自分のデザイン会社が倒産目前となった栩谷は、頼まれてあるボロアパートの住人・伊関に立ち退くように通告しに行った。
こんな雨の日、思い出すのは10年以上も前に亡くなった恋人の祥子のことばかりだ。
原作の『花腐(くた)し』は松浦寿輝さんの芥川賞受賞作です。
映画では登場人物の設定を大いに変更して描かれますが、長雨によって花が腐っていくように、自分の人生や夢が腐敗していく様が描かれるようです。
【主なキャスト(敬称略)】
綾野剛:栩谷修一
柄本佑:伊関貴久
さとうほなみ:桐岡祥子
『花腐し』の読み方と意味は?
「花腐し」は「はなくたし」よ読みます。
卯(う)の花というのは卯木(うつぎ)の花のことで5月になると小さな白い花がたくさん咲き始めます。
「卯の花腐し」は5月の長雨がこの卯の花を腐らせてしまうほどしとしと降り続くことを表していて、初夏の季語として使われます。
小説の中では伊関が万葉集に収録されている和歌を挙げています。
「春されば 卯の花腐し わが越えし 妹(いも)が垣間は 荒れにけるかも」
春になると、あの子の家の生垣に卯の花が咲く。それを傷付けつつ、垣根を乗り越えて逢いに行ったものだ。しかし今や、その生垣もすっかり荒れ果てているなぁ。
小説の中でも雨は栩谷の心情を表す象徴的な景色として描かれ、鬱屈した気持ちがまさに「花腐し」という言葉で文学的に表現されています。
小説『花腐し』のあらすじ
栩谷(くたに)はボロボロの2階建てのアパートの前にいた。目的の部屋は2階の一番奥。伊関という名の38歳の男の部屋だ。
栩谷が30歳の時に大学時代の友人と興した小さなデザイン事務所は倒産確定の状態だ。共同経営者の友人はずさんな経理の顛末を栩谷に丸投げして姿をくらました。
付き合いのあった消費者金融会社社長の小坂に首が回らなくなったことを報告しに行くと、所有しているアパートに居座っている奴がいるのでさっさと立ち退くように通告してほしいと頼まれたのだった。
電気が点いていないのでいるのかいないのかわからなかったが、叩くと壊れそうな部屋のドアをガンガン叩くと、伊関は出てきた。
にわか地上げ屋を演じてすごんでみても伊関は全く意に介さないという様子だった。
馬鹿らしくなって帰ろうとしたその時、伊関は「入っていかないか」と栩谷を部屋に入れた。
2人だと思ってビールを飲み始めると、襖越しに人の声が聞こえた気がして栩谷は驚いた。
伊関が襖を開けると、隣の狭い部屋には20歳くらいの若い女が全裸でベッドに丸まっており、壁際のラックには天井までガラスケースが積み上げられていた。
ガラスケースの一つ一つは紫色の蛍光灯で照らされており、中には気味の悪い白いものが朽木にへばり付いているのが見えた。
「マジック・マッシュルーム」といい食べると気持ちよくなるらしい。伊関はインターネトでこの「マジック・マッシュルーム」を販売していた。
若い女が訳の分からないことを言い始めて、栩谷は伊関の部屋を後にした。
歩いていると客引きの女がしつこいので、栩谷はたまたま目の前にあった小料理屋に飛び込んだ。
飲みながら栩谷は祥子のことを思い出していた。栩谷は46歳になっていたが、祥子に死なれてからは専らゆきずりの商売女だけを相手にして生きてきた。
祥子とは結婚も意識して2年同棲していた。祥子が栩谷の友人と寝たことがあると告白した時には、栩谷は「そうか」の一言で片づけてしまった。
その1か月後、祥子は田舎に帰って海で帰らぬ人となった。
その友人と栩谷は祥子の死後、デザイン事務所を興すことになったのはなぜだったか…。
祥子の過ちを怒らなかったことが、そもそも自分の人生が腐り始めるきっかけだったのかもしれないと考えながら飲んでいると、小料理屋の入り口から伊関が入ってきた。
2人で飲んでいると、さっき伊関の部屋にいた若い女・アスカがこれから出勤するのだと顔を出した。
小料理屋を出た栩谷と伊関は再び伊関の部屋へと向かった。ウイスキーを入れて飲み直していたが、栩谷は気持ち悪くなって眠ってしまった。
温かいものが唇にかぶさっている気がして栩谷が目を覚ますと、裸のアスカが栩谷の体を覆っていた。ひとしきりアスカの体をむさぼると、栩谷はまた眠ってしまった。
目が覚めると夕暮れだった。伊関の姿もアスカの姿もなかった。
栩谷は部屋を出た。階段の踊り場にある鏡に祥子の白い顔が見えた気がした。
映画『花腐し』原作との違いは?
映画では登場人物の設定が原作とは全く違うものになっているので、原作というよりむしろ原案といった感じになるのでしょうか。
原作では自分のデザイン事務所が倒産目前の栩谷は映画ではピンク映画の映画監督として、栩谷が追い出そうとするアパートの怪しい住人・伊関は元脚本家志望の男として、栩谷の思い出の中に登場する今は亡き恋人・祥子は栩谷と伊関が愛した女優として登場します。
映画の世界で生きてきた栩谷と伊関と祥子の人生が交錯する様が描かれていくわけですが、自分の人生が、夢が…花が腐るようにボロボロと崩れていく、かなり鬱屈した気持ちをまとった映画になるようです。
『花腐し』と題する訳ですから、原作と同じようにきっと雨がキーワードになっていることでしょう。
栩谷を綾野剛さん、伊関を柄本佑さん、祥子をさとうほなみさんが怪しく演じてくれます。
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