美しい湖に面する老人介護施設で100歳の老人が亡くなった。事件なのか事故なのか、警察の捜査は続いていくが真相はなかなか見えてこない。
そんな中、事件を担当する刑事・濱中圭介と事情聴取を受ける介護職員の豊田佳代は、ある事故をきっかけに離れられない関係へと陥っていく。
事件を取材する記者の池田立哉はやがて、昭和の薬害事件が根底で繋がっているのではないかと感じ始める。
人の中に巣食う欲望や狂気はやがて、誰かのものとつながっていくのか。美しい湖のほとりで起こる、狂気のサスペンス。
【主なキャスト(敬称略)】
福士蒼汰:濱中圭介
松本まりか:豊田佳代
浅野忠信:伊佐美佑(刑事)
福地桃子:池田由季(記者)
財前直見:松本郁子(介護士)
三田佳子:市島松枝
小説『湖の女たち』のあらすじ
湖に面する介護療養施設「もみじ園」で、人工呼吸器をつけて療養中だった市島民男(100歳)が亡くなった。
人工呼吸器の誤作動が原因か、それとも施設職員による業務上過失致死なのか、警察が調べることになった。当直だった看護師や介護士は、誰も人工呼吸器のアラーム音を聞いていないと主張した。
人工呼吸器を製造しているP社によると、呼吸器が誤作動を起こすとアラーム音が鳴り響く仕組みが何重にも施されているらしい。誰もアラーム音を聞いていないとなると、考えられるのは誰かがアラームを止めたことだけだ。
その夜、帰宅しようと豪雨の中を濱中圭介が車を走らせていると、減速した拍子に後ろの車に追突された。運転していた女性は茫然自失の状態で会話にならなかったが、よく見ると昼間に事情聴取をしたモミジ園の介護士・豊田佳代だった。
出版社に勤務する池田立哉は旧琵琶湖ホテルの特別展示室にいた。50人以上が死亡したにもかかわらず立件されなかった90年代の事件を取材するために滋賀までやってきたのだ。
危険な副作用がある血液製剤を作ったのは「MMO」という製薬会社で、今では「アラモス」と名前を変えて大企業へと成長している。当時、「MMO」から多額の資金を受け取っていた渋井会系研究施設に勤務する宮森勲という医師がこの血液製剤を積極的に使っていたこともわかっている。
宮森勲が日本医師協会の次期会長に選出されることが決まり、スク―プとして過去の事件を再調査することになったのだ。
池田の元に渡辺デスクから電話が入った。近くの「もみじ園」という介護施設で医療事故があったようなので、ついでに取材してきてほしいということだ。
被害者の「市島民男」の名前を聞いて池田は驚いた。ついさっき写真で「市島民男(京都大学教授)」という文字を見たばかりだ。写真には医療法人渋井会の創始者・渋井宗吾と第八銀行頭取の段田信彦もいっしょに写っていた。
池田は市島の自宅に行ってみることにした。取材拒否されるかと思ったが、意外にも市島民男の娘・さゆりは池田の取材を快く受け入れてくれた。
圭介には妻がいるが、臨月に入って実家に帰っている。圭介は事故のときに教えてもらった佳代の家へと向かった。小石を投げて窓を叩くと、佳代が出てきた。圭介は佳代を引き寄せようとしたが、妻が産気づいたとの電話があり慌てて帰っていった。
事件解決の糸口が全く見えない中、西湖署は焦っていた。警察は介護士の松本郁子に的を絞り、明らかに自白に持ち込もうとしていた。そんな中、西湖署からの帰りに郁子が事故を起こした。記者会見は紛糾したが、警察側はあくまでも行き過ぎた取り調べはなかったと主張した。
松本郁子は自分のしたことの重大さに耐えられなくなり、自殺行為に及んだ…、西湖署の中ではそんなシナリオも出来上がりつつあった。
3日間署に泊まり込んだ圭介は、家への帰り道、湖のそばに車を停め「来るまで待ってる」と佳代に電話をかけた。佳代が圭介の車のそばに着くと、圭介はうずくまる佳代を見ながら車の中で自慰行為をすると帰っていった。
市島民男、渋井宗吾、段田信彦の経歴は意図的に消されているかのように、調べても調べても何も出てこなかった。再び市島さゆりを訪ねた池田は、市島民男の妻・松江と話ができた。3人は旧満州で知り合ったようだ。宮森勲の父親は市島民男と同じ部署で働いていたこともわかった。
松江はまた、ハルビンの湖のほとりの小屋で少年たちが実験と称して2人の男女を凍死させた悲しい事件のことを語った。
中国の旧満州に取材に行くと、市島は人体実験や生物兵器の開発を行っていた七三一部隊の生き残りであったことがわかった。渋井や段田も何らかの関りがあったに違いない。血液製剤の事件だけでなく七三一部隊とのつながりが公になることを怖れ、段田の父である代議士の西木田一郎の力ですべての過去は消去されたのだ。
佳代がモミジ園に出勤すると、同僚の小野梓がYouTubeの動画を見せてきた。動画はモミジ園の駐車場から建物の裏側に回り、非常口から建物の中に入ると108号室の前で止まった。市島民男が入所していた部屋だ。もしかしたら事件とは何も関係ないかもしれないが警察に言うべきかどうか迷っているのだと言う。佳代は動画を梓から送ってもらい、西湖署に提出した。
圭介から呼び出されて、佳代はまた圭介の元へと向かった。全裸で撮影され、圭介の言いなりになっている。しかし、それは自分の意志であり望みであるような気がしていた。
「徳竹会」という介護施設で人工呼吸器をつけていた92歳の女性が急死したという一報が流れた。池田は「徳竹会」へと向かった。案の定、警察に追い払われることとなったが、伊佐美という刑事が池田に声をかけ、おもしろい動画をくれた。
建物の裏口から「もみじ園」へと入り108号室の前で終わる動画だった。画面の端に女性もののコートのような白い服の裾が映っている。
池田がまずは腹ごしらえとファミレスに車を入れると、目の前に先ほどの動画に写っていたジープが見えた。「もみじ園」の職員、服部のジープだ。服部は中学2年生の孫娘・三葉と友達の男の子たちを連れていた。
子どもたちは夜明け前に湖に行って野鳥観察をしてきたらしい。三葉と男の子たちは「生物部」に所属していて、中学生になってからはキャンプ場などに泊まり込んで観察することもあるのだと言う。
池田は「もみじ園」「徳竹会」の近くにある「野鳥センター」や「キャンプ場」を洗い出すと、通り道にあるコンビニに聞き込みに回っていった。警察ではないため防犯カメラの映像を見せてもらえることはなかったが、池田の中にほぼ確信めいた何かがあった。
池田は三葉のものと思われるtwitterを見つけると、最初のツイートを見て確信していた。「津久井やまゆり園」の大量殺人のニュースがシェアされていた。
圭介は松本郁子の取り調べに行き過ぎた行為があったと告訴されることとなり、謹慎を言い渡された。圭介と佳代は、圭介に言われて手錠をはめられた佳代が全裸で湖に飛び込んだのを最後に会っていない。
「もみじ園」と「徳竹会」の事件は半年以上経って完全に迷宮入りしているようだ。
しかし、湖のほとりには諦めていない…いや、この事件に憑りつかれた2人の男がいた。夏休みの早朝4時半、三葉と仲間の男の子たちが宿泊しているバンガローには、池田と圭介が張り込んでいた。
白衣を着た三葉と4人の男の子たちは、湖に向かってではなく車道に向かって歩いて行く。三葉の口からある介護施設の名前が発された。
映画『湖の女たち』の見どころと原作との違い
1回目読んだ時は事件のつながりとか佳代と圭介の関係とかがまるでつかめないまま、訳が分からず「何だった?」って感じで読み終えました。
2回目読んでやっと(いやまだ完全には理解できてない気がする)、いろんなことが奥底で繋がっているというか、本人が気づいているか気付いていないかわからないけど、人間の心理もどこかで繋がっているんじゃないかという怖ろしさを感じました。
佳代と圭介のかなり異様な関係は最後まで理解できませんでしたが…。
湖というのは、なにか人間をなにかおかしくさせてしまうような力があるのでしょうか。
小説の中でさえその情景が見えてくるくらい、湖はとても美しいたたずまいを見せてくれるのですから、たぶん映画では湖畔の生き物や自然に対する敬意が感じられるくらい美しく描かれるのだと思います。
その景色が美しければ美しいほど、湖の近くで起こっている異様な出来事がよりグロテスクに描かれることでしょう。
登場人物全員が心のどこかに異様な欲望と狂気をかかえていて持て余しています。これが現代人の本当の姿ということなのでしょうか。そしてその人間の欲望と狂気と弱さが、確実に何かを動かしていく、そうやって歴史は作られてきたということなのでしょうか。
老人介護施設での事件はおそらく解決に向かうのでしょうが、この事件がきっと誰かの何かを動かしていくことになるのでしょう。そう考えると、根本的には何も解決していないという怖ろしさを含んだ本当の意味でのサスペンスかもしれませんね。
人間の一番見たくない部分を映像化している映画なのかな。かなり見たくて、見るのが怖い映画です。
原作では記者は男性なのですが映画では女性になっていますね。この記者も湖の魔力に心を揺さぶられるのでしょうか…。
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