弁護士をしている二宮彰、自分にとって邪魔な者は徹底的に排除してきたサイコパス。人を殺すことにも躊躇はない。 そんな二宮が何者かに襲われた。犯人は「怪物マスク」をかぶっていた。
同じころ、都内では連続猟奇殺人事件が起こっており、「脳泥棒」によって被害者の遺体からは脳が持ち去られていた。
「怪物マスク」を被った男は何が目的で二宮を襲ったのか?「怪物マスク」が「脳泥棒」の犯人なのか?数々の伏線が回収され犯人が暴かれるとき、迎える戦慄の結末とは?
2019年の「このミステリーがすごい!大賞」受賞作品がついに実写映画化!映画の登場人物は全員、程度の差はあれサイコパスとして描かれています。
【主なキャスト(敬称略)】
亀梨和也:二宮彰
吉岡里帆:荷見映美(彰の婚約者)
染谷将太:杉谷九朗(脳外科医)
中村獅童:剣持武士(過去の事件の容疑者)
菜々緒:戸城嵐子(警視庁プロファイラー)
渋川清彦:乾登人(刑事)
柚希礼音:東間翠(猟奇殺人犯)
小説『怪物の木こり』のあらすじ
弁護士の二宮彰、サイコパス。人を殺すことに心を痛めることもない。自分にとって邪魔な人間は徹底的に排除してきた。
その二宮が「怪物マスク」を被った何者かに襲われた。男は手に斧を持っており、二宮に向かって振り下ろした。二宮は持っていた鞄を怪物マスクに向かって叩きつけ、なんとか逃げ出した。
しかし怪物マスクは持っていた斧を二宮に向かって投げた。斧は二宮の頭に直撃。たまたま人が通りかかり怪物マスクは逃げていった。当たったのは幸い刃の部分ではなく持ち手部分だったので、命は助かった。
その頃、頭を割られ脳を持ち帰られるという連続猟奇殺人が世間を震撼させていた。最初の犠牲者は石川真澄、29歳の主婦。2人目の犠牲者は岩田三郎、逮捕歴もある29歳のチンピラ。3人目の被害者は満田義男、31歳のフリーカメラマン。
斧で襲われたとなると、もしかしたら自分も連続猟奇殺人のターゲットとみなされるかもしれない。二宮は警察に事情聴取されても本当のことを言わなかった。怪物マスクは自分の手で殺してやると心に誓っていた。
入院先の病院で脳のCT検査をした結果、特に重大なダメージは見受けられなかった。しかし二宮の脳内には脳チップが埋め込まれていることが明らかになった。
脳チップは過去に感情や記憶の障害を持つ人に治療で使われていたが、20年前に使用が禁止されている。手術の記憶はないので、二宮は3歳のころ自分を捨てた親が施したに違いないと考えた。
婚約者の荷見映美(はすみえみ)がDVDをたくさん持参して二宮の病室を訪れた。DVDの中の1枚に『怪物の木こり』という映画があり、斧を持った怪物は、まさに先日自分を襲った怪物マスクの姿だった。
二宮は協力者として長年の友人・杉谷九朗を頼ることにした。九朗もサイコパスである。脳を解き明かすための実験と称して人体解剖を行っている脳神経外科医だ。
戸城嵐子(らんこ)は品川署で尊敬する先輩刑事の乾登人(のぼる)とバディを組み、連続猟奇殺人の捜査に乗り出していた。3人の被害者に接点は見つけられなかったが、3人とも児童養護施設の出身で捨て子だった。
しかし児童養護施設の場所はバラバラで接点は見つからなかった。捜査には科警研のプロファイリングチームが参加することになった。
チームリーダーの栗田によると、犯行は極めて秩序的で手際がいいことから過去にも殺人を行っており、児童養護施設出身者の情報にアクセスできる人物ではないかと予測された。
一方、襲った犯人の見当さえつかない二宮は、ただ自分自身の「感情」に変化があることに戸惑っていた。映美が持ってきたDVDを見て心を動かされたり、子どもが親から虐待されているシーンに遭遇すると無性に苛立ったりするようになった。
コンビニでよく会う山野という男が娘のネネを虐待していることに気付くと居ても立っても居られなくなり、酔っぱらった山野の後をつけて川に突き落として殺した。
その帰り道、二宮は再び怪物マスクと遭遇した。神社に逃げ込み警報装置を鳴らすと嘘のハッタリで今回もなんとか難を逃れた。
怪物マスクは必ずまた二宮を襲いに来るにちがいない…。一刻も早く奴を見つけて排除しなければ。
九朗が怪物マスクの有力候補として同じ病院で働く従兄の杉谷健吾の名前を挙げた。九朗にとっては次期院長の座を狙うライバルだ。病院のバーベキューパーティーで賢吾が「怪物の木こり」のマスクを持ってきたことがあるというのがその根拠だった。
二宮と九朗が健吾を拷問にかけたが、健吾は頑なに怪物マスクであることを認めなかった。もう殺すしかないと二宮がナイフを握ったとき、健吾は息子の名前をつぶやいた。その瞬間二宮は動けなくなってしまった。九朗は二宮からナイフを奪うと健吾の胸に突き立てた。
九朗は二宮の脳内に脳チップがあることを知ると、頭に衝撃を受けたことでチップが故障し二宮に人間的な感情が戻ってきたのではないかと言った。そもそも幼児に脳チップを埋めることは認められていないため、手術自体が違法で人体実験の可能性もあるのだと。
4人目、5人目の被害者が出たが、それ以降パタリと犯行が行われなくなった。世間では犯人は「脳泥棒」と呼ばれるようになっていた。
乾と嵐子は被害者が全員児童養護施設出身であることと、人から恨みを買いやすい冷酷な人間と思われていたことをつかんだが、捜査に進展はない。犯人は6人目の殺害に失敗したのではないかと考え、都内で起こった暴行事件を調べてみると、児童養護施設出身の二宮彰がヒットした。
乾と嵐子は二宮の元に事情を聞きに行った。話の流れから二宮は自分が脳泥棒の次のターゲットとして狙われているのではないかということに気付いた。何のために?もしかしたら脳チップに関係しているのか?
乾と嵐子は次に被害者の医療記録を徹底的に調べた。すると1人目の被害者・石川真澄に脳チップが埋められていたことがわかった。犯人の目的は不明だが、物事の真相が見えてきた。
26年前の東間事件…。誘拐された幼児が東間翠によって脳チップを埋め込まれた人体実験だ。脳泥棒の被害者は、このとき脳内にチップを埋め込まれ児童養護施設の前に捨てられた子どもたちだった。
乾が過去に担当していた保険金殺人の容疑者である剣持武士も東間事件の被害者であることがわかっている。剣持が脳泥棒の次のターゲットになるかもしれない。さらに、脳泥棒には実験を施された子どものリストを持っている協力者がいるに違いない。
東間事件が徹底的に調べられ、東間翠の協力者として金木満治の名前が浮上した。警察が金木の自宅に向かうと庭からは金木と東間事件で救出されていた4人のうちの2人の遺体が発見された。
同じ頃、二宮と九朗も東間事件にたどり着いていた。二宮は映美とともに自分が育った児童養護施設・のぞみ園を訪ねた。良子先生に二宮が好きだったという歌を聞き、映美がその歌を歌うと二宮はなぜか涙が止まらなかった。
二宮と九朗は東間事件の現場となった東間翠の古い洋館にも行ってみたが手がかりらしきものは何も得られなかった。
二宮の元に映美からメールが届いた。メールには拘束された映美の画像と「ここに来い」というメッセージが書かれていた。脳泥棒は二宮に直接ではなく映美を使って接触を図ってきたに違いない。
警察の監視下にあったにも関わらず、剣持の遺体が発見された。遺体は脳を持ち去られていた。
事件の真相と戦慄の結末
ここから先は大いにネタバレを含みます。知りたくない方は【+ボタン】を開かないでね。
映画『怪物の木こり』の見どころと原作との違い
登場人物サイコパスだらけ、しかも頭をかち割って脳を持ち去るという猟奇殺人がセットになっているなかなかヘビーな物語です。
映画の最大の見どころは、亀梨和也さんが演じる二宮彰がサイコパスから共感力のある普通の人間に変わっていく描写でしょう。どんなに残忍な殺人でもケロリと平気でやってのけていたのが、少しずつ人間らしい感情を取り戻していくなんて、誰かの体験談がある訳もない想像を絶するシチュエーションです。
原作では刑事の戸城嵐子とプロファイラーの栗田は別々の人物なのですが、映画では戸城嵐子がプロファイラー捜査官として物事に執拗にこだわるサイコパス的要素をもった人物に描かれるようです。
二宮彰もまた、サイコパスを治療するために人為的にサイコパスを作り出すというあり得ない実験の犠牲者であるため、少し同情してしまう部分が無きにしも非ずなのですが…、それでも二宮が犯した過去の殺人は許されるものではないはず。
そしてチップのせいではなく本物のサイコパス・杉谷九朗がそのまま野放しになっていることに、心はザワザワしたまま。
「脳泥棒」の目的がわかって事件は解明されたにもかかわらず、モヤモヤした気持ちしか残らない…そういう意味では最強のサイコ・スリラーですね。このサイコパス祭、最後まで冷静に鑑賞できるかなぁ。
ちなみに物語の中で登場する『怪物の木こり』という絵本や映画は架空の物語です。本当にそんなお話があったのではないかと思ってしまうくらい効果的な挿入ですけどね。
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