映画も大ヒットの雨穴さんのミステリー『変な家』に続編が出ました!
今回、間取りから導かれた不思議で違和感のある物語は11件。その11の物語は「再生のつどい」というカルト教団によって繋がっていました。
左腕と右脚のない「再生のつどい」の教祖がもつ秘密とは何なのか?信者たちは「再生の館」に何を求めているのか?
筆者・雨穴さんと栗原さんが、またしても華麗で突飛な考察を繰り広げてくれます。
『変な家2』のあらすじ
①行先のない廊下
雨穴の元に『変な家』を読んだ根岸弥生さんから相談が寄せられた。子どもの時に住んでいた家に行先のない不要な廊下があったと。
弥生は本当は廊下の先には部屋があったのではないか、本当は弥生は双子で生まれてくるはずだったのに一人が亡くなったせいで部屋を削ったのではないか…という持論を筆者に提案した。
弥生が持ってきた建築中の家を写した写真には、道端に赤い花が置いてあった。疑問を感じた筆者は後日図書館で過去の新聞を調べた。すると「ハウスメーカー美崎」が事故を起こして8歳の男の子が亡くなっていたことがわかった。
当時のことを知るハウスメーカー美崎の社員の池田に話を聞くと、本当は行き止まりの廊下の先に玄関が付くはずだったのに事故があったせいで玄関の位置を変えて廊下だけが残ったことがわかった。
さらに、池田は弥生の母親が弥生の部屋を取り壊すことを望んでいたと衝撃の事実を語った。
両親の死後には、片腕と片脚が折られた木彫りの人形が見つかっていた。
②闇をはぐくむ家
筆者はかつて特殊清掃員として働いていた飯村達之さんを取材した。飯村は16歳の津原少年が母親、祖母、弟の3人を殺害するという痛ましい事件があった家を特殊清掃していた。
飯村は津原家の間取りには問題があり闇をはぐくむ家だったと言い、ヒクラハウスという悪徳業者によってこのような家は日本中に量産されていると言った。
③林の中の水車小屋
昭和初期に水無宇季によって書かれた『明眸逗留日記』によると、飯伊地方ですぐ横に祠(ほこら)のある不思議な水車小屋を見つけたという。
水車を回してみると中の壁が動き、入り口の左側にも部屋が現れた。左の部屋からは異臭がし、よく見るとメスのシラサギが死んでいた。
右の部屋の壁には人が一人は入れるくらいの穴が空いていた。穴の正面には祠がある。罪人を閉じ込め左から右へ壁を動かすと、罪人は穴に入るしかなく、祠と向き合ってひざまずくしかない。懺悔するための部屋だったのか?
④ネズミ捕りの家
会社経営者の早坂詩織は中学生のころ群馬県にあるお嬢様学校ともいえる私立の女子高に通っていた。ある時、仲良くなったヒクラハウスの社長令嬢・ミツコちゃんの家に泊まりに行くことになった。
翌朝5時に起こされた詩織はトイレに行くために部屋を出た。すると、廊下でミツコの祖母に会った。祖母は足が悪いようだったので手を貸そうと思って声をかけたが、断られた。
トイレをすませて手を洗っている時大きな音がしたので慌てて出ると、祖母が階段の下に転落していた。その後、病院で息を引きとったということだ。
詩織はミツコの家の間取りに、足の悪い祖母が転落するのも当然のような違和感を感じていた。普段は杖をついている祖母の杖をミツコが隠したために祖母は落ちたのではないか…。そのアリバイ作りのために詩織は呼ばれたのではないか…。
⑤そこにあった事故物件
数か月前、長野県の山間部に築26年の中古物件を買った平内健司。「事故物件マップ」というアプリで検索してみたところ、自分の住んでいる家が事故物件と表示された。
情報によると、約80年前そこにあった家で女性の遺体が発見されたという。筆者は平内と共に地元の図書館で新聞を調べたがそれらしい記事は見つからなかった。
近い日付で、梓馬家当主の梓馬清親が首を吊って死んだという記事が見つかり、さらに梓馬家について調べてみることにした。清親は女中のお絹さんといい仲になったことが妻にばれ、お絹さんは家から逃げ、清親は首を吊って死んだということだった。
平内の家は『明眸逗留日記』にあった水車小屋を増築したもので、日記にあった「死んでいたシラサギ」とはお絹さんのことだったのではないかという気がしてきた。
⑥再生の館
現在は解散しているカルト教団「再生のつどい」の宗教施設「再生の館」について記した1994年の記事によると、「再生のつどい」にはある事情を抱えた人だけが集まっていたらしい。
ヒクラハウスの社長・緋倉正彦が資金援助をしており、崇められている生き神・御堂陽華璃(聖母様)は左腕と右脚がなかった。
記事にある施設図をパズルのように組み合わせてみると、左腕と右脚がない人の形になった。
⑦おじさんの家
ある少年の日記。少年は母と「おじさん」の家に行くのが楽しみだった。ところがある日、母は金髪のえいじさんという男の人と一緒に来ておじさんと少年を引き離した。
それからは少年はえいじさんに暴力を振るわれ、物置で暮らすことを強いられ、ご飯もろくに食べさせてもらえなかった。
約2か月後、少年・三橋成貴くんは遺体で発見された。
⑧部屋をつなぐ糸電話
40歳の笠原千恵さんは、子どものころ怖がりで1人で寝ることができなかったそうだ。時々、父親が離れた部屋のベッドの上同士で糸電話で話をしてくれるのが楽しみだった。
父の会話の様子がおかしいと感じたある夜、隣の松江さんの家が火事になった。両親は亡くなり息子のヒロキくんだけが残った。
火事の原因はヒロキくんの母親の焼身自殺だと言われているが、千恵はこの火事以降様子がおかしくなった父親が関係しているのではないかと思っている。糸電話の糸が長すぎるのだ。
火事の2年後、千恵の父親は自殺した。遺品の中からは親から虐待を受けて亡くなった「三橋成貴」くんの写真が出てきた。
⑨殺人現場へむかう足音
筆者は松江家の火事で1人生き残った松江弘樹さんに取材を申し込んだ。警察が母親の焼身自殺と断定した火事を、弘樹は父親が母親を殺したと思っていると言った。
当時夫婦仲は最悪の状態で、火事が起きる前、弘樹は1階で父親が母親の部屋へ向かう足音を聞いていた。その直後に父親は「火事だ」と弘樹に知らせた上で公衆電話から119番通報させていた。
千恵も弘樹も自分の父親が弘樹の母親を殺した犯人ではないかと思ってる。筆者はなんとかして真相を突き止めたいと思った。
⑩逃げられないアパート
中目黒で居酒屋を営む西春明美さんと息子の満さん。
明美は若い頃家を飛び出してホステスとして働いている時に客の子どもを妊娠した。一人で満を産み、自分で店を出して生きていこうと思っていたが、結局27歳の時に多額の借金を抱えて自己破産した。
ヤクザからもお金を借りていたために、明美と満は「置棟」と呼ばれるアパートに連れていかれた。「置棟」というのはヤクザが経営するいわゆる売春宿のことだ。
明美の隣の部屋にはヤエコという左腕のない女性が娘と住んでいた。「置棟」には子どもを交換して一方がアパートに残れば外出してもいいという互いに監視し合うルールがあった。
ヤエコと明美は仲良くなり信頼し合っていたため、このシステムをたびたび利用していた。満がヤエコと外出している時、満が車にひかれそうになったところをヤエコが助け、ヤエコは右脚を失ってしまった。
その後、ヤエコの部屋に通っていた「ヒクラハウス」の御曹司がヤエコと娘を引きとったということだ。
⑪一度だけ現れた部屋
筆者と以前から親交のあった入間蓮さんが不思議な思い出を語ってくれた。子どもの時に住んでいた新潟の実家で、急なめまいがおさまった後、目の前に小さい部屋が現れ床に置いてある小さな木箱には怖いものが入っていたのだという。また、その部屋はそれ以降いくら探しても見つからないのだと。
筆者は入間と一緒に実家を調べに行くことになった。リビングの隣の廊下は突き当りになっている。その壁が隠し扉になっていて小さな部屋があるのではないか。めまいと思っていたものは地震で、振動でたまたま扉が開いたのではないかと予測した。
リビングの収納の中が二重構造になっていて、内側の板を動かすと隠し部屋の扉を開けることができる仕組みになっていた。小さな部屋に置かれた木箱の中からは、左腕と右脚がない木彫りの美しい女性の人形が出てきた。
栗原の考察
筆者は11冊の資料を持って、たびたび頼りにしている設計士の栗原を訪ねた。11件の事例には何らかのつながりがあるような気がしてならない。
ここから先は大いにネタバレを含みます。知りたくない方は【+ボタン】を開かないでね。
『変な家2』の感想
『変な家』に引き続き、奇想天外なストーリー展開で面白かった!
『変な家』では「左手供養」という左手のない子どもが生まれてくる一種の呪いのようなものが間取りと大きく関わっていましたが、『変な家2』では「再生のつどい」というカルト教団の左腕と右脚がない教祖と間取りに大きな関係が。
呪いにしろ信仰にしろ、人は何かを信じてしまうとこうも周りが見えなくなってしまうものなのでしょうか。
結局、筆者である雨穴さんと栗原さんの考察でしかなく、大部分の真実はわからないままなのですが、人間と人間のかかわりというのは不思議で奥深いものです。
当然ですが間取りありきの物語なので、これはぜひ本を読んでみてください。
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続編とは言え『変な家』からの続きの物語ではないので、単独で楽しめますよ!
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