映画『十二単衣を着た悪魔』豪華キャスト勢揃いの黒木瞳監督作品

「源氏物語」の中でもあまりスポットの当たらない”弘徽殿女御(こきでんのにょうご)”をフィーチャーした物語を、女性監督・黒木瞳さんが映像化しました。

強く美しく生きる女性たちを、女性ならではと思える視点で、繊細に、生き生きと力強く描いている作品です。時代劇なんだけど、ロックでしたねぇ!

雷という一人の青年が、ひょんなことから「源氏物語」の世界にタイムスリップ(?)してしまうところから物語は始まります。

強く賢く生きていく弘徽殿女御のおかかえ陰陽師として生きていくことになった雷は、弘徽殿女御のもとでどんな男に成長していくのでしょう。

女性は男性が思っているほど弱い生き物ではないと、男性よりもしたたかでたくましい生き物だというメッセージも含まれているのではないかと思うくらい、どの女性も魅力的です!

着物の下にパーカーきてやがる…。

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魅惑の豪華キャスト

伊藤雷:伊藤健太郎

最初は気崩していた衣装を、だんだんきちんと身に付けていく姿で、雷の本気度を表しています。顔つきもそれに伴って変わっていくのだから、かっこいい!

映画公開直前に不祥事があって、公開さえも危ぶまれましたが、無事に上映されることになってよかった!

伊藤健太郎さんの雷が成長していく姿は、とても共感できて応援したくなる姿でした。とても力のある俳優さんだと思うので、またいつかスクリーンに復活してくれることを願ってます。

弘徽殿女御(こきでんのにょうご):三吉彩花

源氏物語の中で、桐壺帝の正妃であり第一皇子の母。息子である一宮が皇位を継承することに命を懸ける、天下無敵の母。まさに十二単衣を着た悪魔!

登場シーンは、息をのむくらい美しいです。一本筋の通った女性の強さというのは、美しさとイコールなんですね。ぶれない姿に女性なら誰でも憧れると思いますよ!

良喬:笹野高史

弘徽殿女御の警護役。雷に「何歳?」と聞かれ「39歳」と答えてた!マジか!

AirPodsの扱いが…ヤバい。

光源氏:沖門和玖

光源氏と言えば数多の女性を惑わす色男!誰もが羨む役のはずですが…この映画で描かれる光源氏は女性と寝ることしか頭にない色ボケ男?的な扱われ方です。黒木監督思い切った扱いを…(笑)

桐壺帝:伊勢谷友介
雷の妻・倫子:伊藤沙莉

原作の倫子は「ブス」という設定なのですが、沙莉ちゃんめちゃ可愛かった!

雷が倫子にキスをするシーンは沙莉ちゃんに内緒だったため、びっくりした顔は演技ではなく本物だったそうですよ。

桐壺更衣、藤壺女御:YAE、MIO

亡き桐壺更衣にそっくりの藤壺女御。双子のMIOYAEが演じるなんてナイスキャスティング!

六条御息所:手塚真生

なんとEXITのかねちがスクリーンデビュー!雷がバイトしている「源氏物語」のイベント展示場の責任者でぜんぜんチャラくはないんだけど、活舌悪くて「弘徽殿女御」とか「六条御息所」とか言えてないのか知らないのか、ちょっとポンコツ(笑)

LiLiCoさんは隣の家のおばさん、通称ヤマンバ。黒木瞳さんから直接「ぴったりの役がある」とオファーを受けたと…。おばさん役板につきすぎ(笑)

声の出演:石田ゆり子

なんとナレーションは、石田ゆり子さんです。柔らかい声がとてもぴったり。映画見るまで分からない、贅沢なキャスティングですわぁ。

映画のあらすじ

卒業間近の3月になっても就職の内定がもらえない59連敗中のダメダメ男の伊藤雷。日雇いのバイトで「源氏物語と疾患展」の設営をした帰り、彼女にも振られてしまいます。

優秀な弟の水が京大医学部に合格したと近所のヤマンバから聞いて、家に帰る足が一段と重くなり逃げ出した雷は、突然雷に撃たれ「源氏物語」の世界に紛れ込んでしまいました。

変な格好をして光る板(スマホ)を持っている雷は、初め牢に閉じ込められますが、たまたま持っていた薬で弘徽殿女御の病気を治したおかげで、特別待遇で迎えられます。

現状や未来を言い当て、すっかり”陰陽師”として信用されてしまった雷。源氏物語の”あらすじ本”を持っているので、物語の進んでいく先を予言できるのは当然なわけで…。完璧なズル…。

優秀な弟を持って劣等感の塊みたいな雷は、光源氏を弟にもつ弘徽殿女御の息子・一宮に、初めは同情のような仲間意識のような感情を抱きますが、すぐにそれは間違いだと気づきます。

一宮は決して劣等感の塊のような人物ではなく、人々の平和や安寧を願い、どんなことがあっても母を守ろうとする立派な若者でした。

弘徽殿女御もただ嫉妬に狂うだけの器の小さい女性ではありませんでした。目的のために強く賢くある、こんな女性が1000年も前にいたなんて…。

雷のために全身全霊で尽くす倫子という女性を嫁に迎え、この世界で生きていくことの意義を見出し、次第にたくましくなっていく雷。

ところが、倫子のお腹に我が子ができたという幸せの絶頂から、雷は叩き落されます。生まれるにはまだ早い時期に倫子は産気づき、母子ともに亡くなってしまうのです。

悲しみに打ちひしがれる雷でしたが、「自分を好きになって」という倫子の言葉を胸に、あらすじ本を焼き、源氏物語の世界で必死で生き抜く覚悟を決めるのでした。

一人で林を歩いていると、蛍が飛んできました。倫子が会いに来たと思って追いかけた雷。するとどういう訳か、雷は現代に戻ってきてしまいます。それも、自分がいなくなった日に。

再びヤマンバに会って自宅へ帰る雷でしたが、源氏物語の世界に戻りたくて戻りたくて仕方ありません。雷鳴が聞こえ、再びあっちの世界に行けるかもと、たくさんの荷物を携え、かつて雷に撃たれた場所へと急ぎますが、もう奇跡は起きませんでした。

 

映画の見どころ

なんといっても弘徽殿女御のたくましい生き方でしょう!

我が子のためならどんな困難をも受けて立つ、母というのはいつの世も強い生き物ですが、そのことを抜きにしても充分強く賢い女性です。

そうでなければ「怖い女になるには能力がいる」「能力は形で示せ」なんて言葉、普通の女性の口からは出てきません!弘徽殿女御語録が出来上がるくらい、勢いのある賢い言葉が飛び出します。

作者・内館牧子さんも女性なら、監督・黒木瞳さんも女性。

女性から見た女性を描いた物語。

黒木瞳監督は「”悪魔”とは人の英知を超え凡人には太刀打ちできない心の強さを持った人」と弘徽殿女御を品性と哀愁を併せ持った女性と語っておられます。

弘徽殿女御は生まれてくるのが1000年早かった…と、雷も語っていますが、現代でもここまでカッコイイ女性はなかなかいないですね。

雷の嫁となる倫子もまた、違う意味で素敵な女性です。本当の意味で雷を支え、心のよりどころになった、おそらく雷が初めて愛した女性です。

せっかく前を向きかけた雷には、我が子とともに妻も亡くなってしまうという悲しい出来事があって、心にはぽっかり穴が開いてしまっているのですが、そこは黒木監督、粋な計らいがあります。

現代に戻った雷は、弘徽殿女御の研究をしているのですが、風で持っていた書類が飛んで行ってしまって、拾ってくれた女性がかつて愛した女性に瓜二つなのです。

雷の気持ちを置き去りにせずに救ってあげるなんて、原作にはない演出さすがです!

見過ごしてはならない『源氏物語』

原作では、雷は26年間「源氏物語」の世界で生活し、最終的には光源氏とも友人のように親しくなってしまうので、「源氏物語」まで楽しめてしまう一粒で二度美味しい物語です。

映画ではさすがに時間的な制約があり、「源氏物語」の世界は省略されて雷の生き方に影響を与える弘徽殿女御とのやり取りにだけスポットが当てられています。

雷が紛れ込んでしまう「源氏物語」の世界。私は大好きなのです!

退屈だった古典が、急に生き生きとしてきて身近なものとして感じられるきっかけとなったのが「源氏物語」でした。

今の世も1000年前の世も、人々の関心ごとも、男と女の性も何も変わっていないんだと…。いやむしろ、源氏物語の世界の方がえげつない…。

現代のドラマでも描かれる、恋愛・嫉妬・親子・権力などをテーマとしたドロッドロの愛憎劇。全部が満タンに詰まったのが「源氏物語」です。

雷は「源氏物語」のあらすじ本を持っていたため、未来を言い当てることができ、類まれなる陰陽師として活躍することになります。

それくらい奇想天外な予測不可能なことが起こるのが「源氏物語」なのです。

光源氏は映画では散々な描かれ方をしていますが、単なる色男ではなく優秀で魅力的な人物です。だからこそ、周りのみんなも邪険に扱えないという事情があるのです。

「源氏物語」自体は54帖(54巻)もある長編ですが、簡単に読めるあらすじ本や漫画もたくさん出ています。

お薦めの本はこちら↓

文庫本『源氏物語が面白いほどわかる本』出口汪
上巻 680円(1~21帖)
下巻 628円(22~54帖)

コミック『源氏物語 あさきゆめみし 完全版』大和和紀
1~10巻 880円/巻

ネタバレしていいなら原作本もお薦めです!

『十二単衣を着た悪魔』内館牧子
805円

主題歌 OKAMOTO’S『History』

エンディングをロックにしたいとこだわった黒木瞳監督が、OKAMOTO’Sの『BROTHER』を気に入り、書き下ろしを依頼して出来上がった楽曲。

オカモトショウさんによると「自分たちの歴史が自分たちを成長させてくれた」という経験が主人公が成長していくという映画の物語とリンクするように書いた、のだとか。

「パッションがあって、前向きになれる、熱量のこもった歌」と黒木瞳監督が大絶賛!

余談ですが、挿入歌としてスピッツの『チェリー』が使われています。倫子と巡り会った雷が口ずさむのですが、これが不思議なくらいしっくりきます。源氏物語の世界とスピッツの歌が共鳴してるなんて、素敵すぎる!

視聴する方法は?

購入


Blu-ray 4066円 / DVD 3303円
【価格は2021年5月21日現在】

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