突然、彼女は言った。「私ね、後、1週間で死んじゃうの」
混乱して全く受け入れられない僕に彼女はいつも通りであることを望んだ。そして死ぬ前にどうしてもやりたかったことを2人で一緒に叶えることを望んだ。
時折彼女を激しい発作が襲う。それでも僕は彼女と過ごすことを選び、彼女と一緒に大阪へ一泊旅行へと出かけた。僕は彼女を抱きしめて眠った…。
「死」を覚悟した17歳の女の子とそれを受け入れる男の子の、キラキラまぶしい1週間をつづった究極の純愛小説。
【主なキャスト(敬称略)】
窪塚愛流:国木田雪夫
蒔田彩珠:山岸由茉
橋本愛:国木田月子(雪夫の姉)
山﨑まさよし:山岸英生(由茉の父)
吉田羊:山岸莉与(由茉の母)
小説『ハピネス』のあらすじ
「私ね、後、1週間で死んじゃうの」と大好きな憧れのInnocent Worldのロリータファッションで全身を決め込んだ<彼女>が言った。言葉のインパクトが強すぎて、彼女のファッションをほめるどころではない。
高校2年生の<僕>は高校1年生の時に今の高校に転校してきた。美術部でヒラヒラのレースのソックスを履いた<彼女>に話しかけたのは、姉がロリータだったのでロリータファッションに見慣れていたから。
一緒に買い物に出かけたり美術の話をするようになって、互いに磁石に引き寄せられるかのようにキスを交わし、<僕>と<彼女>はつき合うようになった。
父のオーストラリア赴任に母もついて行ったので、<僕>はひとり暮らし。デートのあと<僕>の部屋でいつものようにセックスをした後、<彼女>は再び「あと1週間で死んじゃうの」と言った。
<彼女>は生まれつき心臓に欠陥があった。それだけでも不安材料なのに、最近では冠動脈がどんどん細くなっていっているようで、いつ心筋梗塞を起こしてもおかしくない状態らしい。医者からはあと10日生きられるかどうかもわからないと言われていた。
<彼女>は事実を受け入れ、残りの人生をいつも通り楽しく過ごしたいと言った。
翌日の火曜日、<僕>は<彼女>と原宿のInnocent Worldへ行った。<彼女>は薔薇のジャンスカと緑のワンピース、白いボンネットを買った。買い物の後スタバでお茶をしていると、<彼女>は突然発作で苦しみ始めた。
4種類の錠剤と3種類の顆粒をペットボトルの水で流し込んだ<彼女>は次第に落ち着いていったが、<僕>は気が動転していた。一体<僕>は<彼女>のために何ができるのだろう。
水曜日、<彼女>は学校を休んだ。<彼女>は病院で検査をしていただけと言うけれど、心配すぎて授業中にも関わらず大きな声で電話の向こうの<彼女>に怒ってしまった。
放課後、いつものカフェ「宵待草」で<彼女>と待ち合わせた。<彼女>が自宅に招待したいと言うので、夕食は彼女の家でごちそうになることになった。
夕食の席で<彼女>は<僕>の家に泊まりたいと両親に告げた。<彼女>の両親は好きな人と過ごしたいという<彼女>の気持ちを尊重すると言い、<僕>の家での外泊を許した。
木曜日、<彼女>が母の特製カレーが入った鍋を持って泊まりに来た。<彼女>は、<僕>が<彼女>の体に気を遣ってセックスできなくなることまで見越して「バイアグラ」までインターネットで購入していた。
翌朝、<彼女>はトイレで倒れ痙攣を起こしていた。慌てて救急車を呼ぶと、<彼女>はちょうど迎えに来ていた母親と一緒に救急車で<僕>の元を去っていった。母親から電話がかかってきたのは昼過ぎだった。
母親によると<彼女>の容体は安定しているらしい。吐血したかと思われたのは前歯が2本折れていたせいだった。
<彼女>と土日で泊りで大阪に行こうと約束していたけれど、<僕>にはとてもそんなことはできそうになかった。<彼女>が体調を崩したときに適切に対処できる自信がなかった。
一度は土日の泊りをキャンセルしようと思ったけれど、<彼女>の笑顔を思い出した<僕>は覚悟を決めた。
<彼女>の夢は大阪にあるInnocent Worldの本店に行くこと。もちろん全身は原宿店で買ったInnocent Worldの衣装で決め込んでいる。店員さんとの会話も弾み楽しいお買い物タイムを過ごした。夜はホテルのお風呂に大量の薔薇の花びらを浮かべて入浴した。
昼過ぎまで寝て東京に帰る。東京では夕食に資生堂パーラーの10500円のスペシャルカレーライスを食べた。
<彼女>の体のことを考えてタクシーで帰ることにしたが、これが失敗だった。普通なら30分くらいでつくはずなのに、なぜか車が全く流れず2時間以上かかってしまった。その間に<彼女>は大きな発作を起こした。
家に着いた<僕>は裸の<彼女>を抱きしめて眠りについた。
翌朝目が覚めると、<彼女>は亡くなっていた。とても穏やかな顔をしていた。<僕>は<彼女>のキャリーバッグの中から<彼女>のお気に入りのワンピースを取りだして着せた。
祭壇は<彼女>の大好きな薔薇の花で覆いつくされていた。火葬場には<彼女>の両親と<僕>だけが向かった。<彼女>には最後に「ありがとう」という言葉を贈った。<彼女>の骨は紅茶が入っていたというピンク色の瓶に入れられた。
「死」は形式的な別れであり意味はない。<彼女>が生きたことに意味がある。<彼女>と出会えた<僕>はウルトラ・ラッキーでウルトラ・ハッピーなんだ。
映画の見どころと原作との違い
ざっくりあらすじだけを追いかけると、最愛の彼女を失ったかわいそうな男の子の話のように思われるかもしれませんが決してそうではありません。
もちろん大切な人が死ぬことはその出来事自体が悲しいので、たくさんたくさん涙を流すことになるし「あーしてあげればよかった、こうしてあげられたんじゃないか」と後悔することは山のように出てくると思うのですが、この物語が伝えたいのはそんなことではなくて、心から愛する人に出会えることと一緒に時間を共有できることの幸せだと思うのです。
だからもっとこの幸せな時間を大事に愛おしく感じようよということなのだと思います。
<彼女>は泣くでもわめくでもなく、淡々と言葉を紡ぎ<僕>への愛を語ります。名言を言う訳でもないし熱い言葉を投げかける訳でもありません。
きっと人には見えないところでいっぱいいっぱい涙を流して慟哭しているに違いないのに、ただひたすらいつも通りの当たり前の日々を大切にして生き切ることを望みました。
命の期限を伝えられるという精神的にはかなりきつい課題を目の前にして、懸命に自分の命を全うしようとする女の子とそれに寄り添おうとする男の子のハッピーな物語なのです。だからタイトルも『ハピネス』
キラキラした日常がたくさん詰まった素敵な物語でした。
小説では<彼女>と<僕>という「誰か」でしかなかった2人が、映画では名前をもらって一生懸命に生きている姿を見せてくれます。
雪夫と由茉の物語でもありながら、娘の命の期限と向き合う家族の物語でもあります。決して悲しいだけの物語ではない、たくさんの愛と幸せのかたちを見せてくれる映画です。
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