『52ヘルツのクジラたち』あらすじとネタバレ

大分県の海沿いの小さな町に引っ越してきた三島貴瑚。雨の中で出会った少年は、かつての自分と同じ目をしていました。

虐待され存在を否定され続け、声を発することをやめてしまった少年の声なき声に耳を傾け、少年を救うための貴瑚の戦いが始まります。

「52ヘルツのクジラ」とは周波数の違いから仲間とコミュニケーションがとれない実在するクジラのことです。

かつて虐待を受けてた経験のある貴瑚はアンさんに出会い自分の居場所を見つけることができました。自分も誰かの声に耳を傾けたいと、仲間に届かない声なき声を持つクジラたちが声を聴こうと必死で耳を傾けようとする優しい優しい物語。

2021年の本屋大賞作品『52ヘルツのクジラたち』の映画化が決定したと町田そのこさんのtwitterで見て「やったー」と思わずガッツポーズ!杉咲花さんの演じる貴瑚はきっと心を掴んで離さないと思いますよ。

【主なキャスト(敬称略)】
杉咲花:三島貴瑚
志尊淳:岡田安吾
宮沢氷魚:新名主税
小野花梨:牧岡美晴
西野七瀬:品城琴美
金子大地:村中真帆

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実在する「52ヘルツのクジラ」

「52ヘルツのクジラ」は実在しています。

鯨は仲間とコミュニケーションをとるときに、通常10~39ヘルツの高さの音で鳴くそうです。

だから52ヘルツで鳴く鯨は、どんなに鳴いてもどんなに近くにいても、その声が仲間に届かないため「世界でもっとも孤独な鯨」と呼ばれています。

この小説の登場人物たちは心に大きな傷を持っていますが、どんなに叫んでも誰にも声が届かなくて苦しんでいました。

心の声が誰かに届いてほしい、誰かの心の声に耳を傾けたいという強い願いが込められたタイトルなんですね。

『52ヘルツのクジラたち』のあらすじ

大分県の海沿いの町、小高い丘の上の一軒家に引っ越した三島貴瑚(きこ)、26歳。

古い家の修繕にきてもらった地元の業者の村中眞帆(まほろ)にいきなり「風俗やってたの?」と聞かれ平手打ちをくらわした。

よくよく聞いてみると、貴瑚は近所では東京から逃げてきた風俗嬢でヤクザからも追われていると噂されているらしい。

村中はちゃんと確認して否定してやろうと思ったらしいが、単刀直入に聞いてくる村中にも噂好きの町民にも、貴瑚は引っ越し早々辟易した。

村中に腹を立て家を飛び出したはいいが、急に雨が降ってきた。近くの空き家の庇に雨宿りしているとびしょ濡れの中学生くらいの女の子が歩いてきた。

貴瑚が「おいで」と声をかけても女の子は一瞥をくれただけで、雨の向こうへと消えていった。

5日ぶりに買い物に出かけると、見知らぬおばあさんに働いていないことを説教された。イライラしながらの帰り道、突然お腹の傷が痛み始めて地面に倒れ込んだ。

貴瑚が飛ばした傘を拾って傘をさしかけてくれたのは、先日の女の子だった。今日もずぶ濡れだ。

貴瑚は家まで送ってほしいと言って女の子を自宅まで無理矢理ひっぱってきて、一緒にお風呂に入ろうとTシャツを脱がせると、体には虐待の跡と思われる痣が数えきれないほどあった。しかも女の子だと思っていたが、華奢な男のだった。少年は逃げるように貴瑚の家を去った。

早朝、ラジオ体操の音楽が聞こえたので、もしかしたらあの少年に会えるかもしれないと貴瑚は広場に行ってみた。少年はいなかった。

今度は品城(しなぎ)と名乗るじいさんから説教され、貴瑚は心底うんざりした。

村中がアイスと一緒に写真を持ってきた。貴瑚が暮らす家はかつて祖母が近所の人たちに長唄を教えながら暮らしていた。その頃の写真を探して持ってきてくれたのだ。そこには貴瑚も写っていた。

貴瑚が気になる少年のことを聞いてみると、村中は同級生の品城琴美の子どもだと教えてくれた。意思疎通ができず暴れて手に負えないと品城のじいさんが困っているとも言った。

貴瑚は虐待された経験を持つ。貴瑚を救ってくれたアンさんの言葉だけを心の支えに生きている。だけど、そのアンさんはもうこの世にはいない。

時折襲ってくる寂しさに声を上げて泣いていると、玄関で音がした。あの少年がいた。1人になりたくないからと頼みこんで一緒にカレーを食べた。

貴瑚は自分の名前を教えて「キナコ」と呼んでと言い、少年の名前を聞いた。少年は「ムシ」だと答えた。

村中に誘われて行った定食屋で、貴瑚は働いている琴美と会った。

数日後の夜、玄関の音に気付いて出てみると、頭から真っ赤に染まった少年が立っていた。血ではなくケチャップだったので安心したが、お風呂に入れて着替えさせた。

泣いている少年に貴瑚は自分がいつも聴いている52ヘルツのクジラの声を聴かせた。貴瑚は少年を「52」と呼ぶことにした。

貴瑚は琴美に話をしに行ったが、琴美は52のせいで人生が狂ったと言うので、52は自分が面倒を見ると啖呵を切って帰ってきた。

貴瑚は52から、琴美とこの町に帰ってくるまでは北九州市小倉北区馬借という町で父方の祖母と暮らしていたことをなんとか聞き出した。

突然の玄関のチャイムに出てみると、そこには高校時代からの友人・牧岡美晴が立っていた。美晴は自分が納得いくまで貴瑚と離れない覚悟でやってきたのだった。

52の事情を美晴に話し、貴瑚と美晴と52は北九州に向かった。52の記憶を頼りに「末長」という表札を見つけたけれど、その家にはもう誰も住んでいなかった。

声をかけてくれた藤江というおばあさんが52のことをいっちゃんと呼び、いろんなことを教えてくれた。

2年前、52の祖母の末長真紀子は病気で亡くなり、その翌年、52の父親・武彦の妹の千穂は交通事故で亡くなっていた。

高校生だった琴美を妊娠させた武彦は琴美を連れて実家に帰り、真紀子と千穂の協力も得ながら52を育てていたが、52が2歳の頃にはまた女を作って出て行ったらしい。

水商売を始めた琴美は52を構わなくなり、真紀子と千穂が一生懸命に育ててきた。

52が最初にしゃべった言葉が「ママ」ではなく「ばあば」だったことに腹を立てた琴美が52の舌にタバコの火を押し付けたのを機に、52は全くしゃべらなくなったということだ。

琴美がいきなり52を連れて出て行った後、千穂は52を探し続けたらしいが、その途中で事故に遭ってしまった。千穂のカバンの中には真紀子と千穂と幼い52の3人が笑っている写真が何枚もあった。写真を配って52を探していたのだ。

写真の裏には千穂の名前と携帯番号、そして「」と書いてあった。52の名前は愛と書いて「いとし」と読むと藤江が教えてくれた。

 大分に戻ると、52の祖父である品城のじいさんが孫が誘拐されたと騒いでいると村中が教えてくれた。

品城のじいさんの別れた奥さんのことを聞くために、村中の祖母・サチゑを訪ねた。品城のじいさんがとにかく甘やかして琴美をダメにしたことや52の祖母・昌子が出て行った経緯と連絡先を教えてくれた。

アンさんの夢を見て夜中に目を覚ますと52の姿がなかった。嫌な予感がして貴瑚は慌てて海へと向かった。

貴瑚は「いっしょに暮らそう」と言った。「愛」と呼ぶと愛は「キナコ」と応えた。海原には大きなクジラの尾びれが見えた。

昌子は再婚した夫・生島秀治と別府で子ども食堂を運営していた。昌子はまた貴瑚が愛を引きとるには、琴美から親権を奪い、貴瑚が未成年後見人として認められるという難関があることを教えてくれた。

15歳になると愛は自分で未成年後見人の選任を申し立てることができる。2年後愛と貴瑚がいっしょに暮らすことを目標に準備を進めることになった。

それまで愛は昌子と秀治の元で生活することになり、出発前日、村中家の庭でバーベキューをすることになった。

品城のじいさんが途中で殴りこんできた。振り回される杖に、かつての義父による虐待が重なり動けなかった貴瑚を助けたのは愛だった。

声が誰かに届くことを知った2人は、もう孤独ではなかった。

貴瑚の過去とは?

思い出として語られる貴瑚の過去は壮絶なものです。ここから先はネタバレを含みますので、読みたくない方は【+ボタン】を開かないでね。

貴瑚の生い立ち
再婚した母が弟・真樹を産むと、貴瑚は存在そのものを否定され、母と義父から虐待され続けた。

来客用のトイレに閉じ込められ、食事はもちろん生活のほとんどをトイレで過ごした。

高校を卒業する直前に、義父が筋萎縮性側索硬化症(ALS)に倒れると、義父の介護はすべて貴瑚の仕事となった。体が思うように動かない義父からは罵声を浴びせられ、木の杖で叩かれた。

3年後、義父に認知症の症状が現れ始めると、母親は貴瑚のせいで認知症が進んだと罵倒し、ついには貴瑚が死ねばよかったとまで口走った。

絶望に打ちひしがれ病院を出て歩いていると、高校の時の友達・美晴に声をかけられた。

アンさんとの出会い
美晴がボロボロの貴瑚を見て一緒に飲みに行こうと誘ってくれた時についてきたのが、美晴の会社の先輩・岡田安吾ことアンさんだった。

アンさんは貴瑚のことをキナコと呼んで、貴瑚の声なき声に耳を傾けてくれた。貴瑚の母親に貴瑚を解放してやれと話を付けて、家から連れ出してくれたのもアンさんだった。

アンさんは貴瑚が魂の番(つがい)と出会えるまで守ってあげると言った。

それからの貴瑚
貴瑚は実家を出てからの1年間は美晴の短大時代の友人・美音子(みねこ)とルームシェアをして生活した。

美音子は必要以上に深入りすることもなく一定の距離を保ちながらも貴瑚に寄り添ってくれた。

52ヘルツのクジラの声を教えてくれたのも美音子だった。

貴瑚のそれから
2年ほどたった頃、貴瑚は新名主税(ちから)と出会った。主税は貴瑚が勤める会社の専務で、交わるはずのない人のはずだった。

職場の若い男の子たちの喧嘩で貴瑚がけがをしてしまい、喧嘩を止めに入った主税と話をするようになり親しくなっていった。

男女の関係になるのにそう時間はかからなかった。

アンさんに主税を会わせると、主税はあからさまにアンさんに対して敵対心を見せた。

アンさんが「新名はキナコを泣かせるかもしれない」と言うのでそれを否定すると、アンさんはマンションも引き払ってキナコの前からいなくなってしまった。

しばらくして、主税には同棲して5年の彼女がいるという噂を聞いた。主税は否定もせず、貴瑚に愛人でいることを求めた。

主税の父親と婚約者に貴瑚を愛人として囲っているという手紙が届いた。差出人はアンさんだった。

逆上した力は興信所にアンさんのことを徹底的に調べさせた。

アンさんの秘密
アンさんは戸籍上は女性で男性として生きているトランスジェンダーだった。

本名は岡田杏子(あんず)といい、地元長崎の大学を卒業してから上京し、ホルモン注射を受けながら男性として生活していた。

主税のカバンの中の調査書をこっそりと盗み見してアンさんの居場所を知った貴瑚は、アンさんに会いに行くことにした。

アンさんのアパートの前でアンさんの母親とたまたま出会い、母親の持つ合鍵で中に入ると、アンさんは血で赤く染まったバスタブの中で息絶えていた。

机の上には2通の遺書が置いてあった。1つは母親あて、もう1つは主税にあてたものだった。

貴瑚と主税
主税あてのアンさんの遺書には、貴瑚に最善の幸せを与えてほしいという願いが書かれていた。それは不完全な自分にはできないことだからと。

主税にアンさんの遺書を見せると、主税は遺書をコンロで焼き笑った。

貴瑚は包丁を抜いた。しかし主税にあっという間に包丁を奪われ、その包丁は貴瑚のお腹に沈んだ。

貴瑚が病院で意識を取り戻すと、主税の父親が示談金を用意するので二度と主税には会えない遠くに行ってほしいと言われた。貴瑚は了承し長崎へ引っ越した。

映画『52ヘルツのクジラたち』見どころは?

虐待とトランスジェンダーというヘビーなテーマを扱っているので、とても辛いシーンがあるのは間違いないですね。

貴瑚と愛の受けた虐待はおそらく目を覆いたくなるくらい激しいものです。読んでいても辛かったので、映画だとわかっていても映像で見るのはかなり辛い体験になるでしょう。

ただ過酷な状況に置かれた人の声に耳を傾けてくれる人が現れるという優しい優しい物語。

そして、全てを諦め死んだように生きていた貴瑚と愛が、顔を上げて生きていけるようになるまでの再生の物語です。

きっと身近な人をもっと大事にしたい、声なき声にももっと耳を傾けたいと思うに違いありません。

貴瑚や愛のような人が身近にいることがわかったら、現実問題として手を差し伸べることができるのかどうか自信は持てないけど、少なくともそのための勇気を与えてくれる物語ですね。

これは分厚いタオルハンカチを握りしめて見に行かなきゃだな!

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