兄ちゃんの死を機に、ありきたりだけど幸せだった、家族の形が変わっていきます。唯一変わらなかった飼い犬の「サクラ」が再び結びつける、家族の物語です。
ありふれた日常を描いた普通の物語なのですが、登場人物が個性的すぎて、感情移入しそうになると離れていく…みたいな、不思議な物語です。
『サラバ!』『きいろいゾウ』など人気作を次々と生み出す、西加奈子さんの初期の人気小説。
【主なキャスト(敬称略)】
吉沢亮:長谷川一
北村匠海:長谷川薫
小松菜奈:長谷川ミキ
小説『さくら』のあらすじ
東京の大学に進学し一人暮らしをする長谷川薫の元に「年末、家に帰ります おとうさん」という手紙が届きます。年末年始は彼女と過ごす約束になっていたけど、薫は帰省することにしました。
サクラは12歳のおばあちゃん犬です。
はじめ5才、薫3才のとき、昭雄&つぼみ夫妻に妹ミキが生まれました。ミキは美しい子で、男の子にモテモテでしたが、はじめ兄ちゃん以外の男には全く興味がなく、はじめ兄ちゃんについて行って、危ない遊びをするのが大好きでした。
長谷川家はニュータウンに引っ越します。ミキが突然「犬を飼いたい」と言い出し、サクラを迎えることになりました。
はじめ兄ちゃんは、中学生になると「矢嶋さん」というちょっと不良な感じの彼女を連れてきました。八嶋さんは兄ちゃんの童貞を奪った人でもありました。
ミキは大好きな兄ちゃんを奪った八嶋さんが家に来る日は、不快な音を立てまくりふて寝していました。
中学校に入学した薫は、小学校のときから文通をしていた湯川さんと会うことになりました。興奮して眠れないくらいだったのに、ニキビがいっぱいできていた湯川さんの顔をまっすぐに見ることができませんでした。それ以来、手紙も来なくなってしまいました。
ある日「サキコ」という人から昭雄あてに手紙が届きます。単なる高校の同級生だという昭雄に、怒り心頭のつぼみは尋問します。高校の卒業アルバムをめくって「どいつや!」とすごまれ、指さした人物は「溝口先史」という名前のたくましい男の人でした。
サキフミ君は高校時代、お父さんが所属していたラグビー部のマネージャーで、昭雄に恋をしていました。その恋は発展することなく卒業し、彼(いや彼女?)は卒業後、水商売の道へと入っていきました。
長谷川家は家族全員でサキコさんのおかまバーに行きました。サキコさんは「愛のある嘘をつきなさい。」と言いました。
毎日のように、兄ちゃんのところに来ていた矢島さんからの手紙や電話がぱったりと途絶えてしまい、兄ちゃんはうなだれて考えこむことが多くなり、サッカーの練習も休みがちになってしまいます。
受験生の薫は「ゲンカン」と呼ばれる同級生の女の子・須々木原環(すずきはらたまき)と出逢い、童貞を奪われてしまいました。それ以来学校公認のカップルとなり、別々の高校に進学してもずっと関係が続いていきました。
中学生になったミキは美しさにより拍車がかかり、男子の注目を一身に集めていきました。しかし、元々持っていた攻撃性にもますます拍車がかかっていました。入学早々先輩に呼び出されるものの、数人の先輩をボッコボコにし、ある意味、伝説となりました。
ミキはバスケ部に入り、友達の薫を家に連れてくるようになりました。見た目は男の子みたいで社交的ではないカオルさんとミキはよく似ていました。ミキに初めてできた女友達でした。
ミキの中学校の卒業式の日、カオルさんは皆の前でミキのことが好きだと宣言しました。
大学生になって家を出たはじめ兄ちゃんが、夏休みで1週間帰省していたとき、その不幸は起こりました。コンビニに買い物に行ったはじめ兄ちゃんは猛スピードのタクシーにはねられ、生死をさまよいます。一命をとりとめたはじめ兄ちゃんは、下半身の筋肉と顔の右半分の表情を失ってしまいました。
車いす生活になったはじめ兄ちゃんは、何をする気力も失せて、泣いたり怒ったりばかりの毎日が始まりました。
幼いころから「はじめレジェンド」を作り続け、周りから好意の視線を集め続けていた兄ちゃんは、周りの人から奇異の目で見られることに、心が壊れてしまいました。
そして、12月の寒い日、はじめ兄ちゃんはサクラの散歩に出かけたまま帰ってきませんでした。20才の誕生日にミキがプレゼントしたサクラの散歩用の鎖を、自分の首に巻き付けその生涯を閉じました。
ミキが赤いランドセルを持って薫の部屋にやってきました。その中には矢嶋さんからの3年分もの手紙が入っていました。誰よりも早く帰宅するミキはそれをポストから取り上げて、あろうことか、兄ちゃんの字を真似して「ほかに好きな人ができました。もう電話をかけてこないでください。」という手紙まで矢嶋さんに送っていました。
ミキは生まれた時からずっと、兄ちゃんに恋をしていたのでした。
ミキは受験勉強をやめ高校にも行かず、自分の身に一切気を配ることも無くなって家の中に閉じこもってしまうようになりました。つぼみは甘いものとアルコール漬けの毎日でブクブクと太っていきました。
昭雄はやせ細り、ある日突然、赤いランドセルを持って出ていきました。薫は一人になりたいと、東京の大学へ進学しました。
久しぶりに昭雄が帰ってきて、全員でお墓参りに行って迎えた大晦日の夜、サクラが犬小屋の前で動かなくなっています。
家族全員で大晦日の夜にサクラを診てくれる病院を探しに出かけます。軽自動車にぎゅうぎゅう詰めに乗って、どこか診てくれるところがあるはずと走り回りました。
お巡りさんに止められたその時、げっぷを続けていたサクラは「ぶふうっ」と大きなおならをして、同時にミキは緑色のうんこまみれになっていました。
しっぽを振り元気を取り戻したサクラ。家族を一筋の明るい光が照らし、長谷川家の新しい1年が始まりました。
映画の見どころと原作との違い
最大の見どころは…小松菜奈さんが演じるミキ!!です。容姿端麗。だけど、見たことないレベルで破壊力が半端ない女の子です。それはそれはやりたい放題。
はじめ兄ちゃんのことが男性として好きで、そのためにミキは周りから見るとだいぶ変わった子にしか見えません。兄ちゃんが車いす状態になったときも、ミキは兄ちゃんを独り占めできてうれしいんだろうなぁという表情。
兄ちゃんが亡くなったときも不思議な笑みを浮かべていて、正直全く共感できなかったので「怖っ」としか思えませんでしたが…。小松菜奈さん恐るべし。すごい女優さんだ…。
そして、犬のサクラはひたすらかわいい!かわいいというのは見た目だけのことではなくて、健気というか愛情深いというか、そういう意味も全部ひっくるめてかわいい!
人はいろいろ経験していくことで、気持ちが変わったり価値観が変わったり、ずっと同じでいることなんてできないけれど、サクラだけが何も変わらない…。それが何だか愛おしくて優しくて、ぐっときました。
サクラがいつでも家族の真ん中にいてくれるから、家族でいられるんだなって。主人公はまぎれもなく「サクラ」なんだな。
あと、原作には「サキコさん」というお父さんの高校時代からの友人が出てきます。一癖ある人物なのですが「愛ある嘘をつきなさい」という素敵な言葉を長谷川家の子ども達に送ります。加藤雅也さん、イケメンだけどおねえの役も可愛くてよかったよ♪
原作と違うのは、はじめ兄ちゃんがはまっていたのがサッカーじゃなくて野球だったことくらいかな。サクラがボールを追いかけるのが大好きで、明るくて可愛くてみんなの中心にいるところを表現したかったのでしょうね。
映画『さくら』視聴方法は?
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