小説『総理の夫』

2013年に出版されたにもかかわらず、今でも面白く読めてしまうのは、日本の政治が全く進化・進歩していないから?

日本初の女性総理は、才色兼備であるだけでなく、国民の信頼を味方につけた、前代未聞の最強の総理大臣でした。

そして総理を支える夫「ファースト・ジェントルマン」は、おおよそ権力や地位に全く興味のない、むしろ天然な癒し系。

いろんな人が女性総理の失脚を狙って画策してきますが、私欲や忖度とは縁のない総理夫妻は、ただただ誠実に戦いに臨んでいきます。

凛子が総理大臣になった経緯、2人の出会い、戦い…を、夫の日和の日記形式で余すところなく語りあげてくれる形式もまた読んでいておもしろいと思いますよ!

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登場人物

主役の夫婦は2人とも東大卒で、経歴が眩しすぎて直視できないし、覚えられない…(笑)。その上、夫の実家は大金持ちという、おおよそ庶民には何の縁もない世界の話なのですが、なぜか2人とも親近感が湧くというか、身近に感じられる存在です。

こんな政治家たぶん日本には一人も存在しないなぁ。

相馬日和(夫)

38歳、鳥類学者。東京大学理学部卒、同大学院生物多様性科学研究室博士課程修了。現在は善田鳥類研究所研究員。日本を代表する大財閥の相馬一族の次男坊。

相馬凛子(妻)

42歳、第111代日本国内閣総理大臣。父は開田川賞受賞の小説家、母は東京大学院教授で国際政治学専門の政治学者というサラブレッド。東京大学法学部卒、ハーバード大学院法学政治学研究科博士課程修了。政策シンクタンクの研究員の後、31歳で衆議院議員初当選。現、直進党党首。

原九郎

元は民権党員だったのが、野党が提出した内閣不信任案に乗っかって、長く続いた民権党の政治に反旗を翻し野党に寝返った政界のドン。新党・民心党党首。

野党の連立政権を樹立し、凛子を内閣総理大臣に担ぎ上げた張本人。「はらくろう」という名前の通り、なかなか腹黒。

相馬崇子

日和の母、別名「音羽の奥様」。なんだかんだと口やかましい母ではありますが、いざという時には頼りになる、とても賢い女性です。

日和と凛子のなれそめ

日本を代表する財閥、ソウマグローバルの取締役に名を連ねている日和は、「二十二世紀会」という勉強会にも参加していました。

「二十二世紀会」は2か月に1度開催され、幅広い有識者をゲストスピーカーに招いて放談してもらうという会です。

当時、野鳥にしか興味がなかった日和は、結婚にも全く興味がなく、母親から勧められる縁談を次々と断っていました。母が全力で後押しする「トヨツ自動車」のご令嬢とのお見合いも、日和は全く乗り気ではありませんでした。

「二十二世紀会」ではお見合い相手の父であるトヨツ自動車の副社長から「娘をよろしく」と挨拶されてしまい、もうこれは逃れられないのかと思ったその時…。

今日登壇予定だった人が急病で入院してしまい、ピンチヒッターが話をしてくれるとのこと。その人物こそが、真砥部(まとべ)凛子でした。

颯爽と現れた美しい女性に完全に心を持っていかれてしまった日和…。

その日以来、凛子のことばかり考えてしまっていた日和は、偶然撮れたメジロの美しい写真に有頂天になって「あなたのもとへ飛ばします」というキザなメールとともに送りました。

凛子からの返事は「なんという鳥?教えていただけますか。今度、お目にかかったときにでも。」

初めてのデートの待ち合わせ場所は、明治神宮の鳥居の下でした。なんとも色気のないデートでしたが、こんな都心に緑がたくさんあって、そこに集まる野鳥がいることを教えてあげたかった日和。

美しい野鳥を見て凛子は「いつも上を向いて歩いている。すてきですね。」と言ってくれました。

芝生に並んで寝転がった2人は、いつのまにか小指が絡まり合っていました。

小説のあらすじ

妻の凛子が史上初の女性内閣総理大臣に指名され、それに伴って夫の日和も史上初の「ファースト・ジェントルマン」となりました。

夫婦2人で顔を合わせるのは朝食の15分だけ。国民は、凛子だけでなく日和の言動にも目を光らせているので、くれぐれも気を付けるようにと言われ、夫の日和も全ての行動を管理・監視される日々が始まりました。

日和はなんとか精神の安定を保つために、毎朝実家に寄ってもらって庭に集まる野鳥を観察してから出勤することにしました。通勤も送迎付き、外食も気軽にできない…、日和にとって総理の夫の生活はなんだか無味乾燥なものに思えて仕方ありませんでした。

総理公邸の周辺には凛子を熱烈に応援する「凛子ジェンヌ」と、日和を出待ちする「ひよラー」と呼ばれる”追っかけ”が群れるようになりました。99%のおばさんたちに交じって男性のひよラーもいるとか。

職場では同僚の伊藤るいさんが、外食できない日和を気遣って手作りのお弁当を作ってきてくれました。日和がお礼をしたいというと、日和の自宅にある世界鳥類全集を見せてほしいと言われました。

「学会で発表する論文に引用するのでできるだけ早く、と所長からも許可をもらっているから」と言われ、タクシーですぐさま日和の自宅に2人で向かうことになりました。

目的の図鑑をハンディスキャナで読み取って、用事が済んだので職場にもどろうと日和が促すと、伊藤さんは急に身の上話を始めました。

釧路出身の伊藤さんは、5才のときに漁師だった父が他界して、家が貧しかったために野鳥の観察だけが心の支えだったこと、北大で野鳥生態学を研究し、所長に見出されて善田鳥類研究所にきたこと、今でも給料ほとんどを実家に仕送りしていることなどを話してくれました。

そして、妹の夫が事業に失敗し多額の借金をかかえることになった上に、母親が病気で入院することになり、自分1人の給料ではどうにもならないので、研究所をやめてもっとお金になる仕事をしないと…と、言いました。

研究所に戻るタクシーに乗り込むなり、伊藤さんは日和の肩に頭を預けてはらはらと涙をこぼして泣き始めました。その時、タクシーの窓の外に、いつも日和を出待ちしているおじさんひよラーの顔が見えた気がしました。

それから数日後、日和は原九郎から突然呼び出されます。手渡されたのは、タクシーの中で涙を流す女性とそれに寄り添う日和が写った写真。ひよラーだと思っていた男は阿部というフリーの政治ジャーナリストでした。

阿部が原氏を通じて要求してきた金額は1000万円。

日和は阿部氏の公式ホームページから、会いたいとメールを送りました。すると約束通り、阿部氏が現れました。

今凛子の足を引っ張る訳にはいかない、彼女を支える最後の人間になりたい…、私は、総理の夫です、と語ると、阿部氏はとんでもないことを教えてくれました。

阿部氏を雇ったのは原九郎であると!原氏は次期総理大臣の座を狙っており、消費税増税が可決された後で凛子の失脚を企てていると!そのため清廉潔白の凛子ではなく、脇の甘い日和が狙われたと!

1000万円を払うと言うと、それを断った阿部氏は「相馬凛子を守り抜けるのは、あなたしかいない。」と言い、政界のドン・原九郎と決別する覚悟を告げて帰っていきました。

日和は「原九郎と決別すべきだと思う」と、一切を凛子に話しました。凛子はみるみる青ざめていきましたが、やがて燃えるような瞳に変わっていきました。「やってくれるじゃん。原九郎。」

お正月、凛子と日和は連れ立って原九郎に挨拶に行きました。原九郎が発した言葉は「消費税率引き上げ…私は反対に回ろうと思います。」

凛子は敵に内閣不信任案を提出される前に、総理の権限で解散総選挙に打って出ることにしました。

選挙は原九郎VS相馬凛子の対立がくっきりと浮かび上がったものでした。凛子が訴えたのは、消費税引き上げと、社会保障と景気対策、少子化対策と雇用の促進。

増税は誰だって受け入れたくないけれど、必ず個人と社会に還元される。それを保証するのが政府の役目。一緒に歩みましょう。凛子は叫び続けました。

選挙戦最終日、日和の凛子を見つめる目は涙でいっぱいでした。そして力いっぱい凛子を抱きしめたのでした。凛子は耳元で「ありがとう、日和くん。あいしてるよ。」とささやきました。

蓋を開けて見ると、選挙戦は凛子の一派の勝利でした。凛子の率いる直進党は10⇒92議席を獲得し大躍進。凛子は第112代内閣総理大臣に就任し、第2次相馬内閣が発足しました。

それから半年近くたったころ、凛子の体調がよくないことが多くなりました。定期健診を受けた1週間後、凛子は日和に告げました。「…妊娠したの。」

凛子も日和も心から喜びましたが、目の前には大きな問題が立ちはだかります。総理を続けるのか否か。

凛子が下した決断は、総理大臣辞任。これまで、女性のため、子どものため、高齢者のために戦ってきた凛子。しかし「お母さん」にだけはなったことがなかった…。だから、お母さんになろう、命を育むひとりの女性になろうと決断したと語りました。

凛子の決断は世論に大きなうねりを起こしました。これまで声を上げたことのなかった女性たちが「凛子総理辞任反対!」を声高に叫び始めました。

そんな中、日和の母から呼び出しの電話があり、日和と凛子は相馬家の実家を訪れました。母は「子どもを産む決心をしてくださって、ありがとう。辞意、撤回なさい。」と言いました。

そして、凛子の辞意を思いとどまらせようとしている人が、もう一人いると言われ、そこに現れたのは原九郎でした。

先の選挙で凛子に大敗し、一時は引退を考えた原九郎でしたが、自分の想像をはるかに超えて強くたくましかった凛子が、どんな風に日本を変えていくのかを見てみたいと、凛子が改革を成し遂げるまで自分ももう少し頑張りたいと語りました。

 

…お母さんは今国会で代表質問を受けている…子どもの面倒を見ているのは日和です。もう少し子どもが大きくなったら、親子3人で野鳥観察をしよう…それが日和の夢です。

小説を読んだ感想

42歳の若き女性内閣総理大臣。そんなことは夢物語だと、今の日本ではありえないとわかっちゃいるんだけど、あまりにも魅力的すぎて、本当になればいいのにと思ってしまいました。

「消費税は増税します。でもできうる政策は全て実行します。」全くオブラートにも包まない、玉虫色の表現もない、誰にも媚を売らない、国民の方を見て語る、こんな政治家いないもんね~。

私は3人の子育てをしておりますが、日本という国は「子育てをする女性に対して不親切」だと、心底思っています。こんな状態で「少子化」を脱することなんてできるはずがないと!

子育てはもちろん、2度と味わうことのできない貴重な体験に違いないのですが、お金もかかるし大変な思いをしていることも事実なのです。

仕事をしながら、家事と育児を両立させていくことは一人ではできない荒技です。だからといってやめて専業主婦になってしまったら、二度とキャリアを継続させることができないのが今の日本の仕組みです。

子どももほしいし、仕事も続けたい。男性にはできるのにどうして女性にはできないの?

凛子さんは結婚はしていますが、まだ子どもがいない状態で総理大臣になりました。物語の最後で事態は急展開を見せ、凛子さんは母になりますが、ここからが真骨頂!ぜひこの続きが読みたいと思いました。

こんな総理大臣、本当に誕生してくれたら心から応援するのに!

アメリカではついに初の女性副大統領が誕生することになりそうです。夢物語じゃない、可能性の国に日本もなればいいな。

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結構ボリュームあるように感じるかもしれませんが、面白いのでさ~っと一気に読めちゃいます。
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