大泉洋を「あてがき」して書かれた物語『騙し絵の牙』。
本の表紙や章の扉に大泉洋の写真が使われているのも手伝って、読んでいるとき、頭の中で主人公の速水は当然、大泉洋になってしまいます(笑)
それでも、主人公の速水は皆から愛され大切にされる「人たらし」なので、大泉さんがしっくりきてしまうので、読んでいて楽しかったですよ。
最後の最後まで、速水は一体どんな牙を隠していたのでしょう?
【主なキャスト(敬称略)】
大泉洋:速水輝
松岡茉優:高野恵
小説『騙し絵の牙』のあらすじ
新聞記者から転身した速水輝也は薫風社が出版している雑誌「トリニティ」の編集長。
スマホの浸透、若者の活字離れが言われて久しく、電子書籍の興隆により出版社業界において紙の本は岐路に立たされています。
雑誌「トリニティ」も例外ではなく、相沢徳郎編集局長から廃刊の危機に瀕しており、半年が勝負だと告げられます。
速水は「トリニティ」を何とか存続させるべく、魅力のあるコンテンツを生み出すために東奔西走します。
化粧品会社とのタイアップ連載小説、人気女優永島咲の連載小説、と新しい企画に起こってくる難問も乗り切り、大御所二階堂大作の懐にもするりと入り込む…。口がうまく他人への配慮に長ける「人たらし」こそが速水の人間としての最大の魅力です。
それでも、速水の小説に対する”愛”は決して仕事上のうわべだけのものではありませんでした。二階堂が長年温めてきた新しいスパイ小説のプロットには、自分も同じだけ思い入れを示し、実現に向けて誠意をもって尽力したり、実力のある若手小説家に常に気にして声をかけたりしていました。
速水は「トリニティ」存続のために寝る間も惜しんで踏ん張っているのに、相沢編集局長からは、二階堂の往年の名作「忍の本懐」をパチンコ台のコンテンツとして使えるように取り計らってほしいとか、専務の多田が進めている電子図書館に賛同してもらえるよう二階堂を説得してほしいだとか、無理難題を持ちかけられます。
そんなある日、パチンコメーカーの清川から、二階堂は未公開株の詐欺に遭っていると聞かされます。速水は「1000万円の取材費」を手土産に清川とともに二階堂を訪ね、無事にパチンコ台のコンテンツとして使う許可を得るのでした。
仕事ではこれでもかという難題をなんとか乗り越えてきた速水でしたが、私生活では妻・早紀子との関係は冷え切っていました。妻の「万引き騒動」があったときも、速水はそばに寄り添うことも話を聞くこともできませんでした。
ある日、妻から離婚を切り出されたときには、中学受験を控える娘・美紀のためにも離婚はできないと突っぱねましたが、その美紀から「ママがかわいそうで見ていられなくなったから、私が言ったの」と聞かされ、速水の結婚生活はあっけなく破綻してしまいます。
人たらしゆえ、あちこちから頼りにされる速水。雑誌が次々に廃刊になり社員のリストラが進む会社では、労使の中央委員会の準備が進んでおり、速水は組合側からは過密労働について語ってほしいと頼まれ、相沢局長からは経営側が不利にならないように立ち回ってくれと頼まれる始末。
中央委員会で速水は、出版社は読者の方を見るべきだ、小説家を育てる手伝いをするべきだと力説しましたが、利益を守るためにデジタル化を推進する役員に押し切られる結果となってしまいます。
専務の多田は収賄で失脚し、「トリニティ」の廃刊も時間の問題と無力感にさいなまれているとき、目をかけていた若い作家が自殺したとの連絡が入ります。
守れなかった命。守れなかった小説…。速水は退職を決意しました。
映画『騙し絵の牙』のあらすじ
舞台は出版社「薫風社」。社長が犬の散歩中に倒れて急逝してしまいます。
新社長に就任したのは専務だった東松龍司(佐藤浩市)。改革派の東松は先代社長の息子・惟高(中村倫也)をニューヨークへ飛ばし、外資系ファンドの郡司(斎藤工)と改革に着手します。
不採算事業は次々に切られる危機に陥り、雑誌「トリニティ」も例外ではありませんでした。
他社からの引き抜きでトリニティ編集長に就任した速水は、「おもしろければ目玉は何個あったっていい」と豪語し、起死回生の作戦を発動し始めます。
文芸一筋の高野恵(松岡茉優)を「小説薫風」から引き抜き、超人気ファッションモデル・城島咲(池田エライザ)を巧みに取り込み、高野が発掘した大型新人・矢代聖(宮沢氷魚)を独占し、大御所作家・二階堂大作(國村隼)を丸め込んで代表作「忍びの本懐」をコミカライズする…とにかく、他の人が考え付かないような一手を次々に出してきます。
高野は20数年前空前の大ブームを巻き起こした直後に姿をくらました幻の作家・神座(かむくら)詠一(リリー・フランキー)を独自に探し出していました。
そんな中、「トリニティ」で小説の連載が始まり表紙を飾ることになっていた城島咲が、とんでもない事件を起こして逮捕されてしまいます。
企業イメージを重視し契約を解除する企業が多い中、速水は東松を説得して、城島咲を採用したまま「トリニティ」を発行します。賭けは大当たりし、完売続出した「トリニティ」は大成功を収めます。
おもしろくない「小説薫風」は、編集長・江波百合子(木村佳乃)と常務の宮藤和生(佐野史郎)が、かつて横取りされた大型新人の矢代聖を取り返す作戦に出て、「小説薫風」で連載を引き抜くことを、勝手に記者会見で発表してしまいます。
ところがこの記者会見の場で、矢代聖はとんでもない事実を暴露するのでした。それも実は速水の仕業です。
社長の東松の肝いりプロジェクト「KIBAプロジェクト」が発表されると、今度はそれを頓挫させるべく、アメリカで大口の契約を成功させた惟高を呼び戻します。
全て速水の思惑通りに進んでいると思われましたが、そこへ思ってもみなかった伏兵が現れます。
映画の見どころと原作との違い
映画で速水輝(はやみあきら)と名乗っている主人公、小説では速水輝也という名前で登場します。小説「騙し絵の牙」は映画の”原作”と謳われていますが、いやいや全く別物でしたよ(笑)。
小説『騙し絵の牙』と映画『騙し絵の牙』はパラレルワールド的に考えるのが受け取りやすいのではないかと思います。
原作では、高野恵は速水の「愛人」みたいな存在です。「みたいな」というのは、完全にそうとも言い切れない都合のいい関係でして…。
また、速水の妻と娘も登場して、家族とのしがらみがもう一つの物語になっています。速水の生い立ちも詳しく描かれます。映画には全く出てこないけど。
栄華では、あてがきされた大泉洋さんだけでなく、豪華なキャスト陣の全員がとんでもない行動に出るので、最初から最後までおもしろすぎます。
二階堂大作役の國村隼さんはシャンソンン歌い出すし、取材相手に音楽家の新垣さんや女装プロレスラーのレディビアード出てくるし、こちらの予想をはるかに超えてくるハチャメチャっぷりです。
エンターテインメントとして完成されている上に、ストーリーはしっかりしていて、物語としても飽きさせません!
映画『騙し絵の牙』視聴方法は?
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コミック版は映画を完全コミカライズしたものなので、小説版とは異なるストーリ―です(上下2巻完結)。
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