小説『夏への扉』不朽の名作のあらすじとネタバレ

婚約者と共同経営者に裏切られ全てを失ったダンが、自分と大切な人の未来を取り戻すために「冷凍睡眠」と「タイムトラベル」というSFの王道を駆けぬける物語。

発表から70年近く経つ現在でも全く色あせず、日本で初めて映像化されました。SFですが、描いているのは大切な人の未来を守りたいという人間の「愛」です。

『バック・トゥー・ザ・フューチャー』を始めとする、不動の人気を誇る「タイムトラベル」というジャンルを確立させるのに、一役買った不朽の名作。

世界中をとりこにした映画『バック・トゥー・ザ・フューチャー』が1985年のことなので、30年も前にタイムトラベルの発想があったことになりますね。

【主なキャスト(敬称略)】
山﨑賢人:高倉宗一郎
清原果耶:松下璃子
PETE:藤木直人
夏菜:白石鈴(宗一郎の婚約者)
真島秀和:松下和人(宗一郎の共同経営者)

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小説『夏への扉』のあらすじ

1970年

ダン(ダニエル・ブーン・デイヴィス)は次々と実用製品を発明することに喜びを感じる根っからの技術屋。親友のマイルズ・ジェントリィと興した会社の経営も、美人秘書のベル・ダーキンとの交際も順調で、なにも不満のない生活を送っていると疑いもしていなかった。

ところが、納得のいく製品を一つずつ着実に作りたいダンと、一つでも多くの製品を大量生産して会社を大きくしたいマイルズとは、以前から経営方針に大きな隔たりがあった。

マイルズから呼び出され、ベルとともに向かった会社の一室で、ダンは2人に騙されていることを知った。ダンの特許は全て会社に譲渡され、ダンは会社を追われることになった。

失意のどん底で、バーの窓越しにたまたま目にした【冷凍睡眠保険】の文字。30年くらい眠っていれば、もうマイルズやベルとは関わらなくてすむかもしれないと、半ば安易な気持ちで、申し込みをした。

ダンが宣戦布告するためにマイルズの家に向かうと、そこにはベルもいた。激しい罵り合いの末、ダンはベルに催眠自白強制剤を注射されてしまった。

愛猫ピートはマイルズとベルに散々の傷を負わせて逃げていった。

カバンの中に持っていた【冷凍睡眠】の申込書が見つかり、ベルに冷凍場に連れて行かれたダンは、30年の眠りへと導かれることになった。

2000年

ダンは冷凍睡眠から目を覚ました。ベルとマイルズへの復讐心がメラメラと燃え盛ってくるが、睡眠中に保険会社が倒産して、ダンは全財産を失っていることを知らされた。

まずはお金を稼いで、マイルズの継娘で幼い頃から可愛がっていたリッキィ(フレドリカ・ヴァージニア・ハイニック)を探すことを優先順位の上位に置いて、新車をぶっ壊す仕事に就いた。

しかし、根っからの技術屋のダンは、技術屋としての仕事がしたいと、ハイヤード・ガールを生産している会社に乗り込んで行って「自分が開発者だ」と説明し、名誉技術研究室長という立場での入社を果たした。

会社はダンをハイヤード・ガールの宣伝広告に使った。すると「シュルツ」と名乗る人物から電話があり出てみると、それはベルだった。

ダンはベルに会うことにした。マイルズがすでに亡くなっていることはわかったが、リッキィの居場所についての情報はほとんど得られなかった。

2000年の世界では、かつてダンが発明した「万能フランク」の改良版とも言えるロボットや、睡眠前にダンが頭の中で考案中だった「製図機ダン」が大活躍していた。

特許の書類を取り寄せてみると、二つとも発明者は「D・B・デイヴィス」となっていた。

職場の同僚で話の合う技術屋・チャックと、この不思議な事実について話をしていると、「確かめる方法がある」とチャックはうっかり機密を口にした。

それはトウィッチェル博士がタイムマシンの発明に成功しているというものだった。同じ質量のものを2つ用意して、そのタイムマシンにセットすると、1つは過去に、1つは未来に転送されるというものだった。

ダンはトウィッチェル博士を訪ねた。ダンは「インチキだ。できっこない。」とトウィッチェル博士を挑発して、まんまとタイムマシンで1970年に戻った。

1970年

ダンが落ちたところはデンヴァーヌーディストクラブの敷地内で、全裸のサットン夫妻が目の前にいた。

夫のジョンは優秀な弁護士だった。2人の協力を得て部屋を借り、「万能フランク」の改良版「護民官ピート」と「製図機ダン」の完成に全力を注ぎ、同時にベルの素性を調べてもらった。ベルはとんでもない詐欺師だった。

「護民官ピート」と「製図機ダン」の設計が完成し、ダンは特許の申請や会社の運営を、ジョンに一任することにした。

そして、かつてベルに注射を打たれることになったマイルズの家に出かけていった。ガレージからマイルズに奪われた「万能フランク」を取り戻し、逃げ出したピートを回収し、「万能フランク」は分解して捨てた。

リッキィに会うために、彼女が参加しているガールスカウトを訪ねた。ダンは、マイルズの元には帰らずに迎えに来たおばあさんと一緒に行くこと、21歳になったらハイヤード・ガールの株券を銀行に持って行って現金に換えること、そしてそのお金で【冷凍睡眠】に入ることを言って聞かせた。

ダンはこれからピートと一緒に【冷凍睡眠】に入り、2001年5月1日に必ず迎えに行くからと約束した。

ダンは今度こそ自分の意志で、ピートと共に、人生2度目の【冷凍睡眠】に入った。

2001年

4月27日、ダンはピートと共に目覚め、5月1日、予定通りリッキィを迎えに行った。

ダンとリッキィは結婚し、ジョンが守ってくれていた会社もダンの手に戻ってきたのだった。

映画『夏への扉』のあらすじ

1995年、将来を期待された優秀なロボット科学者・高倉宗一郎は、実用化ロボットの完成目前にFWE社の共同経営者・松下和人と婚約者・白石鈴の裏切りに遭った。

会社も発明も全てを奪われ、冷凍睡眠装置・コールドスリープに入れられ、目覚めたのは2025年の東京だった。

眠っている間に全財産を失い、家族同然のかけがえのない存在だった松下璃子は死んでしまったことを知り、絶望する宗一郎。

璃子に渡るはずだった株は知らない男の手に渡っており、璃子の死も不可解だったため、宗一郎はアンドロイドのPETEの力を借りて30年の間に起こった真実を調べた。

2025年のFWE&ガーディアン工業を訪ねた宗一郎はそこで衝撃の事実を知った。社長の坪井強太は子どもの頃に実家の定食屋で宗一郎と会っており、そこで宗一郎は物理学者の遠井教授とも会っていたと言うのだ。

坪井の協力で璃子に渡るはずの株を持っていたのは「佐藤太郎」という人物だということ、さらに驚くべきことにアンドロイドPETEもプラズマ蓄電池も実用化したのは宗一郎だということがわかった。

そして、宗一郎が開発したアンドロイドPETEを改良して2号機を作ったのは「佐藤璃子」という人物だと…。

宗一郎はある確信を胸に時間転移装置を開発した遠井を訪ねた。遠井は宗一郎が訪ねてくることがわかっていたようだ。

PETEと共に1995年にタイムスリップした宗一郎は、佐藤太郎という男に助けられた。宗一郎が眠っている間にPETEが全ての事情を説明してくれていて、佐藤は宗一郎に全面的な協力を約束した。

ふたたび冷凍睡眠に就いて2025年に戻るまでの10日間の間にPETEとプラズマ蓄電池の実用化の設計図を完成させ、特許の取得と会社の設立は全て佐藤に任せ、宗一郎は璃子を助けに向かった。

元婚約者の鈴の元から愛猫ピートを救い、奪われた研究資料を全て奪い返し、大切な璃子を救い出した宗一郎は、再び佐藤の元に戻り、全ての研究資料と株式を譲渡し、璃子を養子に迎えてくれるように頼んでふたたび冷凍睡眠に入った。今度はネコのピートも一緒に。

ふたたび2025年で目覚めた宗一郎を迎えてくれたのはアンドロイドのPETEと愛猫のピートだった。

全てが順調に進んでいることを知らせる佐藤からの手紙で、宗一郎は一つだけ予定外だったことを知らされた。

璃子は宗一郎が冷凍睡眠に入った10年後に冷凍睡眠に入り、宗一郎が目覚める同じ日に目覚めることになっていた。

映画の見どころと原作との違い

これは【タイムトラベル】をテーマにしたSF物語ですが、自分だけでなく大切な人の未来を守りたいという愛の物語でもあります。

愛猫のピートが探し求めている「夏への扉」は、宗一郎が探し求めている「扉」の象徴のようなものです。望む未来につながる扉を見つけるまであきらめない気持ちに、きっと元気をもらって励まされることでしょう。

そしてもう1つの見どころは、なんといっても藤木直人さんのアンドロイド。学習してはどんどん人間に近づいてくるので、たまに心の声がもれ出てくるのがお茶目です。

1956年に発表されている原作では、出てくるロボットは人型ではなくあくまでも「機械」の域を出ていません。今の時代だからこそアンドロイドが夢になりうるのでしょうね。

時間軸がパラレルワールドになっているのではなくループしているという発想も面白かったです!自分が変えた世界にそれを知らない自分が立っているって、めっちゃ斬新で刺激的でした!

諦めなければ、失敗じゃない」という璃子の言葉がすべてを包んでくれる、温かくて愛にあふれた物語です。

映画『夏への扉-キミのいる未来へ-』視聴方法は?

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