨が送り込んだスパイだった。県警上層部は大上が持つ秘密のノートを手に入れ、大上を何らかの形で処分するつもりでいたのだ。

市井の人々の生活を守るなどという正義は嘘っぱち。結局は上層部の保身のためだけに利用されただけだと悟った日岡は、黒く塗りつぶした報告書を嵯峨に叩きつけ、大上の血を受け継ぐ覚悟を固め大上からもらったジッポーを握りしめた。

映画『孤狼の血』のあらすじ

昭和も終わりを迎えようとしている63年、広島県呉原市。

マル暴刑事・大上省吾のいる呉原東署に、日岡秀一という超が付くくらい真面目な優等生刑事が赴任してきた。

日岡は大上に付いて行動を共にしていると、パチンコ屋ではヤクザに喧嘩をふっかけてこいと言われ、ヤクザの事務所では大上と組員の昵懇な関係とお金まで受け取っているところを目の当たりに。

加古村組系列の呉原金融で働いていた上早稲が加古村組の組員に拉致されたという情報を仕入れれば、情報提供を拒む連れ込み宿に放火してボヤ騒ぎを起こして、その隙に監視カメラの映像を盗み出す大上。

警察官としてあるまじき行為のオンパレードに釈然としない日岡。

加古村組が尾谷組のシマでやりたい放題しはじめ、尾谷組の若い衆・タカシが殺されると、双方の報復合戦が始まった。

大上の違法行為はとどまるところを知らず、加古村組の吉田とチンピラの善田を拷問して、上早稲が殺されて無人島に埋められたことをつかんだ。

上早稲の遺体を発見してやっと加古村組を追い込めると思った矢先、安芸新聞社の高坂隆文が、呉原東署の署長に大上の違法行為や14年前の五十子会幹部・金村殺害事件に大上が関わっているであろうことを密告し、大上は捜査から外され謹慎処分を受けてしまった。

一方、日岡は大上の言動全てを日誌に書きとめ、尾谷組とのやり取りを録音し、監察官・嵯峨に報告していた。

日岡は、大上とヤクザとの癒着の証拠を集め、14年前の金村殺害の証拠となる「大上の日記」を探し出すことを監察官の嵯峨から命じられたスパイだった。

大上は謹慎中にも関わらず五十子や一ノ瀬に会いに行き、なんとか戦争が起きないように奔走していた。

法が極道を抑えてくれる訳がない、堅気のふりして極道が地下に潜らないように、ヤクザを飼い殺しにするのが自分の役目だと言う大上のやり方に、日岡は納得できないながらも次第に大上の身を案じるようになっていった。

銀次からは大上にとってヤクザは堅気を守るためのただの駒でしかないと聞かされ、リコのママ・里佳子からは「大上の日記」を見せられて金村を殺害したのは自分だと告白された。

大上の記したノートには広島県警上層部の不祥事やもみ消しなど、汚行の限りが書き記されており、上層部は保身のために日岡をスパイとして送り込んでいたのだった。大上にも日岡が県警のスパイだということは最初からばれていたようだ。

大上の姿が見えなくなって数日後、港で大上の遺体が発見された。血中からは大量の睡眠薬とアルコールが検出され、10か所以上も刺されているにも関わらず、県警は大上の死亡を事故として発表した。

大上の胃の中には豚の糞が入っていたことを知ると、日岡はかつて加古村組のチンピラが上早稲をリンチした養豚場に行き、そこで大上が大切にしていた狼の彫り物のあるジッポーを見つけた。

日岡は大上の血を受け継ぐことを決意した。

日岡は、五十子会主催のパーティーで五十子正平がトイレに行った隙に尾谷組を誘導し、一ノ瀬守孝に五十子の首を獲らせた。若い衆が服役するという約束を反故にし、日岡は一ノ瀬を現行犯で逮捕した。

映画の見どころと原作との違い

ヤクザものなので刺した刺されたというバイオレンスはもちろん、生首や死体などかなりグロいシーンが満載なので、そういう映像が苦手な人は見てはいけない映画です。

あの穏やかな中村倫也さんが、相手の耳を食いちぎるなかなかぶっ飛んだヤクザを演じているのも見ものです!

最初はヤクザよりヤクザみたいな刑事・大上のやり方に日岡と同じように釈然としないものを感じ、もしかしたら嫌悪さえもするかもしれません。

ところが、物語が進んでいろんなピースがぴったりとはまっていくにつれて全く別の感情へと変わっていくことになります。

日岡の感情に自分もシンクロしていくとき、鳥肌が立つくらいの感情を抱くに違いありません。

原作本を読んだ時にも衝撃でしたが、映像で見ると説得力は半端ない。

しかも原作の結末とは違って、五十子正平が一ノ瀬に首を獲られるって、いくら大上の仇とは言え日岡の覚醒と覚悟には度肝を抜かれます。

この歪んだ世界の中では何が本当の正義なのか。日岡の戦いはこれからなんです。

映画と小説の続編

原作小説の続編

小説『孤狼の血』シリーズは『孤狼の血』『凶犬の眼』『暴虎の牙』という3部作になっています。

『凶犬の眼』は日岡が大上から狼の血を受け継いだ仁義の物語。映画の第3弾の原作となるはずです。

『暴虎の牙』は大上の過去と日岡の現在が一人の男によって繋がる物語。

映画の続編

映画『孤狼の血』の続編は『孤狼の血 LEVEL2』です。原作の『凶犬の眼』につなげるために作られたオリジナルストーリーです。大上から受け継いだ暴力と理不尽さがパワーアップしています。

日本アカデミー賞で最優秀助演男優賞を獲得した鈴木亮平さんの破壊力抜群の演技は必見です。

映画『孤狼の血』視聴方法は?

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