映画『シーソーモンスター』原作小説のあらすじとネタバレ

製薬会社の営業として働く北山直人、目下の悩みは妻の宮子と母親のセツの嫁姑問題だ。宮子自身も義母との関係はうまくこなせると高をくくっていたのに、なぜかうまくいかない。

直人には秘密だが、宮子は特殊な訓練を受けた国家の情報員だった。セツの両親、夫が事故死していることを不審に思った宮子がセツについて調べ始めると、宮子にまで危険が及ぶようになっていった。

そんな中、突然起こった夫・直人のピンチ!助けに向かった宮子の前に明らかになったとんでもない真実とは!?

『ブレット・トレイン』で世界中を虜にした伊坂幸太郎さんの作品『シーソーモンスター』が再びハリウッドで映画化されることになりました。今回のテーマは嫁姑問題です(笑)

書籍の『シーソーモンスター』には『シーソーモンスター』と『スピンモンスター』の2つの作品が収録されています。

【主なキャスト(敬称略)】
アン・ハサウェイ
サルマ・ハエック

スポンサーリンク

小説『シーソーモンスター』のあらすじ

シーソーモンスター

バブル経済全盛期、製薬会社の営業として働く北山直人。目下の悩み事は妻・宮子と母親・セツの不仲だ。会社の先輩の綿貫に愚痴ってみるも、世間的に珍しい話でもなく決定的な解決策は見つからない。

帰ると宮子が直人に愚痴るため待ち受けているため自宅に帰る足も重くなる。2人の間になかなか子どもができないこともセツの嫌味に拍車をかけているようだ。直人の父・は6年前、神社の階段から落ちて亡くなっている。

宮子と出会ったのは7年前、東京から新大阪に向かう新幹線の中だった。車内で騒ぎ始めた男性が、直人の隣の席に座る宮子にからんできたので冷凍みかんを握らせて追い払った。

結局、静岡駅から乗ってきた男性に席が間違っていることを指摘され直人は移動したのだが、宮子が落とし物を直人のところまで届けに来てくれたことが交際を始めるきっかけとなった。

宮子が一人でいるとき石黒市夫と名乗る保険の外交員が訪ねてきた。セツに用事があったようだが、宮子にセツとの仲はどうかと尋ねてきた。宮子は適当に返事をしてかわそうとしたが、石黒は「先祖からの因縁で避けられないもの」と言った。

実は、宮子は国の秘密機関の情報員だった。新幹線で直人と出会ったときは仕事の真っ最中だった。直人がかもし出す安心感と可愛らしさに心を掴まれた宮子は、直人の鞄の中から名刺入れをすると、落とし物を装って再び直人に話しかけたのだった。

直人と交際を始めた宮子は情報員を引退することを決意した。心理戦などの訓練も受けてきたので義理の母ともうまくやっていける自信があったのに、なぜかセツとは初対面からうまくいかなかった。

ホテルのラウンジで初顔合わせの真っ最中、情報員の仲間から「トイレに向かえ」という符牒を受け取り、トイレに向かった宮子。後輩の情報員からソ連が神経毒を使ってテロを起こす計画があるのでホテルからは出た方がいいと言われた。

直人に場所を変えようと話している時、落ちそうになったフォークを素早い動きでキャッチした老女が目に入った。宮子は心がざわつき、席を立った老女を追いかけた。

老女と思っていた女は素早い動きで宮子に襲いかかってきた。必死で女の動きを封じトイレの個室に拘束した。女のハンドバッグからは小瓶が数本発見された。

エレベーターホールにいる仲間にハンドバッグを渡し、女を拘束していることを告げた。仲間たちは偽の情報に操作され誘導されていた。宮子の活躍でテロが未然に防がれたのだった。ラウンジに戻るとセツは怒って帰った後だった。

直人はO病院の前の院長とゴルフ接待で一緒にコースを回ったとき、元院長が父の同級生だったことを知った。元院長は父と話したときに「もしも自分が突き落とされたら…」という穏やかでない話をしていたことを教えてくれた。

宮子は元同僚の情報員に頼んで事故として処理された義父の事故についての情報を手に入れた。目撃者がいたらしいが、その目撃者もすぐに事故で亡くなったということだ。

直人に話すと、セツは夫だけでなく両親も交通事故で亡くしていることがわかった。身の回りで事故はそんなに起こるものなのだろうか。もしかしたらセツが保険金目当てで…?

それから数日して、宮子は郵便局員を装った男に襲撃された。セツが留守の時に貯金通帳を調べようとしたけれど、セツに見つかってしまったり、庭に落ちた洗濯物を拾おうとしたとき2階のベランダから植木鉢が落ちてきたり、街中で車道に押されたりと、事態は穏やかではない様相を呈し始めた。

セツの情報をくれた元同僚が事故に遭って現在意識不明の重体であるという情報が宮子にもたらされた。宮子の心はますます疑心暗鬼になっていった。

一方、直人はO病院現在の若院長が不正を働いていることに気付いてしまっていた。実際には診療していないにもかかわらず保険料を手に入れる不正請求だ。

若院長から宮子とデートをさせてほしいと提案された直人は、黙っていることができず爆弾を放ってしまった。「空診療による不正請求」という言葉を放ったとたん若院長の顔が歪むのがわかった。

元同僚が意識を取り戻したのでセツの正体に近付けると確信した宮子にもたらされた情報は、元同僚がソ連の潜入工作員だったという事実だった。偽情報で仲間を誘導していたのが宮子が神経毒を持った女を確保したため立場が悪くなってしまったらしい。

元同僚は失敗の責任を取るために偽郵便局員に宮子を襲わせたがそれも失敗し、始末されそうになったということだった。セツが関わっていないことは明白だった。

宮子が直人と出かけた帰り道。明らかに暴力団の一味と思われる3人組に襲われた。男は直人に向かって「首を突っ込むな」と言った。直人が宮子を守ろうとしてくれているのは有り難いが直人が立ち向かって勝てるような相手ではない。

宮子は直人が転んだ拍子に頭に紙袋をかぶせた。3人の男は宮子がやっつけた。

翌日、直人はO病院の若院長に呼び出された。向かった先で拉致され、直人に遺書を書くように指示してきたのは綿貫だった。最期に宮子の声を聞くためにかけた電話で、宮子は逆探知で直人の拘束場所を突き止めた。

宮子がビルの一室にたどり着くと直人は別の場所に連れ出された後だった。慌てて後を追おうとして車に突っ込まれた。うまく受け身が取れずに左足を負傷してしまった。

車から降りてきた男に攻撃され万事休すかと思われたとき、よく知っている声が聞こえた。セツの声だった。セツは華麗に身をひるがえし、宮子の目の前で大きな男を制圧してしまった。

セツは宮子の大先輩だという衝撃の事実を告げた。宮子とセツは男を痛めつけ直人の居場所を割らせた。

宮子とセツが着いた時、直人は首にロープを巻かれ脚立の上に立っていた。宮子は直人の頭に黒いポリ袋を被せるとセツと共に直人を拘束していた男たちを叩きのめしていった。

直人が被せられた黒いポリ袋を取ると、ナイフを持った綿貫が宮子に襲いかかろうとしているところだった。直人は宮子を守るために綿貫の前に体を滑り込ませ刺されてしまった。

幸い直人は一命を取りとめた。宮子はセツから一部始終の説明を受けた。セツの両親や夫は任務の報復で殺されたらしい。そして直人はセツが任務で踏み込んだ家から助け出された子どもで、その後養子として迎え入れたのだと教えてくれた。

直人の退院後、宮子たちとセツは別居して生活することになった。セツの絵がうまいことを発見した宮子は、セツと一緒にカタツムリのヒーローを主人公にして絵本を作ることにした。

石黒は言っていた。長い長い歴史の流れにおいても、耳の大きな山族と瞳の青い海族は出会うと必ず対立してしまうと。そして自分はその争いをただ見守るだけの無能な審判のような存在だと。

そうか、宮子とセツは海と山の関係だったのか。

スピンモンスター

水戸直正(なおまさ)、小学校3年生の時に自動運転で走行するミューズの事故で両親と姉を亡くし、裁判中に祖父母を亡くし天涯孤独の身だ。今は手紙の配達人をしている。

デジタル化されペーパーレス化していた社会が、安全のためにより秘密性・重要性の高いものは手書きの手紙で送るように流れが変わってできた仕事だ。

2050年、仕事で新札幌駅に向かう新幹線の中で、直正は見知らぬ男からセキュリティレベルの高い封筒を手渡された。「あとで読んで」と言って男はすぐさま去って行った。

直正は同じ新幹線の中で檜山景虎(かげとら)の姿を見た気がした。景虎は直正の家族が亡くなった事故の相手方のミューズに乗っていた少年で、直正と同じように家族を亡くし天涯孤独の身となっていた。

運命のいたずらか、16歳のとき直正の通う総合学校に景虎は転校してきた。卒業するまでほとんど話をすることも関わることもなかった。その景虎が突然、直正の前に現れたのだ。景虎は警察官になって誰かを追って新幹線に乗りこんでいた。

新幹線が緊急停止した。直正は先ほど男から託された手紙を開いて読むことにした。男の大学院時代の友人・中尊寺敦に手紙を届けてほしいという内容だった。中尊寺とはジュロクという音楽ジャンルのγ(ガンマ)モコというグループが好きだということで仲よくなったらしい。

そして20年前、γモコのメンバーの1人・田中カタナが亡くなったとき、次にまたメンバーが亡くなることがあったら青葉城の政宗像の前で会おうと約束していたのだと。まさに昨日、γモコのドラマー・杏アントが亡くなったと報じられたところだった。

停車した新幹線は運行不能となったことが伝えられ、乗客は線路上を歩いて新仙台駅まで向かうことになった。直正は会えるかどうかわからなかったが青葉城に行ってみることにした。

政宗像の近くのベンチに座っていた男に声をかけると、その男が中尊寺だった。中尊寺は手紙を読むなりパスカを検索し、人工知能「ウェレカセリ」の開発者・寺島テラオが新幹線の高架から落ちて死亡したという記事を直正に見せた。

寺島こそが中尊寺の友人で直正に手紙を託した人物で、寺島が新幹線の緊急停止ボタンを押して新幹線を停め、線路を走って行ったことが書かれていた。

中尊寺に託した手紙には「君の言う通りだった。オツベルと象。」とだけ書かれていた。

中尊寺は防犯カメラやセンサーに記録が残らないように自作のジャマ―を持っており、直正についてくるように言った。

中尊寺はかつて寺島と人工知能の開発に携わっていたらしい。人工知能に莫大な情報を送るために人を使ってログを取る実験をしている途中で、中尊寺は今後何が起こるか怖くなり研究から身を引いたらしい。

「君の言う通りだった」は、寺島が人工知能の開発には危険を伴うことを認め助けを求めてきたのだと理解した中尊寺は、2人にしかわからない場所に「ウェレカセリ」へのアクセスキーが隠してあるのだと読み取った。

「オツベルと象」は20世紀の宮沢賢治による童話だ。物語の最後に「川へ入っちゃいけない」というセリフがある。中尊寺は寺島と2人で八王子の山の中で道に迷ったときに出会ったおばあちゃんを思い出した。おばあちゃんに「川へ入っちゃいけない」と言われたのに、中尊寺は川に入って流されたことがあった。

車に乗ることは直正にとっては苦行に等しい行為だったが、仕方がない。中尊寺が借りたレンタカーで八王子に向かった。途中のサービスエリアでトラックにひかれそうになった子どもを直正が助けるという出来事まであった。

中尊寺が見せてくれたおばあちゃんの写真を見て直正は驚愕した。子どものころからずっと大好きな絵本『アイムマイマイ』の作者・せつみやこだった。

せつみやこは新しく住むことにした土地について詳しく書いたエッセイを残していることに思い当たり、直正は恋人の日向恭子に調べてもらうことにした。

エッセイに書いてあった情景をたどっていくと20年前と変わらない景色に出た。後ろから声がして振り向くと、そこには90歳を超えたせつみやこがいた。

寺島は半年くらい前にせつみやこを訪ねて、こっそり古いPCを2階の押し入れに隠して帰ったらしい。せつみやこはそのPCを取りに中尊寺が来ることもわかっていたようだ。みやせつこは直正の目が蒼いことを指摘し、海族と山族の話をした。

突然車の音がして警察官がやってきた。PCの中を探し回って中尊寺はようやくウェレカセリの「自爆コード」を見つけ出した。長いコードを写真に撮ろうと思った矢先に警察官が踏み込んできて銃を撃った。弾はPCを直撃していた。

万事休すかと思われたが、せつみやこが老人とは思えない身のこなしで警察官を制圧してしまったすきに、直正と中尊寺はスクーターで逃げた。

警察は誰かが投稿したサービスエリアでトラックにひかれそうになった男の子を助けたのが直正だということも、恋人の日向恭子の存在も割り出し、全力で中尊寺と直正を追っていた。

スクーターで逃げる直正と中尊寺のところにはせつみやこの息子・北山由衣人(ゆいと)から連絡があり、逃走を助けてくれることになった。

由衣人によると都内では斧を持って人を襲う暴動が起きており、直正と中尊寺はその暴動の首謀者として指名手配されているとのことだ。中尊寺は情報を操作しているのはウェレカセリだと言った。

迎えにきてくれた由衣人の車の中で、直正はせつみやこから聞いた海族と山族の話をした。みやせつこも由衣人も海族だと言った。目が蒼いことを中尊寺に見せると、中尊寺は衝撃を受けて固まった。

中尊寺は直正の右目にはログを取るためのカメラが仕込まれていることに気付いた。おそらく家族を亡くした交通事故で入院したときに無断で埋め込まれたものだ。

直正が見たものは全てデータセンターにログとして保管されている。ウェレカセリの自爆コードの画像もどこかに保存されているはずだ。今はそれにすがるしかない。

追ってくる警察から何とか逃げ切り、中尊寺は自爆コードを手に入れた。あとはどうやってそのコードをウェレカセリに挿入するかだ。

直後にγモコのライブがあることがわかると、そのシステムを使ってウェレカセリに接触することしか考えられなかった。直人と中尊寺はシステムの点検を装ってライブ会場に潜入した。

自爆コードを打ち込み最後の一つのキーを押せば完了というところで、中尊寺は思いとどまった。うまくいきすぎている…。これはウェレカセリに誘導されているだけではないのか?

そのとき警察が踏み込んできて直正と中尊寺は取り囲まれた。直正はその中に景虎の姿を見た。景虎は直正に向かって発砲した。

直正は奇跡的に一命はとりとめたものの昏睡状態が続いている。

東北旅行に向かう新幹線の中で景虎に話しかけたのは偶然乗り合わせた中尊寺だった。車内ではγモコの新作が世界配信されるニュースが流れている。

結局、中尊寺はウェレカセリを止められなかった。ウェレカセリは情報を操作して人と人とが対立するようにことを運んでくる。それでも人間の感情だけはコントロールできないはずだ。

中尊寺は見舞いに行ったらちゃんと直正の目を見てやれと景虎に伝えて去っていった。

映画の見どころと原作との違い

そもそも舞台となる国が違うのですから原作からは大きく設定が変わってくるのは当然なのですが、果たしてアメリカの嫁姑問題ってどんな風なんだろうってワクワクします。

嫁姑問題ってそれだけで面白くない訳がない!

嫁と姑は元国家の秘密情報員だったので相当のアクションも期待できますよ。対して夫はたぶんあたふたするタイプ。ありがちなコメディタッチでも描かれるんでしょうかね。(笑)

『ブレット・トレイン』のときには作られたのはアメリカだけど物語の舞台は日本という設定だったので「アメリカの人たちには日本はこう見えてるの?」という驚愕やツッコミどころが満載で、そういう意味でもめちゃくちゃ面白い映画でした。今回は日本は関係ないのでそういう楽しみ方はとりあえず封印かな。

伊坂幸太郎さんのハラハラドキドキの物語の展開そのものを楽しむことにしましょう。

『シーソーモンスター』を電子書籍で!

「シーソーモンスター」と「スピンモンスター」はゆる~く繋がっています。
2024年2月14日時点の情報となります。 オフィシャルサイトにて必ず最新の情報をご確認ください。

ebookjapanで初めてログインする方は70%OFFクーポン配布中(6回利用可)!

U-NEXT 924円
music.jp 924円
amazon prime 880円(Kindle版)
924円(紙の文庫本)
ebookjapan 924円
Booklive 924円
コミックシーモア 924円
honto 924円
dブック 924円
Amebaマンガ 840pt