原作小説『シャイロックの子供たち』

「銀行」という巨大な組織の中で、まさしく「金」に振り回される人々の群像劇。

とある銀行で起きた現金紛失事件。1人の女性行員に疑いがかかる中、別の男性行員が突然失踪してしまいます。

消えた現金と消えた男は一体何を意味するのか?

家族とのあり方、出世欲、不条理なノルマ、職場での人間関係…誰にでもありそうなテーマですが、そこに巨額の金が絡んでくると人間の心理というものはこうも破綻していくものなのでしょうか。

シャイロックとは、シェークスピアの「ヴェニスの商人」に出てくる強欲な金貸しの名前です。

【主なキャスト(敬称略)】
阿部サダヲ:西木雅博
上戸彩:北川愛理
玉森裕太:田端洋司

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『シャイロックの子供たち』のあらすじは?

東京第一銀行長原支店、副支店長の古川一夫。高卒の叩き上げで、会社の命令は絶対的なものと信じて疑わない。

大幅な目標未達報告を受けた古川は激怒し小山徹を怒鳴りつけた。

小山は元本割れをすることがわかっている投信を売れという銀行のやり方や目標設定に納得がいかないと言う。怒り心頭した古川は、思い切り小山を殴りつけた。

翌日、小山は仕事を休んだ。連絡してきたのは小山の父親だった。警察には被害届を出された。

人事部の聞き取りによって、小山は粉飾決済がある会社への融資を止めたにも関わらず、古川が目標達成のために稟議を通したこと、予想通り債権回収が不可能となったら小山に責任を押し付けたことが明らかになった。

国際派バンカーを目指していた友野裕(ひろし)、コツコツと目標を達成し、出世への階段を上っているはずだった。ところが過労が原因で幹部養成研修を欠席したために、エリート路線からは完全に脱落してしまった。

友野が担当する大城戸工業への10億円融資の話が、競合行の出現で足踏み状態状態になり、ますます上司の風当たりが強くなる。聞くと金利が1%も安いと言う。

友野はなんとか同じ金利で融資できるように、徹夜で稟議書を書き直した。支店長が必死で勝ち取ってくれた金利を提示して友野は融資先を訪れたが、大城戸社長はOKを出してくれない。

銀行はいい時には擦り寄ってくるが、大変な時にはすぐそっぽを向くと過去の確執を引きずっているようだった。

そんな中突然、競合行の国有化が発表された。競合行では低金利での融資が不可能となり、大城戸社長の方から東京第一銀行から融資を受けたいと申し出があった。

友野は晴れてシンガポール支店への栄転が命じられた。

 父が突然亡くなったことで、経済的に苦しい生活を強いられている入行3年目の北川愛理

銀行内のモテ男・三木哲夫と付き合うことになったのは嬉しかったが、デートやプレゼントの出費に頭を抱えていた。哲夫は資産家の息子で、プレゼントはブランド品、食事は高級レストランが定番だった。

ある日の営業時間終了後、戸田亜希子の「現金が100万円足りない」という声に行内は騒然となった。ゴミ置き場の捜索まで行ったが見つからず、ついに行員のロッカーまで確認することになった。すると愛理のショルダーバッグの中から、今日の日付の帯封が出てきた。

身に覚えのないことについて上司から執拗に事情を聞かれ涙の止まらない愛理を信じてくれたのは、直属の上司である営業課課長代理の西木雅博だけだった。

結局、愛理の前に哲夫と付き合っていた半田麻紀が、振られた腹いせに愛理のバッグに拾った帯封を入れたことを認めて愛理の冤罪は晴れた。

しかし肝心の100万円は見つからない。西木は指紋採取キットを使って、独自に犯人を突き止めることにした。

課長代理の遠藤拓治。机を並べる3歳年下の同じ課長代理の滝野真は次々と新規契約を取ってくるというのに、遠藤の成績は振るわない。

そんな遠藤に洗足池板金という新しい取引先ができ、融資まであと一押しというところまできた。

遠藤は鹿島課長を洗足池板金の社長のところへ連れて行くことになった。

遠藤が運転する車は神社の中を通っていく。変な近道をするのかと鹿島がいぶかっていると、遠藤は車を停めると鹿島を案内した。

そこには鎮座する狛犬いた。狛犬の前には遠藤が銀行から持って出た粗品が綺麗に並べられていた。遠藤は狛犬に向かって鹿島課長を紹介したのだった。

 西木雅博は突然姿を消した。事件なのか失踪なのか全く分からない。

融資課の竹本直樹は西木のピンチヒッターを頼まれた。北川愛理は「西木係長は仕事ができる人だったし、失踪するような人ではない」と言う。

西木の机の引き出しから「9」の番号が付いた鍵が出てきた。ロッカーの鍵だと思った竹本はロッカールームに急いだ。

西木のロッカーの中にはガラクタと帯封の入ったビニール袋があった。そして机の一番下の引き出しからは雑誌の付録とおぼしき「指紋採取キット」が出てきた。

西木は帯封に付いた指紋が誰のものなのか独自で調べようとしていたのか。

竹本は袋に入ったガラクタの持ち主を特定していった。ところが一旦席を外して戻って来てみると、袋に入った帯封とクリップケースがない!

犯人が自分にたどり着くことを恐れて取り返したとしか思えなかった。西木はもしかしたら、現金を盗んだ犯人を突き止めたために殺されたのか?!

東京第一銀行検査部の黒田道春は長原支店を訪れた。なくなった100万円は資金係で見つかったと報告されているが釈然としない。

何人かの役席者の普通預金明細を調べると皆同じ日にまとまった金を引き出していて、その合計がぴったり100万円になった。とんでもない不祥事だ。

黒田が100万円を補填したことを人事部に報告すると言うと、支店長の九条は黒田に取引を持ちかけた。

8年前、黒田はギャンブルにはまっていた時期があって、閉店後の銀行のATMからお金を抜き出し競馬に投じたことがあった。運よく勝ったので、抜き出した分の現金を営業前の早朝にATMに返し、事なきを得たと思っていた。

しかしその時の証拠を九条に押さえられていたのだった。

新人の田端洋司は外回りのついでに江島工業に頼まれたものを返しに行こうと思い、江島工業の住所に向かった。

そこは古いアパートの一室で誰もいなかった。江島工業は滝野が獲得してきた優良企業のはずなのに、実態のなさに田端は違和感しか感じなかった。

江島工業にはすでに5億円の融資がされていて、さらに2億円の追加融資が契約目前。田端と愛理が詳しく調べてみると、江島工業から提出された印鑑証明書は偽造であることがわかった。

田端と愛理が江島工業の社長の自宅の住所を訪ねてみると、そこには全くの別人が住んでいた。

調べていくうちに、滝野と石本浩一という不動産会社社長の癒着が明らかになっていき、滝野は江島工業という架空の会社に架空融資をしようとしていることがわかった。

赤坂支店で石本を担当した滝野は、1000万円の裏金を受け取って以来、悪魔に魂を売り続けていたのだった。

石本は、実質的に破綻し社長が失踪してしまった江島工業という会社の社長になりすまし融資を受けることを滝野に提案した。石本が大口の不動産取引で5億円が入った時点で返済するつもりでいたが、その取引は流れてしまった。

滝野は逮捕された。

河野晴子は西木の妻に西木の私物と見舞金を渡しに行くように命じられ、西木の自宅に向かった。滝野は西木殺害をも供述していた。

西木の妻は不在で、同じ社宅の高橋という人に荷物を預けるように言われ、晴子は高橋宅を訪れた。

高橋によると、西木は兄の会社の連帯保証人になっていて莫大な借金を抱えるかもしれない状況に陥っており、妻や子どもとも別居生活をしているようだった。

翌日、晴子は上司に頼まれ赤坂支店に書類をもらいに行くことになった。滝野と石本の関係を調べるための書類だ。

赤坂支店で晴子の目の前に積まれた書類は段ボール3箱分。

赤坂リアルターという石本が経営していた会社との新規取引開始を記した書類を見た晴子は、とんでもない事実に気付いてしまった。

物語の結末は?

100万円の行方は?
100万円を盗んだのは滝野だった。

5億円を回収するはずの見込みが外れ、石本は毎月払わなければならない利息分の100万円を滝野に立て替えてほしいと依頼した。

滝野は銀行内で100万円を盗み江島工業に振り込むと、店内の犯行に見せかけるため帯封を休憩室に捨てたのだった。

西木の行方は?
西木は帯封から犯人を割り出していた。そして滝野と石本の癒着関係や架空融資についても調べ上げていた。

滝野は石本に西木の始末を依頼した。石本もそれ以来失踪している。

晴子が見つけたものとは?
10年ほど前、赤坂リアルターとの新規契約を取り付けたのは他でもない西木自身だった。滝野よりも先に西木の方が石本を知っていたのである。

石本が滝野を利用し、その不正を西木が見破るなどという偶然が果たしてあるのだろうか。

西木が抱えることになった巨額の負債、融資されたものの使途不明のまま消えてしまった大金、失踪したままの西木と石本…。もしかしたら…。

『シャイロックの子供たち』を読んだ感想

金に縛られ金に踊らされた銀行員。池井戸潤さんが最も得意とする物語です。

半沢直樹シリーズでは畳みかけるように襲いかかってくる逆境や圧力をものともせず、半沢直樹が腹黒い連中をバッタバッタと斬り倒していくのが痛快でしたが、ここで描かれるのは銀行の全く別の顔。

銀行マンとしてのあるべき理想の姿を描いた『アキラとあきら』からしたら、開いた口がふさがらない全く真逆の世界…。

家庭では妻の顔色をうかがい、職場では過酷なノルマと上司の機嫌に振り回され、新人の頃に描いていた未来予想図とはまったく別のところに来てしまった男たちは、それでも出世の道を諦めずに戦い続けます。

ただその戦い方が…。

巨額の金を右から左に動かしていると、こうも精神が破綻してくるものなのでしょうか。小説とはわかっていても、次から次へと現れる悪党どもにあきれ果て、苛立ち、くたくたになりました。

結局ヒーロー不在ってことなのか。一件落着したようなしてないような…。

いやぁ、おもしろかった!半沢直樹とは違う、悪魔に魂を売りまくる登場人物の心理描写を存分に楽しませていただきました!

映画『シャイロックの子供たち』見どころと原作との違い

細かい設定は違うもの、ほぼ原作通りに進んでいってると思いきや、黒幕の存在が原作とは全く異なりました!

うわぁ!こいつが黒幕だったのかぁと驚いたのもつかの間、見事に天罰が下ってスッキリ!

…とはならないんですよ。結局、いい人だと思っていた人も金に目がくらんで魂を悪魔に売ってしまう…。

そして原作には出てこない柄本明さん扮する怪しいじいさんが、めちゃくちゃいい味出してて最後に大活躍!?

原作とは違う展開は実にお見事で、映画もめちゃくちゃ面白かったです!

原作本も映画も、どちらも鑑賞していただくのがおススメ!

映画『シャイロックの子供たち』視聴方法は?

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