映画『悪い夏』原作小説のあらすじとネタバレ

ケースワーカーとして働く佐々木守。生活保護受給者の面会に巡回する日々を送っている。同僚の高野洋司が受給者を脅し肉体関係まで迫っていることを知り、同期の宮田有子と共に調べることになった。

高野が林野愛美の部屋に出入りしていることをつかみ、宮田とともに愛美の部屋を訪れた守。愛美の娘の美空にクレヨンをプレゼントしたことがきっかけで、愛美の部屋へ通うようになっていった。

生活保護の不正受給を収入源とするヤクザの金本に目をつけられ、高野も守も破滅の一途をたどっていく。

不正受給が横行する一方で、本当に困窮していたシングルマザーは生活保護が受けられない。現代社会が抱える闇と悲劇を余すところなく描いた壮絶な物語です。

文句なしの第37回横溝ミステリ大賞優秀賞受賞作!

スポンサーリンク

『悪い夏』のあらすじ

船岡市役所の生活福祉課に勤務する佐々木守、26歳。日々の仕事は独居老人や生活保護受給者の面会。生活保護の不正受給者の増加は社会問題となっており、世間の風当たりも強い。

働きたくても働けないのではなく働く意思のない受給者と対面し、悪態をつかれるたび守の心はすり減っていく。

ある日、同僚の宮田有子から相談があると呼び出された守は、先輩ケースワーカーの高野洋司が受給者を恐喝してるかもしれないという話を聞かされた。タレコミの電話があったらしい。実際、高野は受給者の林野愛美(22歳)を脅し体の関係も迫っていた。

友人の莉華の頼みでセクキャバで短期間働いたときに、たまたま高野が客としてやってきた。高野は働いていたことを内緒にし受給額を増やす見返りに、受給額の一部を高野に渡すことと体の関係を強要してきた。

守の担当する生活保護受給者の1人、山田吉男。7年前、嫁は娘を連れて出ていった。タクシー運転手として働いていたが腰痛で働けなくなったときに、知り合った森野組の構成員・金本龍也から生活保護の受給を勧められた。

それ以来、山田は受給額の半分を金本に納めることになり、それでは生活していけないので最近ではMDMAの売人をやらされていた。

山田が金本が経営するセクキャバ店「ミザンス」に行くと、莉華が愛美を連れてきていた。莉華は愛美はケースワーカーに脅されていることを金本に語った。

 金本は、路上生活者をかき集め、愛美を脅している高野を脅迫して生活保護申請を通させるという計画を思いついた。早速、高野を脅すための映像を撮るために、山田をつかって愛美の部屋に盗撮用のカメラが取り付けられた。

金本は元々、八代組の構成員として新宿で生きていた。3年前、兄貴分の戸丸をトラブルから殺してしまい八代組にいられなくなった金本は、組長の犬飼の口利きで森野組へと移った。経済ヤクザを自負する金本は、貧困ビジネスを森野組への置土産として新宿に戻る手はずを整えているところだった。

宮田からの指示で守が高野の尾行をしてみると、確かに高野は面接日でもないのに林野愛美の部屋を訪れていた。宮田と高野は愛美の部屋を訪れた。

宮田が愛美に事実確認をしても歯切れの悪い返事が返ってくるだけで、高野からの恐喝を認めようとはしなかった。宮田と愛美が話をしている間、守は愛美の4歳の娘・美空(みそら)の相手をしていた。

同じころ、高野はミザンスに呼び出され、証拠の映像を見せられていた。ところが金本の元に愛美から電話があり、高野の愚行は同僚にばれているらしい。高野が使えないことが確定して金本は激怒した。

ボコボコにされた高野は、それ以降一度も職場に顔を出すことなく仕事を辞めた。

美空に新しいクレヨンを買ってあげる約束をしていた守は、クレヨンとお絵かき用のノートを買って再び愛美の部屋を訪れた。愛美に寄りかかられ抱きすくめられた守は、初めての経験に守はぼーっとなってしまった。

山田は妙案を思いついた。愛美に佐々木を誘惑させて第二の高野に仕立て上げる。もちろん金本には内緒だ。守に山田の受給額を最大限引き上げさせて、大金を脅し取るくらいはできそうだ。

その日以来、守は美空に会いたいという理由をつけて愛美の部屋を訪れるようになった。美空を連れて公園で遊んだり、一緒に料理を作って食べたりしているうちに愛美は守と一緒にいる時間が大切になってきた。

愛美と守は毎日体を重ねていたが、守はEDのため一度も成功したことはない。愛美はそれでも幸せだった。

突然、莉華が愛美の部屋を訪ねてきて、愛美は男と半同棲生活をしていることが金本にばれてしまった。愛美も山田も金本に痛めつけられ、高野の代わりに守をターゲットにする作戦に手を貸すことになった。

愛美はMDMAをバイアグラだと嘘をついて守に飲ませた。さらに守が愛美の体をむさぼる姿やお金を欲しがる様子などを映像に収めた。

金本が守の前に現れ、守は愛美にはめられたことを悟った。守は金本の手によってシャブ漬けにされ、金本が連れてきた路上生活者の生活保護申請を次々と受理していく業務をこなしていった。

夕方になり覚醒剤が切れてくると、守はとたんに不穏な状態となる。そんな時、子どもを連れた女性がやってきた。古川佳澄(32歳)は生活保護を受けたいと申し出たが、イライラを募らせていた守は佳澄に説教をして罵詈雑言を浴びせかけた。

数日後、警察が事情聴取に守の元を訪れた。古川佳澄が子どもと無理心中をしたと言うのだ。

4年前トラック運転手だった夫の勇一郎が居眠り運転が原因で事故死して以来、佳澄の生活は困窮していた。夜中の倉庫の仕事にようやくありついて何とか最低限の生活のめどはついた。ところがお金があるのに万引きの癖がやめられなかった。

ある日、マヨネーズをトートバッグに入れて帰ろうとして万引きGメンに捕まった。そのせいで倉庫の仕事もクビになり、息子の勇太は学校でいじめられるようになった。

最後の勇気を振り絞って生活保護の申請に向かったが、そこでも罵倒され、生きる望みをなくしたようだ。

守はもう生きていきたくなかった。愛美と一緒に死ぬつもりで包丁を手にした。愛美も「いいよ」と言った。その時莉華が訪ねてきた。声を荒げる莉華に向かって守はすっと包丁をつき出した。包丁は莉華の腹に沈んだ。

金本が莉華を運んでいき、山田は言われた通り守を縛って拘束した。数時間後、警察官を名乗る男が訪ねて来たが、それは高野だった。高野はナイフを手にしていた。全員殺されると思った瞬間、コンコンとドアをノックする音がした。

入ってきたのは宮田有子だった。宮田は自分を捨ててこんな小娘に手を出した高野が悪いとなじり始めた。高野と不倫関係にあった宮田は正義感からではなく高野を追い詰めるために高野の行動を調べていたのだった。

高野と宮田が痴話喧嘩を繰り広げる中、愛美は美空を連れて窓から逃げようとしたが、美空は守もいっしょじゃないと嫌だと言った。

金本が戻ってきた。金本は守の始末を山田に命じた。さすがに人殺しの片棒は担げないと拒否すると、金本は逆上して山田を投げ飛ばした。隠れていた高野と宮田の姿もあらわになると、高野はナイフを握りしめ金本へと突進していき、現場は修羅場と化していった。

高野と山田は金本に刺された。そこへパトカーの音が近づいてきた。

映画『悪い夏』の見どころ

なんとも救いようのない後味の悪い終わり方。これ、映画でもこの終わり方をされると、かなりどんよりして出てくることになるかも。

原作では、数年後の佐々木守がどうやら引きこもり生活をしていて社会福祉事務所の職員がしつこく訪ねてくるというエピローグが描かれています。他の人達はどうなったのか一切わからないままですが、守の部屋に誰かから送られてくる絵が貼られていることから、愛美と美空はどこかで元気にしているのがうかがえます。

守の愛情に触れて愛美と美空が新しい生活に一歩踏み出せていたのだとしたら、それだけが救いですね。

生活保護の不正受給は実際に現代の社会問題となっていて、それがヤクザの収入源や病院の不正診療という闇まで抱えています。その裏側で、本当に困窮している人が様々な理由で生活保護を受けられず命を落としているという現実。

ただただ真面目に仕事をしていた佐々木守が、その優しさゆえにとんでもない負の連鎖に巻き込まれていく悲劇。

オカルトやホラーよりも実は人間が一番恐いことを、そして誰もがその闇に落ちないという保証はないのだということ思い知らされる超ド級にえげつない作品でした。

映像で見るともっと突き刺さるのではないかと思います。せめて映画では人間の優しさが感じられる、もっと救いのある終わり方が少しでも描かれていますように( ̄人 ̄;)

『悪い夏』を電子書籍で!

2024年1月28日時点の情報となります。 オフィシャルサイトにて必ず最新の情報をご確認ください。

ebookjapanで初めてログインする方は70%OFFクーポン配布中(6回利用可)!

U-NEXT 748円
music.jp 748円
amazon prime 673円(Kindle版)
748円(紙の文庫本)
ebookjapan 748円
Booklive 748円
コミックシーモア 748円
honto 748円
dブック 748円
Amebaマンガ 748円