
竹宮ゆゆこさんの人気小説『砕け散るところを見せてあげる』が中川大志さんと石井杏奈さんのW主演で実写化されることになりました。
正義感あふれるヒーローの男の子が、いじめられている女の子を助けて恋に落ちる…それだけのお話だと思ったら大間違い!
一度読んだだけでは???な、なんとも不思議なお話なんですが、内容さえ理解できれば、愛にあふれた素敵な物語に感動しますよ!
純愛部分のあらすじ
受験を控える高校3年生の濱田清澄は、遅れて入った体育館の朝礼で、1年生の女の子がいじめに遭っている場面に遭遇します。
「やめろ」と一言。
集会が終わって解散になっても、その場に座り込んでいる少女に話しかけようと、その背に軽く手を触れると「ああああああああああああ!」と絶叫されてしまいます。
前髪で顔のほとんどは隠されており、老人のように背中を丸めている姿は、まさにヤバい…。
教室で尾崎(姉)が、今朝の様子を妹から聞いたと話しかけてきます。いじめられていた少女の名前は蔵本玻璃。学年一の嫌われ者だと言います。
かつて孤独を経験したことのある清澄は、友達がいること、誰かに大事にされることは当たり前ではないと知っています。
清澄は1年生の教室に向かいました。玻璃は何人もの人に机や椅子の足を蹴られていました。清澄は倒れた机を元に戻してあげました。
それからは毎日、放り投げられている上履きを元に戻してあげたり、玻璃の教室を見に行ったりして、玻璃のことを気にしていました。
1年生の女子が3年生の女子を追い出してまで、市営運動場の屋外トイレで何かをしていたことを聞き、胸騒ぎがした清澄は、そのトイレに向かいます。
そこには、頭から水をかけられ、掃除道具入れの中に閉じ込められた玻璃がいました。
なんとか助け出し、びしょ濡れの制服を乾かすために、近所のクリーニング屋のおばちゃんのところへ駆け込みます。
制服が渇くまでの間、清澄の家で暖を取りながら、玻璃と話すことができました。いつも前髪で隠されている顔をよく見ると、整った可愛い顔をしています。
「先輩は優しい。ヒーローです。私も強くなって、【UFO】を撃ち落としたい。」と話す玻璃に、清澄は「ヒーローの3つの掟」を教えました。
クリーニング屋のおばちゃんが「あの子にあげて」と作ってくれたおはぎを渡すために、玻璃の通学路の途中で玻璃を待って一緒に登校していると、玻璃と同じクラスの尾崎(妹)が、玻璃の眼鏡ケースを持ってきてくれました。
玻璃のクラスにも味方になってくれる子がいることがわかり、その日は3年生の教室から玻璃のクラスを見守ることにしました。ところが…
玻璃が食べようとしていたおはぎが、ある男子のよって蹴り落されていました。止めに入ろうとした尾崎(妹)に向かって、男子が落ちたおはぎを投げ付けようとします。玻璃はそれをかばおうとして、体におはぎを受けました。
そしてさらに、投げ付けられた3個のおはぎは、それをかばおうとした清澄が顔面で受け止めていました。
顔面におはぎを受け、鼻血を出して保健室で休んでいた清澄のところへ玻璃が来ます。先生や親ともちゃんと話した方がいいんじゃない?と言う清澄に、玻璃は「暴力を受けたことはないし、クラスには尾崎さんもいるから、もう少し頑張ってみる」と答えました。
清澄はクリーニング屋のおばちゃんの言葉を思い出します。確かに「手足、背中、あちこちに痣ができてる」と言っていました。いじめが原因ではないとしたら一体誰が…。嫌な予感がします。
清澄は玻璃をうちに来るように誘って、玻璃のお父さんが帰宅するギリギリまで引き留め、お母さんと一緒に送っていきます。
送って行った先で玻璃のお父さんと会い、清澄のお母さんは世間話にいろいろと尋ねます。「一緒に暮らしているおばあさんは元気ですか。介護などで困っていませんか。」
玻璃のお父さんは「おばあさんは市立病院に入院している」と言いました。清澄のお母さんは市立病院のナースで、調べてみたけど、そんな入院患者はいないことがわかりました。
玻璃の上に浮かんでいる【UFO】を見てしまった…
玻璃を助けたいと思うのに、玻璃には避けられ、清澄はどうしていいのかわからなくなっていました。
そんなある日の夜、玻璃が訪ねてきます。「危険が迫っています。逃げて下さい。【UFO】が攻撃を開始しようとしています。」
玻璃の顔は腫れあがり全身も痣だらけでした。清澄の家を教えろと暴行を受けていました。玻璃のお父さんは、本当に清澄とお母さんを殺しに来るつもりだと言います。
清澄は決心しました。「今から2人で【UFO】を撃ち落としにいく」
玻璃のお父さんは、死んだおばあさんをスーツケースに詰めて、自宅の近くにある沼に沈めた…玻璃は、それを手伝わされた…と言いました。
清澄はそのスーツケースをたまたま見つけたことにしようと、その沼に向かいました。泥に足を取られながら必死で沼の底から引っ張りあげたものは、玻璃のお母さんのスーツケースと…お母さんのピアスでした…。
出ていったと思っていた玻璃のお母さんは、お父さんに殺されていました。
警察に電話をしようと走った瞬間、清澄は頭に衝撃を受けました。そこにはゴルフクラブを持った玻璃のお父さんがいました。そして、玻璃の頭もぶっ飛ばしました。
玻璃と清澄を自宅に放り込み、玻璃のお父さんは灯油をまいて火をつけようとしていました。
お母さんのピアスを投げ、その転がった音にお父さんが気を取られているすきに、玻璃はお父さんからゴルフクラブを取り上げました。そして【UFO】を木っ端微塵に破壊するまで叩きのめしました。
玻璃は大好きな清澄を守り切りました。
その後のあらすじ(超ネタバレ)
1回読んだだけではわからない、超難解なのはここからです。
「俺」とか「私」で表される語り手が別々の人物なのと、「あの子」「Aさん」と呼ばれているのが玻璃を指していることが分かれば読み解くことができます。
ここから先は、超ネタバレなので、まだ小説を読んでいな方はご注意ください!
事件のその後
玻璃を縛り付けていた【UFO】とは玻璃のお父さんのことです。【UFO】を撃ち落とし、赤い雨に打たれながら先輩を守った…ということは、つまり玻璃はお父さんを殺してしまったのです。
玻璃は、名前を変えて、過去をすべて捨てて、別の人生を歩むことになりました。
3年後、名前が変わった玻璃と清澄は、雑踏の中で偶然出会います。離れることなどできるはずもない清澄と玻璃は、住む町を変えて結婚しました。
でも、清澄と玻璃の上には新しい【UFO】が出現していました。
2人の間に新しい命を授かり、もうすぐ出会えるという日に、清澄は目の前で濁流に車が転落していく事故に遭遇します。清澄は夢中で飛び込み、車から次々と乗っていた人を助け出し、最後は力尽きて、自分は溺れて亡くなってしまいました。
そして、新しい【UFO】は墜落していきました。
真っ赤な嵐との出会い
夫・清澄を亡くした「私」は、真っ赤な血に濡れて嵐のように泣き叫ぶ新しい命と対面しました。
それからはずっと生きることだけを考えてきました。
大人になった息子に「私」は、本当の名前「玻璃」と、「私」がしたこと、「私」のお父さんがしたことを話すことにします。
【UFO】は2つあって、撃ち落とされたせいで死んだのは2人。
つまり、本書の冒頭で【UFO】の話をしていたのは真っ赤な嵐とお母さん・玻璃なのですね。
そして、それに続く、父と同じ大学に行って、父のようなヒーローになりたいと願っている高校3年生は、清澄と玻璃の息子・真っ赤な嵐です。
小説を読んだ感想
物語のおよそ9割くらいは、高校生のときの清澄と玻璃の純愛の話です。
いじめを見て見ぬふりすることなく、一緒に戦おうとしてくれる人がいるんだ、しかも一人じゃない!ということに、ここは読んでいてとても爽快でした。
それに応えようと、一生懸命な玻璃も愛おしい。
いじめという題材を扱っていながら、顔面でおはぎを受け止めて鼻血を出したりと、少し笑える部分もあって、単純に2人の物語は美しいと感じました。
それが、玻璃の【UFO】がお父さんであることが次第にわかってきてから、純愛物語が一変、サスペンスへと変わっていきます。
【UFO】は2つ出てきます。自分をがんじがらめにしてしまって、常に自分を見つめている存在…みたいなものでしょうか。
1つ目の【UFO】はわかりやすく、玻璃のお父さんです。
そして、1つ目の【UFO】を撃退した時に現れた2つ目の【UFO】。それは玻璃自身であり清澄の中の後悔。
名前を変えた玻璃と再び出会い、彼女と家庭を作っても、清澄には本当の心の平和は訪れていなかったのですね。
玻璃は父を殺して、名前を変えて生きていくことになってしまいました。「玻璃」を「玻璃」として愛してあげられない清澄。守ってあげられなくてヒーローになれなかった清澄。
お互いがお互いを大事に思っているがゆえに、生まれてしまった2つ目の【UFO】
それが消えるのが清澄が死んだとき、というのがあまりにも切なくて悲しすぎました。
それでも、玻璃の中にも息子の真っ赤な嵐の中にも、清澄の愛はずっと生きていることが、手に取るように伝わってきて、本書の終わりは「愛には終わりがないことを信じている。」と結ばれています。
大切なものを「愛する」というのはどういうことなのか、じっくりと自分を見つめ直すきっかけになる素敵な物語でした。
顔が見えない小説だからこそ成り立っていた物語。映画の世界ではどのように描かれるのか、楽しみですね!
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