映画『ヴィレッジ』日本のムラを描いたあらすじ、ネタバレと考察

山あいの霞門村のゴミ処理施設で働く片山優。かつて父が起こした犯罪のために村人が優を見る目は冷たく、何の希望も持てずに淡々と生きていた。

幼なじみの中井美咲が村に帰ってきたことで、村と優の未来は明るい方向へと回り始めたかのように思えたが…。

何が正しくて何が正しくないのか、そんな単純な言葉では語ることができない、人の在り方や繋がりを描いたヒューマンサスペンス。

藤井道人監督が謳ったとおり「いままでに見たことがない横浜流星」を見ることができます。

【主なキャスト(敬称略)】
横浜流星:片山優
黒木華:中井美咲(優の幼馴染)
古田新太:大橋修作(村長)
一ノ瀬ワタル:大橋透(修作の息子)
中村獅童:大橋光吉(修作の息子/刑事)
杉本哲太:丸岡勝(ヤクザ)
奥平大兼:筧龍太(優の仕事仲間)
作間龍斗:中井恵一(美咲の弟)

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『Village[ヴィレッジ]』のあらすじ

山あいの村、霞門(かもん)村に暮らす片山優。優は村にある大きなゴミ処理施設で働いている。

優の父親は10年前、ゴミ処理施設の建設に反対し村八分になり、殺人と放火を犯してしまった。

母親はギャンブル依存症で、優の少ない稼ぎも母親の借金に消えていく。村人の優を見る目は厳しく、優は淡々と同じ毎日をくり返すしかなかった。

ゴミ処理施設を誘致した村長の大橋修作の息子・の仲間からは暴力を振るわれ、夜中にはヤクザ・丸岡の取り仕切る不法投棄の埋め立てにも駆り出される。

そんな一筋の糸も見えない生活の中、幼なじみの中井美咲が東京から霞門村に帰ってきた。

ゴミ処理施設で働くことになった美咲と再会した優。美咲は父親の罪と優は関係ないと、優に再び生きていくチャンスを作ってくれようとしていた。

環境問題へのアピールをメディアに取り上げられるようになり、霞門村は一躍有名になり、取材を引き受けている優は生き生きと働いて生きていけるようになっていった。

ところが互いの心の傷を埋め合うように惹かれ合っていく優と美咲を、透はおもしろくないと思って見ていた。

美咲が一人の時を狙って家に押しかけていき、優が不法投棄の片棒を担いでいる写真を美咲に見せ、ついには執拗に迫ってきた。

美咲にかけた電話に透が出たことで、優は美咲の家へと急いだ。透を美咲から引き離すためにボコボコに殴られる優…。

一方、美咲の弟の恵一は働いているゴミ処理施設で危険な廃棄物を見つけてしまい、10年前に村を離れ刑事として働いている修作の弟・光吉に相談した。

不法投棄に駆り出されていた若者たちは現行犯で逮捕された。そして、警察がゴミの山を掘り返していると、透の遺体が発見された。

捜査が進むにつれて次々と明らかになってくる村の実態…。

物語の結末は?

息子が死んだことでさえ何事もなかったかのように流そうとする修作に対して、優は言葉を失った…

優が起こした行動とは
かつて優の父が犯したように…、取り返しのつかない罪を犯してしまいます。

能の演目「邯鄲(かんたん)」

 STORY

唐の時代、青年・蘆生は旅の途中で泊まった宿で、女主人に勧められた「邯鄲の枕」で寝ていると、勅使が蘆生を皇帝として迎えに来た。

蘆生は皇帝としての栄華をほしいままにし、在位50年を祝う祝宴を迎えていた。不老長寿の酒に酔いしれ、蘆生が目を覚ますと、そこは旅の宿屋だった。

全てはつかの間の儚い夢だった。

中国の故事「一炊の夢」を元にした演目で、人の世の栄枯盛衰ははかないもので、永遠に不滅のものなどないということを表しています。

「一炊」というのは「ご飯が炊けるまでの短い時間」を意味します。

もしお時間があれば、能「邯鄲」の解釈を読んで動画などで場面を予習していくことをお勧めします!

「現実→夢→現実」への場面変化と、シテが激しい動きから一気に枕に伏す(現実に戻る)シーンは「邯鄲」の最大の見どころとなっています。(←映画にも出てきます)

映画の見どころと考察

胸に深く突き刺さる映画でした…。

何もかも諦めて目立たないように生きている優、表だけいい顔をしている村長の修作、それに付け込んで甘い汁を吸っているヤクザ、権力をかさに着て生きている透、自分だけははみ出さないように同調し見てみるふりをしている村人。

どの人物も自分の中にもいる気がして、見ていて居心地の悪さを感じてしまうほどでした。

どこにでもいる人たちの、どこにでもあるムラの物語。歯車が外れるきっかけさえあれば、自分のすぐそばで起きてもおかしくない…。そういう意味ですごく恐怖を感じました。

生きる望みを持てないまま死んだように生きていいた優が、美咲の登場によって生きる意味を見出していく姿は、一見明るい未来を感じさせるのですが、時折「負」の感情を爆発させる姿にヒリヒリした危うさを感じてしまって、ちょっと見ていられませんでした。

優のラストシーンは心の底からゾクゾクして鳥肌もの。こんな微妙な感情の機微を演じられる横浜流星さんは、本当にすごい役者さんになったなぁと思います。

まさに「いままでに見たことがない横浜流星」でした。

だからと言ってムラ社会には悪いことばかりではなくて「能」のように伝統を守っていくという役割もあり、美咲のように夢破れて帰ってくる場所でもあるんですよね。

そういう意味でも能のシーンはとても象徴的なシーンとなります。ムラが一体感を感じる場面でもあるし、よそ者は受け入れないという意思表示にも感じられます。

演目の「邯鄲」は、すべての出来事は一炊の夢のように移り変わっていくもので。光も影も一瞬でその足元がひっくり返ることを示唆しています。

「Village」そのものなんですよね。

本当のラストシーン、これが唯一の光かな。エンドロールの途中で立たずに最後まで見届けてくださいね!

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【価格は2024年2月19日現在】