映画『アイミタガイ』原作小説のあらすじ

言葉を交わしたことはないけれど毎日同じ電車で顔を合わせるだけの人、ホームヘルパーとして出会ったお客様、人は毎日いろんな人と出会いながら生きている。

「相身互い(あいみたがい)」とは、決して見返りを求めてやったわけではなく、持ちつ持たれつお互いさまの関係のこと。

誰かを想ってしたことが、知らない間にめぐりめぐって他の誰かに奇跡をもたらしたり、自分に返ってきたりって、なんて素敵なつながりなんでしょう。

『アイミタガイ』はそんな小さな奇跡をいっぱい詰め込んだ短編集ですが、全体がゆる~く繋がって一つの大きな物語になっています。

【主なキャスト(敬称略)】
黒木華:秋村梓
中村蒼:小山澄人
藤間爽子:郷田叶海

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小説『アイミタガイ』のあらすじ

定刻の王

小山澄人、27歳。毎日同じ時間の同じ車輌の電車に乗って通勤するサラリーマン。職場の先輩・与田順子に紹介された穐村梓との交際はかれこれ5年になり結婚を意識しているが、今一歩話が進まないままでいた。

梓は小学生のときに両親が離婚していて母親と二人暮らしだ。今でも父方の祖母とは交流があり、結婚に二の足を踏んでいる理由はこの祖母が関係しているらしいが、詳しいことはよくわからない。

澄人は毎日電車の吊り革で隣り合う年配の男性を「定刻の王」と名付けていた。定時で退社して電車に乗り込むと、毎朝会う「定刻の王」が座席で大舟をこいで眠りこけていた。

「定刻の王」が降りる駅が近づいてきたが目を覚ます気配がない。とはいえ話しかける勇気もない。「定刻の王」の前に立って小説を読んでいた澄人は、「定刻の王」のひざ元に持っていた文庫本を落とした。

目を覚まして慌てて降りていった「定刻の王」は、窓越しに手を立てて澄人に感謝を表した。翌日から顔を合わせるのは恥ずかしいので、澄人は乗る車両を換えることにした。

ハートブレイク・ライダー

樋口敦俊、小学校6年生。「英光学園」の中学入試に失敗した。塾の模試では一度もボーダーを切ったことなどなかったのに。仲良しの友達も、いつもボーダーを切っていた明石くんも合格したというのに。

半ばやけくそな気持ちで塾に報告に向かおうと自転車を走らせた。スピードを落とさないまま丁字路を曲がろうとして、男が運転していた自転車の横っ腹に思いっきり突っ込んでしまった。

敦俊の横に転がっていたバッグを男が「よこせ!」と言ったのと同時に「捕まえて。ひったくりよー」というおばさんの声が聞こえて、敦俊はバッグを抱えた。

ひったくり犯の男は逃げたが、周りの店から大人たちが出てきて、警察にも通報され、難なく捕まったらしい。

星野政惠と名乗ったおばさんは、敦俊の壊れた自転車を直してくれて、お昼ごはんをご馳走してくれた。星野さんは受験に落ちたことを「こけ方を覚えるチャンス」だと言った。

妙に納得して気が楽になった敦俊は塾の祝賀会に参加することにした。

幸福の実

子どもが中学生になったのを機にホームヘルパーとして働き始めた稲垣範子。ついつい度を越えたお世話をしてしまいクレームが来ることもしばしば。90歳で1人暮らしの小倉こみちさんのお宅に訪問することになった。

造りのいい家を掃除するのは気持ちがよく、範子はこみちと親しく話せるようになっていった。こみちは15歳から2年間パリにピアノ留学していたが戦争のせいで夢を諦めたことを話してくれた。

ウエディングプランニング会社で働く姪の中川千香子と偶然会ったとき、ピアノを弾いてくれる熟年者を探しているという話を聞いた。最近では金婚式などの企画もあるらしい。

範子は千香子に頼まれてこみちに打診してみることになった。断られるのを覚悟で話してみると、こみちは意外にも「弾きます」と言った。

川戸夫妻の金婚式でのこみちのピアノ演奏は素晴らしかった。

こみちはかつてピアニストの道を諦め小学校の代用教員をしていたころ、学徒出陣の壮行式で音楽隊の代わりにピアノを弾いたことがあった。若者を戦場に送り出す場に音楽をひき出してしまったことに罪悪感を覚え、以来68年間人前でピアノを弾くことを拒み続けてきた。

戦争で兄を亡くし苦労し続けてきた川戸夫妻の金婚式でピアノを弾くことでやっと赦しを得た気がするとこみちは語った。

夏の終わり

5月の半ば、郷田優作の元に娘の叶海あての郵便物が転送されてきた。開けてみると山梨県にある児童養護施設「サンシャインハウス」からGWに贈ってもらった柏餅のお礼が書かれたメッセージカードだった。

5か月前、カメラマンだった叶海は訪れたパプアニューギニアで事故死した。GWに柏餅を送るなんてできる訳がないのだ。何かの間違いだと思い、優作は「サンシャインハウス」に事情を記した手紙を書いた。

「サンシャインハウス」の羽星勝から連絡をもらい、叶海が一昨年から「サンシャインハウス」の子どもたちと交流を持ちクリスマスケーキや柏餅を送っていたことを知った。羽星が調べてみると、今年の柏餅は去年のクリスマスケーキと一緒にされていたらしい。

叶海の初盆をすませたころ、叶海のパソコンやデジカメに残っていた写真を持って優作は妻と「サンシャインハウス」を訪ねた。

叶海の残した貯金と保険金1500万円は叶海が見つけたものに使ってあげたいと「サンシャインハウス」に寄贈することにした。

叶海と最後に会って話をしたのは、毎日判で押したように同じ時間に帰ってくる優作を叶海が待ち伏せしていた駅の改札でだった。危うく乗り過ごすところを助けてくれたのは毎朝顔を見る若者だった。

蔓草

小学校3年生のとき、梓の両親は離婚した。名前は福井梓から穐村梓へ変わった。祖父母と共に暮らした家から追い出されるように気がして梓の心は傷ついていた。

それから18年間、梓は年に一度お盆のときにだけ祖父母の家を訪ねていた。いつものように今年の夏休みも梓は祖母の福井綾子の家を訪ねた。

綾子と梓がちらし寿司を作っていると来客があった。梓の父が再婚した新しい家族の一人息子・福井圭吾だった。綾子がわざと梓と圭吾をひき合わせようとしたに違いない。

気まずい雰囲気のままベランダで3人で七輪で肉を焼いて食べようとした時、隣のおばあちゃん・矢地良江さんがずぶ濡れの格好で飛び込んできた。聞けば仏壇のろうそくの火が服に燃え移り、風呂場で水をかぶって戻ってみると倒れたろうそくの火が座布団に燃え広がったとのこと。

梓と圭吾は大急ぎで良江の家に駆けこみ火を消し、なんとか小火ですんだ。2人しての連携プレーで火事を防いだという興奮から、何やら一体感が生まれ、梓と圭吾はにわかにハイテンションで話し始めた。

お礼に訪れた良江さんの息子・義之に綾子は「相身互い(あいみたがい)」と言った。持ちつ持たれつ、お互いさまというような意味らしい。

梓が子ども時に好きだった絵本を圭吾も読んでいたことがわかった。最後のページにハートの落書きがあったら同じ絵本だ。

帰りの電車の中で圭吾から「ハートの落書きがあった!」とメールが来た。梓は澄人のプロポーズを受けようと決めた。

映画の見どころと原作との違い

世の中は持ちつ持たれつ、知らないところでめぐっている。誰とも関わらず誰の助けも借りずに生きていくなんて不可能。それが意識的であってもなくっても、誰かを想ってしたことがめぐりめぐって自分に返ってくるなんて、なんて素敵なことなんでしょう。

そんな小さな小さな奇跡がいっぱい詰まった心温まる物語です。2回目読んで改めて「あら、あなたそんなところに登場してたの?!」っていう人を見つけてプチハッピーな気持ちにもなりますよ♪

映画では梓がウエディングプランナーとして登場するようです。叶海と梓が親友で、亡くなった叶海のスマホにメッセージを送り続けるというのも映画オリジナルの設定です。

原作小説にはないもう一つ別の奇跡が、映画には用意されているのでしょうね。

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