吉沢亮が歌舞伎の女形に!映画『国宝』原作小説のあらすじ

長崎のヤクザの息子として育った立花喜久雄。喜久雄14歳の時、ヤクザの勢力争いで父が亡くなると、立花組は急激に衰えていった。

大阪の歌舞伎役者・花井半二郎の元に修行に出されることになった喜久雄は、半二郎の息子・大垣俊介と切磋琢磨し、歌舞伎役者としての道を歩き始めることとなった。

芝居にのめり込んでいく喜久雄。事故に遭った花井半二郎の代役を俊介ではなく喜久雄が務めることになると、俊介は置手紙をして失踪してしまうのだった。

その後、三代目花井半二郎を喜久雄が継ぐことになったが、喜久雄が歩み始めた道は決して穏やかな道ではなかった。

任侠の世界に生まれ、梨園で生きていく決意をした男の激動の半生を描いた、吉田修一さんの最高傑作!

当サイトの記事には若干のネタバレが含まれます。

【主なキャスト(敬称略)
吉沢亮:立花喜久雄
横浜流星:大垣俊介

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小説『国宝』のあらすじ

昭和39年の長崎。九州各地から親分格だけでも15,6人は呼ばれ立花組の新年会が盛大に行われた。誰がどう見ても、兄貴分である宮地組の大親分よりも立花組組長の立花権五郎の方が羽振りが良い。

会場には愛甲会の若頭の辻村将生が呼んだらしい歌舞伎役者の丹波屋二代目花井半二郎が招待されていた。

舞台では権五郎の14歳の息子の喜久雄と部屋住みの組員・早川徳次による歌舞伎舞踊『積恋雪関扉』が披露された。芝居好きの権五郎の妻・マツが主催する余興である。

演目が終わって喜久雄と徳次が風呂に入っていると、何やら表が騒がしい。宮地組の組員が日本刀やドスを手に、立花組の若い衆を斬りつけていた。権五郎も立花組の若い衆も応戦するが、権五郎は2階の部屋に追い詰められていった。

半二郎を守るために2階へ上がってきた辻村。てっきり権五郎を援護するのかと思いきや、辻村は手にしたワルサーで権五郎を撃った。

死者5名負傷者50名を出した大抗争は50名以上の逮捕者を出し、宮地組は解散、親分を失った立花組も混乱をきたした。結局、辻村が立花組を仕切ることとなり、立花組は愛甲会の傘下に組み込まれ、事実上消失することになった。

朝礼の行われる校庭へと向かった喜久雄。最近、躍起になって児童図書館の建設に寄付をしている慈善家の宮地組親分改めセンチュリー建設の会長・宮地恒三が朝礼で挨拶をすることになっていた。

宮地がマイクの前に立った瞬間、喜久雄は隠し持っていたドスを握りしめると宮地に向かって突進していった。

喜久雄が突き刺したドスは確かに宮地の腹へ刺さったが、運よく分厚い皮財布が邪魔をして大した傷を負わせることはなかった。宮地は喜久雄が長崎から出ていくことを条件に被害届は出さず示談とした。

喜久雄の預け先は、大阪の歌舞伎役者、花井半二郎の元と決まった。そして徳次は喜久雄のお世話をする手代見習いとして大阪について行くことになった。

半二郎の家には喜久雄と同い年の大垣俊介という息子がいた。俊介はすでに花井半弥の名を持つ歌舞伎役者であった。義太夫のとりこになった喜久雄は俊介と一緒に稽古に通うことになった。

1年後、喜久雄の恋人だった春江が長崎から大阪に出てきた。

半二郎は喜久雄と俊介を女形として見出していた。半二郎から部屋子にならないかと打診され、喜久雄はそれを受けることにした。初めて稀代の立女形・小野川万菊の舞台を見た時には、喜久雄は心を鷲づかみにされその世界に引きずり込まれたのだった。

喜久雄は17歳で花井東一郎を襲名し舞台デビューを果たした。京都南座での『道成寺』は大成功を収め、世間の女性たちは俊介と喜久雄に熱狂した。

半二郎が交通事故に遭ったとの一報が入った。

半二郎は一命を取りとめたものの両足を骨折しており、翌週に控えた『曾根崎心中』の公演は絶望的だった。誰もが半二郎の代役を俊介がやるものと思っていた矢先、半二郎が下した決断は、喜久雄に代役をやらせるというものだった。

21日間の公演をなんとかやり遂げた喜久雄に関する評価は上々だった。千穐楽の翌日、俊介は「探さないで下さい」と手紙を残して、春江と共にいなくなった。

それから3年、喜久雄に黄色い声援を上げていたにわかファンも鳴りを潜め、関西の歌舞伎熱が下がり始めると、喜久雄は東京に出て映画に出ることになった。

結婚こそしてはいないが祇園の芸妓の市駒と喜久雄の間には娘の綾乃が生まれていた。

半二郎は骨折から復帰して舞台を務めてはいたが緑内障のためほとんど目が見えなくなっていた。引退前に一花咲かせたいと考えた半二郎は、自身は「花井白虎」を襲名し、「三代目花井半二郎」を喜久雄に襲名させると決めた。

ところが襲名披露の大阪中座で、喜久雄が口上を述べた直後、花井白虎は舞台上で大量の血を吐いて倒れた。

喜久雄は小野川万菊と並ぶ女形・姉川鶴若の世話になることになったが、花井白虎が亡くなると、喜久雄はますます冷遇されることとなっていった。

歌舞伎の興行会社・三友の竹野は近ごろ話題になっている劇団が鳥取の三朝温泉で公演をしていると聞き、鳥取へ向かった。おんぼろの見世物小屋で上演されている「化け猫伝説」に出てきた化け猫を演じている役者はまさに俊介だった。

竹野は小野川万菊を連れて再び鳥取に赴き、俊介は歌舞伎界に戻ってくることになった。春江との間には一豊という男の子が生まれていた。

失踪してからしばらく俊介は仕事をしょうとしても続かず、春江のヒモ状態。豊生という息子が生まれ、一度は父親の半二郎に会いに行った俊介だったが、半二郎の前で踊った舞に落第点を付けられてしまった。

俊介はそれからも必死で歌舞伎を研究していたが、豊生が乳幼児突然死症候群で亡くなると、その生活は荒廃していった。ついには薬物にも手を出し廃人同然となってしまっていた。

春江の支えあってなんとか舞台に戻り、歌舞伎の世界に戻るまで、俊介失踪から10年が経っていた。

俊介の復活は小野川万菊との舞台となった。舞台は大好評で、俊介には次々と大きな役が回ってくるようになった。

喜久雄は後ろ盾ほしさに富士見屋の吾妻千五郎の次女・彰子と結婚することにした。彰子は証券会社の御曹司との婚約を蹴って、千五郎からは勘当されて喜久雄と一緒になった。

彰子の遠縁で新派の大看板である曽根松子の計らいで、喜久雄は新派の舞台に立たせてもらえることになった。正式に喜久雄が新派に移籍すると、俊介を擁する歌舞伎と喜久雄を擁する新派に新たなファンが付くようになった。

俊介と喜久雄がそれぞれ別の舞台で「本朝廿四考」を演じると、共に公演は大好評で俊介も喜久雄もそろって芸術選奨を受賞した。

喜久雄は辻村の頼みで辻村興産20周年のパーティーに出席したが、そのパーティーの途中で警察に踏み込まれ辻村は逮捕された。喜久雄にヤクザとのつながりがあることが知れると、マスコミは喜久雄の父が立花組の組長だったことや喜久雄の背中には刺青が入っていることなどを書きたてた。喜久雄は新派からも追われることとなった。

同じころ京都に住む喜久雄の13歳の娘・綾乃は外泊を繰り返し、たちの悪い男たちと付き合っていた。徳次が出向いてなんとか交友をやめさせたが、綾乃の生活は荒廃していく一方だった。

喜久雄は綾乃を東京へ連れていくことにした。綾乃は春江の元で生活の面倒を見てもらうことになった。

彰子の父・吾妻千五郎の許しにより、喜久雄は歌舞伎の世界に帰ってくることになった。

喜久雄と俊介は「源氏物語」で16年ぶりに共演を果した。バブル景気も相まって、喜久雄と俊介はますます歌舞伎の世界を盛り上げていった。俊介は「半弥」を一豊に譲り、自らは「白虎」を襲名することになった。

大学を卒業し出版社に勤務する綾乃から呼び出された喜久雄。大雷という関取を紹介され、お腹に子どもがいるので結婚するという報告を受けた。

俊介が「女蜘」の公演中に花道から客席に転落するという事故があった。俊介の右足先は糖尿病のせいで壊死しており、一刻も早く膝下を切断する以外に治療方法はないということだった。

義足を付けて舞台復帰すると誓った俊介。過酷なリハビリを頑張り抜き、まずは目標だった綾乃と大雷の結婚式に出席した。その後、綾乃は女の子を出産し、まさしくその日に大雷は横綱へと昇進した。娘は喜重(きえ)と名付けられた。

1年のブランクを経て、俊介は舞台への復帰を果たした。しかし喜びもつかの間、俊介は左脚も切断することになった。俊介は両足義足で舞台に立つ覚悟でリハビリをこなしていった。

「隅田川」で舞台復帰を果たした俊介だったが、公演途中の花道で立てなくなったもののなんとか気力で千穐楽を乗り切り、その後入院することとなった。しばらくして、俊介は帰らぬ人となった。

一豊は順調に舞台を積んでいっていたが、ある日、ランニング中の学生を撥ねる交通事故を起こし、あろうことかその場から逃げてしまった。学生のけがは大事に至らず、自らが信号無視をしたことも認めてくれたので、一豊は執行猶予付きの判決を受けた。

俊介亡き後、歌舞伎界をけん引するべく喜久雄はより舞台に入れ込むようになり、周りの人間から距離を置かれるような存在になっていった。

ある日「藤娘」を演じていた喜久雄。客席に一人の男性が喜久雄に釘付けになっていることに気付いた。その男は舞台に上がり嘉久男の目の前に立ちはだかった。

それ以来、喜久雄は完璧な舞台をこなすことだけに心血を注ぐ孤高の役者となっていった。歌舞伎界を喜久雄一人に背負わせているのも事実で、狂人のごとくなっていく喜久雄を誰も止めることができなくなっていた。

舞台に立って50年。舞台から見る景色が生活のすべてになっていった喜久雄。

「阿古屋」の舞台で幕が引かれようとした瞬間、喜久雄は舞台を下り客席の間を歩いて、劇場の外へと向かう扉に向かって歩いていった。信号が変わった交差点に踏み出した喜久雄。悲鳴とクラクションが鳴り響いた。

三友の竹野の元には、喜久雄の「重要無形文化財保持者(人間国宝)」認定の通知が届いていた。

映画『国宝』の見どころと原作との違い

歌舞伎に全く興味のない人でも、本を読んだだけでもその妖艶で狂気に満ちた世界に引き込まれていく物語。これを映像で見られるのかと思うと、もうそれだけで心の奥底のザワザワが止まらなくなります。

喜久雄を演じる主演の吉沢亮さんと宿命のライバル俊介を演じる横浜流星さん、この美しいお二人が歌舞伎の女形を演じるのかと想像するだけでため息がもれそうです。

「曾根崎心中」「鷺娘」「本朝廿四考」「隅田川」…、物語に出てくる演目はどれも実在する有名で見ごたえのある素晴らしい演目ばかり。

歌舞伎の楽屋で黒衣をまとい3年過ごし4年かかって書き上げたという吉田修一さんの執念。歩き方から練習したという吉沢亮さんと横浜流星さんの妥協ない姿勢。全てが最高のものを作り上げようという気迫に満ちている作品です。

ヤクザの息子に生まれながら父の死によって歌舞伎の世界に身を投じることになった喜久雄と、梨園に生まれながら自らの才能に苦悩する俊介。2人が歩む道は全く平坦ではなく困難に次ぐ困難が待ち受けていますが、2人はただ「芝居が好き」というその気持ちだけが心のよりどころなのです。

やがてそのよりどころが精神を蝕んでいくことになるのですが、果たして2人は不幸だったのかというと、決してそうではないのだと思います。

そんな思いが、吉沢亮さんと横浜流星さんの舞と目と表情に宿っている作品。この映画そのものが国の宝になり得る作品になること間違いなしです!

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青春篇(上)/花道篇(下)の2巻完結
2024年8月19日時点の情報となります。 オフィシャルサイトにて必ず最新の情報をご確認ください。

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