映画『渇水』の原作短編小説の切ないあらすじとネタバレ

主人公の岩切は、水道料金を滞納する家庭を訪れ水道料金を徴収し、払ってもらえない場合は停水執行するのが仕事という市役所職員。

停水執行に訪れた家で出会った小学生の姉妹のことがずっと気になっています。

2022年、生田斗真主演で映画化されることになった『渇水』。1990年、文學界新人賞を受賞した河林満の名作と言われています。

辛く切ない結末に、後味の悪さが尾を引く…なんとも複雑な読後感…。

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小説のあらすじと結末は?

岩切、36歳。仕事は水道料金を滞納している家を訪問して、状況を理解した上で分納計画を立て、その書類に約束の捺印をもらうこと。そして約束が果たされない場合は停水執行することだ。

相棒の木田とともに小出秀作宅の水道を停水執行しているとき、娘2人が帰ってきた。何度か会ったことのある小3の久美子と小5の恵子だ。

「お水が止まってしまうの?」と聞いた恵子に、岩切はバケツとか洗面器に水を溜めるように言った。

小出家にはもう何度も停水予告をしているが、その度に「みずをとめないでください」と書かれた手紙がメーターボックスに入っていて、書類さえ作ることができていなかった。小出家は3年分の水道料金を滞納していた。

停水してから木田に買ってきてもらったアイスキャンディーを4人で食べながら母親が帰ってくるのを待ったが、母親とはその日も会えなかった。

岩切は一度だけ小出秀作に会ったことがある。近所の評判も悪くはない。しかし、もう何か月も自宅には帰っていないようだった。

岩切は継母との折り合いが悪く、17歳の時に家を飛び出した。全日制高校を中退し、定時制高校に通い、いろいろな仕事を転々とした後、市役所水道部の職員として採用された。

アルバイトに来ていた妻と知り合い、30歳の時に結婚した。

来年小学校に上がる娘がいたが、岩切は本当は子どもなどほしくなかったし、家を建てたいと思ったこともなかった。

2週間前に妻は娘を連れて実家に帰ったきり戻ってこない。

猛暑のS市は給水制限が出されていた。そんな日でも停水執行に出向いていく。止水栓を止め、量水器をはずし、家主がいればその理由を説明し、水道料金を徴収する。

「帰れ」「止めんな」と逆切れされることはしょっちゅうだった。

土曜日、岩切は木田と一緒に滝を見に行った。夏休みの家族連れが多くいるのを見て、娘に想いを馳せると同時に、前日に停水執行した小出家の娘たちのことを思った。

そして、東京中の水を止めて、総理大臣と「水と空気と太陽をただにしろ」と取引する妄想をくり広げては、2人で酒を酌み交わした。

月曜の朝、岩切は職場に着くと課長に呼ばれた。行ってみると刑事が来ていた。

日曜日の朝早く、小出秀作の娘2人が電車にはねられたと言う。久美子は即死、恵子は風圧で飛ばされて重体だった。

運転士の証言から自殺と思われるとのことだった。

小説を読んだ感想

幼い少女2人が線路に寝転んで自殺を図るという、まったく救いのない終わり方で…後味悪いです…。

「水と空気と太陽はただでいいんだよ」と言いながら、水道料金を長期滞納している家庭の停水執行という仕事をしている岩切。

本当は子どもなんて欲しくなかったと言ってるけど、娘のことはかわいいと思っているし、育児放棄されている2人の姉妹のことが気になって仕方がない優しい男です。

きっと岩切は何も悪くないのに「もっと何かしてあげられることはなかったのか」と悔やんでるはずで、そういう意味でも救いのない物語でした。

一緒に収録されている3編も「死」を扱った物語です。

「死」というものは他人に起こったことを見ることはできても、自分の「死」は自分で見ることはできません。

自分が死んだあと、何が話され何が起こるのかわからないまま死んでいくしかないのです。当たり前のことなんだけど、なんだか虚しさを感じずにはいられない、ちょっとヘビーな読後感…。

生田斗真さん主演で映画化されることになりましたが、映画はもっと救いのある物語になるといいなぁ。白石和彌監督の「生の希望」という言葉を信じましょうか…。

『渇水』に収録されている作品

『渇水』は短編集です。表題を含め4つの短編小説が収録されています。いずれも決して幸せとは言えない「死」にまつわる物語です。

【海辺のひかり】

30年前、実家に帰省中30歳の若さで急死し実家の墓に埋葬された母。改葬するために墓を掘り返すことになった。

【千年の通夜】

中学校の同級生・田島が急死した。通夜に集まった同級生たちは田島の思い出話を始めた。

【金棺出現】

父親の死以来「死」に対して尋常ではない関心を寄せる男の手記。

『渇水』を購読する方法は?

色々調べてみましたが、電子書籍は販売されておらず、新品の書籍も購入するのは【2022年5月31日現在】では無理みたいです。

初版が1990年の発行で、Amazonでは中古本に1万円もの値段が付いて販売されていました。

図書館で借りて読みましょう。