
幼なじみのマコトとキダが仕掛ける、人生最大のドッキリとは?
意味深なタイトル『名も無き世界のエンドロール』をこのまま解釈すると「ある世界」が「終わりを迎えた」というような意味になります。
「ある世界」というのはマコトとキダとヨッチの、世間からはみ出した小さな小さな世界のこと。親のいない3人は小学生のころから、寄り添い支え合って生きてきました。
そんな世界がずっと続いていくと思っていたのに…。
2012年「小説すばる新人賞」を受賞した行成薫さんの傑作小説です。
気になるストーリーは、原作小説を読むっきゃない!この映画は、原作を読んでから鑑賞した方が面白いと思います。
小説のあらすじ(含ネタバレ)
物語自体が時系列順に進んでいなくて、おまけに過去の記憶の切れ端みたいなエピソードが「断片」という名前で合間に挟まってくるので、自分の頭の中で時系列順に並べていく必要があります。
どれも大切なエピソードで、後に続く物語の伏線となっているため、わかりにくくはないですよ。原作のまま紹介するのは無理なので、時系列順に解説させていただきますね。
マコトとキダのクラスに金髪の女の子・ヨッチが転校してきたのは、小学5年生の2学期のことでした。
マコトとキダは訳ありのニオイを敏感に嗅ぎつけ、陰湿な担任にドッキリをしかけてヨッチを救い出します。それから3人は親友よりもっと深い友達として過ごしていきます。
高校卒業までは常に3人一緒に過ごしていましたが、大人になるにつれ、3人の関係も少しずつ変化していきます。
男2人に女1人。何も起こらない訳はないですよね。
ヨッチは、2人のうちのどちらかと結婚しようと決めていました。
ヨッチは前の学校でいじめられていました。転校しても、クラスのみんなからの指すような眼が耐えられなくて、心が折れる寸前でした。そこへ、マコトとキダがドッキリをしかけて、ドアを開けてくれた…。マコトとキダがいなければ、ヨッチは生きてはいなかったと語ります。
そして、キダが告白した2日前に実はマコトが告白していて…。マコトとヨッチは一緒に暮らすことになります。
「1日あれば、世界は変わる。2日あったら、宇宙がなくなってもおかしくない。」というヨッチの言葉通り、ある日突然、世界は変わってしまいます。
高校を卒業しても、同じ自動車修理工場で働いていたマコトとキダ。その工場に1台の高級車がやってきます。運転していたのは政治家の娘でモデルのリサ。車の前部分は大きく損傷していて、犬をはねたのだと言います。
それからまもなく、マコトは仕事を辞めて、キダの前から姿を消しました。
キダはマコトを探すために、会社の社長・宮澤の紹介で、輸入代行業者・川畑洋行を訪ねます。川畑洋行は実は裏の世界に暗躍する組織で、一般では手に入らないものや殺しをも請け負う会社でした。
キダは川畑の元で「交渉屋」として働くことになりました。
やっと見つけたマコトから、キダはある計画を打ち明けられます。その名も「プロポーズ大作戦」。
マコトのために、一流大学を出て引きこもりの「小野瀬マコト」から個人IDを買い取ったり、モデルのリサとつき合っていた男を別れさせたりと、キダは裏の世界で暗躍します。
死に物狂いで働いて4500万円という大金をためたマコトは、ワイン輸入代行会社を買い取り社長「小野瀬マコト」となり、リサを恋人にするに至りました。
2人は「プロポーズ大作戦」という人生最大のドッキリを仕掛けるべく動き出します。
「名も無き世界」とは、マコトとキダとヨッチが3人で紡いだ世界のことです。そしてその世界が終わりを迎えるところ、つまりエンドロールを、キダが見届けるのです…。
元は『マチルダ』というタイトル
『名も無き世界のエンドロール』は、小説すばる新人賞を受賞した行成薫さんのデビュー作ですが、もともとは『マチルダ』という題名でした。
この『マチルダ』の意味は読んだ人にしかわからないという…言ってみれば、読んだ後に「なるほど」と思ってもらいたい作者にとっては渾身の題名でした。
それが、受賞後→出版となって「手に取ってもらいやすい題名に」ということで『名も無き世界のエンドロール』となったわけです。
とはいえ、大賛成の納得で改題したわけではなく、行成さんは題名に寄せてエンドロールに対するエピソードを加筆したそうです。
この改題のエピソードを聞くと、そもそも「マチルダ」って?っていう疑問がわいてくるでしょう?
「マチルダ」とは『レオン』という1996年の映画に出てくる女の子の名前です。
父親はろくでなしのマフィアで、よりにもよって組織の麻薬を横領してしまい、組織から消されることになります。
ある日、マチルダが買い物から帰ってくると、家族全員が襲撃にあって殺されていました。
絶体絶命のマチルダは、隣に住む一匹狼の殺し屋・レオンの家の娘のふりをして、隣の家の呼び鈴を押します。レオンは、何も言わずマチルダを家に招き入れ、マチルダは命拾いをしたのでした。
ヨッチは「自分はマチルダで、扉を開けて助けてくれたマコトとキダはレオンだった」と語ります。
『マチルダ』だけでなく、物語には映画から引用した表現が数々出てきます。知ってるとさらに面白いかも!
小説を読んだ感想
とても悲しい悲しい物語だと思いました。”愛”とか”命”とか”絆”のあり方を深く考えさせられて、切なくて苦しい気持ちでいっぱいになります。
マコトの選択に共感できないけれど、じゃあどうすればよかったのか…。
「マチルダ」という題に作者の思いが表れている通り、ヨッチにとってマコトやキダとの関係は深くかけがえのないものでした。それはマコトやキダにとっても同じこと…。
2本の脚では不安定なこともあるけれど、3本の脚だとより安定して立っていられる、家族という心のよりどころと居場所がない3人にとって、お互いは生きていく上でなくてはならないものだったのです。
このままずっと3人で生きていければよかったのに…。
マコトはヨッチを失ってから、1歩も前に歩き出せなかった…。優しいキダはそんなマコトを受け入れるしかなかったのでしょうか。
あー、辛い。読んだ後、辛すぎる物語でした。こんな物語を書き上げた行成薫さんて、なんてすごい作家さんなんでしょう。
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『レオン』も予習しちゃおう!
ヨッチは「自分はマチルダで、マコトとキダはレオンだった」と言います。
ヨッチがどれくらい追い詰められていて、マコトとキダがどれほど大きな救いの手を差し伸べたのか。レオンを見たらわかりますよ。
この映画だけでも十分に鑑賞の価値ある作品です。ジャン・レノの渋さとナタリー・ポートマンの可愛さにも心を奪われます。
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