映画『もしも徳川家康が総理大臣になったら』原作小説のあらすじとネタバレ

世界はコロナ禍真っただ中。日本では首相官邸でクラスターが起こり、よりにもよってコロナに感染した総理が死亡してしまった。

大混乱に陥った日本を救うべく立ち上がったのは、AIホログラムによって復活させられた過去の偉人たちだった。徳川家康を総理大臣とする最強内閣は、大胆な政策を迅速に実行していき、国民はその実行力に酔いしれていくようになった。

世界中が大混乱に巻き込まれる中、コロナ禍を一歩一歩確実に乗り越えていく最強内閣の行く末に待ち受けていたものとは?

歴史、政治、ファンタジーにミステリーの要素まで網羅した新感覚のエンターテインメントです!

今をときめく浜辺美波さんが現代人の理沙を、赤楚英二さんによる坂本龍馬や野村萬斎さんによる徳川家康にも期待度とテンションがMaxです。その他のキャストの方々も全員クセモノぞろいです。こりゃ何か起きるぞ。

【主なキャスト(敬称略)】
浜辺美波:西村理沙
赤楚英二:坂本龍馬
野村萬斎:徳川家康
GACKT:織田信長
竹中直人:豊臣秀吉
高嶋政宏:徳川吉宗
江口のりこ:北条政子
池田鉄洋:徳川綱吉
小手伸也:足利義満
長井短:聖徳太子
観月ありさ:紫式部
音尾琢真:石田三成
山本耕史:土方歳三

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最強内閣の組織相関図

『もしも徳川家康が総理大臣になったら』のあらすじ

新型コロナウイルスが世界中で感染は急拡大し、日本に上陸して2か月半。あろうことか首相官邸でクラスターが発生し、総理は帰らぬ人となった。

国民は大混乱。未曽有の事態に切り札として投じられたのはAI(人工知能)による英傑の復活だった。そして、AIホログラムにより復活した偉人たちから成る最強内閣が発足した。

総理大臣は徳川家康、官房長官は坂本龍馬である。そもそも、過去の武将などにはそれぞれに個人的な怨恨なども存在するが、プログラムによってそのような私怨は取り除かれており、現代社会の仕組みは全てインプットされている。

かつて伝染病は一度流行り始めたら手の付けようがなかった。しかし現代の医学はすさまじく進歩しており、収束させることも不可能ではないと判断された。そのためには医療現場の確保が最優先させることが必要だと、感染をこれ以上広げないために「緊急事態宣言」が発令された。

大日本テレビのアナウンサー、入社8年目の西村理沙は坂本龍馬官房長官の記者会見に出席することになった。

龍馬によると、許可なく外出することは一切許されないということだ。命を守るために規則を守らない者は罰せられる。その代わり、国民全員に一律に50万円を支給すると財務大臣の豊臣秀吉から発表された。

やると言ったら必ずやる、これが過去の英傑たちだ。あっちにいい顔したりこっちになびいたりする現代の政治家とは根底からして違う。その場に居合わせた記者たちは心を掴まれた。

外出禁止の取り締まりは警察と新選組が行った。買い物は厳格に時間を決めて行われ、ルールを守るというのはどういうことか徹底的に国民にたたき込まれた。

豊臣秀吉は50万円を10日で全員に配ると約束した。最初の3日で口座の登録のある者への振り込み作業を行い、登録のない者はホームページ上で口座の申請をさせ次の3日で振り込みを完了した。そのどちらにも漏れた者は窓口で直接50万円を受け取ることになった。

不正受給者が現れることは想定内で、とにかく10日以内に全員に支給することが優先された。そして不正受給をはたらいた者は検挙の様子が公開された。近藤勇土方歳三に恫喝された被疑者は皆、その怖ろしさに震え上がった。

龍馬は理沙に、経済産業大臣の織田信長と副大臣の大久保利通が大手企業のトップに国債の引き受けを頼んでいる場面を見せた。数々の修羅場をくぐり抜けた経営陣といえども、理想のために命を懸けてきた圧倒的なカリスマに「NO」など言えるはずがなかった。

30兆円分の国債引き受け先が決まると、次に着手するのは食料自給率の引き上げ。農林水産大臣の徳川吉宗を筆頭に農業開発を行うことになった。

また各大臣たちは、これまで政治家の顔色ばかりをうかがって正しく能力を発揮することができなかった官僚たちの人事改革を行った。財務省に入省して13年目の吉田拓也は給付金支給の際に見事な働きをしたと豊臣秀吉によって事務次官に抜擢された。

徳川内閣は補正予算案を通すため臨時国会を召集した。国会はリモートで行われ、インターネットを通じて完全中継された。事前に質問が通告されることも想定問答集などが作られることもない。ITについてこられない議員は出席できないし、居眠りをしている議員などは全国に顔をさらしている。

最強内閣は財源をどうやって確保するか、新型コロナと今後どのように闘っていくのか、農業開発の行い方などを説明し、国民の圧倒的支持を集めた。

緊急事態宣言が解除されることになった。今後は重症者を最優先にするため営業が停止している歌舞伎町に大規模な「感染症対策センター」を作った。

外貨を獲得するために秀吉が打ち出した「日ノ本リモート博覧会」が行われることになった。日本のアニメや漫画を軸にして、アイドルライブや能・歌舞伎といった伝統芸能の配信、VRによる観光地体験、eスポーツのトーナメント戦は人気を集めた。

観光地の土産物はネットを通じて購入でき、アニメ制作会社やイラストレーターを斡旋する事業も順調で、「日ノ本リモート博覧会」は大成功を収めた。

政治に対するツイートに端を発し、ある若い女性タレントがいわれのない誹謗中傷を受けて自殺した。いくら言論の自由といえ、妄言流言を放置しておくことはできないと立ち上がったのは法務大事の北条政子

政子は言葉は時に100万の軍勢にも勝る武器になると説き、これ以上過ちを繰り返さないためにおのれの醜い心と戦うべきだと言った。その声に呼応するようにSNSは健全化の一途をたどっていった。

家康は解散総選挙を決意した。「しくみ」というものは世の中に合うように作り変えていくべきだというのが家康の考えだ。現在は支持率90%を超える最強内閣だが、国民が選ばなければ消える覚悟で選挙に臨んだ。

ホログラムの偉人たちは一切メディアにも現れず街頭演説にも行わなかったが、選挙は与党が95%の議席を獲得して圧勝に終わった。

大日本テレビでは内閣取材班のトップだった小野が突然子会社に左遷された。小野は最強内閣を生み出したプログラムチームを探っていて与党の逆鱗に触れたらしい。

理沙が久しぶりに会った小野は痩せこけて別人のようになっていた。追われていると話す小野は、理化学研究所が開発したスーパーコンピューター「IZUMO」を使ってAI研究の第一人者である水口教授がプログラム開発に関係していに違いないと語った。

水口教授は5か月前にコロナに感染して以降、長期療養という名目で面会できないらしい。さらに教授が信頼を寄せていた学生の才谷龍太郎は失踪していた。

小野は才谷のものと思われる「獏がでた。大きな獏。獏消せない……。」というツイートを見つけていた。「獏」は「バグ」のことではないかと言う。小野は理沙に最強内閣について調べてほしいと言って姿を消した。

小野から理沙あての生存確認のためのメールが突然途絶えた。最後のメールには桔梗の花の写真、トランプのキングの写真、妖怪・獏の写真が添付されていた。その後、小野が薬物所持で逮捕されたという情報が入ったが、小野を拘束するための理由付けのように思われた。

理沙は坂本龍馬に「才谷」という男を知らないかとぶつけてみた。すると龍馬は「才谷」は里の名前だと答えた。

突然、徳川綱吉と吉宗が暗殺されたというニュースが駆け巡った。コンピューター上のデータが全て消去されてしまったのだ。アメリカは日本のホログラムによる内閣に不満があることを表明していたので、アメリカによるサイバー攻撃だと思われた。

織田信長が綱吉と吉宗に対する哀悼の意とともに無念を晴らすべきであると述べたことで、アメリカと日本の関係は一気に緊張感が高まった。トランプのキングとは信長のことなのか?と思われたが、その信長もサイバーテロによって消された。

才谷龍太郎は小野といっしょに東京に向かったという情報が寄せられた。小野とともに拘束されていないとすれば東京のどこかにいるにちがいない。

理沙は龍馬の記者会見で、才谷から何らかのアプローチがあることを想定して、才谷にだけわかる質問をしてみた。才谷と思われる人物から「敵はスペード。チャンスは一度」というメッセージが届いた。

理沙と龍馬は近藤勇の護衛で財務省へと向かった。スペードのキングは羊飼いから王の座へと上り詰めたダビデ王を表している。バグは秀吉のことではないだろうか?

理沙と龍馬が財務省に着くと、そこには土方歳三に護衛された才谷龍太郎が到着していた。

地下にある秀吉の執務室には秀吉と萩原重秀、吉田拓也、水口教授の4人がいた。綱吉と吉宗、信長を消したのは水口教授だった。

水口教授と才谷龍太郎はかつて一緒に過去の英傑の思考を復活させる研究を行っていたが、才谷が英傑たちが過去の因縁に囚われないようにプログラムしようとしていたのに対して、水口教授は完全な秀吉を復活させて最強の日本を作ろうとしていた。

そこへ徳川家康が現れたが、秀吉は家康の言葉にも耳を貸さない。剣の達人である吉田と萩原が攻撃に出た時、立ち上がったのは理沙だった。

理沙の母方の姓は「千葉」。理沙は幼い頃から剣道にたしなんでおり、インターハイでは優勝するほどの腕前だった。若き日の龍馬の恋人だった千葉さな子は理沙の祖先と繋がっていたのだ。

理沙は踏み込んできた吉田に、右手の剣先だけで吉田の鎖骨をつき返し、吉田を突き飛ばした。その勢いで、理沙は水口教授のパソコンを叩き割った。萩原重秀と豊臣秀吉は姿を消した。

軋轢を生んでいたアメリカとの関係も、平和路線の徳川家康と坂本龍馬によって良好な関係へと戻された。本多正信によって保護という形で囚われていた小野も釈放され会社に戻ってきた。

アメリカのステイン大統領と徳川家康の日米首脳会談が行われた。機械相手の対談だと初めは不満を漏らしていたステインだったが、家康との会談はまるでジョージ・ワシントンやエイブラハム・リンカーンと対話しているようだと心を和らげた。

会談後の記者会見で家康は、自由と不自由に折り合いをつけることこそが必要で、矛盾を理解し少しでも差を縮めることが上に立つものの役目だと説いた。

徳川内閣は総辞職を決め、日本党へと大政奉還を行った。水口教授は大学に戻り、最強内閣のプログラムは才谷龍太郎によって管理され全て消去されることになった。

偉人たちが姿を消してから半年後、新しい内閣による解散総選挙が行われた。各人が好き勝手なことを述べSNSではデマや中傷が発生し、偉人たちの復活前と何も変わっていないように見受けられたが、たった一つ大きく違うことがあった。

投票率が90%にも達していた。国民一人ひとりが今を生きる者として責任を果たそうとしている表れのように思えた。

映画『もしも徳川家康が総理大臣になったら』の見どころ

中途半端な言葉は一切使わず、目的のためには命を懸けるというまさに戦国武将たちの覚悟を感じる最強内閣。日和見主義の現代の政治家や官僚たちとは全く違う姿に惚れ惚れし、映画の中の国民のように熱狂してしまうに違いありません!

政治腐敗が進む現代に、現れるべくして現れた物語とも言えますよね。

過去の英傑たちはそもそもトップとしての覚悟が違います。自分の一言で人の命なんて簡単に消えてなくなってしまうような世の中に生きてきたのですから。今の政治家に自分の発言に責任を持つ人なんていないですからね。

徳川家康の最期の記者会見での言葉「自由の裏側には必ず不自由が存在する。ひとりひとりが他人の自由のためにひとつでいいから不自由を引き受ける」という言葉は、過去の英傑たちから見ると本当に欠けている考えに見えたのだと思います。

この徳川家康を演じるのが野村萬斎さんなので、言葉の重みはずっしりと胸に響いてくるでしょうね。

過去の英傑たちが進んできた道の解説も交えながら進んでいく物語は読みごたえ抜群で、歴史に興味がない人にも受け入れやすく歴史好きになるきっかけを与えてくれる物語となっています。

理沙が千葉さな子の縁者で、才谷龍太郎が坂本龍馬の縁者というのもなんだかすごく粋な設定でした。

映画はもちろんのこと、ぜひ小説・コミック版も読んでみてください。刺さる言葉が満載です!

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