小説『名探偵のままでいて』心温まるあらすじとネタバレ

小学校の教師をしている楓。今ではたった一人の身内となってしまった祖父もかつては小学校の教師をしていた。その祖父がレビー小体型認知症と診断された。

体の不自由だけでなく幻視が見えるようだ。それでも祖父の知性は衰えていないと楓は思っている。ゴロワーズの煙草をくゆらせるとき、祖父はまるでその場面を見ているかのように謎を解いていくのだった。

祖父と物語を紡ぐ時間は楓にとっては至福の時間だった。

そんな楓にある時からストーカーが付きまとうようになっていった。姿を見せないストーカーはじりじりと、しかし確実に楓に近付いていった。

果たして名探偵の祖父は孫娘に迫るストーカーの謎を解くことができるのか?

2023年の「このミステリーがすごい」大賞受賞作品です。読後感が素晴らしい、まさに大賞にふさわしい物語です。

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『名探偵のままでいて』のあらすじ

小学校の教師をしている、27歳。たった一人の身内である71歳の祖父はレビー小体型認知症を患っていて、最近では手足の震えや空間認知機能障害だけでなく幻視が現れるようになった。

楓は幼い頃から祖父の膝の上で物語を作ったり、祖父が作った物語を聞くのが大好きだった。祖父の影響で楓もミステリーが大好きだった。祖父はかつて小学校の教師で「まどふき先生」と慕われていた。

祖父の娘で楓の母である香苗はずっと前に亡くなっているのだが、祖父には香苗が見えているらしく、今でも生きていると思っているようだ。

目黒区碑文谷で1人暮らしをしている祖父の家に楓はたびたび足を運んだ。普段は訪問介護ヘルパーさんが祖父の身の回りの世話をしてリハビリも行ってくれている。

それでも祖父の知性だけは衰えていないと楓は思っていた。今でも楓と「物語」を紡ぐとき、祖父の考察は冴えわたっていた。殊に、ゴロワーズというフランスのタバコをくゆらせながら話すときは、祖父はまるで紫煙の向こうに全てが見えているではないかと思うほどだった。

楓の学校の同僚・岩田は見るからに体育会系であるのにも関わらず料理とスイーツ作りを趣味としている。楓にたびたび焼いたケーキをくれたりして楓に好意があることはバレバレだ。

岩田が言うには、かつて一緒にいったことのある『はる乃』という割烹居酒屋で殺人事件があったのだという。しかも岩田の後輩がその場に居合わせていたのだと。楓は岩田とその後輩と3人で飲むことになった。

岩田の後輩は下の名前を四季といった。話してみるとかなり変な奴だ。さんざんにこき下ろす割にはミステリー小説にやたらと詳しい。

四季の話では『はる乃』で起こった事件はこうだ。店は満席で、ちょうどサッカー日本代表の試合が行われていてスポーツバーさながらの盛り上がりだった。

四季がトイレで背中にナイフが刺さったタトゥーの男の死体を見たのはその直後のことだった。四季の直前にトイレに行ったのは劇団仲間のHだが、Hは四季がトイレにいくことを止めなかった。Hは警察で黙秘を続けているという。

楓は早速祖父に『はる乃』で起こった事の顛末を話した。元々『はる乃』は祖父の行きつけの店で、祖父は女将のこともHのこともよく知っていた。

ゴロワーズをふかしながら祖父は語った。

女将は20年前、タトゥーの男と押し込み強盗を働いて逮捕されていた。再出発した女将を刑務所から出てきたタトゥーの男が脅していた。ナイフは男が持っていたもので、女将ともみ合っているのをたまたま目撃したHが男を刺してしまったということだった。

楓の大学時代の同級生の美咲から連絡があり、久々に飲むことになった。美咲はかつて祖父が校長を務めた小学校で教師をしている。「まどふき先生」の名は今でも語り継がれており、現校長は「二代目まどふき校長」と呼ばれているらしい。

美咲は不思議な話をした。4年生を担任しているマドンナ先生が水泳の授業のときに消えてしまったという。確かに授業の終わりのチャイムまでマドンナ先生はいたのに、先生がプールに飛び込んだあと忽然といなくなったのだと。

楓は祖父のところへ行き美咲の話を録音したものを聞かせた。祖父は最初、楓が年配の男性だと思っている「二代目まどふき校長」は若い女性だと指摘した上で、同じ職場の男性教師をめぐりマドンナ先生は校長に殺されたという物語を語った。

ところが2本目のゴロワーズを手にすると、考えを翻した。マドンナ先生は破産した父親の連帯保証人になって悪徳業者から追われていたため、それを相談された校長がマドンナ先生を失踪させたのだと。

実は祖父は「二代目まどふき先生」とも交流があり、この失踪事件には一枚噛んでいたのだった。

楓はその次に、自分が担任した32人のクラスで33人目の声が聞こえたという怪奇現象を祖父のところへ持って行ったが、それも祖父は簡単に解いてしまった。

岩田に誘われて楓は土曜日の朝ランニングにつき合った。走り終わった後は四季とも合流し3人でビールを飲んだ。突然楓は橋の上から視線を感じた。最近ずっと「非通知」や「公衆電話」から無言電話が続いていることを楓は岩田と四季に話した。

1週間後の土曜日、岩田は1人でランニングをしていた。橋の上で揉めている2人を見つけた岩田は仲裁しようと声をかけた。中年男が去っていくとそこには腹をナイフで刺された10代の少年がいた。

毎週ウォーキングをしている女性が来たので救急車と警察を呼んでくれるように頼んだが、女性はなぜか足早に去っていった。そこへ警察官が現れ、どういうことか岩田が逮捕され連れていかれてしまった。

楓がウォーキングしていた女性を見つけようと聞き込みをしたが、毎週土曜日に岩田と挨拶をしていた人たちはそんな人はいないと口をそろえて言った。

楓は祖父のところへ行った。祖父は揉めていた2人は麻薬の売人と客だろうと言った。見つからないウォーキング女性はきっとアル中で親権を争っている最中にアルコールから抜け出せないでいることがばれるのが怖くて逃げたのだということだ。

女性はウォーキングではなく単に病院に通院していただけなのだ。近くの病院を探し女性を見つけると、無事に岩田の冤罪は晴れた。

3人でお祝いをしようということになり楓と四季は岩田の家に行った。岩田と四季が買い出しに出かけ楓が一人になると、またしても「公衆電話」からの着信があった。無言電話かと思うと「待たせたね。準備は整った」という言葉が聞こえた。

楓のマンションのドアに黒バラのブーケが掛けられていたり、誰かに尾けられている気がして、楓はやはり祖父に相談することにした。

楓が祖父の家の玄関のドアに手をかけると、いきなり口元を塞がれ首筋にチクリと痛みが走った。楓は意識を失った。

目を覚ますと楓は猿ぐつわをかまされロープで拘束されていた。壁の向こうから祖父の声が聞こえる。祖父の家の一室だ。

祖父は通称・親バカさんとリハビリを行っているようだ。祖父は孫娘がストーカー被害に遭っているという話をし始めた。ストーカーが楓の電話番号を知っているということは、祖父の部屋に緊急連絡先として貼っている楓の連絡先を見たに違いないと言った。

祖父の家に出入りする男性は2人。言語聴覚士の親バカさんと理学療法士の通称・ソフトクリーム屋さん。通常なら若くて体育会系のソフトクリーム屋さんを疑うのだが、祖父の見立ては違っていた。

祖父は次々と親バカさんがストーカーの犯人だという証拠を突きつけ、楓を監禁して一緒に暮らすつもりなのだということまで見破っていた。祖父は香苗に警察に電話するように言ったのでもうすぐ警察が来る、とまるで望みのないことを告げた。楓は絶望した。

親バカさんは、27年前に自分が香苗を殺したので香苗はこの世にはいないと衝撃の事実を述べた。父と母の結婚式の日に母を刺殺したストーカーは親バカさんだったのだ。母のお腹の中から奇跡的に助け出された楓は、香苗似の美しい女性に成長し、再び親バカさんのターゲットとなっていたのだ。

そこへ四季が楓を助けに入ってきた。なんと祖父は柔術で親バカさんをねじ伏せていて、親バカさんの話の一部始終を岩田が録音していた。2人を呼んでいたのは祖父だった。ストーカーは逮捕された。

楓は祖父に「初めて好きな人ができちゃったかもしれない」と告白した。祖父は「楓。煙草を1本くれないか」と言った。

『名探偵のままでいて』の感想

両親を亡くした女性と認知症の祖父という設定でありながら、決して物悲しい物語ではなくむしろ心温まる素敵な物語でした。事件が起こるのでもちろん悪いやつも登場するのですが、楓の周りにいる人達が本当に温かくて優しくて癒されるんですよ。

痛快なサスペンスでありながらハートウォーミングっていう、この不思議な読後感。

物語の最後で、楓が「好きな人ができちゃった」と言ったのは岩田のことなのか四季のことなのか。その告白に対して「煙草を1本くれないか」と言った祖父のセリフに胸を撃ち抜かれました。素敵すぎる。

物語の中には実在するミステリー小説がたくさん出てくるのですが、その中でも『女か虎か』というリドルストーリーの挿話が秀逸で、『名探偵のままでいて』も同じ終わり方をするのは本当にお見事。

映画というより連続ドラマ向けなのかな…と思いつつ、楓と祖父に誰をキャスティングしようか妄想が止まりません!それくらい映像がよく似合う物語だと思います。こりゃしばらく頭の中でも楽しめそうだ!

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