『ボクたちはみんな大人になれなかった』の続編『これはただの夏』あらすじは

燃え殻さんの人気小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』には続編があります。

『ボクたちはみんな大人になれなかった』は燃え殻さんの自叙伝的な要素を多分に含んでいる物語でしたが、『これはただの夏』は、燃え殻さんが体験したことのない空想の世界を描いています。

なんてことない小さなちいさなバグみたいな出来事なんだけど、ボクの生活に色やにおいや温かさを運んできてくれた、愛おしくて忘れられない数日間の出来事。

そんな思い出があれば毎日を頑張れちゃうかもしれないな。

 

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小説のあらすじは?

テレビ制作会社に勤務するボクはテレビ局の敏腕ディレクターの大関とともに、人気お笑い芸人「マネタイズ」のお祝いメッセージ動画の力を使って金持ちの結婚式に潜り込んだ。

完全アウェーの状況でボクが二次会に行こうかどうしようかと思っていると、新婦の友人でチアリーディングをした女の子たちが行くというのを聞いて大関が俄然やる気を出し、一緒にタクシーに乗り合わせて行くことになった。

女の子たちの中でもひときわエロい感じの黒いワンピースの女の子と一緒にタクシーに乗り込み、それがきっかけで二次会の間も彼女とずっと話をしていた。

大関が酔いつぶれたのをいいことに、僕は彼女を連れだした。…ような気がする。

目が覚めたのは朝8時を少し回ったファミレスで、目の前には彼女が座っていた。

彼女の名前は優香というらしい。いっぱい話したと優香に言われたけれど、ボクはそのほとんどを全く覚えていなかった。

ヨレヨレになりながら自宅に帰った。タクシーを降りてマンションのエントランスを通り抜けようとしたら、小学生くらいの女の子がソファで漫画を読んでいた。

前にも見たことがある…。登校拒否なのかな?

「学校には行かないの?」と問いかけると「傘がないの。いまは雨宿り」という答えが返ってきて、ボクは傘を貸してあげることにした。

女性用の折り畳み傘を持っていくと「私この傘の女の人に会ったことある」と言われた。女の子はどうやらボクと同じ階に住んでいるらしく、10歳の小5だそうだ。

仕事をさぼって惰眠をむさぼり、ようやく起き上がったのは夕方。顔を洗っていると貸した傘がエントランスに入っていくのが見えて、ボクは着替えて部屋を出た。

どうしてなのかわからないけど、子ども嫌いのボクがもう一度あの女の子と話がしたくなったのだ。エレベータで下りていくと、女の子は朝と同じようにエントランスのソファで漫画を読んでいた。

女の子の名前は明菜といった。中森明菜の明菜。

「お腹がすいた」というので2人でモスバーガーに行った。明菜と向かい合っててりやきバーガーを食べていると、窓の外にやたらスタイルのいい美人が現れた。朝別れたばかりの優香だった。

優香は店に入ってきてボクと明菜が座っているテーブルに加わった。会ったばかりの3人が一緒にテーブルにすわってるなんて、なんかちょっと変な感じがした…。

ソファで寝落ちした日、しつこくなり続ける電話に出ると、かけてきたのは大関だった。

大関は、自分は末期の膵臓癌で受診して即入院になってしまったと告げた。もう一緒には仕事ができないと言う大関はいつもと同じように陽気で「F-1グランプリの発表見たか?」と聞いてきた。

F-1グランプリ=全国風俗嬢選手権

大関から送られてきたメールで、今年のF-1グランプリを受賞した人気風俗嬢は「五反田マーメイド」の「ユカ」を知り、その写真を見てのけぞった。優香だった…。

ボクはスマートフォンに「五反田マーメイド」と入力して、ホームページからユカの予約を取った。感情の波が鈍麻した40代になって初めて心が波打った。

タクシーを呼んでマーメイドに向かおうとエントランスに出ると、裸に近いような露出した服を着た女性がタクシーを降りてきて床にへなへなと座り込んだ。アルコールのにおいがプンプンする。

思わず「大丈夫ですか」と声をかけてしまった。部屋まで送って行こうとすると、エントランスの方から「ちゃんとしてよ!」という女の子の尖った声が聞こえた。明菜だった。

明菜と母親を部屋まで送ってから、ボクは「五反田マーメイド」へと向かった。

優香は客がボクだと認識してあからさまに機嫌が悪くなった。それでも気を取り直して正規のサービスを僕にほどこし「あの記事見て来店したの、あなたで7人目」と言った。

優香が「明菜ちゃんは元気?」と聞いてくるので、先ほどのエントランスでの出来事を話した。優香は「また3人で会いたいかも」と言った。

五反田マーメイドのユカのブログを読むのはボクの楽しみになっていった。その夜もユカのブログを読んでいると、インターフォンがけたたましく連打された。

出るとそこにいたのは明菜と母親だった。母親はこれからお客と3泊の旅行に行くので、何かあったら明菜をよろしくと言って去っていった。

まもなくインターフォンが鳴ったので出てみると、そこには明菜の姿。「2,3日いてもいいよね」と言いながらボクの部屋に入ってきた。

明菜がボクんちの冷蔵庫を開けて物色していると優香から電話があり、明菜がいることを知った優香は「なんだか愉しそう」と言って、ボクの部屋までやってきた。

優香と明菜は2人で楽しそうにチャーハンとスープを作った。この部屋で3人以上の人間でご飯を食べるのは初めてだ。3人で笑い合いながらご飯を食べて、優香と明菜は結局泊まっていった。

翌日、明菜を連れて、大関に頼まれたタオルを持って病院にお見舞いに向かった。

大関と明菜とボクは病院の屋上で話をした。屋上からはスカイツリーと東京タワーの両方が見えた。

大関が癌になったことも、明菜に父親がいないことも、ボクが子守をしていることも、否応なしに人生は進んでいくもの。そう言って大関は視聴率20%を突破した記念品のレアものジッポをボクにくれた。

病院からの帰り道、明菜は先に帰るから鍵をちょうだいと言う。大関が、ボクには今から仕事があると吹き込んだらしい。勝手に「五反田マーメイド」に予約を入れられた。

仕方なくボクは「五反田マーメイド」に向かった。ゲリラ豪雨に遭いびしょ濡れで到着したボクを、優香は爆笑で出迎えた。そして作ってきた”お弁当”をボクにくれた。

家に帰ると明菜が「おかえり」と出迎えてくれて、夕食に味噌汁とおにぎりを作ってくれた。今日2度目のおにぎり。最後に人がにぎったおにぎりを食べたのはいつだったろう。

ボクはもう一度明菜に「ただいま」と言った。

朝、目が覚めるとボクのおでこには「無料だからプールに行きます」と書かれた付箋が貼ってあった。

大関のところにラジオを届けに行って、ボクは明菜を探しに区民プールに向かった。ものすごい人ごみの中からボクは明菜を見つけた。

ボクが明菜と一緒にプールで潜って遊んでいると、いきなり誰かが飛び込んできた。優香だった。明菜が呼んだらしい。

3人でプールではしゃいだ後、ボクと優香はプールサイドに座って話した。優香は「明菜ちゃんは、しっかり周りと向き合って、戦って、自分の居場所を確保している」と言い「私も向き合おうかな」と続けた。

プールサイドで明菜も優香も大好きだというお笑い芸人「マネタイズ」のラジオ番組を聞きながら、明菜が「いつかまた、みんなでここに来ようよ」と言った。

「夕食、外で食べて帰ろう」と言うと、明菜が「今日は作ってほしい」と言い、ボクが焼きそばを作ることになった。明菜は美味しいと言って食べてくれた。

朝の6時、大関が「まだ死んでねえぞ」と電話してきた。雑談をしながらバルコニーに出ると、どこから飛んだ来たのかシャボン玉が飛んできた。

コーヒーを入れてチョコをつまんでいると明菜が起きてきた。明菜にもコーヒーを入れてあげた。

明菜は「誕生日だったんだ、昨日」と言った。そして「来年の誕生日、また作ってよ」と言って笑った。

「やっぱり今日の夜さ」と明菜が言いかけた時、インターフォンが3回鳴った。明菜の母親だった。体がふらつきアルコールのにおいがプンプンしていた。

明菜は慣れた様子で母親を背負うようにして、自分のうちに帰っていった。

「本当に大丈夫?」と聞くと「本当に大丈夫ってきかれたら、もう手遅れなんだって。大丈夫じゃないんだって」と明菜は答えた。ボクは「明菜は大丈夫だよ」と叫んだ。

明菜は「ありがとう」と深々と頭を下げて、母親とともに部屋へと消えていった。

タクシーを呼んで「五反田マーメイド」に向かうと、受付には初めて見る若い男がいた。「ユカさんは?」と尋ねると「ああ、お弁当の子」と言い、昨日付けで辞めたと答えた。

ユカはお客の一人一人に違うおかずのお弁当を作っていたらしく、男は「さすがF-1グランプリ!」としきりに感心しているようだった。

2日仕事で徹夜して家に帰るとポストに手紙が入っていた。差出人は明菜の母親で「急に引っ越すことになりました」と書いてあった。手紙の片隅には「またね あきな」と書いてあったが、引っ越し先は書いていなかった。

大関からまた朝の6時に電話があり「これを遺影に使ってくれ」と1枚の写真が送られてきた。

大関が自撮りした写真の奥にはスカイツリーと、満面の笑みでエアバスケをする明菜とボクの姿が写っていた。

フォーマルスーツに着替えてネクタイを持ったまま、ボクはタクシーに乗り込んだ。カーラジオからは「マネタイズ」の番組が流れてきた。

マネタイズは昔からお世話になっているディレクターから脅迫まがいのメールが届いていると紹介した。

「オレと愛しのハニーたちのために、1曲リクエストするので、絶対かけるように」というメッセージのあと「中森明菜の『北ウイング』、大関さん!なぜいま、明菜!では、どうぞ」のマネタイズ絶叫が響いた。

ボクは後部座席で黒いネクタイを何度も結び直しながら聞いていた。

小説の感想は?

色やにおいや温かさを感じさせてくれる、優しい優しい物語でした。

ボクの毎日は、仕事に振り回され、恋愛は成就せず、無機質でモノトーンなものだったのに、少しずつ色付いていく感じが心地よく感じられます。

誰かと一緒に生活するのは確かに面倒なこともあるし、時間やお金を使うことにもなるし、いっそ一人でいる方が気楽でいい。”普通”なんてクソくらえ!ってボクはずっと思ってきたような人間だったんでしょう。

誰かと向かい合って食べるとなんてことない食事が美味しく感じられたり、つまらないことほど頼まれるとなんだか嬉しかったり、誰かを心配するってことはまんざらではなかったり…。

「おかえり」と「ただいま」が言える、本当になんてことのない”普通”の日常なのですが、そんな日が当たり前に続いていくことが本当は一番の幸せなのかな。

ボクはきっと”普通”もちょっといいかも…って思ったことでしょうね。

人に頼られることも頼ることも大したことではないと思えると、生きていくのってきっともっと楽になれると思います。

そんなことを教えてくれた明菜とボクがまた会えるといいな。

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