櫛木理宇の最高傑作小説『死刑にいたる病』あらすじとネタバレ

小中学校では”神童”扱いだったのに、今やFランクの私立大学に通う筧井雅也。大学の友達とはなじめず悶々と過ごしていたある日…。

5年前20人以上の少年少女に拷問を加えて惨殺したシリアルキラー・榛村大和から手紙が届きます。

立件された9件のうち、ある1件の「冤罪」を証明してほしいと榛村から懇願され、調べを進めていくうちに雅也はあるとんでもない事実に行き当たります。

櫛木理宇さんの最高傑作とも言われる『チェインドッグ』が文庫化されるにあたって『死刑にいたる病』と改題されたサイコサスペンスです。

ホラー小説なのだから当然と言えば当然なのですが…、読後感が怖すぎる。

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改題前の『チェインドッグ』はどういう意味?

「チェインドッグ」は「chained dog」、直訳すると”鎖につながれた犬”という意味になるのでしょうか。

この”繋がれた”というのはもちろん身体的な拘束という意味もありますが、本を読む限りでは精神的な拘束とかつなぎ留めという意味合いが強い気がします。

可愛い女の子が微笑んでいる表紙なので、第一印象はライトノベルかと思ってしまいますが、いやいやとんでもない!

よく見ると襟元に血がついてるし…女の子の目はどこか物憂げで何かを訴えかけているようだし…。

裏表紙を見て驚愕!女の子の首元から血の付いた鎖が…。

この絵が全てを物語っていると思います。

小説のあらすじは?

Fランクの大学に通う筧井雅也、大学3年生。勉強も運動もよくできて田舎の小中学校では優等生でした。それが県内の進学校に合格し寮生活が始まるや、あっという間に落ちこぼれ、合格したのは底辺の私立大学のみ…。

遊ぶことだけに一生懸命な周りのちゃらい大学生たちはずっと雅也が見下してきたくだらない人種で、仲良くなれるはずもなく、雅也はずっと大学では”ぼっち”でした。

突然「筧井くん?」と話しかけられた相手は、雅也が小中学校時代に内心バカにしていた女の子・加納灯里(あかり)でした。灯里は大学内でうまくやれているようで、もはや彼女以下になってしまった自分をわらうしかありませんでした。

そんな中、雅也宛てに1通の手紙が届きます。差出人は榛村大和(はいむらやまと)。心当たりのない名前でした。

しかし、差出人の名前と住所をインターネットで検索して凍りつきました。榛村大和は20人以上の少年少女を拷問して殺したシリアルキラーでした。

そしてその榛村は雅也がかつて通った地元でも有名な人気店ベーカリー「ロシェル」の店主でした。

榛村の自宅は農村地帯の外れにありました。燻製小屋で燃やされていたもの、冷凍貯蔵庫に切り分けられて保存されていたもの、庭から大量の人骨が掘り起こされことが明らかになっても、近所の住民は「まさか、あの人が」と信じることができませんでした。

拘置所の榛村大和から手紙を受け取った雅也は面会に行くことにしました。榛村は現在42歳になっているはずでしたが、相変わらず上品な美男子のようでした。

何故今頃になって自分を?と思いましたが、榛村が知っているのは中学校までの、いわば”神童”だった頃の雅也だけなので、自分を頼ってきたのかもしれないと、いい風に解釈していました。

榛村は24人の殺人容疑で5年前に逮捕されました。そのうち立件できた9件に関して裁判が進行中です。

榛村は9件の事件のうち1件については冤罪だと主張します。自分は死刑になって当然だが、やってもいない殺人の罪をかぶるのはごめんだと。

言われてみると、榛村は常に16歳から18歳の高校生をターゲットにしていて、9件目の被害者・根津かおるだけが23歳ということには違和感がありました。

そんなことを言われても雅也にはなすすべがありません。これっきりにしようと思いましたが、学校に行っても友達がいるわけでもなく、就職活動は思うように進まず、他にやりたいこともありません。

「佐村弁護士事務所」から榛村に関する記事のスクラップと公判記録が送られてくると、夢中で読みふけりのめり込んでいきました。気が付くと、榛村に「やります」と告げていました。

数日すると「佐村弁護士事務所・調査担当助手」という肩書のついた雅也の名刺が送られてきたので、雅也は恐る恐るこの名刺を使って取材を試みることにしました。

榛村大和がまだ「新井大和」と名乗っていた小学生のころ、母親は知的にも精神的にも障害を持っていたようで、養父は働きもせず大和を虐待していました。頭はいい子でしたが家庭環境の悪さから勉強をさせてもらえていなかったようでした。

聞き込みを重ねていくと、大和についての印象は「かわいそう、運が悪い」というものと「問題児」というものに真っ二つに分かれていました。そして何故だか多くの人が榛村には人を惹きつける不思議な力があったと言いました。

大和の母親・新井実葉子の従姉だという女性は、幼い大和の世話をいつも押し付けられていて、大和と実葉子のことはよく言いませんでした。大和はよく犬猫を虐待しており、叱られてもにやにやして下を向いていただけだったと言い、大和が逮捕されたときには「ああ、やっぱり」と思ったと言いました。

2度の少年院送致となった事件では、大和は小学生の男女を拷問していました。女の子は陰部に石を詰め込まれ顔面は激しく損傷していました。男の子は両手の生爪を剥がされ足の指は2本切断されていました。

2度目の少年院送致の後、大和は19歳で人権活動家の榛村織子の養子となり榛村大和となりました。

ふたたび雅也の元に榛村担当の弁護士から大量の資料が送られてきて、その中にはたくさんの写真がありました。事件の遺体の写真もありましたが、雅也が目を止めたのは榛村織子を中心に若者たちが写ってる写真でした。

そこにいたのは紛れもなく雅也の母親・筧井衿子でした。

榛村の逮捕の決め手となったのは根津かおるの通勤経路で榛村の目撃証言があったからでした。証人として呼ばれた目撃者は証人尋問の際に遮蔽措置を取っていたことから、雅也は証人が榛村の過去の被害者ではないかと考えました。

榛村の元保護司に尋ねると、姓は変わっているものの確かに過去に一輝(いつき)という少年が被害に遭っていることがわかりました。

榛村のいる拘置所に訪れた雅也は、以前待合室で声を交わしたことのある赤茶色の髪をした男性を見かけました。その男の特徴は一輝の特徴と似通っており雅也はこっそり写真を撮って確かめると、まさに金山一輝だということがわかりました。

金山一輝とその弟は小学生の頃、榛村に精神的に支配されていて、榛村の命令でお互いどれだけ相手の身体に傷を付けられるかという勝負をさせられていました。

金山一輝は榛村に面会に来た?なぜ?

雅也は根津かおるの遺族に話を聞きたいと思いながら、根津かおるのお墓を訪ねました。僧侶に話を聞くと「彼氏」と思しき赤茶色の髪をした男性がお墓参りに来ることがあって、泣いていることもあるとのこと。金山一輝?なぜ??

榛村織子の元で榛村と交流のあった男に写真の母のことを聞いてみると、その男は衝撃の事実を告げました。「エリちゃんも織子さんの養子の1人だった」と。

雅也は母に電話をしました。榛村から聞いたと言うと、母は自分が虐待されていたことや榛村織子の養子になったこと、父から結婚を申し込まれたことなどを語り、織子さんのところから追い出されたのは妊娠してしまったからだと言いました。そして、その時には榛村大和しか頼る人がなかったと…。

「あなたはお父さんの子よ」と言われても空々しく感じ、なぜ榛村が雅也に会いたがって、冤罪を晴らしてほしいと頼んできたのか腑に落ちた気がしました。

それから何度目かの面会の時、雅也は榛村に「あなたは、ぼくの…父ですか」と聞きました。榛村は肯定も否定もしませんでしたが「ただ顔を見るだけでよかったのに、欲が出てしまった」と言いました。

自分のことを調べ回っていることを知った金山一輝から「これ以上榛村に近づくな」と忠告されましたが、雅也の心はすでに榛村に取り込まれてしまっていました。

榛村と関わるようになってから、学校でも明るくなって話しかけやすくなったと言われ、雅也には何の根拠もない変な万能感が芽生えているようでした。

最近の雅也は小学生の女の子や幼い子を目で追い「1人にならないかな」などと思いめぐらすようになっていました。電車で酔っぱらいと出くわしたときには、その男性を担いで草むらに連れて行き、傷つけたい衝動を抑えることができませんでしたが、男性が目を覚ましたために何もせずに逃げ出しました。

そして、事件の真実(ネタバレ)

雅也は再び母に電話をかけました。「榛村大和がボクの本当の父親なんだろう?」と言うと、母は衝撃の事実を口にしました。

母の過去
母が妊娠したのは、榛村織子の元で生活していた15歳のことでした。相手はボランティアに来ていた妻帯者で、ほとんど強姦に遭ったようなものでした。

どうしていいかわからなかった母は、仲のよかった榛村大和にだけ相談していました。

産気づいたのはトイレの中。水洗トイレに産み落とされた子を母は衝動的に首を絞めて殺してしまったのでした。

榛村大和を呼んで事情を話すと「僕に任せて」と榛村が死んだ赤ん坊を連れて行き、その後は榛村がどうやって処理したのかわかりませんでした。

榛村織子にばれて追い出され、1人暮らしで働き始めて父と知り合い、雅也を産んだのは18歳のことでした。

金山一輝の告白
榛村の逮捕直前、金山一輝は榛村に呼び出されて会っていました。

榛村に支配された事件から20年が経っていましたが、榛村は一輝の連絡先を把握していたのでした。

20年経ってなお榛村の呪縛が解けていない一輝は「僕に痛いことされるのが嫌なら君が選んで」と言われ、たまたま指さした女性が根津かおるだったということでした。

一輝が罪悪感に縛られ、榛村の支配が一生続くように仕向けられた罠だったと。

一輝の元にも一輝の弟の元にも榛村から手紙が来ていて、きっと榛村は過去に目を付けていたものの手を出せなかった子ども何十人にも手紙を出しているのだろうということでした。

拘置所に入ってからもなお、榛村は嘘の「冤罪」を餌に自分の気に入った子たちを支配下に置くというゲームを楽しんでいるのでした。

榛村大和という人間
雅也は榛村に会いに行きました。雅也の態度から真実がばれたと察知した榛村は「エリちゃんは本当のことを打ち明けたりできないと思っていたのに、それなりに図太くなってつまらない」と言い放ちました。

金山に”選ばれた”根津かおるはかつて榛村が目を付けていた子で、毎日決まった時間に決まった場所を通ることがわかった上で、タイミングよく一輝に選ばせていたのでした。

そして雅也は気付きました。小学校高学年くらいから榛村のパン屋に通い、自分は知らず知らずのうちに榛村によって自尊心をくすぐられ続けて、榛村の支配下に置かれていたことを。

榛村の手元にある「文通リスト」からは「筧井雅也」の名前が消されましたが、まだまだ十数名の名前が並んでいます。そこには「加納灯里」の名前もありました。

小説を読んだ感想は?

サイコパスや凶悪犯を扱ったサスペンスは数々あれど…この小説は、その中でも群を抜いて怖かった…。

そして本書の中で触れられているシリアルキラーは実在する人物ばかりなので、もしかしたら榛村のような人間も存在するのかもしれないと思わせるところがまた怖さを増長します。

サスペンスと言えばサスペンスなのですが、最後に謎が解けてほっとするというより、真実がわかってぞっとするという言葉がぴったりかも。

少年少女を拷問して最後には殺してしまうという残虐性にももちろん戦慄が走りますが、何より背筋がぞっとしたのは少年少女たちを取り込むその言葉の巧さ。

「君の好きにしていいよ」「選んでいいんだよ」

親から虐待されたり抑圧されたりして自己肯定感が育っていないと、これほど心をつかまれる言葉はないのかもしれません。

色白で美しい優男に、褒められ自尊心をくすぐられ、自分を理解してもらえていると洗脳されてしまう恐ろしさが、犯人逮捕後にも続くなんて想像を遥かに超えすぎていて怖いなんてもんじゃなかった…!

結局、どんなホラーよりもゾンビよりも、一番怖いのは人間っていう…。これ映画にしていいんかい…って思うくらい怖さMaxです!

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ぞっとするんだけど読み始めたら止められない物語です。
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