今村昌弘さんの『屍人荘の殺人』シリーズ第2弾!
『屍人荘の殺人』で集団テロ事件を起こした”班目機関”なる謎の組織について調べるために、剣崎比留子と葉村譲はかつて”班目機関”の研究施設だった「魔眼の匣」へと向かいます。
そこで出会ったのは未来を予知する力をもつ「サキミ様」と呼ばれる老女。サキミは比留子と葉村が巻き込まれた娑可安湖の集団テロ事件だけでなく様々な大事件を予言していました。
比留子や葉村ら男女11人が閉じ込められた真雁(まがん)地区で「男女が2人ずつ4人死ぬ」というサキミの予言は当たるのか?比留子と葉村は”班目機関”の真相を手に入れることができるのか?
今回もまたドキドキの心理戦とトリックが繰り広げられます。
小説のあらすじは?
3回生の明智恭介が設立し、1回生の葉村譲とたった2人で活動していた神紅大学ミステリ愛好会。今年の夏の事件によって明智は行方知れずとなってしまいましたが、会長は葉村が引き継ぎ、2回生の剣崎比留子が新たにメンバーに加わり活動が再開されました。
紫湛荘で起こった殺人事件については解決しましたが、肝心の娑可安湖集団感染テロ事件に関しては、起因となった組織の姿もつかめないまま現在に至っています。
雑誌「月刊アトランティス」に娑可安のテロ事件の予言や「M機関」についての記事が載っていたという情報を得た葉村は、比留子にその雑誌を見せました。
比留子は自らの奇怪な事件を引き寄せる体質から、葉村を巻き添えにはできないと考え、1人でW県に向かおうとしていました。それを感じ取った葉村は比留子を待ち伏せをし、ともにW県の「好見」地区へと向かうことにしました。
山奥に向かって行くバスに乗っているのは、比留子と葉村と高校生の男女だけです。突然女子高生がものすごい勢いでスケッチブックに絵を描き始めたと思ったら、バスがが急ブレーキをかけドンッという衝撃がありました。
バスがイノシシと衝突したのでしたが、もっと驚いたのはその直前に女子高生が描いていた絵はその状況を予言するかのような絵でした。
バスを降りた4人は歩いていくことにしました。どうやら目的地は同じようです。女子高生の方は十色(といろ)真理絵といい男子高生は茎沢忍といいました。
「好見」地区に続く道には「立入禁止」と書かれたフェンスが置いてあり、10数軒ほどの人家には人っ子一人姿がありません。
そこへライダースジャケットを着た男性が現れました。やっと住民を見つけたかと思いましたが、男性はツーリングの途中でガス欠になってしまい助けを求めにやってきたのでした。名前を王寺(おうじ)貴士と言いました。
突然「なにをしているの」と声をかけられ振り向くと、そこには女性と男性と子どもがいました。真っ赤ないでたちの女性は元住人で朱鷺野(ときの)秋子といいお墓参りに来たとのこと。
男性は師々田厳雄といい息子の純と親戚の葬式に行った帰りに車のトラブルで立ち往生してしまい、朱鷺野が通りかかったということでした。
朱鷺野が「サキミ様のところへは行った?」と言い、底無川の向こうに案内してくれることになりました。
「サキミ様」というのは誰もいなくなった「真雁(まがん)」地区という里にやってきた人物で現在住んでいるのは「サキミ様」ひとりだということです。「サキミ様」の住処は住民から「魔眼(まがん)の匣(はこ)」と呼ばれていました。
底無川にかかる木の橋を渡り廃屋群を抜けた先が急に拓け、まさに匣と呼ぶのにふさわしい窓のない無機質なコンクリートの建物が現れました。
突然、建物の陰から猟銃を持った女性が現れ一同は驚きましたが、その女性はサキミ様のお世話をしている神服奉子(はっとりやすこ)といい、菜園をクマに荒らされたために銃を持って出てきたのでした。
建物の中に入ると中年の男が現れました。男は雑誌「月刊アトランティス」の記者で臼井頼太でした。
編集部に届いた手紙に大阪のビル火災と娑可安湖のテロ事件を予言した内容と、かつてこの場所で超能力実験が行われていたこと、そしてサキミがさらに予言をしてることが書かれていました。臼井は直接確かめるためにやってきたのでした。
サキミの新たな予言とは「11月の最後の2日、真雁で男女が2人ずつ、4人死ぬ」というものでした。11月の最後の2日とは明日と明後日のことです。その予言を恐れて好見地区の人は全員避難しているのでした。
朱鷺野と師々田親子が帰ろうとしましたが、底無川にかかる橋が燃えていると言って戻ってきました。十色はまた直前に「橋が燃える絵」を描いていました。
11人は脱出する道を断たれ、完全に真雁に閉じ込められることになりました。
神服によると魔眼の匣は50年前に班目(まだらめ)機関がサキミをはじめとする数名の超能力者を集めて研究を行っていた場所で、サキミはそのときからずっと魔眼の匣で暮らしているのでした。
翌朝、脱出する方法がないかと周辺を調べていると、突然地震があり目の前で土砂崩れが起きました。そして目の前で、臼井が土砂に飲み込まれていきました。
夕方、部屋で比留子がお風呂からあがってくるのを待っていた葉村は眠ってしまっていたようで、比留子に起こされて目を覚ましました。激しい吐き気を感じます。比留子さんが来なければあやうく一酸化炭素中毒に陥るところでした。
十色がストーブとベッドに倒れている人を描いていて、それを見た比留子が真っ先に葉村の部屋を訪ねてきてくれたのでした。地震直前にも十色は土砂崩れの絵を描いていました。
十色の予知能力とも言える力は小学校3年生の時に現れ、次第に強くなっていきました。イメージを受信すると手近なものを使って絵を描きなぐってしまい、自分では止められないのでした。
十色の亡くなった祖父の遺品のノートから、祖父はかつて班目機関の研究者で、魔眼の匣でサキミの特殊能力について研究していたことがわかりました。サキミの家系は隔世遺伝で予知能力が現れること、祖父とサキミが深い仲だったことがノートには書いてあり、十色は自分がサキミの孫であることを確信してこの魔眼の匣を訪ねてきたとのことでした。
夕食時、みんなが集まった食堂で十色がまた突然絵を描き始めました。体を丸めて倒れている人と赤い点の連なり…。サキミの部屋に飛んでいくと廊下に赤い花が散らばって、サキミが苦しんで倒れていました。
サキミは一命をとりとめました。十色の不可解な絵を不審に思った師々田が疑いの目を向け、十色は翌朝まで部屋に軟禁されることになりました。
日付が変わるころ、神服がロッカーのカギが壊されていて中にしまっていた散弾銃がなくなっていると叫びました。十色以外は全員食堂にいます。十色の部屋に駆け付けてみると、そこには胸を散弾銃で撃たれた十色が倒れていました。
十色の死に冷静さを失った茎沢は魔眼の匣を飛び出して森の中に走っていってしまいました。
翌朝、比留子がいなくなっていました。裏口の鍵が開いていたので建物の裏手を探すと、比留子のストールが落ちていて足跡が滝の方に続いており、崖の上に比留子のスニーカーの片方が落ちていました。
実は比留子は葉村の部屋に隠れていました。女性2人が死ぬことになっていたので、比留子が死んだことになれば次の殺人は起こらないと踏んだのです。
突然、女性の悲鳴が聞こえて葉村は部屋を飛び出しました。暗がりの中に長い槍のようなものを持った白装束が見えました。追いかけると地下に降りる階段の途中に白装束は脱ぎ捨てられていて、濡れた足跡が朱鷺野の部屋に続いていました。
朱鷺野は部屋の中で倒れて死んでいました。すぐ横には槍のような木の棒が落ちていました。純が比留子さんを探しに森に入ってったことがわかり探しに行くと、そこには泣き叫ぶ純と熊に襲われた茎沢の遺体がありました。
男性2人女性2人の死亡が決定的となり、比留子はみんなの前に姿を現しました。3時間後、比留子は食堂にみんなを集めました。
殺人事件の真相は?(ネタバレ)
ここから先はネタバレを含みます。知りたくない方は【+】を開かないでね。
比留子は葉村に「ごめん、君のホームズにはなれない」と言いました。しかし、比留子は結果的に葉村が犠牲者にならないように、全て計算ずくだったことがわかり、葉村は「比留子のワトソン」になるべく決意を新たにしたのでした。
小説を読んだ感想は?
『屍人荘の殺人』で娑可安湖テロ事件を起こしながら、結局正体が明かされず”宿題”のように残された”班目機関”なる存在。
『魔眼の匣の殺人』でほんの少しその研究の一部を垣間見ることはできたものの、また”宿題”として残ってしまって、「わからんのかい!」と突っ込みたくなる気持ちが湧いてくることは否めないとして…(笑)
それにしても、今回の殺人事件は伏線回収がなかなか難しかった(;^_^A
「男女2人ずつ死ぬ」という予言があったばっかりに、同性の誰かが死ねば自分は死ななくてすむという心理戦と、怪しまれないために交換殺人をしたというトリック。さらには「サキミ様」の謎まで絡まってきて、さら~っと1回なぞっただけでは頭の中に「?」が残ってしまうことに。
いやぁ、班目機関のことは抜きにして、殺人事件という出来事に関しては秀逸なサスペンスでしたよ!これは!
今回もまた比留子さんの推理の鋭さに舌を巻くとともに、葉村くんを自分の呪われた体質に巻き込みたくないという深い愛にちょっと感動してしまいます。
そして葉村くんもそんな比留子さんにさらにぞっこんになり、危ない橋を渡ることになるのですが。それは次の『兇人邸の殺人』へと持ち越されます。
新作の『兇人邸の殺人』ではいよいよ”班目機関”の真相に触れることができるのか?
『魔眼の匣の殺人』映画化はある?
『屍人荘の殺人』が映画で興行収入10.9億円とまずまずのヒットを飛ばしたので、おのずと続編に期待してしまいますよね。
原作の『屍人荘の殺人』を読んでいたら、ゾンビによる集団テロは”班目機関”という謎の集団によるもので、比留子さんと葉村くんはきっと”班目機関”を調べ始めるだろうことがわかるのですが、映画では”班目機関”のことには一切触れていないので「え?急にゾンビ?」となり、最後にはゾンビ事件が解決しないことに「あのゾンビは何だった??」となったことでしょう。
『魔眼の匣の殺人』でも結局”班目機関”の正体はわからずじまいなので、映画を作るとしたら、そのあたりを全部クリアにしないと続編は難しいかなぁ。
小説を読む人にとっては、ハラハラドキドキが続くので2作3作と引っ張られても楽しみながら読むことができますよ!
かなりボリュームのある小説ではありますが、典型的なサスペンスなので「次は誰が殺されるの?」「犯人は誰?」のドキドキ感を最後の最後まで味わうことができます。
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『屍人荘の殺人』を読んだら「班目機関」が気になり過ぎて続編を読まずにはおられなくなります!
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