小説『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』あらすじは?

恵比寿、渋谷…と都内で次々と起こる爆弾テロ。第3のテロを予告し「これは戦争だ」と言う犯人の要求は首相との対話でした。

犯人の目的とは何なのか。物語が進むにつれて衝撃の真実が明らかになってきます。単なるテロと片付けられない、犯人の真意を知ったとき、心の奥底深くから感情を揺さぶられることになります。

元々の原作は『And so this is Xmas』というタイトルでしたが、映画化をきっかけに『サイレント・トーキョー』というタイトルに改題し、文庫化されました。

『And so this is Xmas』は、反戦を歌ったジョン・レノンの名曲『Happy Xmas (War is Over)』に出てくる歌詞の一部です。

ジョン・レノンの名曲にインスパイアされた物語は、クリスマスの東京が舞台です。人々が色めき立つクリスマスの夜、東京は静まり返ることとなります。

【主なキャスト(敬称略)】
佐藤浩市:朝比奈仁
石田ゆり子:山口アイコ
西島秀俊:世田(渋谷署の刑事)
中村倫也:須永基樹

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小説『サイレント・トーキョー』のあらすじ

12/22 買い物に出かけた主婦・山口アイコがベンチに座っていると見知らぬ男から声をかけられます。

このベンチの下に爆弾があるんですよ。…これは戦争です。

KXテレビに「恵比寿ガーデンプレイスに爆弾をしかけた」という電話が入り、いたずらかもしれないと、バイトの来栖公太とADの高沢雅也が取材に派遣されます。

現場に行くとベンチに座ったおばさんに話しかけられ、高沢は座るのを交代させられます。聞けば荷重が30キロ以下になると爆発する爆弾が仕掛けられているとのこと。

アイコと公太は犯人の指示によりマンションの一室へと向かいます。

犯人の予告通り15:30爆発が起きます。爆発したのは高沢がすわってるベンチではなく傍にあったプラスチックのゴミ箱でした。

イタズラではないことがわかり警察が出動します。高沢のベンチの下にある爆弾の起爆装置を液体窒素で凍らせようとした瞬間、次の爆音が起こりました。

それは爆発ではなく「空砲」でしたが、人々を恐怖に陥れるには十分でした。

渋谷警察署に対策本部が置かれ、会議が開かれているところへ、次の爆破予告が届きます。それは公太が読み上げる犯行声明のYouTubeの動画でした。

明日の18時半。渋谷駅のハチ公前。次回はホンモノですよ。これは戦争だ

そして、首相との対話を要求してきました。しかし、首相はテロリストといかなる交渉もしないと要求を突っぱねました。

高梨真奈美印南綾乃は合コンで、IT会社社長の須永基樹と出逢い、綾乃と須永は少しだけいい関係になっていました。

綾乃は渋谷で食事をしようと須永を誘いますが、仕事があるからと断られ、友達の真奈美と一緒に食事をすることにします。

12/23 渋谷駅前は爆発物を捜索する警察官と野次馬とでいつもより込み合っていました。警察はまだ爆発物を見つけられずにいます。

真奈美は渋谷のレストランに向かう前に、少しハチ公前を冷やかしていこうと言います。そこで、仕事だから…と言っていた須永を見かけます。あとをつけようと思ったその時、ハチ公の銅像が木っ端微塵に爆発しました。

おびただしい数の人が血を流して倒れ、人々はパニックになりました。死者は400人超。まさに地獄絵図…。

犯人は事の経緯を観察しているに違いないと踏んだ刑事・世田志乃夫泉大輝は、離れたビルの屋上から一部始終を見ていました。噴煙の中、近くのビルの一室で何かが光るのを見つけ、2人は銃を手にして中に飛び込みました。

そこにいたのは、犯人に利用されビデオカメラをハチ公前広場に向けた来栖公太でした。

ハチ公前で爆破の被害を受けた真奈美と綾乃。綾乃は顔が判別できないほど血だらけになっていました。真奈美は奇跡的に軽症で済み、すぐに病院を出ることができましたが、携帯電話以外の荷物はなくなっていました。

真奈美は須永のところへ行きました。現金も家の鍵もなくなってしまったので、お金を貸してほしいと頼むと、すんなり貸してくれましたが、なぜ渋谷にいたのか、なぜ無傷なのかを聞くと、須永は怒って出ていってしまいました。

須永の部屋にあるパソコンで、須永が撮影したと思われる動画を見つけた真奈美。それは爆発の前後のハチ公前広場の人々の様子を撮影した動画でした。

犯人からは次の犯行声明が届きます。「12月24日18時。東京のどこか。」

須永は福生のカフェにたどり着いていました。カフェで出会った人物が「あの男」のことを知っているような口ぶりだったので、力ずくでその情報を聞こうとしたら、銃を突き付けられます。カフェには刑事の世田が先回りしていました。

真奈美は、須永のパソコンに残る犯行の証拠と思われるものを全て警察に報告していました。家宅捜索で、須永が私立探偵から手に入れた情報も警察に見つかってしまいました。

須永が探す「あの男」とは?
須永が探している「あの男」とは、20年前に失踪した父親でした。父親の名前は、朝比奈仁。探偵からの情報によると、福生のカフェで働いていたことがあるとのことでした。

カフェの店主からの情報で、朝比奈が住んでいる部屋を家宅捜索すると、そこには爆破事件の場所を記したメモがありました。朝比奈がテロに関係していることは間違いない…。

メモによると次のターゲットは”東京タワー”その次は”レインボーブリッジ

朝比奈の情報を教えてほしいと捜査への協力を要請する警察に、須永は取引を持ちかけました。

アイコは、マンションの一室を出て六本木のビストロに来ていました。そのアイコの前に一人の男が現れます。以前このビストロで働いていた朝比奈仁という男です。その男は「あんたを助けることが俺の最期の仕事だ」と言いました。

そこへ警察が乗り込んできます。朝比奈はアイコが持っていた爆弾の入ったボストンバッグを振りかざし言います。

「彼女とレインボーブリッジまでドライブをさせてくれたら、東京タワーの爆弾の解除パスワードを教えてやる。」

朝比奈とアイコが乗った車がレインボーブリッジに向かいます。その後ろをただついて行くしかない警察車両。そこへ朝比奈から電話がかかってきます。

「パスワードは『War is over』」

それから突然、朝比奈とアイコを乗せた車はスピードを上げ、レインボーブリッジの上から東京湾へと飛び出していきました。車が海面に消えた数十秒後、水中で大きな爆発があり、水の柱が暗い空に向かって伸びていきました。

事件の真相は?
事件の後、朝比奈仁の名前は一切表に出ることはありませんでした。それこそが、須永が警察に持ちかけた取引でした。

父に捨てられてからの20年、須永と母は貧乏のどん底から這い上がって、ようやく普通の生活を手に入れていました。母は再婚して平穏な日々を過ごしていました。それが父のせいでマスコミにさらされ再び壊されるのは、須永にとって許せないことでした。

家族を捨てた朝比奈は実はゲイで、恋人はアメリカ軍の腕のいい「爆弾処理班員」のショーンという男でした。ショーンは中東で戦死していました。

アイコの夫・ロブはアメリカ軍の爆弾のスペシャリストで、ショーンはロブの部下でした。中東の戦争に赴任したロブは、ショーンを含むたくさんの部下を失い、精神を病んでアイコの元に帰ってきました。

ある日、急に元気を取り戻したロブは「俺がするべきことは何かわかった」と言いました。それはアイコを爆弾のスペシャリストに育てることでした。

アイコにすべてを教えたロブは、戦争から帰って以来初めて笑顔を見せ、その次の日、自ら命を絶ちました。

夫と新婚旅行で行くはずだったルートを一人で回ろうと、日本に帰ってきたアイコが成田の空港のラウンジで見たテレビのニュースで、日本の首相が言いました。

「日本も、戦争のできる国になるべきだ」

日本は、アイコからすべてを奪った「戦争」を容認する国になろうとしていました。アイコは「戦争とは何か」を教えてあげることにしました。

東京タワーも本当に爆破するつもりでしたが、予想しない男が現れました。朝比奈はロブの部下だったショーンの恋人で、新婚旅行のルートを考えてくれた人でした。そのルートに沿って爆弾が仕掛けられていることに気付き、アイコが六本木のビストロに現れるだろうとやってきたのでした。

朝比奈は「あと一回は、日本にチャンスをあげて」と言い遺して死んでいきました。

映画『サイレント・トーキョー』のあらすじ

世間が色めき立つクリスマス・イブ。テレビ局に1本の電話がかかってきます…「恵比寿に爆弾をしかけた」

取材に出向いていった来栖公太高沢雅也は、そこに居合わせた主婦・山口アイコと共に事件に巻き込まれていきます。

お昼の12:00に恵比寿アークプレイスで爆発。これは空砲でしたが、人々を恐怖に陥れるには充分でした。

犯人の指示により、来栖公太は動画で「次の爆発は18:00ハチ公前。首相との対話を要求する。」と犯行声明を出しました。

騒然とするハチ公前には、おびただしい数の野次馬たちが集まってきます。OLの高梨真奈美印南綾乃もその中にいました。

渋谷のレストランの予約がとれ、綾乃に須永基樹を誘わせたのですが、須永は横浜に行く用があると断ったため、2人で行くことにしたのです。

レストランに行く前にハチ公前を冷やかして行こうという真奈美たちの前に、何かを撮影しながら人ごみを歩いていく須永が現れます。

須永を追いかけるのをやめて、レストランに向かおうとしたその時、渋谷駅のコインロッカーで、爆弾が爆発しました。

世田谷署の刑事の世田志乃夫は、爆発に巻き込まれ地面にたたきつけられ意識を失いかけましたが、なんとか立ち上がり周囲を見回しました。犯人は必ずどこかで見ているはず…。

すぐそばのビルの屋上で爆発の一部始終を撮影していた来栖公太が世田に捕らえられましたが、犯人に利用されていただけだとわかりすぐに釈放されました。

爆発で吹き飛ばされた真奈美は重傷を負って病院に運び込まれた綾乃とはぐれてしまいました。そしてハチ公前で怪しい行動をしていた須永のことがどうしてもひっかかり、須永の家を訪れました。

横浜に行くと言っていたのに、ハチ公前で何をしていたのか詰め寄り、口論になって須永は出ていきます。

真奈美は須永の撮った渋谷の動画を見て犯人だと確信し、警察署に向かい、そこにいた世田に「犯人を知っている」と告げました。

須永は探偵の調査結果を元に、朝比奈が働く珈琲店に来ていましたが、そこに情報を得た世田が現れました。

須永基樹は朝比奈仁の息子でした。探偵の計らいで、恵比寿アークプレイスで息子と会えることになっていましたが、爆発騒ぎでそれは叶いませんでした。

須永の自宅の留守番電話に、朝比奈から「爆弾の予告現場から50メートル離れておけ」というメッセージが入っており、須永は朝比奈が関与していると確信します。

渋谷で人ごみを撮影していたのも、爆弾を設置したからには、どこかで必ず爆発する様子を見ているに違いないと読んで、朝比奈の姿を探していたからでした。

世田と一緒に朝比奈の住む家を訪ねると、そこには爆弾事件の場所を示したメモが残されていました。

須永は朝比奈の名前はマスコミに明かさないという約束で、警察に司法取引を持ちかけました。

事件の真相は?
朝比奈はかつて自衛隊員でした。

PKO活動でカンボジアに赴任し地雷の撤去作業をしていたとき、現地の女の子が「あんたたちのせいだ。」と、目の前で地雷を踏んで自爆しました。

朝比奈と上官の里中はこの経験から心を壊し、毎日うなされ暴れるようになりました。

里中はアイコの夫で、里中とアイコが東京に行く観光ルートを考えたのは朝比奈でした。

浅草寺→恵比寿→渋谷ハチ公前→東京タワー→レインボーブリッジ

そのルートはまさに、今回の爆弾事件の設置場所の通りでした…。

心を病んだ里中は、帰国後自分の持っている爆弾の知識と技術を全てアイコに教えました。そして全てを教え終わった里中は、自らの命を絶ってしまいました。

「日本を戦争のできる国にする」と言う総理大臣に、アイコは戦争とはどういうものなのか教えてあげることにしたのでした。

アイコは東京タワーが爆発するところを見届けるに違いないと、朝比奈は六本木の「イル・テアトル」に向かいました。2人で話しているところへ、警察が乗り込んできました。

話の邪魔をするなと、爆弾の入ったカバンを見せながら声を荒げる朝比奈。アイコは車で話をしようと提案しました。朝比奈とアイコが乗る車の後を警察車両が追います。

朝比奈から爆弾の解除コードが送られてきた直後、朝比奈とアイコを乗せた車はスピードを上げレインボーブリッジから飛び出し海へと落ちていきました。

そして車は大爆発しました。事件は被疑者死亡という形で幕を閉じました

映画の見どころと原作との違い

原作は数日にわたる出来事として描かれていますが、映画では12/24クリスマスイブの1日の出来事として描かれます。朝比奈仁とアイコの関係や戦争に対するトラウマも、映画ではわかりやすくアレンジされています。

この映画は、監督を始めとするスタッフ・キャストの全員が同じ一つの思いで作り上げている渾身の作品です。

その思いとは…「反戦

ジョン・レノンの名曲『Happy Xmas (War is Over)』にインスパイアされた原作の元のタイトルは、この歌の歌詞の一部『And so this is Xmas』でした。

映画化するに当たって、コンセプトをわかりやすくするために『サイレント・トーキョー』に改題されたのだそうです。

かつて日本も実際に「戦争」を経験していますが、実体験をしている人々は高齢化してしまい、本当の恐ろしさを知る人が少なくなってしまいました。

地球上のあちこちで今でも「戦争」は起こっていて、そのニュースを目にすることはあっても、どこか他人事です。

「戦争」とはどういうものなのか。大切な人の命や当たり前の日常が奪われるというのはどういうことなのか。

平和ボケしてしまって、考えることや想像することをやめてしまった、今の日本のど真ん中に爆弾を放り込むことで、今一度「平和」について考えてほしいという、強いメッセージを感じることでしょう。

3億円かけて作られたという渋谷のセット、そして1万人のエキストラが連日連夜にわたって遅くまで撮影したという爆破現場のシーンは、背筋が凍るほど圧巻です。

きっと起こらないだろうという慢心だったり、人目をひく動画を撮って誰よりも早くSNSにUPしたいという欲求だったり、現代の縮図のようなものがそのまま描かれているのが、現実味を帯びていてよけいに恐怖を感じます。

現在活動停止中のYouTuberのみきおだと、飛ぶ鳥を落とす勢いのあのちゃんがそういう若者代表として出演しているのも見どころの一つですね。

この映画に関しては、2回3回と複数回見るのがおススメ!

1回目見た時は、この渋谷のシーンが強烈すぎて、ひたすら恐怖を感じるだけかもしれませんが、2回目、今度は登場人物に感情移入して見ると少し感じ方が変わってくると思います。

やってることは決して許されることではないけれど、全員自分の信じる”愛”に誠実に動いていることが伝わってくることでしょう。

こういう愛の表現の仕方もあるのか…。いや、そうじゃなくって、もっと他にいい愛の伝え方があるでしょ!って、もどかしくて切なくて、胸が苦しくなってしまいます。

物語はフィクションだけど、こういう形の感情はもしかしたら現実に存在するかもしれないと思うと、違う意味の怖さを感じてしまいます。

主題歌『Happy X-mas (War is Over)』

1971年、ジョン・レノンとオノ・ヨーコによって作られた曲で『イマジン』と並んで有名な反戦歌。

世界中でたくさんのアーティストによってカバーされており、今でもよく耳にするメロディーなので、一度は聞いたことがあるはず。

今回はこの歌をAwichさんが歌います。

映画『サイレント・トーキョー』視聴方法は?

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