島本理生の恋愛小説『よだかの片想い』あらすじ、そして結末は?

生まれた時から顔にアザのあるアイコ。自分にとって当たり前の存在だったアザが、「かわいそう」と言われるものだと気づいてからは、できるだけ人と距離を置いて過ごしてきました。

そんなアイコがある本の取材で知り合った映画監督の飛坂に恋をしてしまいます。

恋愛慣れしていないアイコの恋心は駆け引きなどなく真っすぐに飛坂に向かって行きます。一方、飛坂は恋愛相手には不自由しない派手な業界に身を置き、恋愛経験も豊富です。

求め合い傷つけ合う2人の恋愛の行方は…。恋愛小説ではありますが、強く真っすぐに生きようとする1人の女性の成長物語でもある、清々しい1冊です。

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「よだか」ってどういう意味?

宮沢賢治の『よだかの星』という物語に由来しています。

”よだか”はあの美しいかわせみやはちすずめの兄さんでしたが、どういうわけか実に醜い鳥でした。

よだかは鋭い爪もくちばしも持っていなかったので、どんなに弱い鳥でもよだかを見ると平気で悪口を言うのでした。

名前の中に”たか”が付くのが気に入らないと、たかからは「名前を変えろ」と文句を言われています。

「神様がくださった名前だから無理です」と言っても聞き入れてくれず、ついにたかは「明後日の朝までにそうしなかったら、つかみ殺してしまうぞ」と言いました。

よだかは遠くの空の向こうに行ってしまおうと決心し、お日さまに「あなたのところへ連れてってください」と頼みましたが「星に頼んでごらん」と言われました。

西の星や南の星、北の星、東の星に「あなたのところへ連れてってください」と頼んでも、てんで相手にされず、よだかは力を落として地面へと落ちていきました。

もうあと少しで地面に足がつくというとき、よだかはにわかに空へと舞い上がりました。寒さで息も体も凍りつき、よだかはしびれるように意識が遠のいていきました。

しばらくたって目を開けると、よだかの体は青く美しい光になって燃えていました。そしていつまでもいつまでも燃え続けました。

小説のあらすじは?

前田アイコ、生まれた時から左目の頬にかけて青いアザがあります。

成長するにつれて、アザのことを言われたりするのも辛かったけれど、アイコを一番苦しめたのは「可哀想」という言葉でした。

生まれた時からずっと自分は可哀想だったの?同情という他人の優越感を感じるたびに、心はどんどん尖っていくようになりました。

期待したり変な夢を見たりしない…そう誓って、他人とは距離をとって、ひっそりと学校生活を送り勉強に打ち込んでいました。

高校2年生のとき、担任の先生に頼まれて入った「物理部」がきっかけで物理に興味を持ち、猛勉強の末に国立大学の理学部物理学科に合格することができました。

大学に入ったら今度こそ…という思いが湧き上がってきましたが、期待して傷つくのはもう嫌とさらに勉強に打ち込む日々を過ごし、大学院にまで進むことになりました。

アイコ大学院1年目の夏、中学校時代からの友達で小さな出版社で働くまりえからメールを受け取りました。

「顔にアザや怪我のある人たちのルポタージュを作ることになったので参加してほしい」という内容でした。

まりえの頼みだし、自分と同じような思いを抱えている人たちのためなら…という気持ちでアイコは申し出を受けることにしました。

インタビューを受けた後、編集者の人から「本の表紙をお願いできませんか」と言われびっくりしましたが、軽薄な本でもないし一生に一度のことかもしれないと、アイコは受けることにしました。

「顔がわたしに教えてくれたこと」と題した本が送られてきました。化粧気のないアイコの顔はかすかに警戒心をにじませながら、強張った瞳がこちらを見据えていました。

「顔がわたしに教えてくれたこと」は大きな話題になり、なんと映画化の話が上がりました。しかもすごくきれいな女優をキャスティングした恋愛映画だと言います。

アイコは泣いて抗議しましたが、すでに飛坂逢太監督と対談のセッティングまでしてあると言います。

飛坂が感じの悪い奴だったら喧嘩してやるとまで思って臨んだ対談でしたが、飛坂は開口一番「あの写真大好きだったんです。きっとすごく芯が通っていて、頑張ってる人なんだって」と言い、それを聞いたアイコは涙が止まらなくなりました。

それから後の時間は、男の人は自信を奪うだけの存在だと思い込んでいたアイコにとって、大いにしゃべり大いに笑い夢のような時間でした。

雑談で「日本酒が好き」という話をすると、飛坂は「今度おすすめの日本酒があるお店、お連れします」と言いました。社交辞令だと思いながらもアイコは心が踊っていました。

出版社の人たちも一緒に飲みに行くことになった帰り道、飛坂はもう一軒とアイコを誘いました。交差点の真ん中でいきなり飛坂は「キャッチボールしよう」と言い、ポケットから出した白い包みをアイコに向かって投げました。包みの中にはプレゼントの手鏡が入っていました。

飛坂からもらった手鏡を握りしめて、飛坂の監督作品「十四歳」のDVDを鑑賞しました。

14歳の女の子がバスの中で会うだけの高校生の男の子に恋をする物語です。届かない想いはかなりの数の手紙へと姿を変えていました。 

その手紙の全てを持ってバスに乗った月曜日の朝、女の子はよろめいて、持っていた手紙をばらまいてしまいます。

男の子は何も知らずに一緒に封筒を拾ってくれましたが、大量の封筒に書かれた自分の名前を見て凍りつき「気持ち悪」と言い残してバスを降りていきました。

女の子は家の裏庭で落ち葉と一緒に手紙を焼きながら「ごめんねお母さん」とつぶやきました。

飛坂はこんな風に女の子の気持ちを拾い上げてくれる人なんだと気づいたアイコは、完全に飛坂に恋をしてしまっていました。

大学院の研究室のミュウ先輩(筧奈緒美)に着いてきてもらって、飛坂と2人で飲みに行く服を買いに行くことにしました。新しい服を買うためにバイトもしました。

初めて2人で約束した日、焼肉を食べてしこたま酔っ払っての帰り道、アイコは「私のことどう思ってるんですか」と飛坂に聞いてしまいました。 

曖昧に答える飛坂に「次はいつ会えますか」と単刀直入に聞いてしまうアイコ。もう心のどこにも余裕なんてありません。

飛坂は、もうすぐ撮影に入るから2か月くらい連絡が取れなくなると言って、アイコを抱きしめて左のまぶたに優しくキスをしました。 

2か月後、ようやく撮影が終わって東京に戻ってくる飛坂を品川駅で出迎え、アイコはゆっくりしたいと言う飛坂の自宅に行くことになりました。 

飛坂の部屋で鍋を食べながら、アイコは自分には赤ん坊の時の記憶があるという話をしました。

アイコの顔のアザがどんどん広がっていき、2人目の子供を流産した母親は、自分を責めて手首を切って自殺未遂のようなことを起こしたのを見たのだと…。

次の映画の下見で野外の能を見るという飛坂に着いていった帰り道、男の子たちの集団の1人がアイコの顔のアザを悪くいうのが聞こえてきました。飛坂はその男を引っ張り「謝って」と言いました。

「一緒にいる時に悪く言われたら、反論する責任が僕にはある」という飛坂の言葉を聞いて、アイコはもう自分の気持ちが抑えられなくなり「好きです」と言ってしまいました。

「僕と付き合うと苦労するよ。アイコさんを幸せにすることはできないと思う」と言われましたが、何もいらないとアイコは強く深く頷きました。

朝のニュース番組を見ていると「昭和の名優・双見恭介死去」のニュースが流れました。若い女優と再婚してすぐに飲酒運転で事故を起こし、その女優が亡くなったことで世間を大いに騒がせた俳優です。

「最期を看取ったのは息子で映画監督の飛坂逢太さんでした」という言葉が流れて、アイコはテレビの前で固まってしまいました。

2週間経ってやっと飛坂と連絡が取れ会うことになりました。

「ただ僕の話を聞こうとしたのはあなただけだ」と父親が亡くなったことを純粋に悲しむ飛坂は、アイコの頭をすっぽり抱きしめて涙を流していました。

そのまま飛坂に誘われ2人はホテルへと向かいました。

アイコの誕生日が来週だと聞いて、飛坂はアイコの行きたいところへ行こうと誘ってくれました。

牧場で楽しい一日を過ごした後、飛坂はアイコに誕生日プレゼントをくれました。Aの文字のチャームと雫型の赤い石をあしらった素敵なブレスレットでした。

家まで送ってくれた飛坂は、玄関先で会ったアイコの母親に「少し前からお付き合いさせていただいてます」と挨拶をしました。

母親は飛坂に夕食を食べていくように誘い「アイコはあなたのいる世界のような特殊な価値観や独自のルールの中で生きてはいない」と言いました。

とても嬉しい一日だったはずなのに、アイコはなぜか心が重く感じました。誕生日を祝ってくれたまりえにも飛坂のことは言えませんでした。

そんなある時、コンビニの雑誌棚で目にした文字にアイコは凍りつきました。「城崎美和、昭和のスキャンダル王・双見恭介の息子と路上のキス」

飛坂はアイコに、父親の葬儀で気持ちが弱っていたと言い謝ってくれましたが、アイコはどうしても許す気持ちになれませんでした。

飛坂に「アイコさんは強いから」と言われ、責める気持ちが収まらなくなったアイコはついきつい言葉を放って、2人は喧嘩別れしたような形になってしまいました。

アイコは形成外科に行って、アザを消すためのレーザー治療についての話を聞きました。自分さえその気になれば簡単にできることだけど、アザが消えたところで一体自分の何が変わるのかがわからなくて、決心することはできませんでした。

学会が近づいて研究室に泊まり込むことも多くなってきました。夜中に一人で作業をしていると、後輩の原田くんが現れました。

泣いていたことを気づかれて、アイコが「普通の女の子になりたいとずっと思っていたのに、できることがわかったら本当にそうしたいのかわからなくなった」と話すと、原田くんは「多数派って自分で選んでるわけではなくて右へ倣えしてるだけの人たちだから、そんなに素晴らしいものでもない」と言い、コーヒーを入れてくれました。

学会のあった長崎で原田くんに坂本龍馬のキーホルダーを買ってあげると、原田くんはそのキーホルダーを大事にしてくれて「実はアイコ先輩のことが女性として気になってる」と言いました。

ミュウ先輩が会社のバーベキューで大やけどを負い、2度の皮膚移植手術を受けたと聞き、アイコはミュウ先輩に会いに行きました。それでも会ってなんて声をかければいいのかわからなくて、病室を目前に思わず飛坂に電話をしてしまいました。

飛坂の「アイコさんの真面目さや真剣さを、その先輩は欲してるんだよ。僕がそうだったから、よくわかる」という言葉に背中を押され、アイコはミュウ先輩の病室を訪れました。

ミュウ先輩が初めて弱音を吐く姿を見て、アイコはアザを取るのをやめたこと、アザのおかげで自分は信頼できる人とだけ付き合うことができたこと、ミュウ先輩がその一人であること、これからは自分がお返ししていきたいと思っていることを話しました。

飛坂にお礼の電話をして、一度ちゃんと話そうと会う約束をしました。研究室から待ち合わせの場所に行く前にシャワーをしていこうと思ったアイコは、普段あまり使わない階のシャワー室を使うことになりました。

シャワーを終えて出ようとするとドアが開きません。携帯電話は研究室に置いてきてしまったし、声をあげても誰にも届きません。約束の時間に間に合わない…と、出ることだけに必死になり、気が付いたらシャワー室のドアのガラスをデッキブラシで叩き割っていました。

ガラスが割れる音を聞いて駆け付けてきてくれた原田くんに携帯電話を取ってきてくれるように頼み、慌てて飛坂に電話をすると「急な打ち合わせが入ったから日を変えてほしい」と言われました。

自分だけがこんなに必死で、まったく噛み合わない飛坂との関係性にアイコは限界を感じていました。求められる幸せを知ってしまってからは、待つだけの自分には戻れないことを悟ってしまいました。

アイコは飛坂に「ありがとう」を告げて、電話を切った後一人で泣きました。

ミュウ先輩にお化粧を教えてもらって、アイコは原田くんと買い物に出かけました。原田くんはアイコがアイスクリームを食べている姿を見て「可愛いですね」と言いました。

男の人から「可愛い」と言われたのは生まれて初めてのことでした。アイコは今日という日のことを一生忘れないと思いました。

飛坂が監督した映画で「あなたの中の数えきれないほどの星に見守られて、僕は初めて泣いた」という言葉を聞いて、アイコは飛坂と出会って、好きになって、本当によかったと心から思ったのでした。

小説を読んだ感想

生まれた時から当たり前のようにあるアザが、実は両親を悲しませていたり、他人からの同情を買っているものだと知ってから、アイコは急に心を閉ざしてしまいます。

そんなアイコが恋をすることで、誰かを必要とし必要とされることの”幸せ”と”辛さ”を痛いくらいに知っていくことになります。その姿に健気な強さを感じ、単なる恋愛小説の枠には収まらない、1人の女性の成長と生き方に共感する物語です。

誰にでもあるコンプレックス。それを悪く言う人もいるかもしれないけれど、原田くんのように多数派に流されず正しい方向から物事を見ることができる人もいる訳で、そういう人と巡り会えたのもアイコが真っすぐに正しく生きてきたからだと思います。

ミュウ先輩が火傷を負ったことで、自分以外の人の苦しみを想像する方が辛いことがわかったアイコは、きっと両親や自分のことを大事に思ってくれている人の気持ちも理解できて、今よりもっと強く優しくなれるのでしょう。

途中までは飛坂さんとアイコのすれ違いにモヤモヤして、2人がうまくいけばいいのに…と思いながら読んでいましたが、最後は納得の結末。

飛坂さんはアイコにとって忘れられない初恋の人になることは間違いないと思いますが、原田くんはそんなことも全部ひっくるめてアイコを受け入れる器を持った人なんじゃないかな。

登場人物がみんな完璧じゃなくて、どこか自分にもあるなーと思える不完全な部分を持っているので、胸に染みてくる物語です。

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