小説『余命10年』小坂流加の魂の物語、感動のあらすじ(ネタバレ)

茉莉(まつり)は20歳のときに不治の病と余命を宣告されました。その病気は治療法が見つかっておらず、10年以上生きた人はいないと…。

「死ぬ準備はできた。だからあとは精一杯生きてみるよ。」

死を覚悟した茉莉の姿はそのまま作者の小坂流加さんと重なります。

茉莉と同じ病気を患っていた小坂流加さんは『余命10年』を執筆後、自分の本が書店に並ぶところを見届けることなく、2017年に39才という若さで天国へと旅立ちました。

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小坂流加さんと茉莉の病気は?

この物語が魂の叫びであり人々の涙を誘うのは、茉莉の病状がイコール小坂流加さんの病状であり、リアリティに満ちているからです。

その病名は「肺動脈性肺高血圧症」という難病で、原因も治療法も確立されていない病気です。発症率は100万人に2人程度と言われています。

肺血管拡張薬の開発により、日本では5年生存率が格段に改善していると言われていますが、今でも進行性の難病であることには変わりありません。

物語の中で「10年以上生きた例はない」と茉莉が語っている通り、死と向き合う覚悟のいる怖ろしい病気です。

茉莉花(まつりか)ってどんな花?

茉莉(まつり)という名前は山歩きと野草が大好きなお父さんが茉莉花(まつりか)から取ってつけてくれました。お姉ちゃんは桔梗(ききょう)。花の名前が自分の名前ってなんか素敵♪

一般的によく知られている名前は「ジャスミン」ですよ。すご~くいい香りがして、香水の原料になったりします。

小説のあらすじは?

高林茉莉(まつり)が難病と余命を告げられたのは20才のことでした。手術と度重なる発作に苦しめられ集中治療室と病棟を何度も行ったり来たりして、ようやく自宅療養が許されたのは22才のことでした。

短大も中退して働くことも叶わず、一日家の中で過ごす茉莉にとって、楽しみだったのは中学校からの友達・沙苗との交流です。

体調が少し良くなってきた茉莉は沙苗に誘われて秋葉原に出かけました。沙苗は筋金入りの”オタク”。

最初こそ敬遠気味でしたが、元々アニメや漫画を描いたりすることが大好きだった茉莉は、DVDレコーダーやミシンを買いそろえて、コスプレと同人誌を売るイベントにどっぷりとはまっていきました。

茉莉、25才、余命の折り返し地点。友達の間で”結婚”とか”妊娠”という言葉が飛び交い始めました。姉の桔梗(ききょう)も恋人の鈴丘聡さんとの結婚が決まりました。

部屋を片付けていて、茉莉は入院中に書いていた日記を見つけました。そこには同じ病気で亡くなった礼子さんのことが書いてありました。

ありがとうと、ごめんねと、好きですを、言えずにいた人たちに伝えたい。」と礼子さんは言い、それが最後の会話となりました。

茉莉の「ありがとう、ごめんね、好きです」は誰に伝えたいんだろう。礼子さんのように後悔を病室で思い出したくないなぁと考えていると、”新谷美幸”という名前が思い浮かびました。

群馬で過ごした小学生時代、美幸は茉莉の親友と呼べる存在でした。運動会のリレーで美幸が転んでクラスが最下位になったのをきっかけに、美幸はクラスの総シカトのターゲットになってしまいました。

自分も同じようにみんなに無視されるのが怖くて茉莉は美幸に近づくのをやめ、そのまま小学校を卒業し、群馬から東京へ引っ越してしまいました。

結婚した桔梗が群馬の元地元に住んでいたので、桔梗の家に泊まりに行ったときに、茉莉は思い切って美幸を訪ねてみることにしました。

実家で教えてもらった住所に行ってみると、美幸は結婚してお母さんになっていました。茉莉が「ごめんね」と言うと、美幸は「茉莉のこと好きだったよ」と言いました。

美幸に誘われて、茉莉は小学校時代の同窓会に参加してみることにしました。そこには茉莉の「好きです」が伝えられなかったタケルいました。

タケルには同棲している彼女がいることがわかり、茉莉の「好きです」は行き場をなくしてしまいましたが、病気のことを知らない人たちと過ごす時間はとても楽しいものでした。

帰り道は真部和人が送ってくれて、翌日も会う約束をしました。

和人は茉莉を昔通った懐かしい小学校に連れて行きました。図画工作室の奥の棚の一番下の段に茉莉が彫った「マツリ」の文字が今でも残っていました。

そして、その横には「和人」の文字が彫られていて、相合傘まで描かれていました。和人は「俺の初恋。俺は茉莉ちゃんが好きだったんだよ。」と教えてくれました。

和人は優しかったし、楽しかったけれど…、もう誰かを好きになったりしないと心に決めていた茉莉は和人とは二度と会わないことを決意しました。

茉莉の26才の誕生日、和人から突然の電話があります。もう会わないと決めていたのに…、声を聞いただけでこんなにも簡単に意志が揺らいでしまう自分にあきれながら、茉莉は和人と会う約束をしました。

和人は優しくデートは楽しかったはずなのに、茉莉は楽しかった一日の終わりには必ず泣けてきました。

和人の実家は茶道の家元でした。後継ぎとしての期待を一身に背負って育ったせいで10才の時に心を壊し、それ以来実家とはうまくいっていないようでした。

茉莉は和人に内緒で、和人の実家の体験入門茶会に行ってみることにしました。着物を着ていった茉莉は、お茶会のあと気分が悪くなって倒れてしまい、和人の母親に助けてもらいました。

和人の母親から、かつて和人には結婚したい人がいたことを聞いてしまい、茉莉の心はささくれ立ちました。

和人には「いつまで逃げるつもりなの。バカみたい。」と悪態をつき、久ぶりに集まった短大の友達には「男を紹介してあげる」と言われたことにブチ切れて「私はどうせあと4年しか生きられない」と勢いで告白して帰ってきてしまいました。

もう二度と和人と会うこともないだろうと思っていたら、和人が「仲直りしよう」と茉莉の家を訪ねてきました。なし崩し的に一緒にスノーボードに行く約束までしてしまって、茉莉は一瞬で元に戻ってしまった気持ちを恨めしく思いました。

スノーボードは日帰りのはずだったのに、夕方から激しく雪が降り始め帰れなくなった茉莉と和人は、車の中で1泊することにしました。

諦めることを諦めた茉莉は、和人に「あなたを好き」と伝えてしまいました。そして2人はキスを交わしました。

付き合い始めて半年経って、茉莉はやっと和人に胸に大きな手術の跡があるから見られたくなかったと告白しました。和人の腕の中で生きている悦びを感じれば感じるほど、死の恐怖を感じるようになりました。まだ余命が残り少ないことは伝えていません…。

茉莉の27才の誕生日、ディズニーシーで一日中遊び、和人は茉莉にペアリングを贈りました。ホームで別れ、和人が振り返ると茉莉が倒れていました。

茉莉の入院が決まり、茉莉の父親と初めて顔を合わせた和人は、父親の口から「茉莉の残り時間は少ない」と衝撃の言葉を聞きました。

和人は退院した茉莉を実家に招待し、プロポーズをしました。茉莉は自分は必ず死に至る難病であと少ししか時間が残されていないことを告げて「ごめんね。彼女にしてくれてありがとう。さようなら。」ともらった指輪を返して帰りました。

1週間後、和人が訪ねてきました。どうしても残りの時間を茉莉と一緒にいたいと懇願する和人。しかし茉莉は受け入れませんでした。

ありがとうも、ごめんねも、好きですも全部伝えられた…。もう死ぬ準備はできた。

和人と別れてから、茉莉は必死で漫画を描き続けました。そのうちの一つが出版社の目に留まり単行本を出すこともできました。そして沙苗の結婚式のために純白のウエディングドレスを縫い上げました。

桔梗が妊娠していることを、茉莉は病院のベッドの上で聞きました。自分がいなくなっても新しい家族が増えることに大きな喜びを感じるのでした。茉莉は桔梗の子どもに会うことなく天国へと旅立ちました。

茉莉が亡くなって8年の月日が流れました。和人の姿は思い出の小学校にありました。公務員さんが8年前にも思い出を捨てに来た女性がいたと話してくれました。

図画工作室の奥の棚にある和人と茉莉の相合傘の周りにはたくさんの名前が彫ってありました。自分の名前と好きな人の名前をこの棚に彫ると想いが叶うという伝説が出来上がっていました。

和人は茉莉に来週結婚することを報告し、茉莉が思い出を書き綴ったノートを捨てた焼却炉にペアリングを投げ入れて帰っていったのでした。

小説を読んだ感想は

この本、電車の中とか絶対に人前で読んだらいけないやつです。私は思いっきりやらかしてしまいました…。

本の帯見て「ちょっとヤバいかも」とは思ったけど、どうしても早く先が読みたくて…寸暇を惜しんで読んでいたら、鼻水ぐしゅぐしゅになってとんでもないことに…。

茉莉の一言一言が胸をえぐるように突き刺さってくるのは、小坂流加さんの叫びそのものだったからなのでしょうね。

冒頭からいきなり「オバサンになるのなんて嫌だし。丁度いいじゃん。あと10年で十分だよ。」という開き直りから始まります。なんかわかる気がする…。そうでも思わないと余命なんてそんなに簡単に受け入れられるもんじゃありません。

”死”を”怖いもの”と感じないように、自分を納得させるために、たぶん私も同じようなことを思うような気がします。認知症になったり寝たきりになってみんなに迷惑をかけるくらいだったら、早く死んだ方が幸せと。

それでも手の中にある大切なものと別れを告げなければいけないという事実を受け入れることは、そんなに簡単なことではないんですよね。

いっぱいいっぱい泣いて悩んで納得したはずなのに、覚悟はできているはずなのに、時折襲ってくる”死”の恐怖に足をすくわれて、動けなくなってしまう…。

実際に”死”というものを実感したことがある人の言葉は、胸の奥底にまで響いてくる説得力を持っています。

でも号泣必至の物語ではありながら、ただただ悲しいだけではないのがこの物語の魅力です。

茉莉は和人と出逢った意味は「和人を生かすこと」だと気付きます。「逃げないでちゃんと生きて」と、きっと亡くなった後もずっと和人のことを支え続けています。

短い命は確かに悲しいんだけど、人は死んでも誰かの中でずっと生き続けていられること、誰かに寄り添って支えになれることを教えてくれる物語でした。

茉莉が必然的に小坂流加さんと重なってしまうので、とめどなく涙はあふれてくると思いますが、小坂さんの温かい愛をいっぱい感じることもできる珠玉の感動作。1人でも多くの方に読んでいただきたいですね。

映画もたぶん号泣もんですね。

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