小説『アキラとあきら』運命に導かれた2人、あらすじとネタバレ

人気作家・池井戸潤さんの長編小説『アキラとあきら』

山崎瑛と階堂彬、全く異なる境遇で育ったふたりの「あきら」が出会うべくして出会い、運命に翻弄されていきます。

池井戸潤さんの物語は、次々に畳みかけるように起こってくる問題に立ち向かう登場人物が、本当に魅力的です。

半沢直樹シリーズとは異なる、若者たちによる熱い闘いをテーマにした壮大な銀行小説!

2人の「あきら」も期待を裏切りませんよ!惚れてまうこと間違いなしです!

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小説のあらすじ

山崎瑛

瑛(あきら)は町工場を経営する父と、それを手伝う母、妹の千春とで伊豆の海とみかん畑の見える場所で、家族仲良く生活していました。

父の会社が倒産したのは、瑛が小学校5年生のこと。母は瑛と千春を連れて、磐田の実家に帰りました。

磐田の祖父の家の近くに借家を借りて、小学校の転校手続きも済まされ、新しい生活が始まったある日のこと。ガシャポンと呼ばれている図体のでかい少年にからかわれ、カッとなった瑛は、ガシャポンに飛び掛かって喧嘩になりました。

翌日、ガシャポンが、自分んちの布団屋もつぶれたことがあって困ったときはお互い様だと父に叱られた、と謝ってきました。それ以来、瑛とガシャポンは親友になりました。

瑛の父は地元の電機部品メーカー・西野電業に技術者として再就職が決まりました。

瑛とガシャポンが高校2年生のとき、北村亜衣という女の子が転校してきました。亜衣はあっという間にクラスに溶け込みましたが、2学期のある日事件が起きます。

亜衣の父が進めている大型スーパー・デイリーキッチンのせいで、クラスメイトの家がお店を閉めて引っ越すことになったと責めたてられ、亜衣はクラスの女子からそっぽを向かれてしまいました。

瑛は野球部のマネージャーに誘おうと亜衣を訪ねました。ちょっと話して帰るつもりが、家にお邪魔して亜衣の父と話すことになりました。

亜衣の父は「商店でもスーパーでも工夫をしなければ淘汰される」と語りました。

卒業後の進路を考える時期になって、また父を不運が襲います。取引先から損害賠償を求められていて、父が引責退職しなければならないと言います。

それは父の会社の専務(社長の息子)が取ってきた仕事で、元々採算割れしているものを押し付けられたような契約でした。工場が止まり、銀行は融資を引き揚げようとしていました。

ある夜、磐田銀行の工藤武史という行員が父を訪ねてきて、西野電業を助けたいから経費削減計画書を書いてほしいと言いました。

父の会社には、磐田銀行の支店長・速水と工藤がやってきました。専務のずさん極まりない計画書をこてんぱんに批判した後、速水は父と工藤が作り上げた計画書を出し、社内体制の見直しが完成したら融資をすると言いました。

かつては銀行に裏切られた父が、銀行に助けられたのでした。

就職するつもりだった瑛に、父は「大学へ行け」と言いました。

階堂彬

瑛の父の会社が倒産したころ、東海郵船の御曹司・階堂彬(あきら)は、小学生でありながらも祖父の主催するパーティに弟の龍馬と共に出席する生活を送っていました。

彬の祖父・雅恒は古くは水産物を扱う商家だったのを海運に進出して成功させ、東海郵船の祖と呼ばれていました。その祖父が、彬が高校2年生のときに突然倒れ亡くなりました。

葬儀の後、彬の叔父の晋(すすむ)崇(たかし)が、自分たちの会社の赤字を補填しようと欲をあらわにし、祖父の財産相続についてはもめにもめました。

晋は東海郵船から独立した東海商会を、崇は東海観光という会社を経営しています。もともと東海郵船の中の一部門でしかなかった者を5年前に独立させました。しかし、叔父2人には経営者としての才覚はなく、どちらの会社も赤字経営が続いていました。

彬の父・一磨は東海郵船の株を譲らない代わりに、採算の合わない赤字事業を買い取ることにしました。その1つがケーズフーズでした。

一磨はケーズフーズを立て直すために、デイリーキッチンを買収して、デイリーキッチンのノウハウに助けてもらってスーパーを経営していくことにしました。そしてデイリーキッチン磐田店を立ち上げた北村には、次は仙台出店の仕事をしてもらうことになりました。

瑛と彬の出会い

山崎瑛と階堂彬は東京大学経済学部を卒業して、共に産業中央銀行に就職を決めました。

新人研修の最後に、3人一組でチームを作り融資審査をして稟議書を書くという「融資一刀両断」と呼ばれる融資戦略研修があります。その稟議書は採点され順位が付けられ、上位2チームはファイナルに進出することになります。

今年、残ったのは階堂彬のチームと山崎瑛のチームです。彬のチームは融資申込書類を書くことになり、瑛のチームはそれを審査することになりました。会社のデータは実存した会社のものです。彬たちが受け取ったデータはどう考えても融資を受けるのが難しい経営状況のデータでした。彬たちは荒技に出ることにしました。

それを審査した瑛たちのチーム。結論は「融資見送り」。一見綺麗に作り上げられた資料でしたが、瑛たちは見事に粉飾を見破りました。この対決は役員たちをもうならせ、伝説として語られることになったのは言うまでもありません。

階堂彬は本店に、山崎瑛は八重洲通り支店に配属になりました。

バブル経済真っただ中、東海商事の晋は伊豆に高級リゾート施設を建設したいと、融資を打診してきました。産業中央銀行の安堂は「この計画書は絵に描いた餅で、身の丈に合っていない」と言いましたが、晋は引く気はありませんでした。

産業中央銀行からの融資が受けられないとわかった晋は崇とともに、メーンバンクを三友銀行に乗り換えると言ってきました。

父・階堂一磨が倒れたと彬の元に一報が届きます。肺がんに侵されていました。

病床の父は彬の弟・龍馬ではなく、常務の小西に社長の座をゆずって亡くなりました。遺言書には東海郵船の全ての株式は彬に譲渡すると書かれていました。

崇の会社・東海観光1社で独占代理店運営をしていた伊豆のリゾート施設・ロイヤルマリン下田は集客が思うように伸びず、年々赤字を計上していました。銀行の追加融資を受けることも難しくなってきて、困った晋と崇は、龍馬と東海郵船の役員をそそのかして、小西を社長の座から引きずり下ろし、龍馬を社長に据え付けました。

そして龍馬は、晋と崇の口車に乗せられて50億円の連帯保証をすることになりました。バブル経済崩壊の最中、ロイヤルマリン下田の業績は悪化の一途をたどり業績不振は本体会社まで圧迫するほどになっていました。

龍馬が心と体を壊して入院してしまいました。彬が病室に行くと龍馬が「東海郵船を経営してほしい。」と頼んできました。父の敷いたレールの上を歩くのが嫌で銀行員になった彬でしたが、結局そのせいで龍馬を追い詰めることになったのかもしれない…と、彬は銀行に辞表を提出しました。

東海郵船の融資担当者が瑛に変わり、東海郵船の社長となった彬はともにこの苦境を乗り越える決意を固めます。

彬はロイヤルマリン下田を売却することにしましたが、外資系のリゾートチェーンは全て空振りに終わりました。そこへ能登ホテルが業績不振のホテルや旅館を買収して業績を伸ばしているという情報が入ります。早速代理人のゴールドベルクの代表・三原比呂志と会うことになりました。三原はかつての瑛の親友ガシャポンでした。

ところが晋が三友銀行に話してしまったことで、能登ホテルのロイヤルマリン下田買収の話がもれてしまい、買収の話は白紙にもどってしまいます。おまけに、これまでの顧客を顧みない殿様商売がたたって東海郵船に主要取引先から取引打ち切りが告げられます。もはや万事休す…。

ガシャポンは東海商会を売りに出すことを提案してきました。晋は苦慮しながらも受け入れますが、崇は全く受け入れる気はないと言います。

大日麦酒がファイバー系の新素材の開発に成功し、販路を確保するために繊維商社を探しているという情報がもたらされます。元々東海商会は繊維商社なので、この買収は双方にとってメリットがあるとガシャポンは言います。

大日麦酒はロイヤルマリン下田を切り離して、東海商会だけにして買収したいと言ってきました。しかし、東海商会はロイヤルマリン下田に70億円の連帯保証をしているので、切るに切れない状態です。

彬は140億円の負債を全て肩代わりするから融資してほしいと瑛に申し出ます。最後まで反対していた崇も、ついに東海観光の資金繰りが回らなくなり、了解することにしました。

瑛は140億円を東海郵船に融資する稟議を書きました。あくまでもロイヤルマリン下田に融資するのではなく東海郵船に融資するのだと瑛は言いました。

そしてその後

5年後、瑛は妻の亜衣と子ども2人を連れて下田に来ていました。

東海郵船に140億の融資は予定通り実行されました。大日麦酒に買収された東海商会は、新素材の扱いで飛躍的に売り上げを伸ばし、そのおかげで東海郵船の荷扱いも増えました。

東海観光は龍馬が社長を務め、堅実に歩んでいます。ロイヤルマリン下田は融資の2年後に赤字を脱し、ゴールドベルクをアドバイザーに加え、新たな飛躍を遂げようとしていました。

「ちょっと寄り道していきたい」と言って、瑛が向かった場所は、みかん畑が連なる海の見える場所。そこにはかつてあった工場も住んでいた家もありませんでした。

「ここに、ぼくの家があったんだ。」瑛は亜衣に言いました。

小説を読んだ感想

肩に力がはいってしまう壮大な物語でした。

瑛が140億円の融資の稟議書を携えて営業部長にかけあっている場面で、不動部長が「なぜそこまでこだわる」と聞いたとき、瑛は「それこそが、私が銀行にいる理由だからです。」と答えます。

父の会社が倒産した時、銀行は一切こちらの言うことに耳を貸さなかった…、救える者であれば全力で救いたい、会社にカネを貸すのではなく、人にカネを貸すんだと。

そして、不動部長は瑛に「お前のその経験、決して無駄じゃなかったと思う。」と言います。

その瞬間、読みながらずっと肩に力が入っていたのが、すっと力が抜けた気がしました。

生きるか死ぬかくらいの壮絶な経験でしたが、それが瑛をつくる糧にもなっていたのだと、わかっていながら改めて腑に落ちた感じがしました。

2人の「あきら」はともに社長の息子として生まれ育ちますが、その環境には雲泥の差がありました。しかし、2人はともに抗いがたい運命という大きな波に飲み込まれていきます。

彬の足を引っ張るのは常に身内であり、その行動の元になっているのが、兄に対する劣等感だとか闘争心で、読めば読むほど腹が立ってイライラが募っていきます。こんな奴ら、見捨ててしまえばいいのに、と思うくらいです。

でも、晋や崇や龍馬も実は運命という大きな波に飲み込まれてしまっていただけ、ただ浮きあがり方を知らなかったんでしょう。

本当にできる人、人を引っ張れる人というのは、いざという時に人を決して見捨てない人のことをいうんじゃないかなと、改めて感じました。

そして、常に考える工夫する

池井戸潤さんは、当然会社とかお金に関する壮大な物語を読ませるのに長けていると思いますが、私はそれ以上に、いつも魅力的な登場人物に引き込まれていきます。

「半沢直樹」しかり「下町ロケット」しかり…はまったら抜け出せない魅力にあふれています。

最後のシーンで、瑛の奥さんになっている”亜衣”は、高校時代の同級生北村亜衣さんでしょうね。亜衣の父は、東海郵船で彬の右腕として働いていました。魅力ある人は様々な形で、素敵な縁で繋がっているんですね。

『アキラとあきら』が映画化されるとのこと!めちゃくちゃ楽しみで仕方がないのですが、この壮大な物語、果たして2時間とか3時間に収まるのかな??

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