病弱だったちひろを心配する両親を救ったのは「金星のめぐみ」という水だった。その水を扱う宗教にのめり込んでいく両親。
どんどん貧乏になっていく家族。しかし両親はちひろを心から愛しており、とても幸せそうに毎日を過ごしているのだった。
「いい」とか「悪い」とか、「正しい」とか「間違ってる」とか、そんな概念だけでくくれない、ちょっと歪な家族の形。それに翻弄される娘。
「幸せ」って誰が決めるの?自分で選んでいいの?さまざまなことを問いかけてくる物語です。
【主なキャスト(敬称略)】
芦田愛菜:林ちひろ
岡田将生:南先生
原田知世:ちひろの母
永瀬正敏:ちひろの父
小説『星の子』のあらすじ
林ちひろは生まれた時から病弱な子どもでした。全身に発疹ができて痒さのために眠れない日々を過ごしていたある日、お父さんが職場の人から「金星のめぐみ」という水をもらってきます。その水でちひろの体を洗ったら、なんと2か月で完治してしまいました。
両親はその水を分けてくれた落合さんと、落合さん夫妻が信じる宗教にのめりこんでいきました。
それを必死で食い止めようとするのは、お母さんの弟である雄三おじさん。いくら話をしても聞く耳を持たないので、両親が信じる水を、公園の水道水と入れ替えて、騙されていることをわからせようとしますが、逆効果となり、ついには絶縁状態となってしまいます。
小学5年生のとき、5歳年上の姉・まーちゃん(まさみ)が家を出ていきました。まーちゃんは、両親があんな風になったのはちひろのせいだと言い、昔勇三おじさんが水を入れ替えるのを手伝ったと告白しました。
中学3年生の春、ちひろは赴任してきたイケメンの南先生のことを好きになってしまいます。2学期になってからはまともに授業を聞くこともせず、ずっと先生の顔を見つめて似顔絵ばかりを描いていました。
友達のなべちゃんとその彼氏の新村くんとの3人で、卒業文集のチェックをしていて遅くなった日、南先生の車で送ってもらえることになりました。家の近くの公園の前で車を降りようとしたとき「変なのがいるから、まだ外へ出るな」と先生に制されます。
見るとそこにはちひろの両親がいました。数年前にバザーで買ったお揃いの緑のジャージを着て、頭にのせたタオルに互いに水をかけあっていました。
翌日学校へ行くと、ちひろと南先生がドライブデートをしていたとうわさになっていました。困っている先生に、ちひろは「昨日、公園にいたのは両親です」と告白してしまいます。
祖母の7回忌があり、ちひろだけが出席した際、雄三おじさんから「高校へ進学したら、家を出てうちから通ってみないか」と提案されます。でも、ちひろは「このままでいい」と答えてしまいます。雄三おじさんは、それから何度もちひろの家を訪ねて、両親を説得して帰りました。
担任の先生がお休みになって、代わりに南先生が教室にやってきました。帰りのホームルームで南先生が話しているとき、ちひろは12枚目の似顔絵を完成させようとしていました。
あこがれていた南先生は、突然クラスのみんなの前で言葉の牙をむきました。「いつも俺の似顔絵を描いている奴がいる。その紙とえんぴつをしまえ。机の上の変な水もしまえ。」「学校は、ラクガキしにくるところでも宗教の勧誘をするところでもない。」
教会の研修旅行で「星々の郷」行ったちひろは、12月の寒空の下、お父さんとお母さんに挟まれて、いつまでも流れ星を見ていました。
映画の見どころと感想
この映画の一番の見どころは…
家族の中に”狂気”と”純粋さ”そして”優しさ”が同時に存在していることです。
ちひろは賢くていい子なんだけど、なんだかちょっと変わっています。イケメンの先生が転任してきたら、中3にもかかわらず「テニス部に入る」と言い出したり、友だちのなべちゃんの彼氏・新村くんを気に入ると「新村くんと結婚していい?」と言ってみたり。
15歳にもなるとある程度、空気を読んで「これは言ってもいいけど、これは言わない方がいいな」と言葉をチョイスできるようになってくるものですが、ちひろは思ったことをそのままに言ってしまうところがある女の子です。
でもそれは、それまで両親からあふれんばかりの愛情を受けて、否定されずにすべてを受け入れられて育ってきた証でもあるように感じます。
「水」の力を信じて疑わない両親の姿には怖ろしさすら感じますが、両親はただひたすら、ちひろのことを全身全霊で愛していて、家族としての平穏を願っているだけなんですよね…。
小さいころは普通の家に住んでいたのが、すんごい狭いボロ家に引っ越してるし、ちひろの修学旅行のお金は親戚から借りないと出せないし、食べるものにも困っていて、人からもらってくるものに半ば頼っている状態。どこからどう見ても「貧乏!」っていう状態。
きっと南先生のように、心ないことを言ったり攻撃してきたりする人はこれから先も現れると思うから、ちひろには一度両親と距離をおく生活をさせてあげてほしいなぁ。ちひろの人生はちひろ自身が選んでほしいなぁ。
最後のシーンはきっと両親もそうしていいんだよってちひろに言いたかったんだと思うんだけど。
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