『20歳のソウル 奇跡の告別式、一日だけのブラスバンド』あらすじ

音楽を愛し仲間を愛し、そして愛された20歳の心優しき青年が天国へ旅立ちました。青年の名は、浅野大義。

スポーツ強豪校の市立船橋高校の”神”応援曲と言われる『市船soul』を作曲した人物です。

幼いころから音楽が大好きで、学生時代はトロンボーンを相棒に音楽漬けの青春を駆けぬけました。

素晴らしい恩師と仲間たちに出会い、自分も音楽の先生になりたいと夢に向かって歩き始めた矢先、彼を襲ったのは「癌」という病。

告別式に集まり、彼の作った『市船soul』を演奏した仲間は164人。そんな奇跡を起こした青年の悲しくも心熱くなる実話の物語です。

『20歳のソウル 奇跡の告別式、一日だけのブラスバンド』は小説ではなく、ルポタージュに近いノンフィクションです。

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『市船soul』って?

この本を読むと、まず『市船soul』ってどんな曲?って聞いてみたくなること間違いなしです!

市立船橋高校といえばペナルティのワッキーとヒデがサッカー部だったことでも有名、名だたるJリーガーを数えきれないくらい排出しているサッカー強豪校!

それだけじゃなく野球部は甲子園に何度も出場を決め、他にもインターハイ常連と言われる部活が多数存在するスポーツ強豪校です。水泳の鈴木大地さんも市立船橋出身ですよ。

これだけ運動部が強かったら応援にも必然的に力が入りますよね。そこに欠かせない存在なのが吹奏楽部。ところがこの吹奏楽部も全国大会で活躍する強豪校なのです。

自分たちのコンクールや定期演奏会、イベントに向けての準備や練習に忙しい中でも、市船吹奏楽部は運動部の応援にも手を抜きません。

そこで生まれたのが応援曲『市船soul』です。

こだわりぬいたドラムの速いリズムと短調のメロディは超絶かっこよくてセンスを感じさせる名曲です。

物語のあらすじは?

浅野家の長男として生まれた大義(たいぎ)。母はたくましい男の子になってほしいと5才になった大義を剣道場に連れて行きます。しかし大義は「こわい」と泣いてしまって剣道を体験することができませんでした。

道場をあとにし、苛立ちまぎれに「剣道やらないならピアノにする?」と道場の隣にあったピアノ教室を見て言いました。「ピアノにする…」と大義。

すぐに飽きるだろうと通い始めたピアノ教室。まさかこんなに楽しそうに続くとは思ってもみませんでした。小学校高学年にもなると「ピアノが欲しい」と言い出し、浅野家は毎日、大義の奏でる音楽に包まれるようになります。

中学生になると大義は吹奏楽部に入部し、トロンボーンを演奏することになりました。受験する高校を選ぶとき、吹奏楽コンクール全国大会常連の習志野高校に行きたいと言い出したのは当然の成り行きでした。

ところが大義は受験に失敗してしまいます。つまり習志野高校不合格…。

音楽に青春をかけるべく選んだはずの道が閉ざされ、後がなくなった大義は後期日程の的を市立船橋高校にしぼり、猛勉強を始めました。

人生で唯一勉強で集中力を発揮し、大義は無事市船への入学を果たしました。

市船吹奏楽部はとてもユニークな部活で、演奏だけでなく歌唱やダンスにも力を入れている「歌って踊れる吹奏楽部」でした。

そして何と言っても顧問の高橋先生がすごかった!

サラリーマンから一念発起して中学校の国語教師となり、未経験の吹奏楽部の顧問をすることになるとプロの指揮者に弟子入りし、顧問になって5年目に吹奏楽部を全国大会金賞へと導いたカリスマです。

大義は高橋先生の魅力にとりつかれ、心酔していきました。

5月のバンドフェスタに始まり、6月は北海道での「YOSAKOIソーラン祭り」、7月から10月までは全国吹奏楽コンクールの地区予選から全国大会、11月は全日本マーチングコンテスト、12月に定期演奏会、3月ソロコンクール…と年中イベントだらけで大忙しの吹奏楽部。

高橋先生は「音楽は人間関係だ」といい、どんなに小さなことでも問題は部員の間で解決させるようにしていました。言葉を発することが苦手な大義は、暗い顔をしている人には話しかけ、険悪になりそうな部員の話はどちらも平等に耳を傾け、いつでも笑顔でいることを心掛け、いつしか部のムードメーカーとなっていきました。

市船吹奏楽部の定期演奏会には高橋先生が考案した「吹劇」と呼ばれる音楽劇がありました。音楽と歌とダンスとで物語を紡いでいくのです。

大義は「吹劇」を経験して、作曲に興味を持ち始めました。そして貯金をはたいてキーボードと作曲ソフトを購入しました。

甲子園を目指す野球部の応援に吹奏楽部ももちろん駆け付けますが、大義はその応援曲を作ってみたいと思うようになりました。

高橋先生にも「市船の応援曲をつくります!」と宣言し、甲子園をかけた千葉大会を翌週に控えた日、大義は「市船soul」と題した応援曲の楽譜を高橋先生のもとに持っていきました。

「市船soul」は吹奏楽部の仲間にも野球部のみんなにも好評でした。作曲を本格的に勉強したい、大義は決意し尚美学園大学作曲専攻へと進んでいきました。

宮田愛来(あいら)と大義が出会ったのは愛来が高校3年生の夏休みのこと。大義は大学2年生で愛来の高校に楽器を教えに来ていました。

なぜか「字がうまいって聞いたんだけど。俺の名前書いてよ。」と音楽とは全く関係ないことで話しかけられました。大義は、愛来が書いた字を嬉しそうにながめて「ありがとう」と言いました。

その日の帰り。愛来が帰るのを待っていた大義は「俺とつき合ってください」と愛来に告白し、2人はつきあうことになりました。

夏の終わり、大義たちの学年の仲間は1年半ぶりに同窓会を兼ねてバーベキューをしようと集まっていました。数日前から下痢と吐き気が続いていた大義は、肉に手を付けることもなくカメラマンに徹していました。

夜には咳が止まらなくなり、タチの悪い風邪にかかってしまったと母の勤める病院を受診しました。風邪薬だけもらってさっさと帰るはずが「肺疾患の疑いがあるから」と入院させられることになります。

千葉大学付属病院に転院した大義の病名は「胚細胞腫瘍」つまり「癌」でした。抗癌剤の治療が始まりました。翌年2月、抗癌剤で小さくなった癌細胞を取り除く手術は成功し、大義は桜のころ無事に退院しました。

大学に復学しようと準備していた5月、母が呼び出され脳に転移があることが告げられました。無事に脳の手術が成功し、退院した7月。大義は毎日のように見舞いに来てくれて心の支えだった愛来に別れを告げる決心をしました。

高橋先生から電話がありました。市船野球部が準決勝に進んだので応援に来いと言います。大義は相棒のトロンボーン「ロナウド」を携えて満員の千葉マリンスタジアムに向かいました。

後輩たちと奏でる「市船soul」。市船は習志野高校を下して決勝戦へと駒を進めました。大義は生きている実感を噛みしめていました。

夏が終わるころ、激しい頭痛とけいれんで、大義は再び大学病院に舞い戻ってきました。いなくなったはずの癌が再び脳に現れていたのでした。

9月に2度目の手術が決まりましたが、1人で耐えることにも限界がきていました。愛来の顔が見たいけど今さらそんなわがままを言う訳にはいかない…。大義は同級生のユナに電話をかけました。

手術の前日、「大義」と呼ばれて目を開けると、そこには愛来がいました。「離れないよ」愛来は言いました。

2度目の手術は成功し放射線治療も終えて、大義は11月に退院しました。心のどこかに「今度こそ大丈夫」という確信めいたものを抱いていました。

しかし12月、体調に異変を感じ検査。結果は、肺の腫瘍再発と骨髄への転移…。主治医から母には「これが最後の入院だと思ってください」と告げられました。

どうしても市船の定期演奏会に行きたいと、大義は車椅子に座り家族と愛来に付き添われて出かけました。左目は開けることができず、左耳はもう聞こえません。痩せ細った姿を見てみんなが固まるのがわかりました。

定期演奏が終わると、安心したかのように大義の身体は急速に悪化の一途をたどっていきました。高橋先生が訪ねてきていつものように音楽談義を交わしましたが、先生にはわかっていました。「大義は助からない」とユナに連絡し、同級生全員を集めました。

ビデオレターを撮って、ユナとヒロアキが大義の病室を訪ねました。2人と話したいことがたくさんあるのに、ありがとうが言いたいのに、体は鉛のように重く言葉を発することもできませんでした。

2017年1月12日。愛来は単位がギリギリでこの日だけはどうしても授業に出なくてはならず病室に行くことができませんでした。大義は家族に囲まれて静かに息を引き取りました。愛来には母から「愛来ちゃん、ごめんなさい。」というラインが届きました。

1週間後まで火葬場が空いていないとのことで、大義の告別式は1月21日に決まりました。

高橋先生がユナに声をかけて、大義の告別式で演奏しようという話がもち上がりました。告別式当日、大義のために楽器をもって集まった先輩後輩、同級生は全部で164人にも上りました。

みんなは、大義とともに演奏した思い出深い曲を演奏した後「市船soul」で大義を送り出しました。

物語を読んだ感想は?

これ、涙腺崩壊するやつです。”電車で読んではいけない本”として話題になりましたが、くれぐれも人前では読まない方がいいですよ。号泣してしまいます。

こんなにも仲間に愛されて、決して贅沢ではないたくさんの夢を抱き続けていた青年が、20歳という若さでこの世を去るという事実に、言いようのない辛さとか悲しみが押し寄せてきます。

単に物語を読んだ第三者の私でさえそうなのですから、周りで見守っていた家族や仲間たち、そして何より本人はどれほど無念だったことでしょう。

それでも取材で大義さんのことを語るとき、お母様も恋人だった愛来さんも高橋先生も瞳をうるうるさせながらも笑顔で話してくださったそうです。

どれほどみんなを愛し、愛されていたかが伝わってくるとともに、悲しいんだけど一種の清々しさまで感じてしまうというか…温かい気持ちになれる物語です。

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2023年8月6日時点の情報となります。 オフィシャルサイトにて必ず最新の情報をご確認ください。

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