映画『CUBE』の前日譚小説『CUBEコンティニュード、あらすじは?

誰が何のために作ったのか、なぜ自分が閉じ込められたのか、何もわからないという恐怖。

『CUBE』の日本リメイク版『CUBE一度入ったら、最後』には映画につながるもう一つの物語がありました。映画の前日を描いた物語です。

立方体の部屋に閉じ込められた6人は、時に他人を責め自分を責め、助け合い協力しながら出口を探して進んでいきます。

出口まであと少し…というところまできて、むき出しになる本性。冷静沈着に見つめる甲斐麻子という女性。

全ての謎は映画で明らかにされるのでしょうか。

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小説のあらすじは?

降谷亮太(29)が目覚めたのは、四方も床も天井も同じ模様で、何もない立方体の部屋。一体誰が何のために、自分をこんな場所に?夢なのか現実なのかもわからない。

そして自分の顔をのぞき込む見知らぬ男。男に尋ねてみても何が起こっているのか全くわからないまま。携帯電話も財布もなく、2人は同じ青い作業着のようなものを着ていて、安全靴のようなものを履いていた。

いきなり一面の壁の中央にあるハッチが音を立てて開いたかと思うと、靴が勢いよく飛んできた。続いて女性の声がして、髪の短い若い女性が2人のいる部屋に飛び込んできた。

女性は広瀬瑞季(23)と言った。亮太と同じ部屋にいた男は田中柾実(53)と名乗った。

瑞季によると壁のハッチを開けて移動してきたらしいが、どうやら殺人トラップの仕掛けられた部屋があるようで、それに気づいてからは先に靴を投げ入れて何も起こらないことを確認してから進むようにしてきたらしい。

瑞季が天井のハッチに手をかけて開けてみると、赤黒いサイコロ状の塊と青い布片…。よく見るとそれはサイコロ状にカットされた人間だった…。

とにかく3人で移動しようと、瑞季がやってきたように先に靴を放り込んでトラップを確認しつつ進んでいった。トラップがあるかどうかもっと簡単にわからないかと考えてみるも、部屋の照明の色も関係ないようだ。

すると亮太が、部屋を移動する通路の部屋と部屋との継ぎ目あたりに3ケタの数字が3つ並んだプレートがはめ込まれていることに気付いた。

継ぎ目の向こう側にもある反対向きの数字を読もうと、体勢を変えようとしてバランスを崩した亮太は、向こう側の部屋に転がり落ちてしまった。

壁の一部に穴が開いたかと思うとそこから矢が亮太めがけて飛んできた。亮太は恐怖で足がすくんで動くことができなくなってしまったが、瑞季が決死の覚悟で飛び込んできてくれて、なんとか元の部屋へと押し出してくれた。

瑞季も無事に部屋に戻ってきてほっとしたところへ、天井のハッチが開き、今度は髪の長い美しい女性が顔を出した。「あなた達は、何者ですか?」女性は言った。

青い服を繋いだロープで上の部屋に上がった3人。そこには先ほど顔を出した女性、いかつい顔の怖そうな男、おとなしそうな少年の3人がいた。

女性は甲斐麻子、いかつい男は大村(31)、少年は進藤要(17)と名乗った。

通路にある数字に何か隠されているのでは?と、6人はとにかく先に進みながら数字の規則性を考えることにした。

先に進めない苛立ちから大村が隣の部屋に勝手に入っていった。靴を放り込んだ時には何も起こらなかったのに、大村が部屋に入るなり壁の一部がカチッと光り回転刃が飛んできて反対の壁へと吸い込まれていった。

大村は転がるようにして刃をよけながら、なんとか元の部屋に転がり戻ってきた。服の背中部分が大きく裂け、血がにじんだ背中には刺青が見えた。大村はヤクザだった。

数学が得意だという要が数字の謎を解こうとあれこれやってみると、どうやらトラップのある部屋の入口の数字には”素数”が含まれていることが分かった。

素数さえ避けて進めば順調に進むかと思われたが、全ての隣接する部屋にトラップがある部屋に来てしまった。戻ろうにも元来たハッチは開かない。

「このまま留まっていても死ぬだけだ」大村が隣の部屋をのぞきながら怒鳴ると、レーザー光線が照射され通路あたりから焦げたにおいがしてきた。どうやらこの部屋は音に反応するらしい。

音を立てずに部屋を横切ることになり、田中が先に入って先の素数の有無を確認してから全員が後に続くことになった。

最後に部屋に入った亮太が瑞季に続いて梯子に手をかけようとしたとき、足が滑って転んでしまい、つい痛さで「うっ」と声をあげてしまった。

レーザー光線が照射されようとしたその時、大村は大きな声を出して自分の方へレーザー光線をひきつけてくれた。そのすきになんとか立ち上がって亮太は隣の部屋に移動し、大村も間一髪で転がり込んできた。

ひとつのハッチを開けた時、そこに広がるのは暗闇だった。数メートル先には壁が見えるので、外ではないらしい。上下左右に同じような立方体の部屋が積み重なっていて、巨大な建物のようになっていることだけは見て取れる。

その時はるか遠くの斜め下からゴゴゴという音と振動がしたかと思うと、部屋が1個分外壁の方へと飛び出てくるのが見えた。飛び出てきた部屋は外壁と建物の間を移動していき、空いた隙間へと収まっていった。

部屋を目で追っている時、外壁の一部に小さく正方形に切り取られた穴からもれる光が見えた。あれは出口なのか?

出口らしきものがあることがわかり、6人はとにかくその出口を探して移動することにした。

ふたたび隣接する全ての部屋にトラップがあるという状態になり、なんとかくぐり抜けられそうなトラップの部屋を進むことになった。

人が入ると水が溢れて出てくる部屋を足早に通過すれば助かるかもしれないと、6人は正面の素数がないハッチに向かって移動し始めた。部屋に入る人数が増えると水の勢いが増すようで、あっという間に腰あたりまで水は増えていた。

要が急に水面に見えなくなった。何かがひっかかって先に進めないらしい。大村が潜って助けに行ったその時、青白かった照明が赤色へと変わり、重い機械音が響いた。

大村に助けられた要がハッチにたどり着いたが、水面のあちこちが渦巻いていた。大村の絶叫がやがて聞こえなくなり、そこには切り刻まれた肉片が浮いていた。

大村が死んだ…。誰のせいでもないはずだけれど受け入れられなくて、亮太は助けられなかったことを自分も含め責めることしかできなかった。

ギスギスする中、田中が「ここから脱出できるかもしれない」と言った。

通路にある3ケタの3つの数字。先ほど外壁側の空洞に面した部屋は(962、020、335)。3ケタの数字をそれぞれ足すと(9+6+2=17、0+2+0=2、3+3+5=11)つまり(17,2,11)が(x,y,z)を示すデカルト座標ではないかと言う。

1と27は外壁に接する空洞部分で立方体の部屋は2~26の25個分。つまり縦25×横25×高25の部屋が積み重なった建物になっている。そして部屋の壁面にあるフラクタル構造と同じ構造が建物にもあると考えると辻褄が合った。

y座標が「1」になる部屋を探せば外に出られると田中が言うと、甲斐が3,4つ前の部屋の真ん中の数字が「100」だったと言った。

1つ前の部屋に戻ると切り刻まれた大村の遺体と対面することになるので、5人は遠回りしながらy座標が「1」の部屋を目指すことになった。

またしても隣接する部屋全てにトラップがある状況に陥り、どのトラップなら進めそうか検証した結果、音を立てると棘付きハンマーが振り下ろされる部屋を抜けることになった。

瑞季、田中、甲斐が左側面のトラップのない部屋へ移動し、要が梯子を昇ろうとしたとき、要の持っていた靴が落ちゴトンッと床に落ちた。

天井が光り棘付きハンマーが振り下ろされたが、間一髪で瑞季が要を引っ張り上げて事なきを得た。しかしその場で要は「うわあっ」と大きな声を出してしまい、部屋に取り残された亮太を棘付きハンマーが襲いかかることとなった。

誰かに引っ張られて辛うじてハンマーをよけると、そこには部屋に戻ってきた瑞季がいた。

「大丈夫ですか」と叫ぶ要。先ほど通路から亮太を見下ろす要が笑っていたことを見逃さなかった亮太は、要がわざと声を出していることを悟った。

亮太を先に梯子に昇らせ、瑞季が昇ろうとしたとき、ハンマーが瑞季の太腿をかすめた。棘が瑞季の太腿をえぐったが、亮太は何とか通路に引っ張り上げ助け出した。

上着をきつく太腿に巻いて止血したものの、瑞季は出血性貧血で意識が朦朧としているようだった。

要が動く部屋を確認してから瑞季を迎えにくると言い、亮太と田中は瑞季とともに残ることにして、甲斐が要と先に進むことになった。

甲斐が亮太に近づいてきて、亮太の掌にルートを描いて動く部屋の場所を伝え「どうか気を付けて。選ぶのはあなたですよ」と言い残して要とともに出ていった。

田中は瑞季がけがをしたときに要が舌打ちしたのを聞いており、大村が死ぬきっかけを作ったのも、前室で音を立て声をあげたのもわざとだと考えていたのだった。

大学で山岳部に所属していた瑞季は、雪山登山の途中で悪天候に襲われたことがあった。ホワイトアウトする山の中で、瑞季の前を進んでいた幼なじみの拓真が滑落して命を失った。

瑞季が手を伸ばしていれば拓真を助けられたかもしれないのに。目の前で誰かが死んでいくのを見ているだけというのは瑞季にはできなかった。亮太を助けたのは拓真への贖罪だったのかもしれないと瑞季は思った。

瑞季が意識を取り戻し、3人は甲斐に教えられた方向へと進むことにした。あと一つでy座標「1」の部屋と思われたが、その部屋の入り口には”素数”があった。

瑞季の出血がひどいため、あとは時間との勝負。亮太は入って確かめることにした。亮太が入っても声を出しても何も起こらない。

右側のハッチを開けると、そこには「100」の数字があった。なんとしてもこの部屋を通り抜けて、「100」の部屋に行かなくては。3人は注意深く進むことにした。

田中が急に立ち止まった。どうやらボタンのようなものを踏んだらしい。足を外すとトラップが発動するにちがいない。

田中は「私への罰だ」と言い、亮太と瑞季に先に進むように促した。田中は何十年も前、仕事がなくて必死だった時期があり、あるモデルルームのデザイン募集に応募したことがあった。

その時に応募したのがフラクタル図形を配置したデザインで、その後採用通知が来たのだと言う。田中はなんのモデルルームなのか、もちろんトラップのことも何も知らなかったけれど、部屋を移動しているうちに、これはかつて自分がデザインした部屋ではないかと確信を持つようになっていった。

自分がデザインさえしなければ、こんな恐ろしい建物はできなかったのかもしれない。だから田中は残って罪を償うと主張した。

それを聞いて亮太は田中を押し、田中がよろめいた隙にボタンを踏んでいた足を自分の足にすり替えた。その時ゴゴゴと轟音が鳴り、隣の部屋が動き始めたのか通路が少しずれ始めた。

田中と瑞季は後ろ髪をひかれながら「100」の部屋へと入っていった。

亮太は子どものころから要領が悪く誰とも打ち解けず、いつも一人だった。どこにいても誰からも必要とされず、いつしか家にひきこもるようになっていた。

母親は心の病気だと言って亮太をあちこちの病院に連れて行き、父親は亮太の弱さをいつも叱責していた。「私がちゃんと育てられなかったから」と泣く母親に向かって「そうだ!あんたのせいだ」と亮太が怒鳴った翌日、母親は自殺した。

亮太には元の生活に戻っても償う相手がもういなかった。最後に誰かの役に立てるならそれでいい…、素直にそう思った。足をボタンから外すと壁から白いガスが噴き出てきて、亮太の意識は次第に遠のいていった。

隣の部屋に移った田中が正面のハッチを開けると、白い光が差し込んできた。田中は気を失っている瑞季を背負って、光の中へと踏み出していった。

一方、一足先に進んでいたはずの甲斐と要。いくら進んでも「100」の部屋にたどり着かないことに要は苛立っていた。

幼い頃から”優等生”だった要は、自分が訴えると周りの大人たちが邪魔なものを排除して守ってくれることを知っていた。そして親や先生が望む子を演じてきた。

甲斐に「とても”いい子”ですね」と言われ、要が怒りをあらわにすると黄色かった照明が赤色に変わった。「早くここから出せ」と甲斐につかみかかった要に向かって。白い布テープのようなものが飛んできたかと思うと、要の身体をぐるぐる巻きにし始めた。

テープに覆われ白い繭のようになった要が動かなくなったのを見届け、甲斐はこれまで進んできたのとは全く別の方向へと進み始めた。

自分は死んだのではなかったか…朦朧としながら目を覚ました亮太。この部屋のことも誰かと一緒にいたこともぼんやりと覚えているものの、頭の奥に靄がかかったみたいで思い出せない。

とりあえずそばのハッチを開いてみる。隣にもそのまた隣にも同じような部屋があった。正面のハッチの下に黄色い小さな光点を見つけ、亮太はのぞき込んだ。

その直後、亮太は胸に衝撃を感じた。床に何かがずるりと落ちるのが見えた。床に落ちたのは四角い立方体の塊。背後の壁から飛び出た鋭い四角柱が亮太の身体を貫いていた。

立方体の部屋に男が3人いた。1人が天井のハッチを開けると、身体に四角い穴の開いた男の死体が落ちてきた。

恐怖におののく3人の前に、ハッチの中から髪の長い女性が顔を出した。

あなた達は、何者ですか?

物語を読み解くキーワード

素数

1より大きい自然数で、1と自分自身でしか割り切れない数

例えば「8」は1と8以外に2と4でも割れるので素数ではない。2,3,5,7,11…などは素数である。

デカルト座標

x軸、y軸、z軸が直角に交わるいわゆる「直交座標」のことで、3次元空間での位置を表す。

下図のようにの位置は(3,2,2)と表される。

フラクタル構造

一部が全体と自己相似の構造を持っていて、同じ形が再現されていく構造のこと。

中でも”正方形を縦横3等分して9つに分け、真ん中をくりぬく”という作業をくり返した図形はシェルピンスキーのカーペットと呼ばれており、部屋の壁や天井、床に配されている。

小説の感想

読み始めてすぐに「甲斐麻子」という名前にピンときます。え?映画『CUBE 一度入ったら、最後』に出てくるやん。

冷静沈着で冷ややかにみんなを見つめる目。この物語で脱出劇を1度経験し、映画での脱出劇は第2ラウンド?もしかしてもっと??

謎が残るんだけど、これは映画を絶対見なくては!とさらに期待が高まります。甲斐麻子、あんたこそ一体何者なんですか?

1997年発表の原作映画でも、最後にはトラップの怖さ以上に人間の本性の怖さを思い知らされましたが、ここでも繰り広げられる人間ドラマもかなりえげつないです。

一番若くて守ってあげたくなるはずの少年が一番腹黒いし、なかなか噛み合わない人間関係にドキドキを通り越してモヤモヤします。

それぞれの人間が抱える過去や罪、トラウマなどすべてが複雑に絡み合う人間ドラマ。何らかの救いが映画で描かれてほしいなぁ。

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