かつて「最も排除すべき日本人」と言われた敏腕スパイの小曽根百合。
スパイ稼業からは離れ穏やかに暮らしていた百合の元に依頼が舞い込み、再び戦場へと身を投じていくことになります。
1000人もの帝国陸軍とヤクザが追ってくる中、百合が守るのは細見慎太という少年。少年は一体何を握っているのか?
息つく暇もない怒涛の展開は圧巻です!これ、映像になったらえらいことになりますよ!ハリウッド顔負けのレベルです。
【主なキャスト(敬称略)】
綾瀬はるか:小曽根百合
長谷川博己:岩見良明
羽村仁成:細見慎太
シシド・カフカ:奈加
清水尋也:南始
ジェシー:津山ヨーゼフ清親
小説『リボルバー・リリー』あらすじは?
元諜報員の小曽根百合(おぞねゆり)。16歳から敏腕スパイとして活躍していたが、今は奈加(なか)と共に玉の井の一角で「ランブル-Rumble」という銘酒屋で女将をしている。
弁護士の岩見良明は、関東大震災の混乱の真っただ中、小曽根百合と出会った。
岩見の目の前で百合は、女をさらっていくヤクザ4人をあっという間にのしてしまった。命を救われた岩見は百合に恩返しをすると約束した。
百合は財界ヤクザ・水野寛蔵の秘蔵っ子であり情婦だった。奈加からは銃と刃物の扱いを徹底的に仕込まれ、何か国もの言葉や文化を叩き込まれ、16歳から20歳まで諜報員として暗躍した、別名「リボルバー・リリー」。
13歳の細見慎太と11歳の喬太の異母兄弟は、松本という全く他人の戸籍を与えられ、東京から秩父へと移ってきた。
慎太と喬太は学校には馴染めず毎日のようにいじめられていた。
ルパという日本狼を飼っている筒井国松と知り合い、国松の代わりにルパを散歩に連れて行くことが2人の日課になった。
ルパが亡くなると、慎太と喬太は秩父にいる理由がなくなり、たった2人で東京へ戻ることにした。国松に別れを告げた日、突然父の細見欣也が慎太と喬太の元に現れた。
父は慎太のシャツをたくし上げると、白いさらしを巻き付け、間に封筒を挟み込んだ。「逃げろ」と言う。
父の様子が気になり、慎太と喬太は自宅の床下から中をうかがった。床板の上には父・欣也と喬太の母、姉のはつ子、2人の女中が転がされた。明らかに家族が殺される気配を感じ、慎太と喬太は逃げ出した。
慎太と喬太は国松の家に逃げ込んだ。国松から「小曽根百合を頼れ」と百合の住所を記した写真と拳銃を受け取り、2人は走り出した。
百合の元には国松が死んだという知らせと2枚の写真が届けられた。1枚は赤ん坊を抱く百合と水野寛蔵、国松が、もう1枚には少年2人が写っており、名前と熊谷の住所と「助けてください」という文字が記されていた。
熊谷の目的地に着いた百合が見たのは黒煙が昇る工場だった。百合は工場に向かって走っていく慎太を見つけて捕まえた。百合に手紙を出したのは慎太だった。
喬太は工場の中で死んでしまった。熱を出した喬太のために薬を買いに行こうと、たまたま工場を抜け出した慎太は無事だった。
百合は慎太を連れて逃げるが、追手は次から次へと畳みかけるように2人を襲ってくる。陸軍大佐の小沢と寛蔵亡き後を継いだ水野武統(たけのり)が指揮を執っているらしい。現場で陣頭指揮を執っているのはドイツ人とのハーフ津山ヨーゼフ清親大尉。
百合の依頼を受けて岩見が調べてみると、細見欣也は莫大な財産を海外の口座に隠し持っているとのことだった。陸軍はその金をを奪うつもりらしい。
かつての仲間に裏切られ、逃げ込んだ小学校を燻り出された百合と慎太は、トラックを運転する痩せた青年にお金を渡して大宮まで運んでもらった。
大きな化学工場で三田寛吉と名乗る少年を捕まえ、水門を開けさせて荒川に出たが、あっという間に津山の率いる船に追いつかれてしまった。
しかし、津山の船を転覆させ逃げきったと思ったところで、寛吉が慎太から封筒を奪い取った。寛吉は陸軍に雇われた諜報員・南始(みなみはじめ)だった。
百合と慎太はなんとか玉の井にたどり着いたが、玉の井にはあらゆる場所からヤクザどもが2人を狙っていた。銃撃戦をくぐり抜け、百合と慎太は「ランブル-Rumble-」に転がりこんだ。
封筒が津山の手に渡ったのに追ってくるということは、相手はまだ目的の物を手に入れていないということだ。百合が問いただすと、慎太は腹に巻いていたさらしに「イケガミ二七一ノ五」と赤い糸で刺繍されているのを見せた。
細見欣也は、かつてアジア諸国に武器を売りさばく「榛名(はるな)作戦」で軍に巨額の利益をもたらし、横領した金で自分の個人資産も膨らませていた。シベリア出兵で資金が底をついた陸軍は、細見欣也の隠し資産に目を付けたのだった。
百合と慎太と岩見は「池上271ノ5」で落ち合った。そこは「震災被害者遺品預かり所」だった。
細見慎太がその名前を口にすると、女性が白木の箱を1つ持ってきた。関東大震災で亡くなった慎太の実の母親の遺骨だった。預けたのは細見欣也で、骨壺の中には砕けた骨と書類が入っていた。
細見欣也は銀行とバニシング契約をし、3人の子どもの十指指紋を登録していた。同じ指紋で暗証番号を知る者だけがバニシング契約を停止し財産を引き継ぐことができる。
バニシング契約とは資産を純金・純銀化して安く売りだして、財産を次第に減らしていく契約だ。慎太が停止しなければ財産はそのうち消滅することになる。
百合と慎太は津山たちに包囲されたがトラックを奪ってなんとか逃げ出した。岩見は山本五十六海軍大佐に会い慎太を保護してくれるように頼んだ。その代わり、細見の財産を海軍4:陸軍4:内務その他2の割合で配分することを約束した。
工場では百合・慎太と津山の直接対決が繰り広げられた。死闘の末に津山にとどめを刺したのは慎太だった。家族と国松の仇を討った。
あらかじめ待機させておいた屋形船に乗り込んだが、そこには南がいた。百合は南の目に向かって口の中に隠し含んでいたアンモニアを思い切り吹き付けた。南は暗い海の中へと落ちていった。
海軍に保護してもらうために、百合と慎太は自力で海軍省まで行かなければならない。「来てくれさえすれば必ず助ける」と山本大佐は約束した。
船は銀座に向かって進んでいった。早くも町は大勢の兵士たちで封鎖されている。暗い川の中へ降り、下水穴をたどって地上に出た百合と慎太は、車を奪って走らせた。
兵士やヤクザが執拗に追ってくるのを必死でかわし、裏道を抜けて滝田洋裁店にたどり着くと、百合と慎太は着替えて、迎えに来た車に乗り込んだ。
乗り込んだ車は緊急閣議に向かう大臣の乗る公用車だった。水野や国松と懇意だった弁護士の日永田の計らいで無理矢理便乗させてもらった。
それでも陸軍は発砲し、百合と慎太は途中で降りることを余儀なくされた。ビルや病院の中をくぐりぬけていく途中で、百合と慎太は南に遭遇した。
慎太に銃を突きつけた南を捕らえたのは駆けつけた岩見の銃だった。百合と慎太と岩見は窓から飛び降りた。海軍省まであと600メートル。
日比谷公園内に入ると4度の爆発があり3人は炎に取り囲まれた。百合と慎太は多くの軍勢に追われながら必死で走る。岩見は敵を撹乱する。
被弾しながらも日比谷公園から飛び出した百合と慎太は海軍省へと向かう。軍のトラックに阻まれ、いくつもの銃撃にさらされながら、百合の体は慎太によって塀に開いた穴から放り込まれた。
一度は小沢に掴まれた慎太を何とか塀の中に引きずり込んだのは山本五十六だった。
百合が慎太と再び会ったのは1年後のことだった。慎太はスイスに行って英語・ドイツ語・フランス語を学んだあと寄宿学校に編入することになっている。
「7年後、必ず百合さんに会いにいく」と約束して、慎太は理不尽と不平等に満ちた世界へと旅立っていった。
映画の見どころと原作との違い
文字を読んでいるはずなのに、まるで映像を見ているかのような臨場感。なんなんだ、この冷めやらぬ興奮は!
文字でもこれだけ興奮するのだから、これが映像になったら、もう手に汗握るどころの騒ぎではなくなります。
しかも1000人もの兵士ややくざを相手にしているのが美しく着飾った女性スパイとなると、その格好良さと残酷さが倍増するのは必至です。
銃撃戦はもちろんのこと大爆発あり大炎上ありで、ハリウッド映画顔負けのアクション映画になること間違いなしです。
美しくかっこいいリリーを綾瀬はるかさんが演じるのは納得でしかありませんね!その他のキャストの方々も豪華すぎてかっこよすぎです。
小説の最後、家族を殺されてたった一人で旅立っていく慎太が、必ず日本に帰って来て復讐すると誓うシーンでは、憎しみの連鎖が感じられて、ハッピーエンドという気持ちにはなれません。
たぶんそうでも思わないと、慎太はこれから先たった一人で世の中と戦っていくこともできないのでしょう。金と権力に振り回される大人たちと戦って、そう覚悟するしかなかったなかったのでしょう。
若者たちの青春や未来に暗い影を落とす戦争時代の理不尽さをも強く感じる物語、映画の結末もやはりなんだかやりきれない気持ちの結末を迎えてしまうのかな。
大正時代を彷彿とさせるセットや、何よりも行定勲監督の人間の描き方が楽しみでならない作品です。
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