今年度いっぱいで廃校が決まった高校の卒業式の日。
先生に淡い恋心を抱く者、意を決して告白する者、別れを決意する者…高校生活とのお別れのしかたはそれぞれ違っています。
恋もあこがれも、生活のほとんどを占めていたのは「学校」だった、そんな高校生の群像劇です。
ドキドキキュンキュンする恋心、ヒリヒリする別れ…。誰でも経験したことのある青春がいっぱい詰まった物語です。
【主なキャスト(敬称略)】
河合優実:山城まなみ
小野莉奈:後藤由貴
小宮山莉渚:神田杏子
中井友望:作田詩織
窪塚愛流:佐藤駿
佐藤緋美:森崎剛士
『少女は卒業しない」あらすじ
短編集ですが全部がゆる~くつながっています。
エンドロールが始まる
3月25日は高校の卒業式。翌日の26日にはこの高校は取り壊されてなくなってしまう。
3年生の作田はいつも登校するより40分早く家を出た。先生から借りていた本を返すために、先生と待ち合わせをしている。
作田が先生のことを知ったのは高校2年生の冬のこと。新入生歓迎のために行う研究発表の資料を探しに図書室に行ったのがきっかけだった。
足りない資料を探しにふだんは使われていない東棟に先生と二人で行った。先生の奥さんの写真を偶然見てしまって、左手の薬指に指輪があることに気付いた。
少しでも先生の奥さんに近付きたいと思って、作田は卒業アルバムの写真を髪型もゴムの色も先生の奥さんと全部同じにして撮った。
最後に「好きでした」と先生に伝えた。
屋上は青
幼稚園からの幼なじみの尚輝から孝子のもとに久しぶりにメールが来て、卒業式の朝、2人で東棟の屋上に行った。
そこは尚輝の秘密の練習場で、高1のとき孝子が尚輝から文化祭のダンス特訓を受けた場所だ。学校に存在する「東棟の幽霊」の正体はもしかしたら尚輝だったのかも。
芸能事務所に所属する尚輝は、勉強と仕事の両立が難しく高2の3学期に高校を辞めた。
卒業式が始まったみたいだ。孝子は屋上で尚輝が踊る姿を見ていた。不安も退路も断ち切って前に進もうとしている尚輝が眩しかった。
在校生代表
在校生代表の送辞を読むことになった2年生の岡田亜弓。
去年の卒業ライブで照明を担当していた男子生徒の涙に気が付き、その姿に釘付けになった。
男子生徒はひとつ上の学年の田所啓一郎。次期生徒会長就任も濃厚と聞いて、亜弓は生徒会役員に立候補した。
文化祭の後夜祭の仕事をすっぽかした亜弓は、田所先輩と生徒会室にいた。そしてずっと気になっていた涙の訳を聞いた。
今年の卒業ライブは亜弓が照明を担当する。
寺田の足の甲はキャベツ
卒業式後の体育館にはバスケ部が集まっていた。後藤は男バスの寺田と付き合っている。
卒業ライブを見ずに2人は河原にやってきた。寺田は、いつか2人でやりたいと言っていた花火を持ってきていた。
地元の小学校の先生になりたい寺田と、東京で心理学の勉強をすることが夢だった後藤。
花火をしながら後藤は「別れよ」と告げた。
四拍子をもう一度
卒業ライブ当日、トリを飾るビジュアル系バンド【ヘブンズドア】のメイク道具と衣装と音源CDが丸ごと全部消えていた。
MCが時間稼ぎをしたけれどもう無理だ。森崎はアカペラで歌うことになった。
単なる見た目の派手さや大音量の音楽ではなく、森崎の美しい歌声をみんなにも聞いてほしい。氷川はそう思っていた。
ビートルズの歌を密かに練習していた森崎を見つけたとき、氷川は、森崎の歌声に釘付けになった。
発音もリズムも無茶苦茶な森崎の歌に、氷川はボールペンをカチカチ鳴らしてメトロノームの代わりをしていた。
ふたりの背景
転校生の高原あすか。父親の仕事の都合で小学校3年生から過ごしたカナダから高校1年生の時に日本に帰ってきた。
登校初日、東棟の壁に絵を描いていた男の子が気になり、あすかは一緒に美術部に入ろうと誘った。
絵を描いていた正道くんは知的障害を持っている。卒業後はパン屋に就職することが決まっていて、あすかは卒業後アメリカの大学に行くことになっている。
正道くんは東棟の壁画の前で髪をショートカットにしてスーツを身にまとったあすかの絵を描いた。
あすかは正道くんに「絶対に会いにくる」と約束した。
夜明けの中心
卒業式の夜、明日には壊される教室に忍び込んだまなみ。なぜか先客がいた。香川だ。
まなみは、元々友達だった香川と同じ剣道部の駿と知り合い付き合うようになった。料理部部長のまなみは駿のお弁当を作ってきては、毎日調理室で一緒に食べていた。
その駿が死んだ。
窓枠に座ってまなみが作ったクッキーを食べていた時、風にナプキンが飛ばされ、下から香川が呼ぶ声が聞こえた。
ナプキンを捕まえようと手を伸ばした駿がバランスを崩して落ちていった。その日以来、まなみも香川も何も手につかなくなった。
真夜中の教室で香川はまなみの作ったお弁当を食べた。
『少女は卒業しない』の感想
高校生にとって学校という場所は、単なる勉強の場ではなく「青春」や「友情」や「恋愛」などの全部が満タンに詰まっている場所です。
決してそんなわけないのはわかっていたつもりだけど、世界の全てみたいな場所でしたね。
そんな場所に別れを告げる、女子高生たちのさまざまな覚悟を描いた群像劇。
先生に片思い…というスタンダードな青春から、付き合っていた彼氏が学校で目の前で亡くなってしまうという思いもよらない経験まで、彼女たちは背負った荷物を少しずつ下ろして歩き出すのでした。
今から思うと、なんでこんな狭い世界に執着していたんだろうとか、他に目が向かなかったんだろう…って思ったりもしますが、当時はこんなヒリヒリした感覚だったなぁと、きっと誰もが身に覚えのある感情がよみがえってきますよ。
映画ではどのエピソードが描かれるのかな。楽しみすぎる♪
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