小説『かそけきサンカヨウ』ってどういう意味?あらすじは?

『かそけきサンカヨウ』って、なんとも不思議な呪文のような響きの言葉ですね。

花にまつわる家族の物語を集めた窪美澄さんの短編集『水やりはいつも深夜だけど』に収録されている物語で、「サンカヨウ」とは花の名前です。

高校生の陽は、父の再婚により新しいお母さんと3歳の妹ができます。小学生の頃から家事を丸ごと引き受けてきた陽にとって”お母さん”と”妹”はまるで未知の存在です。

なんとなく居心地の悪い毎日に、かすかに記憶に残る実の母…。陽は母に会いに行く決意をします。

早く大人になり過ぎてしまった女子高生と、新しい家族が歩み始める家族の物語です。

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『サンカヨウ』ってどんな花?

”サンカヨウ”は”山荷葉”と書き、植物の名前です。

サンカヨウの花は、直径2センチくらいの白い花。それが雨に濡れると透明になるという、とても神秘的な様相をを見せるのです。

「かそけきサンカヨウ」って雨に濡れてうすく透明になっている花のことを差しているのでしょうね。

小説のあらすじは?

「一番古い記憶は?」と聞かれて陽(よう)が思い浮かべるのは、まだ歩けるか歩けないかの頃の記憶。

陽はアウトドア用のキャリーのようなものに入れられて、母の背中で揺られています。

ほら、これがサンカヨウ。朝露や雨を吸って透明になるのよ。きれいね。」という母の嬉しそうな声が聞こえてきます。

母は絵を描くことを生業にしていました。陽が物心つくかつかないかの幼い頃に家を出ていってしまいました。

お父さんの妹のエミおばさんが毎日家事をしてくれて、陽に家事を教えてくれたのもエミおばさんでした。

小学生になるころには陽は一通りの家事をこなすことができるようになっていたし、陽にとってそれが当たり前の生活になっていきました。

陽が高校に合格したばかりのある日、お父さんが「結婚しようと思う。その人には子どももいる。みんなで一緒に暮らそう。」と宣言して、陽の生活は一変しました。

美子さんと娘のひなたちゃんがお父さんと陽の二人暮らしだった家に引っ越してきました。3才のひなたちゃんはまるで小さなかいじゅうのようでした。

陽が美術部の活動を終えて陸くんと一緒に帰っているところに、美子さんとひなたちゃんと遭遇しました。美子さんは陸くんを「うちに来ませんか」と誘い、みんなで手巻き寿司を食べることになりました。

スポーツ万能で中学校ではバスケ部に入っていた陸くんは、15才で心臓に欠陥があることがわかり夏に手術が決まっていました。

手術の前に一緒にどこかへ出かけようと言われ、陽はいちばん行ってみたいと思っていたところへ陸くんと出かけました。

そこは陽を産んだ母親・佐千代の個展が開かれているギャラリーでした。陽は今でもときおり、母の絵や活躍をネットで検索していました。

ギャラリーの一番奥には「サンカヨウ」の絵がありました。陽の思い出の中にあるたった一つの母とのつながり…サンカヨウの花。

受付にいた髭のおじさんに「妻が喜ぶ」と言われ胸がザワザワする陽。そこへ母が帰ってきました。

しかし母は陽に一瞥もくれず奥へと入っていったきり出てきませんでした。気を遣ったかのようにおじさんがサンカヨウの花の絵のポストカードをくれました。

家に帰るとひなたちゃんが庭にプールを出して遊んでいました。陽は2階の自分の部屋にもどって絶句しました。そして、階段を下りて「ばか!」とひなたちゃんの体を押し倒しました。

大切にしていた画集が散乱していてページが折れたり破れたりしていました。その中には母の画集もありました。美子さんは怒ってひなたちゃんのお尻を何度もたたきました…。

お父さんはサンカヨウの花のポストカードを見て、陽が母の個展に行ったことに気付いたようでした。

お父さんは、陽のお母さんは陽のことをとても愛していたこと、それと同じくらい絵を愛していたこと、自分が家事や子育てに協力的ではなく母を追い詰めてしまったことなどを語りました。

そして「陽と、美子さんと、ひなたちゃんとぼくとで、暮らしていきたいんんだ。」と言いました。

ひなたちゃんが破ってしまった画集は、美子さんが必死でセロテープで貼って元のように戻してくれました。

美子さんはサンカヨウの花の絵を見て「この花、きれいねぇ」と言い、母が描いたことを教えると「陽さんのお母さんは、素敵な絵を描く方なんだねぇ。」と言いました。

陸くんと再び出かける日、美子さんとひなたちゃんが見送ってくれました。陽は陸くんにしか聞こえないような声で「いってきます、お母さん」と言いました。

小説を読んだ感想

男手一つで育てられたために、陽は人より早く大人になってしまいました。

聞きわけのいい陽は新しい家族となった美子さんともひなたちゃんともそれなりにうまくやっていこうとします。

それは「そういう風にしなきゃ」と思ってやっている訳ではなく、自然に身に付いてしまった大人の対応というか陽の人柄からくるものなんですよね。

でも母親に甘えることををせずに育ってきた陽は、中途半端に母の記憶があるだけにそれにすがってしまいます。どこで何をしているのかもわかってるので当然と言えば当然です。

もしかした本当のお母さんは陽に会いたがっているかもしれない…、美子さんはいい人だけどお母さんはもっと優しいかもしれない…そんなふうに考えたとしても不思議ではありません。

人って自分の都合のいいように想像しちゃうもんです。

結局、陽が思い描いていた再会とはならなかったので、家族に対してささくれ立った態度をとってしまうんだけど、これはこれでよかったんだと思います。

知らず知らず物分かりのいい子になってしまって感情を爆発させることなんて無かったから、これから先もいろいろあるんだろうけど、4人は少しずつ本当の家族になっていくのでしょうね。

陽にはお母さんの絵も、新しい家族もどちらも大事に生きていってほしいなぁと、きっとできるんじゃないかなぁと、読んだ後は温かい気持ちになりました。

家族の物語を扱った映画ってそれだけで見たくなります。この物語はきっと温かい映画になるんじゃないかな。

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