
阿川佳代は新聞配達とコンビニのアルバイトをしながら保護司をしています。
時に間違い迷いながら、「前科者」が10年後も普通の生活が送れるようにと、彼らの更生をかけて全身全霊で体当たりしていきます。
「きれいごと」で人と接する仕事がしたい…理想を貫く佳代の姿に共感したりモヤモヤしたり、平常心ではいられないかも。
保護司とは、刑務所や少年院を出た人や保護観察処分を受けた人たちの更生を支援する国家公務員ですが、報酬は1円もないボランティアです。
現代日本の抱える問題を扱った本格ヒューマンドラマ。
8巻までの漫画のあらすじは?
阿川佳代、新聞配達とコンビニのアルバイトをしながら保護司をしています。
保護司とは犯罪を犯した者の更生を支援する国家公務員。でも1円も報酬はない、あくまでの民間人のボランティアです。
佳代には大学時代の奨学金と社会人になってから入院した時の治療費と生活費の借金があります。
借金を返すためにはもっと長い時間働けばいいのかもしれないけど、お金のためだけに生きている人生は嫌で、「きれいごと」で人と接することがしたいと保護司をしています。
担当した人は「おかえりなさい」と言って迎え、銭湯に入浴させ牛丼を食べさせてあげることを常としています。
CASE 1 石川二朗
石川二朗、35才。5年前、婚約寸前の恋人・愛子を異父兄弟の兄・一朗にレイプされ、刺殺してしまった罪で懲役6年の判決を受けました。
刑務所内での態度は真面目で、この度刑期を半年残して仮釈放されることになりました。
漁師仲間の坂本は「愛子が誘惑したのに、殺された兄貴はかわいそうだ」などと言い、二朗を挑発してきます。
二朗の前に愛子が現れました。ふたたび愛子と愛を確かめ合った二朗は、愛子とやり直せるかもしれないと期待しました。
しかし愛子は一朗の子がいること、愛子を奪ったのは一朗ではなくて二朗の方だと言って二朗を突き放しました。
自暴自棄になった二朗は、どうせ刑務所に戻るならと、包丁を持って坂本を訪ねていきました。
佳代が駆けつけて二朗を制止し、坂本は全治1か月のケガで済みましたが、二朗の仮釈放は取り消され、再び刑務所に戻っていくことになりました。
愛子は実は二朗のことを本当に愛していました。
二朗が逮捕されてから自分の妊娠に気付いた愛子は、一朗の子か二朗の子かわからないまま子どもを産む決心をしました。
でも生まれてきた子は一朗の子でした。
自分が殺した人間に瓜二つの子どもを、二朗に面倒を見させるわけにはいかないと、愛子は二朗の元から去ることを決意したのでした。
しかし、ふたたび服役することになった二朗を、愛子は全面的に支えていくことにしました。
CASE 2 斉藤みどり
斉藤みどり、23才。恐喝と傷害の罪で服役していましたが、2年の刑期を終えて出所してきました。
出所早々に佳代からお金は借りるわ、見知らぬ中学生を家に連れてくるわ、好き勝手にやりたい放題。
それでもみどりは魅力的で言葉に力がある人で、あっという間に職場の人気者でムードメーカー的な存在となり、佳代もみどりに魅了されていきました。
みどりが連れてきた中学生・堤亜美は、みどりに言わせると見るからに問題大有り。親から半ば捨てられたも同然のみどりには、亜美は自分と同じにおいがしました。
実際、亜美はみどりと佳代に会ったその日に「前科者観察日記」なるものをSNSに上げ始めていました。
亜美の父親はリストラされ実業家と思しき母親が生活の面倒を見ていますが、ついに父親とは離婚することになり、亜美も父親と一緒にボロアパートに追い出されることになりました。
亜美が「前科者とかかわっている」と知った母親は、みどりに「亜美に近づかないで」と50万円渡そうとしますが、みどりは怒って受け取りません。
すると今度はみどりの母親にお金を渡して、母親にみどりを説得するように仕向けました。「あなたは本当はいい子」といい母親ぶってみどりを諭す母親を見て、佳代はブチ切れました。
男と会うためにみどりが邪魔だったから身元引受人を断ったことをみどりに謝れと叫ぶ佳代に、亜美の母親が「あなたが甘やかすからいけない。前科者は下を向いて日陰を歩かせておけばいい」と言い放ちました。
みどりは我慢ならなくて、亜美の母親に殴りかかろうとしますが、佳代は体当たりで制止しました。佳代の「自分を救うのは、まず自分」の言葉にみどりは我に返りました。
保護観察が終わっても、みどりはずっと佳代のいい友達であり頼りになる相談相手です。
CASE 3 田村多実子
田村多実子、25才。覚醒剤取締法違反で懲役1年6か月、執行猶予3年の判決を受けました。母親とその恋人によるDVや性的虐待など、壮絶な過去を持っています。
多実子は真面目で丁寧な仕事をする一方で、常識がなく「自分はバカだから」と全て自分のせいだと思い込む傾向がありました。
自分と優しく厳しく真正面から向き合ってくれる佳代に次第に心を開いていきますが、一方で佳代が誰かと親しくしているのを見ると、嫉妬に狂いそうになって自暴自棄な行動に出ることもありました。
以前から多実子の体を利用したり覚醒剤を売って稼いでいた佐藤と言う男が多実子に接近してきます。
一度は再び覚醒剤に手を出そうとしますが、なんとか踏みとどまります。
CASE 4 児珠よし
児珠よし、80才。万引きを繰り返し逮捕されましたが執行猶予で保護観察処分となりました。
長いこと和裁で身を立てていましたが、目が悪くなってからはそれもままならず少しの年金に頼って生活しています。
よしはある男性と長い間不倫関係にありましたが、その男性がこの世を去ってしまってからは、もう生きていたくないと思っていました。
でもきっと彼なら「きちんと死ね」と言うだろう。そう感じてから、よしは心から反省し、佳代やみどり、多実子たちと過ごすようになりました。
心臓発作を起こして救急車で運ばれる中、よしは「あなた達を絶対守ります」と言って息をひきとりました。
CASE 5 田口安吾
田口安吾、16才。傷害事件を数々起こしており、大人を全く信用していません。
それでも真正面から向き合ってくれる佳代に、安吾は心を開いていき、ついには佳代のことが好きだと言います。
安吾の起こした傷害事件の被害者・津軽がふたたび安吾や仲間たちを挑発してきます。怒り心頭した安吾が津軽を追いかけて殴ろうとしたとき、佳代は「好きなんです」と思いの丈を声に出して叫んでしまいました。
佳代は安吾が20才になったら交際しようと提案しました。
CASE 6 佐田山煌大
佐田山煌大は電車内で女子高生の体に触り、下着の中に手を入れた強制わいせつの罪で起訴されました。
痴漢をした佐田山は社会的な信用を失い、再び同じ過ちを犯さないようにカウンセリングに通っています。
しかし”痴漢”という行為は加害者側だけでなく、被害者にも大きな傷を残していました。被害者の女の子は学校でもあらぬ噂を流されたり、電車に乗れなくなったりと明らかに普通の生活ができなくなっていました。
CASE 7 岩元静太
岩元静太、20才。オレオレ詐欺の受け子で逮捕され1年6か月の実刑判決を受けました。「俺の人生終わってる」が口癖で何に対しても無気力でした。
佳代が、静太ののことをみどりに相談すると「そいつに必要なのは恋愛だよ」と。思わず「みどりさん、付き合ってみませんか」と口走ってしまった佳代は、みどりに怒られました。
それでもみどりは静太をお茶に誘って話しているうちに「なくはない」と言って、静太と恋愛ごっこみたいな関係を始めました。
佳代の前で静太がみどりにキスをしたことでみどりが激怒し、みどりの気持ちは静太にばれることとなりました。みどりは佳代のことが好きだったのです。
みどりは佳代に告白して玉砕したのち、長崎かどこかに行ってしまおうかと考えていましたが、静太が「吐き出したいなら聞いてあげる」と言ってくれて思い直しました。
CASE 8 小松城倫子
小松城倫子、30才。母親を殴った傷害罪で執行猶予中。
母親を殴った八角錐の形をした金属は、倫子が所属するある思想団体のシンボルで、母親に「辞めろ」と言われたことが原因だったようです。
倫子は佳代との面談に現れて、八角錐の金属と団体の代表者・青坂が書いた「正しい悪」という本を置いていきました。
その本には、人間にとって大切なことはセックスであると書かれていました。
女子高生の田門が佳代の家を訪ねている時、倫子が佳代の作ったチャーハンを食べて体調を崩したと、青坂が佳代のところに訴えに来ました。
青坂が言うには、八角錐は性の道具で、望んだ相手とは誰とでもセックスできると言い切って帰っていきました。
漫画の感想は?
まず保護司という仕事、ボランティアだなんて衝撃的すぎました。
借金を抱えてバイトを掛け持ちしながら佳代は「お金のためだけに働きたくない、きれいごとで人と接したい」と、保護司を続けています。
素晴らしい仕事だと思う一方で、自分に投影したり想像したりすることは難しい仕事です。でも誰かがやらなくてはならない、世の中には必要なことなんですよね。
相手が前科者でも話をちゃんと聞いて、自分の意見や考えを変えられる佳代みたいな人はきっと更生したいと思っている前科者には菩薩のような存在になりうるのでしょう。
だけどそれが一切響かず、出所しても悪意に満ちた日々を送る人間はたくさんいる訳で、世の中の生きにくさとか不条理とかを垣間見た気もします。
今はどうすることがいいのか何ができるのか、正直全く分かりません。今のところはこんな世界があることを「知る」ことに意味があると思おうかな。
応援したい気持ちとモヤモヤが混在する不思議な読後感。かなりヤバい人ばっかり出てくる…。でも佳代やみどりや安吾のことが気になるからこの続きも読み続けるよ。
ドラマと映画で映像化
『前科者』が「ドラマ」と「映画」の2つの世界で映像化されることになりました。超真面目で真っすぐな阿川佳代を有村架純さんが体当たりで演じています。
ドラマ版『前科者-新米保護司・阿川佳代-』
原作漫画の中から傷害罪の佐藤みどり、殺人罪の石川二朗、覚醒剤取締法違反の田村多実子の3人のエピソードが実写化されます。
原作漫画とはだいぶ違う設定で物語は進んでいきますが、佳代はもちろんのこと「前科者」を演じる俳優さん達の渾身の演技にも心を揺さぶられることでしょう。
漫画では触れられていない佳代が保護司を目指すオリジナルエピソードから、「前科者」たちとの出会いと奮闘を描いたヒューマンドラマです。
映画版『前科者』
保護司になって3年、やりがいを感じ始めた佳代が出会う工藤誠。真面目で心優しい誠の更生は順調に進んでいたはずなのに、ある日忽然と姿を消してしまいます。
誠のことを追う中で佳代は、刑事・滝本真司と出会います。真司は佳代の中学校の同級生で、ある出来事で大きく関わり合っていました。
ひとつの出来事をきっかけに、一方は悪を許さない警察官に、一方は犯罪を犯した人に寄り添う保護司になり、再び出会うこととなった2人…。
それぞれが過去のトラウマにとらわれ闘いながら、生きにくい社会で必死で生きていこうとする完全オリジナルストーリーによる社会派サスペンスです。
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人の心の深淵をのぞいてみて。
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