映画『碁盤斬り』原作の古典落語とは違う結末とあらすじ

草薙剛さん主演の映画『碁盤斬り』。原作は古典落語の『柳田格之進』という人情物の名作です。

曲がったことが大嫌い清廉潔白な柳田格之進は藩を追われ今や浪人となっていました。貧しいながらも娘のお絹とつつましく正しい暮らしを送っています。

ひょんなことから萬屋源兵衛という質屋の主人と仲良くなり、碁を興じる仲となりました。源兵衛は柳田格之進の人柄に惚れこんでいました。

萬屋で開かれた月見の宴の席で、格之進はいつものように源兵衛と碁を打っていました。そこへ50両のお金が源兵衛の元へと届けられます。ところが翌朝になるとその50両は消えていました。疑われたのは格之進…。

いわれのない嫌疑をかけられ50両のお金を工面することになりました。動いたのは娘のお絹でした。吉原へ身を沈め50両もの大金を用意したのでした…。

映画では、原作落語に加えて格之進の妻である志乃の仇討の物語も加えられ、より鬼気迫る物語へと昇華しています。2024年最も期待されている映画の一つです!

【主なキャスト(敬称略)】
草薙剛:柳田格之進
清原果耶:お絹
小泉今日子:お庚
國村隼:萬屋源兵衛
中川大志:弥吉

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落語『柳田格之進』のあらすじ

曲がったことが大嫌いな武士・柳田格之進。実直、清廉潔白を絵に描いたような性格で周りから疎まれた末に浪人の身となった。

妻を亡くし娘のお絹と2人で食べるものにも困る生活をしていた格之進は、萬屋源兵衛と碁を打つことだけを楽しみにしていた。

源兵衛の屋敷で月見をしながら碁を打った夜、格之進が帰った後、番頭の徳兵衛が碁の途中で預けた50両のことを源兵衛に尋ねた。大金が無くなったことに気付き、徳兵衛は格之進が持って帰ったのではないかと訴えた。

源兵衛は格之進に限ってそのようなことはないと突っぱねたが、自分の首を危ぶんだ徳兵衛は翌日格之進の元へ向かった。

徳兵衛は格之進に「50両を持って帰ったのではないか」と詰め寄ったが、格之進は認めない。奉行所へ届けると言う徳兵衛に、格之進は明日までに50両を用意すると約束して徳兵衛を帰した。

格之進はお絹のいない間に切腹するつもりでいたが、お絹は自らが吉原へ身を沈め50両を工面すると言った。盗んでいない以上、50両はいずれ見つかるはず。その時にその50両でお絹を身受けして、源兵衛と徳兵衛を斬ってほしいと頼んだ。

断腸の思いでお絹を吉原へ売り50両を作った。金を取りに来た徳兵衛に、格之進は決して盗んではいないことを念押しし50両を渡した。徳兵衛は万が一50両が見つかった日には、自分と主人・源兵衛の首を差し出すと約束した。

50両を持って帰った徳兵衛は源兵衛に一部始終を報告した。源兵衛は怒り格之進に謝罪に向かったが、格之進はすでに家を引き払っていた。

その年の年末、すす払いをしていると額の裏から50両が見つかった。源兵衛は小用に立つ際に自分が額の裏に置いたことを思い出した。源兵衛は格之進を探し出すように店の者に命じた。

年が明け、年始挨拶の帰り道、徳兵衛は身なりのよい侍から声をかけられた。主家への復帰が叶い出世した柳田格之進だった。

徳兵衛は50両が見つかったことを正直に話し謝罪した。

翌日、萬屋に格之進が現れた。徳兵衛をかばう源兵衛と主人源兵衛をかばう徳兵衛を前に、格之進は刀を抜いた。

勢いよく振り下ろされた刀は碁盤を真っ二つに斬った。

映画『碁盤斬り』のあらすじ

江州彦根藩の下士だった柳田格之進、藩を追われ妻を亡くし、現在は江戸にて浪人暮らし。格之進は書、篆刻、囲碁の稽古でわずかな稼ぎを得ていたが、もっぱら娘のお絹の針仕事が家計を支えていた。

貧乏長屋の八兵衛長屋の家賃は半年分も滞ったままだ。

仕事でまとまった金が入っても、八兵衛長屋の住人が博打で金をすってしまうと肩代わりしてあげたりで、生活は一向に楽にならなかった。それでもお絹は清廉潔白で実直、曲がったことが大嫌いな格之進との生活に満足していた。

吉原の鼓楼「半蔵松葉」の大女将・お庚(こう)は格之進が碁の手ほどきをしている一人。格之進とお絹を気にかけ、何かにつけ八兵衛長屋に届け物をしているお庚は格之進に好意を抱いているが格之進は全く気づかない。

お庚の碁の稽古の帰り道、雨に降られた格之進は碁会所へ雨宿りした。碁会所では賭け碁が行われていた。初めて現れたという恰幅のいい男に碁会所の客はことごとくやられて金を巻き上げられていた。

男が格之進に碁の勝負を申し込んだ。格之進は一度は断ったが、男の言葉が気に障り対局を受けることにした。勝負は互角かと思われたが、格之進の一手で勝敗が決まりかけると男は荒くれだった。

品格のない男と品格のない碁を打っていることに嫌気がさし、格之進は投了して碁会所を去った。男は不思議な心持で格之進を見送った。男の名は萬屋源兵衛。一代で質両替商を大きくしており巷では「鬼のけち兵衛」と呼ばれていた。

数か月後、格之進が質屋の前を通りかかると、中から怒声が聞こえた。格之進は店の暖簾をくぐった。

店の中では一人の旗本が家宝の大井戸茶碗が割れているから500両で弁償しろと主人に怒鳴り声をあげていた。よく見ると、主人は格之進と碁会所で賭け碁をした源兵衛。

格之進は進み出て茶碗の目利きをすると申し出た。茶碗は贋作だと見破られ、旗本は怒りながら帰っていった。手代の弥吉が引き留めるのも聞かず、格之進もその場を去った。

格之進のことが気になって仕方がない源兵衛は弥吉を伴って碁会所で格之進のことを教えてもらい八兵衛長屋へと向かった。

源兵衛は先日のことを恩に着せられて大金を要求されては困ると5両払うのでこれきりにしてほしいと申し出た。しかし格之進はこれを固辞した。

源兵衛は碁会所で勝ち碁をわざと捨てた理由を格之進に問いただした。格之進は、碁は人間と品位を磨くもので、碁を穢したくなかったと答えた。源兵衛は感服し、格之進に碁の勝負を申し出た。

格之進が勝てば5両は源兵衛が持って帰り、源兵衛が勝てば格之進に受け取ってもらう。そういう約束で、源兵衛は正々堂々と格之進と勝負した。格之進が勝ち、源兵衛は今後も碁の手合わせを願いたいと言って去っていった。

次第に心を許すようになった源兵衛に格之進は浪人になった経緯を話した。かつて格之進は藩の進物番をしていた。狩野探幽のかけ軸がなくなり、鍵を預かっていた格之進に嫌疑がかかった。すべては格之進が不正を暴いたために役職を追われた者たちの讒言だったが殿はこれを信じたようだった。

妻の志乃が心労で琵琶湖に身を投げ亡くなると、格之進は家督を弟に譲って浪人の身となった。

格之進と碁を打つようになって源兵衛は人が変わったようになった。これまで阿漕な商売をしてきたが、利の薄い商売に変えたら店は大繁盛となった。鬼のけち兵衛のあだ名は仏の源兵衛へと変わった。

秋になり、萬屋で中秋の名月を愛でる宴が開かれた。格之進とお絹も招かれることとなった。宴の途中、源兵衛は格之進を碁に誘った。離れには「四方木口」と呼ばれる立派な碁盤が用意されていた。

宴もたけなわとなった頃、伊勢屋喜助が源兵衛に用立ててもらった50両を返しにきた。受け取った弥吉はその50両を離れの源兵衛の元へと届けた。

しばらくすると梶木左門と名乗る武士が格之進を訪ねて萬屋へとやってきた。かつて格之進の部下だった左門は、無くなった狩野探幽のかけ軸が柴田兵庫のところから見つかったと告げた。

さらに左門は驚愕の事実を告げた。兵庫は格之進の妻の志乃に、格之進の身の潔白を証明してやるからと持ち掛け手籠めにしていた。志乃はそのことを苦にして琵琶湖に身を投げたのであった。

格之進が帰った後、萬屋では源兵衛に渡したはずの50両がなくなったと大騒ぎになっていた。番頭の徳次郎に言われ、弥吉は格之進の元へ50両を知らないかと尋ねにやってきた。見つからなければ奉行所に訴えるしかないと言う。

翌朝、お絹は格之進からお庚への手紙を託った。お庚に届ける途中で嫌な予感がして手紙の中を確かめてみると、切腹するのでお絹のことを頼むということがしたためられていた。

飛んで帰ったお絹は、まさに切腹しようとしていた格之進に、母の仇も討たず濡れ衣を着せられたままでいいのかと詰め寄り、家を飛び出して行った。

しばらくしてお庚がやってきた。格之進のためにお絹は吉原に身を沈めるつもりだと言った。お庚は50両を手渡し、大晦日までに返してくれればお絹を無傷で返すが、それを過ぎたら遊女として店に出すと言った。

格之進は50両を萬屋に持っていった。盗ったはずもない50両が出てきたら、格之進は弥吉と源兵衛の首をもらうと言って帰っていった。格之進が50両を持ってきたことを聞き、源兵衛は八兵衛長屋へと飛んで行ったが時すでに遅し、格之進は長屋を引き払った後だった。

兵庫は藩を出奔し賭け碁をしながら中山道を流れているらしい。格之進は足を引きずった大男が賭け碁をしていたという噂話を聞いてはその宿に赴いたが兵庫は見つからなかった。

格之進が仇討の旅に出て3か月が経とうとしていた。左門は殿に事情を話し、仇討赦免状を携えて格之進と合流した。今年も残すところあと10日となり、格之進は大晦日に江戸で大きな賭け碁の会があり兵庫と思しき男が向かっていることを知った。

格之進と左門は江戸に戻り、賭け碁か行われる碁会を探したが見つからない。格之進はかつて痛い目にあわせた権蔵を訪ね、賭け碁の場所を探らせた。

料理茶屋「岩戸」では飛び入りは受け付けないと言われたが、格之進は会を仕切っている長兵衛に、どうしても会いたい者がいると頭を下げた。長兵衛は格之進と左門を中へと通した。

かくして、格之進は柴田兵庫と再会した。

一方、萬屋では渡り廊下の額を来年の商訓に掛け替える作業が行われていた。額を外すと何かが落ちた。それはなくなったと思っていた50両だった。碁の途中で厠に行こうとした源兵衛が置いたまま忘れていたのだった。

格之進は兵庫に、互いの首をかけた碁での対決を申し出た。一進一退の攻防を繰り返していたが、やがて決着がつこうとしたその時、兵庫がいきなり格之進に斬りかかってきた。

座敷は大乱闘となった。庭に転がり出た格之進の元へ長兵衛から刀が投げられた。斬り込んできた兵庫に向かって格之進が刀を振り上げると、兵庫の腕は斬り落とされていた。

もはやこれまで。観念した兵庫は、切腹する代わりに格之進に介錯をしてほしいと頼んだ。格之進は兵庫の首を斬り落とした。

浅草寺の鐘が鳴った。格之進と左門は吉原へと駆けていったが、あと少しのところで門は閉まってしまった。そこへ50両をお絹に返そうと弥吉が現れた。

格之進と左門は萬屋へと向かった。50両が出てきたら弥吉と源兵衛の首をもらうという約束である。格之進は刀を振り下ろした。四方木口の碁盤が真っ二つに割れていた。

翌朝、格之進はお庚の元へお絹を迎えに行った。八兵衛長屋では徳次郎が格之進とお絹を迎える準備をしていた。徳次郎は格之進を疑ったのは源兵衛でも弥吉でもなく自分だと心から詫びた。

弥吉とお絹が互いに想い合っていることに気付いていた格之進と源兵衛は2人を夫婦にすることにした。翌月には祝言が挙げられた。

格之進は旅に出た。兵庫から取り返した狩野探幽のかけ軸を殿に返すのではなく、売った金でかつて格之進が不正を暴いて藩を追われることになった者たちの窮地を救いたいと思っていた。

奥能登から赤穂、讃岐に向かい全ての金を渡し終えて江戸にもどったのは1年後のことだった。

格之進が旅に出ている間に、源兵衛は弥吉に店を譲ってある日突然姿を消した。

弥吉とお絹が夫婦になって10年。お絹は8歳になった息子を連れて彦根に母の墓参りに行きたいと言った。格之進とお絹とお絹の息子は彦根へと旅立った。

島田宿に着いたが、大雨により大井川は川止めになっており旅籠はいっぱいで3人は泊まるところがなかった。

軒先で雨宿りをしていると、男に声をかけられた。男は宿でなくてよいなら部屋は用意できると言って井筒屋の立派な離れへと3人を案内した。

欄間に掛けられた書を見て格之進を息を飲んだ。かつて自分が書いた書だ。床の間に置かれた碁盤は膠と楔でつなぎ合わされ磨き上げられていた。かつて格之進が真っ二つに斬った「四方木口」に違いなかった。

果たして、現れた主人は源兵衛であった。

お絹は息子の「源兵衛」を源兵衛はに紹介し、格之進は久しぶりに源兵衛との碁に興じた。

映画の見どころと原作落語との違い

落語そのものが名作と言われる人情物なのに、さらにそこへ格之進が妻・志乃の仇討へと旅に出る物語が付け加えられています。清廉潔白で実直な格之進が武士の本懐を貫くことで、より気迫が感じられる物語へと昇華されていますね。

それだけでは格之進が頭の固い単なる堅物で終わってしまうところ、殿に返すべき狩野探幽のかけ軸をお金に替えて自分が不正を暴いたばっかりに藩を追われることになった者たちに分けていくのは、なんだか人間味あって心温まるエピソードでした。

草薙剛さんのたたずまいが柳田格之進そのものなので、この物語はあてがきなんじゃないかと思うくらい見る価値がある映画だと思います。

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10年後の格之進と源兵衛の再開は映画にはなく小説ならではのエピソードです。ほっこりと温かい感動に包まれてください。
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