めえめえこと瀬戸洋平はサブレこと鳩代司のことが大好きだ。夏休みになってサブレに会えなくなったと落ち込んでいたら、なぜか目の前には大好きなサブレが。
しかも話の流れでサブレのじいちゃんちに一緒に泊まりに行くことになってしまった。
この旅の目的は、自殺した人の家族に話を聞きに行くこと。なんだか不謹慎で残酷で特別な、2人だけの時間が始まる。
友達以上恋人未満?めんどくさいサブレとちょっと気弱なめえめえが織りなす青春の1ページ。住野よるさんの記念すべき10作目の物語です。
小説『恋とそれとあと全部』のあらすじは?
めえめえこと瀬戸洋平はテニス部に所属する高校2年生。実家は遠くにあって高校の寮に下宿している。同じ下宿仲間で同じクラスのサブレこと鳩代司(つかさ)のことが大好きだ。
サブレは細かくて面目くさい奴だとみんなから思われているけど、ちょっと変わったところも含めて、めえめえはサブレの全部が大好きだ。
夏休みだからサブレは実家に帰ってしまって会えないのは寂しい…と思っていたんだけど、めえめえが午前中の部活を終えて寮に戻るとそこにサブレがいた。サブレは毎日夜中まで「死ぬ系」の映画を見て過ごしてるんだと言った。
サブレは実家には帰らずに、来週は遠く離れたじいちゃんちに行くのだと言った。久々にじいちゃんに会いに行くのが目的かと思ったら、なんとサブレはもう一つの驚くべき目的を発表した。
自殺した親戚がいるので、話を聞きに行くのだと…
サブレはめえめえに一緒に行かないかと誘った。めえめえは誘われたことが嬉しくて、ノリで返事をしてしまったが、本当に一緒に行くことになってしまった。おまけに泊まるのはサブレのじいちゃんちだ。
行きは夜行バスに乗って行くことになった。隣の席に座って一晩過ごすのかと思ってドキドキしたけど、席はそれぞれ独立していてカーテンで仕切られていた。当然か。話すこともできないので、2人でお勧めのプレイリストを作って交換することにした。
2回目のトイレ休憩の時、めえめえの後ろの席のにいちゃんがコーヒーをおごってくれた。にいちゃんは父親の容体が悪くて実家に戻るところらしく、誰かに親切にしたら間に合ってくれるかな…と言っていた。
目的地のJRの駅に着くとスーパー銭湯に入り朝ラーメンを食べて、今度はJRに揺られて40分。めえめえとサブレはじいちゃんちの最寄りの駅に着いた。
じいちゃんちまで歩きながらサブレは、自殺した親戚の家に話を聞きに行くのは授業に必要だからと嘘をついたと教えてくれた。
じいちゃんちに着いたらじいちゃんはいなかった。隠してあった鍵で玄関を開けて家の中に入った。あとから帰ってきたじいちゃんはライダースジャケットにフルフェイスのヘルメットでバイクにまたがるかっこいいじいちゃんだった。
お昼ごはんにじいちゃんが取ってくれたお寿司を食べると、めえめえとサブレはじいちゃんが車道から玄関に向けてのアプローチを造る作業を手伝った。
サブレの親友のエビナはめえめえの気持ちに気付いているので、この旅行での進展に期待しているのかラインばかりしてくる。仲間のダストは突然みんながいる前でエビナに告白したことがあって、エビナは意味不明な言葉を吐いてダストを振ったことがあった。
そのことについてめえめえはサブレに聞いてみたけど、サブレは「エビナは傷ついてる」というもっと訳の分からないことを言った。
めえめえと同じテニス部のハンライは「お願いしたら女子はどこまで触らせてくれるか」という変な調査をしていて、エビナに腹蹴りをくらわされたらしい。
翌日は午前中にまたじいちゃんを手伝って、午後から親戚の家に自殺の話を聞きに行った。亡くなったのはサブレのじいちゃんの姪っ子のご主人。部屋を見せてもらったけれど、誰かが引っ越した後のような清潔感さえ漂っているような雰囲気で、怨念みたいなものは何も感じなかった。
おばさんが首を吊っているのを見つけて、病院で息を引きとったらしい。
中学2年生の彩羽(いろは)ちゃんが帰ってきて、おばさんが出してくれたアイスクリームを食べながら話すことになった。自殺の理由はご主人の不倫がばれて、おそらく生真面目な性格から自分を許せなかったのだとおばさんは言った。
おばさんがご主人のことを、いい人だった、まだ実感がないと言うと、彩羽ちゃんが怒り始めた。彩羽ちゃんは父親を殺したのは自分たちだと言った。10代の女の子と不倫した父親のことが気持ち悪くて、毎日おばさんと二人でばい菌みたいに扱って死ねばいいとさえ思っていたと言葉を荒げた。
おばさんが近くでお祭りがあるので2人で行ってこいと言うので、めえめえとサブレはお祭りに出かけた。りんご飴とイカ焼きを食べながらサブレは「結構くらった」と言った。
じいちゃんちに帰って夕食を食べながら「幽霊はいるか」という話になった。じいちゃんはいると言った。サブレは死んだら何もなくなるからいないと言った。
エビナからは相変わらずどんな手順でサブレを落とすつもりなのかというラインが来続けていた。その中で、サブレには中学時代付き合っていた相手がいることわかった。いらない情報は教えてくれなくていいのに。ダストは再度エビナに告白して砕け散ったらしい。
次の日サブレは、自分はかつて「タナトフォビア」だったということを語った。タナトフォビア=死恐怖症。死は誰にとっても怖ろしいものだと思うけれど、常にその恐怖に心をつかまれているのは生きにくそうだ。
昨夜はタナトフォビアの感覚が戻ってきてかなりしんどかったらしい。
午前中、サブレの希望の博物館に出かけて、お昼はじいちゃんに鰻を食べさせてもらって、じいちゃんちで手伝っている時にカステラをくれた近所のおばちゃんちにお菓子を持って行った。
最後の夜、めえめえはサブレがまたタナトフォビアに恐れていないか気になりながら横になっていた。じいちゃんの長い咳が聞こえてきた。何か物が落ちる音がしたかと思うと、じいちゃんの咳がぴたりと止まった。
ただ事ではないかもとじいちゃんの部屋をのぞくと、じいちゃんが苦しんでいた。めえめえは慌ててサブレを呼びに行って救急車にきてもらうよう電話をかけた。
サブレいわくじいちゃんは喘息持ちらしく、口に道具を当てると呼吸が少し楽になったようだったが、念のために病院で検査を受けることになった。
サブレと話ながら、めえめえは自分の中の不思議で残酷な気持ちに気付いた。じいちゃんの緊急事態だったというのに心のどこかにわくわくした気持ちが芽生えていた。めえめえはそのことを正直にサブレに伝えた。
サブレはめえめえをなじったり否定したりしなかった。話してるうちにじいちゃんは検査に異常がなくて帰ってくることになった。
翌朝はじいちゃんが元気になって朝食を作ってくれていた。そして帰りはじいちゃんが新幹線の切符を買ってくれた。バスを降りて下宿に向かって歩き始めた時、めえめえはサブレに「好きだ」と告げた。
サブレは自分も同じ気持ちで悩んでいたというような感じのことを、それはそれは難しく説明した。でもずっとめえめえの目を見てた。サブレは自分もめえめえと一緒にいたいと言ってくれた。
めえめえとサブレは、下宿仲間でクラスメイトで友達で恋人になった。
『恋とそれとあと全部』の感想
あ~青春!恋!っていう、まさにそんな物語。愛じゃない、恋。
「死」に対しての漠然とした興味と恐怖も、告ったり告られたり、くだらない想像や調査をやってみるのも「高校生あるある」でなんだか青春時代を思い出してしまいました。
サブレとめえめえが話を聞きに行った親戚のおじさんの自殺の原因がびっくりするくらい重すぎて、それにはびびってしまったけれど…。こんなの10代の子どもが受け入れられるのかな。
住野よるさんの作品はどこか「命」を内包していることが多く、今回ももちろん例外ではありませんね。おじいちゃんが死にそうになったときちょっとだけ興奮してしまっためえめえの気持ちも、みんな心のどこかに持ってるのかもしれない…。私はまだ経験がないけれど。
「死」についてだけじゃなく、サブレとめえめえはたくさんたくさん話をします。SNSで繋がりがちな現代ですが、言葉を受けとめ相手の気持ちを想像しながら話すって改めて素敵なことだと思いました。若者たちにもそんな恋をしてほしいな。
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