
小説家の白木篤郎と長内みはる。知り合ってから男女の関係になるのに大した時間はかからなかった。
妻がいてみはるという愛人がいても、白木には途切れることのなく数多の女の影がちらつき、しかも本人は悪気がないどころか隠そうともしない。
みはるは「出家」という選択をしたが、白木とは男女の関係を飛び越えた新たな関係を続けていった…。
「三角関係」などという陳腐な言葉では言い表せない、男と女の複雑で摩訶不思議な愛の物語。
小説家・井上光晴と、光晴の妻と瀬戸内寂聴という2人の女。実在する人物をモデルに井上光晴の娘・井上荒野が書き上げた衝撃の傑作です!
小説のあらすじは?
小説家の長内みはる、44歳。夫と娘を捨てて真二という若い男と暮らしている。
真二との生活に終わりが見え始めたころ、みはるは白木篤郎という小説家に出会った。たまたま講演会の講師として徳島県に一緒に行ったのがきっかけだった。
白木には笙子(しょうこ)という美しい妻と海里という5歳の娘がいたが、愛人が途切れることなくいて、それを笙子に隠すことさえしなかった。
次の小説のために団地を取材したいという口実でみはるが白木を突然訪ねてから、なんとなく2人の関係が始まった。みはるが真二と別れると、東京の仕事場として借りているアパートに白木は足繁く通ってくるようになった。
笙子が産気づいて2人目の娘・焔(ほむら)を産んだ時でさえ、おそらく白木はみはるのところにいて行方知れずになっていた。
白木はみはると付き合っている間にも他に愛人がいたようだ。それでもみはるは白木と別れなかった。原稿を読んでもらって手直しをしてもらうことも続いていた。
50歳を迎えたころ、みはるは出家を決めた。剃髪し法衣に身を包み「寂光(じゃくこう)」という法名をもらった。
得度式のあと友人の別荘で身を潜めていると白木がやってきた。聞けば妻に「行ってあげたら」と言われたらしい。
同じころ白木一家は調布市に新居を構えた。白木が飲み屋で意気投合した秦さんという土建屋にあおられて建てた家だ。
笙子は秦を訪ねて抱いてほしいとお願いしたこともあった。
みはるが出家してから、白木とは体の関係こそなくなったがむしろ以前より頻繁に会うようになっていった。みはるが白木家に招待されて自宅に訪れたこともあった。
白木は文学学校「文学水軍」を作り、日本各地を飛び回るようになった。白木の講演会には「文学水軍」の生徒と思しき白木の取り巻きの女性が多数現れ、その多くと白木は関係を持っているようだった。
白木の娘・海里が文学新人賞を受賞した。時を同じくして白木は癌を患った。S字結腸癌を手術したが、まもなく肝臓に転移が見つかった。白木はやせ衰えていき、やがて息を引きとった。
それから20年余り後、笙子は膵臓癌でこの世を去った。
笙子は生前、白木の遺骨が納められている岩手県の天仙寺に納骨してほしいと言っていたらしい。天仙寺は寂光が18年間住職を勤めたお寺だ。
寂光も天仙寺に墓地を購入している。魂になっても2人の女性は白木のそばに寄り添うのだ。
小説を読んだ感想
白木篤郎というつかみどころのない男を愛し愛された2人の女性の物語です。1人は妻で1人は愛人。
この物語は「白木」が井上光晴さん、「寂光」が瀬戸内寂聴さんという実在の人物をモデルにしているほぼ実話で、描いたのは井上光晴さんの実の娘だというから、読む前から軽く衝撃。
ただ読んでみてわかったのは、白木篤郎という人は妻である笙子とみはるを心から愛していたということと、笙子とみはるは敵ではなく同志のような存在だったという信じられない事実が本当にあったということです。
あらゆるエピソードに、意味わからん…と唱えつつ、それでも引き込まれていく不思議な物語。1人の男を愛した女性が敵ではなくむしろ同志として繋がっていく姿に、最後は感動すら覚えてしまいました。
娘さんである荒野さんが両親のそばにいて感じていたことや瀬戸内寂聴さんに直接インタビューしたことを踏まえて書き上げているのですから、全て本当ではないにせよ、かなりの部分が事実に近いとのこと。
みはるが出家した後は男女の関係はなくなりますが、それでも深い交流が続くのは白木がみはるに対して大きな敬意を感じていたからなのかな。それがわかっているからこそ、笙子もみはると繋がっていられたのかな。
この物語のような経験は絶対にできないし、したくもないので想像するしかありませんが、3人が3人とも互いに敬意を持っていなければ成り立たない関係のような気がします。
絶対的な存在だけど、決して素直に受け入れられない存在…。だから「鬼」なんでしょうね。井上荒野さんも語っているように、笙子から見たみはるかもしれないし、みはるから見た笙子かもしれないし、2人の女性にとっては白木そのものが「鬼」だったのかも。
タイトルも粋でカッコいいなぁと思いましたが、期待を裏切らないカッコいい女性をまざまざと見せつけられて読後感は爽快です!
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