小説『明け方の若者たち』

23,4才って、人生のマジックアワーだったんじゃないかと思う」親友の尚人はそう言いました。

「マジックアワー」とは、太陽が沈んでしまったあと、残光と夕闇が混ざり合った最も美しいほんのわずかな時間のことです。

理想を描いて理想に近づこうとすることは素晴らしいことです。でもうまくいくことばかりではありません。悩み落ち込み、投げやりになることもあるでしょう。

そんな全ての時間が愛おしいと思える物語です。

何者かになれなくても大丈夫、理想通りになんて人生進みっこない。

悩める若者にこそぜひ読んでほしい1冊です!

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小説のあらすじは?

<僕>が<彼女>と出会ったのは、2012年5月のこと。明大前にある沖縄料理屋で開かれた「勝ち組飲み」という酒の席だった。

4月に就職の内定を勝ち取った人間だけが参加できるといういかにも陳腐で気取った飲み会に、第一志望の広告代理店に全敗し第一志望”群”の大手印刷会社に内定をもらった<僕>の姿もあった。

退席しようとした<彼女>は携帯電話をなくしたみたいで、<僕>に「番号言うからかけてくれない?」と言った。言われた番号を鳴らすと、なんと携帯電話は彼女のポケットから出てきた。

<彼女>が帰った後、<僕>が1人でカウンターで飲んでいると<彼女>から「私と飲んだ方が、楽しいかもよ笑?」というメッセージが来た。明大前の小さな公園、通称「クジラ公園」で合流した<僕>と<彼女>はコンビニのお酒で飲み直した。

それから連絡を取り合うようになり、体を重ねることになるまで大した時間はかからなかった。<僕>にとって「彼女のいる世界」は人生のすべてとなっていった。

社会人としての生活が始まり、<僕>は印刷会社で希望していなかった部署に配属され理不尽と絶望の中に生き、<彼女>はアパレルブランドで接客業の魅力を満喫していた。

<僕>は一人暮らしをすることにした。同期で親友の尚人が住んでいるという理由で高円寺に住むことにした。

<僕>と<彼女>と尚人は仕事が終われば3人で集まって、朝まで酒を飲みカラオケにこもり、堕落した無責任な日々を謳歌していた。

社会人になって3年目。<僕>は総務という縁の下の力持ち的な仕事に相変わらずやりがいを見出すことはできず、夏になると<彼女>とほとんど連絡が取れなくなっていた。

<彼女>は既婚者だった…。

「夫が3年海外出張に出ることになって、実質独身みたいなもの」と<彼女>からは出会った初日に聞かされていて、決して<彼女>の沼にははまるまいと思っていたのに、<僕>の生活は<彼女>がすべてになってしまっていた。

<彼女>は<僕>を選んだ理由を「横顔が、夫に似ていたから」と言った。<彼女>は絶対に結婚指輪を外さなかったし、ずっと<僕>は代理であり補欠だったんだ。

「会いたいね」と言いながらも会う予定なども立てられないまま半年が過ぎ、ついに<僕>は<彼女>に「ちゃんと話したい」とメッセージを送った。

7か月ぶりに会った<彼女>は<僕>に「ちゃんと、すごく好きだったよ」と言いながら「ごめんなさい」をくり返した。<僕>の「彼女のいる世界」は終わりを迎えた。

それから数日は、ご飯も食べず風呂にも入らず、彼女の下着を抱いて、酒と水だけを飲んでベッドの上で過ごした。

5日目になってさすがに自分の異臭が気になってシャワーを浴びていたら、また<彼女>のことを思い出し絶叫してしまった。そこに現れたのは<彼女>ではなく、尚人だった。

1か月ほどして<僕>は営業部の同期・黒澤と飲んでいる尚人に呼び出されて夜の街へと出向いて行った。そして、尚人と黒澤からのカンパの2万円を握らされて、ラブホテルの一室で風俗嬢が来るのを待った。

「ミカ」と名乗る女性が現れ<僕>はミカとを体を重ねた。「好きな人、どんな人だった?」と聞かれ、「あんなに好きな人もういない」と<僕>はミカの胸の中で泣いた。

別れて1年も経つと、<彼女>のことを思い出す回数が減って、ようやく一人に慣れてきた。

ある日、<僕>は尚人から「会社を辞める」と聞かされた。クセモノのワンマンプレイヤーと社内で悪名の高い狭山の下に異動になって以来、尚人は心身ともにすり減らしていたのだった。

<彼女>のことを忘れるために引っ越した<僕>の元に、”勝ち組飲み”の主催者だった石田からメッセージが届いたのは、自分も転機を欲している時だった。

「お前と仕事がしたい」という石田の話を聞くために、とりあえず<僕>は石田に会うことにした。石田の言う「仕事」とは「ネットワークビジネス」と呼び方を変えただけの「ねずみ講」だった。

石田との無駄な時間を終えて帰る途中<僕>は尚人に「今、どこにいる?」と連絡を入れた。尚人から「飲もう」と返事が来て、久しぶりに明大前の沖縄料理屋で飲むことにした。

尚人は「カンタンじゃない世の中」に大変そうだったけど頑張っているようだった。<僕>は異動希望調査で初めて企画調査職に異動したいと、自分の意志を表したことを話した。

「23,4才って学生よりはお金はあるし、家族には縛られないし、オール明けで出勤できるくらい体力あったし、実は人生のマジックアワーだったんじゃないかと思う。」尚人はそう言った。

尚人と別れた<僕>は明大前の小さな公園に行った。誰もいない遊具の上に置かれたハイボールの缶を見て、スマホで写真を撮ろうと思って気付いた。

携帯電話、なくしたみたいだ。

小説の感想

タイトルの『明け方の若者たち』という言葉からして本当に素敵。自分はこのままでいいのかと悩んだり焦ったりしている若者にぜひ読んでほしい1冊です。

人生は何回打席に立ってもいいし、何回三振取られてもいい。ただ一度だけ、特大のホームランを出したら、それまでの三振は全てチャラになる。

尚人が<僕>に語るセリフです。何回三振取られてもいいやって、そんな風に考えることができたらもっと楽に生きられる人いっぱいいるんじゃないかな。

<僕>は好きになってはいけない女性を好きになって、仕事もうまくいかなくて、自分が何のために生きているのかさえ見失うくらいの、人生のどん底を味わう訳です。でも、それは人生のどん底なんかじゃなかったと気づいていくある意味再生の物語。

”夫”とか”妻”とか”父親”とか”母親”っていう「何者か」に縛られず何をしてもいい時期のことを「人生のマジックアワー」って表現してしまうなんて素敵ですよね。

オールが「若者限定」の特権であることも事実だし。明け方はほんと、若者の時間。

そんな特別な時間に、自分の全てをかけて愛した人と過ごせたという意味で<僕>は幸せだったんだと、いつか思える時がくるんじゃないかな。

それにしても女の私から言わせてもらうと<彼女>は相当あざとい悪女ですよ。最初のメッセージからして男が乗っかてくることがわかってる誘い方!

物語はずっと<僕>の一人称で語られるので、あくまでも<彼女>は<僕>から見て理想の形をしていただけなのかな…という気もします。

何年も経って<彼女>のことが思い出に変わった頃に再び出会ったら「あれ?」って思ったりして?そういう意味でも「マジックアワー」だったのかなぁと意地悪なことを思ったり…。

いやぁ、いずれにせよ、若いって素晴らしい!!あがいて叫んで恋せよ!若者たち!!

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