小説『十二単衣を着た悪魔』

源氏物語の中でも通常はわき役と思われる”弘徽殿女御(こきでんのにょうご)”をフィーチャーした物語。

現代のダメ男・雷はなぜか源氏物語の世界にタイムスリップ(?)してしまって、そこで弘徽殿女御の片腕として活躍します。

弘徽殿女御の強さ、賢さ、たくましさは惚れ惚れするくらいかっこいい!

こんな女性は現代にこそ活躍してほしいです。

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小説のあらすじ

大学4年生の伊藤雷(らい)。卒業間近の3月だというのに、59社目の不採用通知が届き、フリーター決定。

4歳下の弟・水(すい)が京都大学医学部に現役合格したことを隣の家のヤマンバから聞き、家に帰る足が重くなります。

見ると家のすぐ手前に見たことのない路地が…。どういう訳か行ってみようという気になって、その路地に一歩踏み入れた瞬間、雷鳴が轟き巨大な火の玉が雷の体を直撃します。

目が覚めると、そこは源氏物語の世界でした。

いぶかしがる平安の人たちに「高麗からきた陰陽師の伊藤雷鳴だ」と名乗り、弘徽殿女御の元に連れて行かれます。そこで、弘徽殿女御の病気を治したことで、おかかえのパーソナル陰陽師になるようにと依頼されます。

フリーターが決定した派遣の仕事で、先ほどまで「源氏物語と疾患展」というイベントの設営をしていた雷は、偶然にも源氏物語のあらすじ本といくつかのサンプル薬品を持っていました。

あらすじ本のおかげで源氏物語の筋は全てわかるので、見事なまでに未来を言い当て、サンプル薬品のおかげで重篤な病をケロリと治してしまう…嘘っぱちもいいところの偽陰陽師。

そんな偽陰陽師の雷鳴が、弘徽殿女御の魅力にひかれ、彼女と共に平安の時代を懸命に駆けぬけていきます。

優秀な弟の陰に隠れて自己嫌悪と劣等感の塊だった自分を、弘徽殿女御の息子である一宮に投影し、なんとか2人の力になりたいと奔走します。

平安の世界で倫子という嫁をもらい、21世紀の現代で過ごしていた時よりも何倍もの充実感と幸福感を味わっていましたが、倫子は出産のときに我が子・風子と共に命を落としてしまいます。

生きる望みも喜びもなくし、陰陽師としての命綱ともいえる「あらすじ本」は倫子・風子とともに焼いてしまいました。

平安の世で予測できない世を生きてく覚悟を固めた雷鳴は、次から次へと逆境が襲ってくる弘徽殿女御とともに懸命に乗り越えていきますが、26年たったある日突然、現代に舞い戻ってきてしまいます。

しかも路地に迷い込んでトリップした時間に戻ってしまいます。

もう一度、こちらの世界で人生を生きなくてはならないなんて…と半ば絶望し、源氏物語の世界に戻りたいと、もだえ苦しみますが叶うはずもありません。

そして、雷は新しく自分が生きていく道を見つけるのでした。

雷の見つけた道は?
雷は「源氏物語」の、特に「弘徽殿女御」を研究するために再び大学へ通うべく勉強を始めます。

26年間、向こうの世界で生活していたので、「源氏物語」は全て原文で読めるし…。いやむしろ現代語より古語の方が入りやすいという、最強の特技を身に付けています。

弟の水への劣等感が先に立ち、何に対しても無気力で、頑張ることを放棄していた雷でしたが、ようやく自分の道を見つけました。

小説の感想

この物語に出てくる弘徽殿女御は、雷が「生まれてくるのが1000年早かった」と言う通り、現代に生きていてもこんなにもかっこいい女性はいないのでは…と思うくらい男前な女性です。

桐壺更衣に夫である帝を寝盗られ、桐壺更衣が生んだ第二皇子(光源氏)は我が息子より優秀。そこまででも充分試練の人生ですが、さらに追い打ちをかけるように、桐壺更衣亡き後には藤壺が弘徽殿女御を飛び越えて中宮に。

何かと不遇な扱いを受け続け、過酷な人生を強いられている弘徽殿女御に、作者の内館牧子さんがスポットライトを当てて綴られた物語は、ある意味小気味いい!

「『可愛い女』には、バカでもなれる。しかし、『恐い女』になるには、能力がいる」

帝に対してでさえ「恐い女を『女』として見るほどの、高みには達していない男」と言いたい放題。

雷鳴の力を借りてはいるものの、自らの人生を切り開いていく姿はしたたかでたくましく、魅力的です。

一方の雷は、弘徽殿女御のもとで、明らかに詐欺のような陰陽師ではありましたが、日々自信を付け、自ら考え動いていく力を身に付けていきます。

もしかしたら、自分に自信がないダメダメ男だった雷が、現代で生きる力を身に付けるのに26年必要だったということかもしれませんね。

予測できないことが起こるのが人生。

男に頼らず、男のせいにせず、恐い女、賢い女であり続けた弘徽殿女御という女性は、現代にこそ必要な女性のような気がします。

雷が魅力にはまってしまったように、かなり刺激的で予想をはるかに超えた弘徽殿女御の物語。ぜひ手に取って読んでください!

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