小説『マスカレード・イブ』シリーズ第2弾、あらすじとネタバレ

東野圭吾さんの傑作「マスカレード」シリーズ第2弾!

『マスカレード・ホテル』で新田浩介と山岸尚美が出会う前の物語です。新田と尚美が奇妙なコンビを組むことになるのは、運命の糸に導かれるかのように必然だったのかもしれません。

と言っても、この作品で2人が顔を合わせることはないんですけどね。

事件解決のために仮面を剥がそうとする新田と、お客の仮面を必死で守ろうとする尚美。2人がどのように仕事に対する姿勢やプライドを育てていったのか、垣間見える物語です。

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「マスカレード」シリーズとは?

映画化された東野圭吾さんの傑作シリーズは「ガリレオ」シリーズ、「新参者」シリーズと傑作ぞろいですが、それに続く第3弾と言っていいでしょう。

木村拓哉さん演じる新田浩介は、福山雅治さん演じる「ガリレオ」シリーズの湯川学、阿部寛さん演じる「新参者」シリーズの加賀恭一郎に全く引けを取らない、魅力的なヒーローです!どの人も一癖も二癖もあるんだけどね。(笑)

第1弾 マスカレード・ホテル

2011年刊行。刑事がホテルマンとして潜入するというトリッキーな作戦が始まり、新田と尚美が出会うことになったきっかけの事件。

第2弾 マスカレード・イブ

2014年に刊行された本作品。新田と尚美が出会う前の物語。2人が出会うのは必然だったのかもしれませんね。

第3弾 マスカレード・ナイト

2017年刊行。またもやホテル「コルテシア東京」が殺人事件の舞台に?新田の潜入捜査が再び始まり、迷コンビ復活です!

小説のあらすじは?

あこがれのホテル「コルテシア東京」に就職して4年。やっとフロンド業務をやらせてもらえることになった山岸尚美は、つくづく接客の難しさを感じていました。

何を求められているか少しでも役に立ちたいと、お客さまを観察するのですが、気をまわし過ぎて余計なことを言ってしまったり、お客に叱られたりすることもありました。

そんなとき先輩ホテルマンが言っていたのが「ホテルを訪れる人々は仮面を被っている。それを剥がそうとしてはいけない。」ということでした。

 

元プロ野球選手の大山将弘とともにホテル「コルテシア東京」に訪れたのは、尚美の大学時代の元カレ、宮原隆司でした。会社が倒産したり派遣切りにあったりして、今はタレント活動をしている大山将弘のマネージャーの仕事をしているとのことでした。

尚美が業務を終えて帰ろうとしたとき、宮原から携帯電話に着信がありました。「今すぐ来てほしい」と言われた部屋は、宮原たちより一足先に一人でチェックインした西村美枝子の部屋でした。

バスローブ姿で現れた宮原は、シャワーを浴びている間に不倫相手の女性が突然いなくなったと言いました。彼女を探してほしいと言われ、勤務中の同僚の何人かに聞いてみましたが、西村美枝子らしき人物を見たと言う情報は得られませんでした。

スペインに発つ前に少し話したいと尚美は再び宮原から呼び出されました。宮原は迷惑をかけたことを謝りましたが、尚美は宮原が大山の身代わりになっていたことに気付いていました。女性は北新地のホステスで、本当の名は横田園子といい、大山将弘の愛人でした。

宮原たちがホテルを出たあと、横田園子がチェックアウトする姿が目に留まり、尚美は話しかけました。西村美枝子の部屋で拾ったイヤリングを、別のプレジデンシャル・スイートの部屋の前で拾ったと言って手渡すと、横田園子の顔からは血の気が引きました。

男性一人で急遽予約されたプレジデンシャル・スイートから、あまりにも豪勢なルームサービスが頼まれることを不審に思い、尚美はベルボーイに成り代わって部屋にルームサービスを届けていました。そして、その部屋で横田園子を目撃していたのでした。

横田園子は、後から追ってきた鴨田という男と結婚するつもりだと言いました。

 

新田浩介は、先輩刑事の本宮から「事件だ」と呼び出されました。ランニングに行った夫が帰ってこないという妻の通報で付近を捜索すると、背中と腹部を刺された男性の遺体がフェンスで囲まれた工事現場から発見されました。

被害者の田所昇一は、多数の飲食店を経営する実業家であり、3年前に結婚した妻の美千代は料理教室の講師をしていました。

工事現場にはタバコの吸い殻が落ちていましたが、それはカモフラージュではないかと呼んだ新田は、他人の吸い殻が簡単に手に入るセルフサービスの店のの防犯カメラを調べました。すると灰皿の吸い殻を袋に入れて持ち去る男が捜査線上に浮上してきました。

男の名前は、横森仁志。事情聴取では、工事現場の騒音がうるさかったので嫌がらせのために吸い殻を投げ込んだと言いましたが、押収された横森のジャンバーの袖口には血が付着しており、DNA鑑定の結果、田所昇一のものだと結論づけられました。

横森はなんと、田所美千代の料理教室に通う生徒でした。美千代と運命の出会いをした自分は美千代を救ったのだと言い切ります。夫の昇一は美千代にDVをしており、ひたすら我慢をしていた美千代を救ったのだと…。

しかし、さらに聞き込みをして詳しく調べても、美千代にDVを受けていた事実はなく、出版社の男性と不倫をしている事実を夫が掴んでいたのではないかということがわかりました。

資産家の夫と離婚することは考えられないので、偏執狂の傾向がある男を利用して夫を殺害させたと警察が考えたのは当然のことですが、美千代が殺人教唆をした証拠は何ひとつ見つかりませんでした。

「もし横森が逮捕されなかったらどうする気だったんですか」と新田が聞くと、美千代は「あんな男、なんとでもできます」と言って、唇の隙間からピンクの舌をのぞかせました。

女の仮面の下に隠された、怖ろしい素顔を垣間見た新田は、何もできないことに唇を噛みました。

 

フロントの尚美に「タチバナサクラ、今夜からこのホテルに泊まるんでしょ。部屋を教えて。」と言ってきた5人の男たち。彼らはあこがれの女性に会うためにホテル「コルテシア東京」2泊するつもりのようです。

「タチバナサクラ」は今年の春に新人賞を獲ってデビューしたばかりの人気女性作家。このホテルに缶詰めになって執筆することをどうやってい知ったのか、5人の男たちは、ロビーのあちこちでスマホの画面に映る美女の写真を見ながら、フロントやエントランスを凝視していました。

尚美が出版社の担当者・望月に確認すると、「タチバナサクラ」は「玉村薫」という本名で宿泊すると言います。その後、尚美の前に「玉村薫です」と名乗って現れたのは50歳前後の小太りの男性でした。

望月が言うには、「タチバナサクラ」の正体が40過ぎのおっさんであることが分かったのは、新人賞の受賞が決まった後のことで、「女流覆面作家」として売り出すことになったということでした。また、追っかけをしている男たちが持っていた写真はコンピュータの合成画像で、間違って流出してしまったものでした。

いろんな作戦をたてたものの結局空振りに終わった5人がチェックアウトして、尚美がやれやれと思っていると、出版社の今村と名乗る男がフロントに訪ねてきました。「タチバナサクラ」に仕事の話をしに来たので、電話で「今村が来た」と伝えてほしいと言います。

尚美が「タチバナサクラ」の部屋に電話をかけると、突然今村が尚美の持つ受話器を奪い取り「僕はあなたのファンです。いつも応援しています。」と言い、少し言葉を交わして受話器を尚美に返しました。

今村と名乗った男は泊まっていた5人の仲間で、会えなかったら声だけでも聞こうという作戦だったと言い、「タチバナサクラ」の声は思った以上に綺麗な声だったと大満足して帰っていきました。

「タチバナサクラ」が綺麗な声?しかも「玉村薫」が出かけていく姿を何度も見ていた尚美は不審に思って、部屋を訪ねていくことにしました。

そこには高校生と思われる女性がいて、しばらくすると「玉村薫」が帰ってきました。

実は小説を書いて新人賞を受賞したのは高校生の娘だったのですが、父親は娘が小説を書いていたことも知らなかったばかりか、読んでみるとその小説がどえらいエロ小説だったと、作家として日の目を見ることを大反対したのでした。

40過ぎのおっさんが書いたと言ったら出版社は諦めるかと思ったら、覆面作家として売り出すことに決まり、出版社もだましながらの執筆活動が続いているとのことでした。少なくとも娘が成人するまでは隠したい、そのあとは本人に任せるという父親に、尚美は「父娘の仮面は必ず守る」と約束したのでした。

 

泰鵬大学の理工学部の教授室で岡島孝雄という52歳の教授の遺体が発見されました。新田は捜査経験の少ない穂積理沙と組むことになって、なかなかの捜査のしにくさを感じていました。

岡島教授は研究にしか興味がないような人で、女性関係や人間関係にまったくトラブルを抱えている形跡はありませんでした。

ただ、半導体を扱う研究をしていた岡島教授は、新素材の製造方法に自分が主導してきた方法を採用し、准教授の南原定之が特許を持っている方法は切り捨てようと考えていたようで、南原とは何らかの確執があったように思われました。

南原を事情聴取しますが、犯行推定時刻のアリバイを言おうとしません。そればかりか、本当にその日だったのか?と日にちにこだわりを見せたりします。南原は翌日は京都で学会があり、京都のホテルをチェックインした事実は確認できましたが、部屋は使われた形跡がありませんでした。

東京に戻って犯行を行うことも可能だという事実を突きつけられ、ホテル「コルテシア大阪」に泊まったことは白状ましたが、相手は人妻なので絶対に名前は言わないと言います。

新田は穂積理沙に大阪出張を命じました。

尚美はちょうどそのころ若手教育と応援のためにオープン間もない「コルテシア大阪」にいました。東京から刑事が来たと言われ、尚美が対応することになりました。

穂積理沙に南原の写真を見せられ事件のあった日に泊まったかどうかを聞かれましたが、尚美はその記憶はありませんでした。しかし印象的な出来事があったので「あくまでの推測」と前置きした上で尚美はその出来事を話しました。

事件より数か月前に、とても印象的な薔薇の香りを漂わせた美しい女性が「コルテシア大阪」に宿泊したことがありました。その翌日、チェックアウトしたあとで荷物にタオルが紛れ込んでいたと返しに来た男性がいて、そのタオルから女性のつけている薔薇の香りがしたのでした。そしてその男性こそが、南原定之でした。

事件のあった日、南原は見かけませんでしたが、薔薇の香りを漂わせた女性は確かに「コルテシア大阪」を利用した記憶があるので、南原がいた可能性は否定できないとのことでした。

東京に戻った理沙は新田に「南原に会ったとき薔薇の香りがしたことがあった。女性の残り香だと思う。」と言い、事件の日と数か月前に泊まった日の宿泊票から、同一女性の指紋がないか調べてみることになりました。

同一人物の指紋が出てきた予約票には「畑山玲子」という名前と横浜の住所がかかれていました。新田と穂積理沙は畑山玲子に会いに行きました。畑山玲子からは薔薇の香りがしましたが、南原の写真を見せても「知らない」と言われました。

新田は、南原が日にちに拘ることから誰かに岡島教授の殺害を依頼したのではないかと考えるようになりました。しかしそれには大きな見返りが必要となります。それに見合う見返りとは誰かを殺すこと…つまり交換殺人が行われたのではないかと考えました。

調べてみると、数か月前に若い女性が殺された未解決事件があり、その女性の部屋から手紙が見つかっていました。その差出人は「畑山輝信」…畑山玲子の父親で、その手紙には被害者の女性が自分の娘であり財産を相続させたいということが書かれていました。

畑山玲子にとっては邪魔な存在で、動機は充分にありますが、事件があった日は夫と海外に行っていたという揺るぎないアリバイがありました。しかし、被害者女性の爪からは南原のDNAが検出されました。

交換殺人がほぼ確定し、畑山玲子の自宅に警察が訪れました。すると、玲子の夫が逃げたかと思うとマンションの4階のバルコニーから身を投げました。岡島教授殺害の実行犯は玲子の夫でした。

 

穂積理沙が大阪から手がかりを持って帰ってきたお手柄だと、上司から褒められていましたが、新田だけは違っていました。南原と会ったときには薔薇の香りなんてしなかったし、逆に畑山玲子に会ったときには薔薇の香りがしていたのに無反応だったことが納得いかなかったのです。

新田に追及され「コルテシア大阪」で優秀なフロントクラークからヒントを得たことを白状しました。穂積理沙がお礼の電話をかけた時にはもう「コルテシア大阪」にはいなかったようで、新田は「その聡明なフロントクラークの顔を見てみたかったな」と、少し残念に思ったのでした。

 

尚美が「コルテシア東京」に戻ってきてひと月ほどたったころ。1人の女性が真っすぐフロントにやってきて「マツオカタカシという人が泊まっているはずなので部屋番号を教えてほしい」と言ってきました。

ホテルのルールとしてお客の部屋番号を教えることはできません。女性は、自分はたった今ニューヨークから帰ったばかりで、遠距離恋愛をしている彼を驚かせたいと思っていると説明しました。

尚美はサプライズが台無しになることを承知で、宿泊客の松岡高志に電話をかけて確認してみると、松岡は「絶対に部屋番号は教えないで。さっさと追い返して。」と言いました。

尚美は女性に、松岡は予約をしていたけれども直前にキャンセルしたので泊まっていないと伝えましたが、全く納得していない様子です。それでは自分がこのホテルに泊まるから部屋を用意してほしいと言い出しました。

スイートでもロイヤル・スイートでもいい、お金は何とかするからとにかく部屋を用意してほしいと懇願する女性に、本日は満室ですと、尚美は頭を下げ続けることしかできませんでした。

女性は怒って出ていきました。尚美は、女性に同情しながらも、どんなお客でもその仮面を守るのが自分たちホテルマンの仕事だと…改めて自分に言い聞かせるのでした。

小説を読んだ感想

正義感が強い新田が、犯人の仮面を剥がし犯人逮捕への執念を見せる姿…。

そして尚美が、内心では葛藤しながらも、お客の仮面を守ることこそがホテルマンの仕事と自らに言い聞かせている姿…。

こんな風に仕事に対するプライドややりがいは育つのですね。そりゃ、一緒に事件を解決しようと思ったらぶつかるわ。

『マスカレード・ホテル』の続編なのですが、ちゃんと序章の働きもしていて、さすが東野圭吾さん!とうなってしまいましたね。

この物語の中で、新田と尚美は顔を合わせることはないのですが、なにかしらの運命を感じずにはいられないような、ふわふわワクワクした気持ちも感じさせてくれる、素敵な物語でした♪

それにしても、ホテルマンの仕事って大変…。変な客、ややこしい客、わがままな客、身勝手な客、想像を超えるバリエーションに、開いた口がふさがりませんが、無限に物語できるんじゃない?と思ってしまいました(笑)

購読する方法は?

「マスカレード」シリーズは、超人気なのに、まだ電子書籍化されていないみたいですね。紙の本でよむしかなさそうです。


文庫本は660円です。

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