映画『サイレント・トーキョー』反戦のメッセージ、あらすじは?

人々が色めき立つクリスマス。突如起きた連続爆破テロによって、東京は静まり返ります。

当たり前に感じていた日常が壊される恐怖の中で、私たちは何を考え何をすることができるのでしょう。

様々な人々の思惑や愛情が交錯する群像劇。時間が流れたり、過去に戻ったり、1回見ただけでは理解できない部分もあるかもしれません。

原作を読むのがおススメですが、「そんな時間ねーよ」って場合は映画を2回見るのもありです!

登場人物たちがなぜそんなことを言うのか、そんな表情をするのか…、2回目はパズルを解くようにストーリーが入ってくると思います。

主題歌となる『Happy X-mas (War is Over)』にも込められた監督の思い、人と人とのつながりについて感じてもらえたらと思います。

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主役級の珠玉のキャスト

様々な人々の立場や考え方を描いた群像劇なので、とにかく出演者が多く、一人ひとりの場面はそんなに多くありません。セリフも少なめ。

語る言葉が少ないにも関わらず、多くを語る表情やたたずまい…。主役はもちろん、わき役に至るまで名だたる映画で主役を張ってきた名優が勢ぞろいする訳は映画を見れば分かります。

朝比奈仁:佐藤浩市

犯人と思われる男。主役だけど…ほとんどしゃべりません。その存在感だけで物語を語れる佐藤浩市さんのすごさが際立つ作品です!

山口アイコ:石田ゆり子

夫へのクリスマスプレゼントを買いに来て、爆弾事件に巻き込まれる主婦。心に闇を抱えている表情は、何を表しているのか…、物語の鍵を握る人物です。

渋谷署刑事・世田と泉:西島秀俊、勝地涼

世田は首に、かつて生死をさまよったほどの傷を負っています。

原作と違って、世田と泉はハチ公前で爆発に巻き込まれます。傷を負うのは体だけではなく、心にも大きな傷が残ることがこのシーンで語られています。

来栖公太:井之脇海

テレビ局の契約社員。「バイト」と呼ばれていますが、ジャーナリズムの根幹にかかわる役です。きっと、応援したくなります。

須永基樹:中村倫也

雑誌の表紙にも載るような、成功を収めているIT企業の社長。

須永もまた犯人と思われる人物。捉えどころのないミステリアスな人物として描かれていますが、彼の心の根底にあるのは”愛”です。

高梨真奈美:広瀬アリス

どこにでもいるノリのいいOL。自分がハチ公前を冷やかして行こうと綾乃を誘ったばっかりに、綾乃は重傷を負ってしまいます。

磯山毅:鶴見辰吾

「日本を戦争のできる国にする。」「テロには屈しない。テロリストとは交渉しない。」と強気の発言を繰り返す、日本の総理大臣。

YouTuber「みきおだ」

まんまYouTuberの役で出てきます。恵比寿でも渋谷でも、クリスマスを盛り上げるために動画を撮りながら騒いでるところへ、ドカーン…

あの

タレントのあのちゃんが渋谷のハチ公前に登場。爆発物の飛散したものが頭に直撃する…ちょっと怖いシーン。

回想シーン

里中譲:毎熊克哉

自衛隊員としてカンボジアのPKOに参加していました。そこで、心に大きな傷を負って帰ってきました。

朝比奈仁:庄野崎謙

里中の部下だった、若かりしころの朝比奈仁。里中とともにカンボジアに派遣されていました。

山口アイコ:白石聖

里中の妻だった、若かりしころの山口アイコ。心の傷を負って戻ってきた夫を、献身的に支えていました。

映画のあらすじ

世間が色めき立つクリスマス・イブ。テレビ局に1本の電話がかかってきます…「恵比寿に爆弾をしかけた」

取材に出向いていった来栖公太と高沢雅也は、そこに居合わせた主婦・山口アイコと共に事件に巻き込まれていきます。

原作は数日にわたる出来事として描かれていますが、映画では12/24クリスマスイブの1日の出来事として描かれます。

お昼の12:00に恵比寿アークプレイスで爆発。これは空砲でしたが、人々を恐怖に陥れるには充分でした。

犯人の指示により、来栖公太は動画で「次の爆発は18:00ハチ公前。首相との対話を要求する。これは戦争だ。」と犯行声明を出しました。

騒然とするハチ公前には、おびただしい数の野次馬たちが集まってきます。OLの高梨真奈美と印南綾乃もその中にいました。

渋谷のレストランの予約がとれ、綾乃に須永を誘わせたのですが、須永は横浜に行く用があると断ったため、2人で行くことにしたのです。

レストランに行く前にハチ公前を冷やかして行こうという真奈美たちの前に、何かを撮影しながら人ごみを歩いていく須永が現れます。

須永を追いかけるのをやめて、レストランに向かおうとしたその時、渋谷駅のコインロッカーで、爆弾が爆発しました。

世田谷署の刑事の世田は、爆発に巻き込まれ地面にたたきつけられ意識を失いかけましたが、なんとか立ち上がり周囲を見回しました。犯人は必ずどこかで見ているはず…。

すぐそばのビルの屋上で爆発の一部始終を撮影していた来栖公太が世田に捕らえられましたが、犯人に利用されていただけだとわかりすぐに釈放されました。

爆発で吹き飛ばされた真奈美は重傷を負って病院に運び込まれた綾乃とはぐれてしまいました。そしてハチ公前で怪しい行動をしていた須永のことがどうしてもひっかかり、須永の家を訪れました。

横浜に行くと言っていたのに、ハチ公前で何をしていたのか詰め寄り、口論になって須永は出ていきます。

真奈美は須永の撮った渋谷の動画を見て犯人だと確信し、警察署に向かい、そこにいた世田に「犯人を知っている」と告げました。

須永は探偵の調査結果を元に、朝比奈が働く珈琲店に来ていましたが、そこに情報を得た世田が現れました。

須永基樹の秘密
須永基樹は朝比奈仁の息子でした。

探偵の計らいで、恵比寿アークプレイスで息子と会えることになっていましたが、爆発騒ぎでそれは叶いませんでした。

須永の自宅の留守番電話に、朝比奈から「爆弾の予告現場から50メートル離れておけ」というメッセージが入っており、朝比奈が関与していると確信します。

渋谷で人ごみを撮影していたのも、爆弾を設置したからには、どこかで必ず爆発する様子を見ているに違いないと読んで、朝比奈の姿を探していたからでした。

世田と一緒に朝比奈の住む家を訪ねると、そこには爆弾事件の場所を示したメモが残されていました。

朝比奈が出て行ってから苦労して育ててくれた母が、50歳を過ぎてやっと再婚し幸せを掴もうとしていました。元夫が爆弾事件を起こせば、マスコミによって世間の目にさらされることになるのは明らかです。

須永はそんなことは許せないと、朝比奈の名前はマスコミに明かさないという約束で、警察に司法取引を持ちかけたのでした。

朝比奈仁の秘密
朝比奈はかつて自衛隊員でした。

PKO活動でカンボジアに赴任し地雷の撤去作業をしていたとき、現地の女の子が「家族が死んで一人ぼっちになった。あんたたちのせいだ。」と、目の前で地雷を踏んで自爆しました。

朝比奈はこの経験から心を壊し、帰国してからも毎日うなされ暴れるようになりました。

かつて上官の里中から、結婚して彼女と東京に行くので観光ルートを考えてほしいと言われ、そのルートを考えたのは朝比奈でした。

浅草寺→恵比寿→渋谷ハチ公前→東京タワー→レインボーブリッジ

そのルートはまさに、今回の爆弾事件の設置場所の通りでした…。

山口アイコの秘密
山口アイコの夫だった里中は、かつて朝比奈の上官で、ともにカンボジアに派遣されていました。

目の前で地雷を踏み爆死した少女を目の当たりにし、精神を病んでしまった里中は、帰国後自分の持っている爆弾の知識と技術を全てアイコに教えました。

そして全てを教え終わった里中は、自らの命を絶ってしまいました。

「日本を戦争のできる国にする」と言う総理大臣に、アイコは「戦争の何を知っているの?私が戦争を教えてあげる。」と凶行に及んだのでした。

それでも、爆弾にはどれも解除装置が付いており、総理大臣と話をしたいという要求さえ飲まれれば解除できるようになっていました。

物語の結末
アイコは東京タワーが爆発するところを見届けるに違いないと、朝比奈は六本木の「イル・テアトル」に向かいます。2人で話しているところへ、警察が乗り込んできます。

話の邪魔をするなと、爆弾の入ったカバンを見せながら声を荒げる朝比奈。アイコは車で話をしようと提案します。

朝比奈は話さえさせてくれれば、解除コードを電話で知らせると約束しました。

朝比奈とアイコを乗せた車を、警察車両が追います。朝比奈は、バックミラーに映る須永の顔を見ながら、アイコに「この国にもう一度チャンスをあげてもいいんじゃないか」と言います。アイコは解除コードを教えました。

War is over

思い違いをしていたようだと真犯人に気付き始めた世田の目の前で、スピードを上げた朝比奈の車は、レインボーブリッジから飛び出し海へと落ちていきました。

そして車は水中で大爆発しました。事件は被疑者死亡という形で幕を閉じました。

来栖公太の元にはアイコからメールが来ていました。

爆弾はまだあります

映画の見どころ

この映画は、監督を始めとするスタッフ・キャストの全員が同じ一つの思いで作り上げている渾身の作品です。

その思いとは…「反戦

ジョン・レノンの名曲『Happy Xmas (War is Over)』にインスパイアされた原作の元のタイトルは、この歌の歌詞の一部『And so this is Xmas』でした。

映画化するに当たって、コンセプトをわかりやすくするために『サイレント・トーキョー』に改題されたのだそうです。

75年前、日本も実際に「戦争」を経験していますが、実体験をしている人々は高齢化してしまい、本当の恐ろしさを知る人が少なくなってしまいました。

地球上のあちこちで今でも「戦争」は起こっていて、そのニュースを目にすることはあっても、どこか他人事です。

「戦争」とはどういうものなのか。大切な人の命や当たり前の日常が奪われるというのはどういうことなのか。

平和ボケしてしまって、考えることや想像することをやめてしまった、今の日本のど真ん中に爆弾を放り込むことで、今一度「平和」について考えてほしいという、強いメッセージを感じることでしょう。

3億円かけて作られたという渋谷のセット、そして1万人のエキストラが連日連夜にわたって遅くまで撮影したという爆破現場のシーンは、背筋が凍るほど圧巻です。

きっと起こらないだろうという慢心だったり、人目をひく動画を撮って誰よりも早くSNSにUPしたいという欲求だったり、現代の縮図のようなものがそのまま描かれているのが、現実味を帯びていてよけいに恐怖を感じます。

この映画に関しては、2回3回と複数回見るのがおススメ!または、映画→原作→映画。

1回目見た時は、この渋谷のシーンが強烈すぎて、ひたすら恐怖を感じるだけかもしれませんが、2回目、今度は登場人物に感情移入して見ると少し感じ方が変わってくると思います。

やってることは決して許されることではないけれど、全員自分の信じる”愛”に誠実に動いていることが伝わってくることでしょう。

こういう愛の表現の仕方もあるのか…。

いや、そうじゃなくって、もっと他にいい愛の伝え方があるでしょ!って、もどかしくて切なくて、胸が苦しくなってしまいます。

物語はフィクションだけど、こういう形の感情はもしかしたら現実に存在するかもしれないと思うと、違う意味の怖さを感じてしまいました。

主題歌『Happy X-mas (War is Over)』

1971年、ジョン・レノンとオノ・ヨーコによって作られた曲で『イマジン』と並んで有名な反戦歌。

世界中でたくさんのアーティストによってカバーされており、今でもよく耳にするメロディーなので、一度は聞いたことがあるはず。

今回はこの歌をAwichさんが歌います。

映画『サイレント・トーキョー』視聴方法は?

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