
別々の場所で、9歳の【イシバシユウ】くんを育てる3人の母親。それぞれにたくさんの愛情をそそぎ、愛する息子のことを思って子育てに奮闘しています。
そんな中【イシバシユウ】くんが母親によって殺されたというニュースが報道されます。
9歳の【ユウ】くんと母親の間に一体何があったのか。
それはどこの家庭でも起こり得る、本当に普通で些細なことでしかなかったはずなのに、どこでボタンを掛け違えてしまったのか…。
だれにでも起こり得る、母親と息子【ユウ】の物語です。
小説のあらすじは?
押し倒した【ユウ】に馬乗りになって、思い切り平手打ちし、蹴り上げ、突き飛ばす。血液が逆流したように全身が熱くなってくる。
頭を床に打ち付け、ぐったり動かなくなった【ユウ】を見つめ、ようやく頭の中がクリアになっていった…。
石橋優
静岡県に住む専業主婦の石橋あすみ、36才。夫・太一の実家を建て直し、同じ敷地内には義母が一人で暮らしています。3年生になったばかりの一人息子・優のことがまだまだ可愛くて仕方がありません。
優しい夫がいて、お菓子教室と書道教室に通って、菜々さんという気の合う友達ができて、息子の優は勉強もよくできて、あすみは自分がとても幸せだと実感していました。
そんなある日…優が3年生になってから友達になったレオンのママから突然電話があり、レオンの体のあちこちにアザがあり「優につねられた」と言っていると言われます。
レオンは一度は「光一くんにやられた」と言うことを翻したので、あすみは胸をなでおろしていましたが、優が光一に命令してレオンに暴力を振るっていたことがわかり、あすみは学校に呼び出されることになりました。
レオンの体を見ると、あちこちにアザやらかさぶたやら暴力を受けた跡がありました。何か理由があるはず、自分が優を守らなければと思っていると、突如優は笑い始めました。
「これは実験」と悪びれもせず言う優。激昂するレオンママにおざなりな態度で謝る優の横で、あすみはひたすら頭を下げ続けました。
家に帰って話す優は、あすみにとってまるで別人でした。優は「ママだって、僕を試してる。僕はママ好みにしてあげてただけ。」と言い、太一は「お前のしつけが悪いからだ。」と。あすみは返す言葉がありませんでした。
そしてある日、学校から帰ってランドセルを背負ったままの優が、庭で義母を蹴り、踏みつけている姿に遭遇しました。義母は認知症が進んでいるようでした。
しばらく家で義母を預かることにしましたが、優は「臭い」といい顔をしません。夏の旅行は無理なので「秋の連休に旅行に行こうね」と言うと、優は「汚い奴とは行きたくない」と言います。
母親のことを汚いと言われたことにカチンときた太一が声を荒げると、優は太一が会社の人と浮気してることを責めたてました。
怒りに任せて太一が優の頬を叩くと、優は表に出て「助けてください!虐待です!」と叫び始めました。
結局警察が来て事情を聞かれる羽目になった太一とあすみ。警察は児童相談所に相談するように告げて帰っていきました。
警察が帰り、再び怒りを優にぶつけ始めた太一に対して、優は「パパが言ったりやったりしたこと、証拠として全部ノートにつけてるから。」と言いました。
石橋悠宇
2人の息子を持つフリーライターの石橋留美子。小学3年生の悠宇と1年生の巧巳は、とにかくやんちゃ。家の中だけでなくスーパーに買い物に行っても、寄ると触るとすぐに喧嘩が始まり、走り回ったり絶叫したりと迷惑かけ放題。
留美子は、そんな2人を怒鳴りっぱなしの毎日をブログに書いてストレス解消していました。書くことによって、少し冷静になって子育てを見つめることができるのです。読者も少しずつ増えていきました。
巧巳も小学校に上がったし、そろそろ仕事を本格的にやりたいと思っていたところへ、昔お世話になった編集者から主婦向け雑誌のコーナーを任せたいという話が舞い込んできました。
意気込む留美子でしたが、同じタイミングでフリーカメラマンの夫・豊は仕事が打ち切りになり、夫婦の間に見えない溝ができ始めます。
順調に仕事を増やし忙しくなっていく留美子とは反対に、仕事のない豊は昼間からお酒を飲んだりゴロゴロしていることが多くなりました。家事や育児を助けようという気は全くないようで、留美子のイライラは募る一方。子どもたちのことも夫のことも怒鳴り散らすことが増えてきました。
仕事がひと段落してやっと夕食の用意をしても、片付けもしない子どもたちにイライラを募らせ声を荒げる留美子。豊に対してもきつい言葉を言い放つと、逆上した豊は子どものおもちゃを片っ端からゴミ袋に放り込み、子どもたちや留美子に対して暴力を振るって出て行ってしまいました。
夏休みに入り、子どもたちは1週間千葉の留美子の実家で面倒見てもらうことになりました。子どもたちがいない間の豊は、子どもたちが生まれる前の穏やかで優しい夫に戻っていました。
いつもうるさいと思っていた子どもたちもいないと寂しいもので、もうガミガミ言うのはやめよう優しく接しようと、心に誓うのでした。それなのに…
留美子の心を逆なでばかりする豊と子どもたち…。全身の血が煮えたぎるようになった留美子は、子どもたちの見ている前で豊とは殴り合いのけんかになり、子どもたちにも手をあげてしまいました。
石橋勇
大阪に住むシングルマザーの石橋加奈は、毎朝5時に起きて小学3年生の一人息子・勇を一人残してコンビニのパートに出かけていきます。9時半から17時半までは化粧品会社で働き、学童保育に勇を迎えにいき家で晩ごはんを一緒に食べると、19時から22時まで再びコンビニでパートという働き詰めの毎日。
優しいと思っていた夫は「好きな人ができた」と、突然加奈と勇を置いて出ていき、母一人子一人の母子家庭になりました。働いても働いても生活は全然楽にならず、勇は欲しいものがあっても我慢してお母さんに言わずにいる優しい子でした。
3年生になって念願の地区のサッカークラブに入った勇にはこれ以上の我慢はさせたくないと、加奈は少しずつ貯金をしてユニフォームやスパイクも買ってあげました。
加奈の弟の正樹が「仕事を辞めた。金貸して。」と言ってきましたが、そんなお金はあるはずありません。加奈は2000円だけ渡して「はよ仕事さがし」と小言を言うのが精いっぱいでした。
勇を学童保育に迎えに行くと、担任の先生に呼ばれた加奈は、ある子の集金が足りなくて、全員の机とランドセルの中を調べたら、勇くんの机の中から千円札が見つかったと聞かされます。
勇は、西山力也くんが自分でお金を抜いて勇の机の中に入れたと言いました。力也のお母さんは、若い男と一緒によく加奈の働くコンビニに買い物に来るお客さんでした。
夏休みのある日、弟の正樹が加奈の家から通帳とハンコを持って逃げました。加奈の全財産38万円が消えてなくなりました。
力也くんのお母さんから「話がしたい」と言われたので、お金が無くなった件についてかと思って行ってみると「デリヘルで働かない?」という勧誘。コンビニの1日のバイト代が1時間で稼げると…。
弟に通帳を持ち逃げされ、化粧品会社の経営不振で契約解除となり、日々の暮らしもままならないレベルの貧乏に心は揺れ動きます。勇を育てるためには、仕事を選んでいる場合ではない…。
土曜日にコンビニで働いていると勇から、カップラーメンをこぼして火傷をしたと電話があります。仕事が終わって大急ぎで帰るとお腹にひどい火傷を負っていました。
取り急ぎ薬局で火傷用の軟膏を買って塗り、月曜日に病院に連れて行くと、病院の先生には「どうしてもっと早く連れてこなかったの!」と叱責されました。
アパートには児童相談所の人が訪ねてきました。ひどい火傷のために加奈は虐待を疑われたようでした。
そして、事件…
9月21日月曜日 午後8時40分頃
「子どもがぐったりして動かない」という女性の通報に、消防と警察が駆け付けると、9歳の男児が倒れており、まもなく死亡が確認された。
死因は外傷性硬膜下血腫。通報してきた男児の母親と思われる女性が、男児の頭を床に打ち付けたと話していることから、傷害容疑で逮捕。現在は傷害致死容疑に切り替え捜査中。
男児の名前は、イシバシユウ…
石橋家のその後
小説の感想
子どもの虐待にまつわる物語…最近、映画化めちゃくちゃ多いですよね。子育てをする母親として、毎回胸が痛くなります。
ボタンの掛け違えのように、最初はちょっとした出来事だったのかもしれません。たまたま機嫌が悪かったり、タイミングが悪かったりで最悪の方向に向かって行ってしまったのかな。
この物語に出てくる3人の母親も、それはそれは一生懸命に子育てしているんですよ。子どもの将来を心配しない母親なんていないし、周りのみんなから愛されるいい子でいてほしいと思うのは親だったら当たり前のことだと思います。
「怒り」という感情はたぶん、「好き」という+の振れ幅と同じだけ-に振れるんじゃないのかな。好きだからこそ、自分の思っている通りに動いてくれないと腹が立つ…。夫や子どもに対する感情って、そうやってできてるような気がします。
私も子育てしながら腹が立つことなんて数えきれないくらいあるし、暴力を振るったことはないけれど、言ってはいけないことを言ってしまって、後から死ぬほど後悔したことも数えきれないくらいあります。
怒りの力って本当に恐ろしい。
私の場合、私の頭を冷やしてくれるのが夫なんだけど。この物語に出てくる男ども…よりにもよってクズ男ばかりです。衝撃的レベルでクズすぎる…。
育児と言うのは”家庭”という閉鎖的な空間で、24時間365日行われているものです。1人で背負うには重すぎるんですよね。
話を聞いてくれたり、気持ちに寄り添ってくれたりする人が必ず必要です。もちろん友達でもわけのわからない先導師の先生でもいいんだけど…、できればそれが家族であればよかったのに。
でも、救いは必ずどこかにあるのだというメッセージかな。
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