
ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞(最優秀監督賞)を黒澤清監督が受賞されました!おめでとうございます!
高橋一生さんと蒼井優さんの、繊細でありながら力強い演技に心底魅了されました。
戦争という時代のうねりの中で、ただひたすらに狂おしく愛を信じた妻と、まっすぐに正義を貫いた夫。
ただ自分らしく生きたいと願った、彼らの行く末に待っているのは?
渾身のキャスティング
福原聡子:蒼井優
「普通に生きる」ことが難しい1940年代に、愛する夫のために強く健気に生きた女性。
折れてしまいそうな儚さと、心のうちに秘めた芯の強さの両方を、見事に表現できる文句なしの名女優ですね。
福原優作:高橋一生
一見穏やかで優しそうなのに、内面に不屈の正義をはらんでいて、危険をも顧みない大胆さ、憲兵や特高警察からの圧力にも動じることなく信念を貫き通す強さを併せ持っている男。
映画が好きで、見るだけでは飽き足らず、映画を撮ることにも興味を持ち始め、妻を主演にした「スパイの妻」という短編映画を自主制作します。
蒼井優と高橋一生が見つめ合う、「スパイの妻」新場面カット10点到着https://t.co/8xUAqSmCw3
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— 映画ナタリー (@eiga_natalie) September 2, 2020
津森泰治:東出昌大
神戸の憲兵分隊長であり、聡子の幼なじみ。聡子に好意を抱いています。
竹下文雄:坂東龍汰
優作の甥。
草壁弘子:玄理
優作が満州で知り合った、スパイの妻。
映画のあらすじとネタバレ
神戸で貿易商をしている福原優作。医薬品の商談で甥の竹下文雄を連れて満州に渡ります。
満州から帰ってからの夫の不穏な行動が気になって仕方がない聡子は、優作を問い詰めますが、優作は何も話してくれません。
満州から一緒にひきあげてきた草壁弘子という女性が殺されたと、そして優作が何らかの関わりを持っていたと、幼なじみで憲兵隊長の津森泰治から聞かされ、心がかき乱される聡子。
聡子は文雄を訪ね、優作に渡してほしいと、ノートとそれを英訳した資料を預かります。それが何なのかを聞いても優作は何も教えてくれません。
聡子は金庫の中に、そのノートと一緒にフィルムが保管されているのを見つけて、フィルムに記録されている映像を見て、ある決意をします。
聡子は、文雄から預かったノートを津森の元へと持っていき、それが証拠となり文雄は逮捕され拷問を受けることになります。
優作と文雄は、満州で草壁弘子を通じて衝撃的な国家機密を知ってしまい、その事実を世界に知らしめるために、秘密裏に準備を進めていたのでした。
草壁弘子が亡くなり、文雄が逮捕された今、優作と共に動くのは自分しかいない…。聡子は「スパイの妻」と呼ばれても、優作とともに歩いていく決心をします。
アメリカへの密航は二手に分かれて行うことになりました。聡子はフィルムを持って、優作は英訳した資料を持って、出発します。
不安に押しつぶされそうになりながらも、2週間後にはアメリカで優作に会えると信じて、貨物船の木箱の中に隠れ出航を待っていたそのとき、外が騒がしくなります。
密告があったと憲兵隊が乗り込んできて、聡子は見つかってしまいます。
「このフィルムを見ればわかります」そう言って流されたフィルムには、優作が自主制作し聡子が主演した短編映画が収録されていました。
全てを知った聡子は心から叫びました…「お見事です」
小説とは違う映画の結末は?(ネタバレ)
映画と小説では、優作がいなくなってからの聡子の描かれ方が大きく異なります。ネタバレを含みますので、これから映画を観ようと思っている方は気を付けてくださいね。
映画の見どころと感想
ほんの70~80年前のことなのに、今とは正しさの基準が全く異なり、自分らしく生きるということが難しかった時代。
聡子を突き動かしていたのは、ただただまっすぐに夫へ向けられた「愛」です。夫への愛を全うするために、甥までも捨て駒にしてしまいくらい、嫉妬に狂う心を抑えることができません。
どんなことがあっても夫と生きていくと決めてからの聡子は、それまでのお嬢様然としていた生きていたころとは全く別人のように「強い女」へと変わっていきます。
夫と二人だけの秘密を抱えているという、自分が夫を支えているという特別感が彼女を支え、背中を押していくのでしょう。
一方優作は、愛する妻までを出し抜いて、一人で亡命を果たします。あくまでも自分の正義だけに忠実に、進んでいくように見えて、少し冷たさまで感じてしまいます。でもその冷たさが、妻に対する本当の愛だったのかな、と思います。
本当は妻を巻き込みたくない…。聡子はアメリカという国に興味は無いのに、自分と一緒だからという理由だけで危険な橋を渡ろうとしている…。亡命なんてそんなに簡単なものではないはずです。自分の中の正義という使命感がなければ、成し遂げるのは難しいことだから…、聡子を置いていったのかな。
小説と違って、聡子は戦争が終わってから優作を探すためにアメリカへ渡ります。愛を貫くために…。物語の後半、聡子はどんどん強い女へと変身していきます。
こんな時代でなかったら、仲睦まじくいつまでも平穏に暮らせたはずなのに。自分らしくあろうとする姿があまりにも切なくて、胸が苦しくなりました。
お見事です。本当にその一言に尽きますね。
音楽
劇中の音楽を担当したのは「東京事変」のギタリスト・長岡亮介さん。
初めての映画音楽だったそうですが、心にしみる素敵な音楽でした。悲しみだけではなく、”愛”の美しさも描かれた音楽です。
映画『スパイの妻』視聴方法は?
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【2023年8月7日時点の情報となります。 配信が終了している可能性がございますので、オフィシャルサイトにて必ず最新の情報をご確認ください。】
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